読んだあとで、は? 何だったんだこの話は…… となるような、評価に困るものを書きたくて、名華祭で頒布するつもりで書きました。しかし鬱がどうにもならなくて断念したのです。今は寛解していますが、サークル参加する気力がありません。
さて、これは私の好きなものを詰め込んだ作品です。具体的には胎児の夢と2001年宇宙の旅です。胎児の夢のようにこれから生まれるうさぎたちが現実世界での危機を乗り越える予行演習をするために、死ぬ鈴仙のその記憶が月へ送られたという内容です。どの時点からが胎児の夢なのかはわからないように、というか整合性が取れないようになっています。ドリーマーは夢を見せる薬ではなく、飲んだ者の記憶を月へ送る薬でした。死にかけの玉兎に飲ませて、その失敗の記憶を子うさぎたちに見せるのです。
一九六八年に外の世界で公開された映画がまさに2001年宇宙の旅であり、「クライマックスで、宇宙を駆ける主人公の視界を槐安通路そのままの模様が飛び去るという描写が登場した」というのは映画の終盤で木星に到着したボーマンがモノリスとの出会いの前に通ったあの空間のことです。紺珠伝の第四槐安通路は構図的にあれをイメージしたんだろうな、と思って出しました。鈴瑚が言及したティコ・クレーターは、月のモノリスが発掘された場所です。
[Marfusha Reisen]: Vital lost のMarfushaは、ロケットに乗せられて宇宙へ飛び立った、実在したうさぎの名前です。鈴仙の所属していた部隊名ということになっています。部隊名をいわゆるネームスペースとして、同じ部隊の中には同じコードネームは存在しない、という建付けです。
Anchor in sanity. 必死に唱えるうちにスペースが抜け落ちてAnchor insanity(狂気)となったため、鈴仙は発狂しました。
見たこともない悪夢の世界。このように、私は原作に出てきた言葉を作中に紛れ込ませるのが大好きです。躁鬱フランドールでも「ほおずきみたいに紅く」とか書きましたね。
こういった細かいこだわりがどれくらい読者に発見されるんだろう、きっとされないだろうな、と思いながら寂しく書いています。うさぎのMarfushaなんて絶対誰も知りませんしね。
2024年に「迷へる愛し子」「嘘をついた日」を出したっきり、もう即場会には出ないと思います。不特定多数の人間と交流をする場は、自閉傾向強めの私には疲れすぎます。