無名ウマ娘のレース人生   作:ゆうゆーう

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第三話 選ばれなかった者たち

「お疲れ様」

 

 やっと息が整い、敗北の味を噛み締めた頃に後ろから労いの言葉が聞こえ、振り返ると汗をかいた幼馴染が立っていた。

 

「・・・おつかれ。俺は最下位だった」

 

「・・・そう」

 

 苦々しく結果を伝えるが、あまり驚いた様子はない。

そっちはどうなんだと顎で合図すると、4本の指を立て結果を伝えてきた。

 

「4位か」

 

「ええ、マックイーンは一位よ。ほら」

 

 指を刺した方向を見るとテイオーと同じく、多くのトレーナーに囲まれたマックイーンの姿があった。

 物怖じせず、大勢のトレーナーとやり取りする姿は堂々としており、気品がある。

 

「強かったわ。手も足も出ないほどね。

けど、あなたには勝てたから良かったわ」

 

 

 

 

「・・・そうかい」

 

 

 

 

 

「・・えいッ」

 

 幼馴染の皮肉にいつもなら言い返すところだが、今はそんな余裕もなく、ただただテイオーとマックイーンの姿を苦々しく見つめる。

 そんな様子に、深くため息をつかれ、額に強烈なデコピンが飛んできた。

 

「いってぇ!?おい!急に何すんだよ!!?」

 

「なーに、柄にもなくしょぼくれてんの。

ここは言い返すところでしょ?

あなたらしくない。

いつもの無駄な元気はどこにいったの?」

 

 

「いや、そーだけどさぁ。やり方が乱暴だわ〜」

 

 腰に両手を置き、こちらの顔を覗き込むようにしながら、喝を入れる×××。

 その意図はわかるが、雑な励まし方に口を尖らせ文句を垂れる。

 ぶー垂れる???と全くっと言わんばかりに呆れた表情の×××。

 

 

 だがーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーハハッ」

 

「ーーーフフッ」

 

 お互い見つめ合ってると、思わずフッと吹き出してしまう。

 

 

「だよな!お前の言う通りだ!

まだまだ始まったらばかりだもんな。一回の敗北でくよくよしてもしょーがねぇ」

 

「やっと、いつもの様子に戻ったわね」

 

「おうよ!これからめちゃくちゃ練習して、勝てば良いんだ!

見てろよー。絶対、かっこいいウマ娘になってやるッ!!」

 

 選抜レースでは最下位だったが、まだまだ学園生活はこれから、レースはこの先も続いていく。

 新たな決意を胸に宿し、気合を入れ直し、熱意のこもった目で再び前を向くと同時にアナウンスが鳴った。

 

「以上で選抜レースを終了します。

 皆さんお疲れ様でした。

 トレーナーが決まったウマ娘は速やかに受付まで報告お願いします。

 また、仮契約の場合も同様に報告をお願いします。

 報告が完了次第、各自トレーナー室に移動し、契約書の記入をして下さい。

 複数のトレーナーからスカウトされてる生徒は詳しい説明をするのでグラウンド前方に集まって下さい。

 トレーナーが決まっていない方は、グラウンド左に全員集まって下さい。

 教官が十人ほどのグループを作って指導します。

 最後に次回の選抜レースは6月上旬を予定しています。

 繰り返し、ご連絡します。

 トレーナーが決まったーーー 」

 

 指示に従いウマ娘が移動し始める。

 テイオーやマックイーンはまだトレーナーを選べてないようでグラウンド前方に移動していた。

 どこに移動するかでスカウトされたのか、そうでないのか一目にわかる状況に改めて現実を見せつけられるが、もう落ち込まない。

 6月にも選抜レースがあるのだから、それに向けて鍛えるのみだ。

 集合場所に到着し、人数を数えてみるとおおよそ四割のウマ娘がグラウンド左に集合していた。

 全員が集まったところで、教官の責任者が名簿を見ながらグループ分けを始めていった。

 

「え〜、じゃあ、集合順にグループ作っていきます。

 前から順に12番のゼッケンをつけてるウマ娘までの8人が一班。

 担当は山田教官です。

 え〜、次にその後ろからーーー」

 

「・・こんな雑に決めるのね」

 

 集合した順から大雑把に決まっていくグループ分けに思わず声が漏れるが、しょうがない部分もあるのかと思った。

 日本一の生徒数を誇るこの学園では大勢のウマ娘一人一人に丁寧に対応することは難しいのだろう。

 だが、幸いと言っていいのか、???とは同じグループになることはできた。 

 指定された教官の前に行くと、そこには30代ほどのあまり活力を感じない無精髭を生やした男性がいた。

 

「あ〜、とりあえず、選抜レースお疲れ様でした。

 今日からみんなの教官になる勝(まさる)です。

 あー、よろしく。

 まあ、なんだ、とりあえず自己紹介でもすっか。

 じゃあ、そこのお前から」

 

 やる気のない声で名乗り、適当にウマ娘を指名し、自己紹介が始まった。

 

「えっと、青森の田舎きました。◯◯◯です。

 よろしくお願いします。

 両親に誇れるようなウマ娘になりたいと思っています」

 

「・・・はい、後悔のないようにね。

 はい、じゃあ、その後のーー」

 

 急に当てられ戸惑いながら自己紹介をした素朴なボブカットのウマ娘に対して、あまり興味がなさそうに返事をする。

 終始やる気のない声で続いていく自己紹介。

 そんな様子に×××はこの教官で大丈夫なのだろうかと初日から不安と呆れが混ざった感情が芽生えた。

 ついに自己紹介も終わりに近づき、???が最後の番になった。

 

「???です。夢はかっこいいウマ娘になること!

 あいにく、今日の選抜レースでは最下位だったけど、めげずに夢を絶対に叶えるので、これからよろしく!!」

 

 元気よく自信満々に答える様子に完全に元の調子に戻ったなと安心しながら、ふと教官を見ると、一瞬、目を丸くし驚きの表情を見せたことに気づいた。

 

「・・あー、そうか。なれるといいな」

 

 今までのやる気のなさそうな様子と比べ、寂しい声色の教官に違和感を感じたが、すぐに先程の様子に戻り、その後は変わったこともなく、名簿にそれぞれのウマ娘の情報を記入し解散となった。

 

 

 

 

「いよいよ明日から教官とトレーニングか〜。

 俺、めちゃくちゃすげぇトレーニングプラン考えてきたんだぜ!

 寮に帰ったら聞いてくれよ」

 

「長くなりそうだから嫌。

 そもそも、トレーニングプラン考えるのは教官の仕事だし」

 

「そうだけどさぁー。あ、お前のトレーニングプランも考えてきたんだぜ」

 

「い・や・よ。

 あなたの考えるプラン、詰め込みすぎて、終わった後身体中が痛いんだもの。

 ほんと、よく身体壊れないわね。感心するわ」

 

「体が丈夫なのが昔からの取り柄だからな。そう言わず、同じ部屋なんだし、語り合おうぜ〜」

 

「・・フジキセキ寮長に部屋の交換お願いするわ」

 

「えー、つれないこと言うなよー」

 

 騒がしく言い合いながら寮に帰る二人。

 

 そんな???の背中を教官はじっと見つめていた。

 

 

 

 

「・・・かっこいいウマ娘になる・・か。

 あいつと同じだ」

 

 誰にも聞こえない声で呟き、強く目を閉じると、瞼の裏に一人のウマ娘が浮かんできた。

 

 

 

 

 

『かっこいいウマ娘』

 

 

 

 

 その夢が救いになるのか呪いになるのかは、まだ誰も分からない。

 

 

 

 

 

 入学から一週間。

 

 

 1戦0勝1敗。




 今回出てきたウマ娘の◯◯◯と教官の二人がこの物語に大きく関わってきます。
 ちなみに、教官の名字が明かされていないのも理由があります。

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