勇者なのだが、いつもの仲間がいないのだが? 作:むーんしゃいん
勇者は旅をした、様々な地域をめぐり、様々なものを食べ、様々な景色を見た。
勇者の違和感が現実のものになりつつある。
「…」
「どうされました、勇者様??」
女子洞察力検定一級の聖女が勇者に声をかける。
「もうそろそろ、魔王城だよな」
4人が一斉にうなずく。
「ですね」
「であります」
「じゃな」
「です」
統率が取れすぎていて少し怖い。
勇者は小声で言った。
「…俺たち、まだ、スライム一匹も倒してなくないか?」
沈黙。
風が吹く。
白銀騎兵が口角を上げる。
「フッフッフ…。お気づきになられました。勇者様…。」
その瞬間、茂みが揺れた。
「はっ!敵か!」
現れたのは国王軍兵士。
「報告致します!我が国軍の働きにより、大陸全土の魔物掃討を成功しました!」
勇者は天を仰いだ。
勇者は激怒した。 必ず、かの
王国議会により魔物排除法が制定され、世界に平和が戻った。
「おれのレベルは?」
「そうはおっしゃられても…!」
白銀騎兵の目が泳ぐ。そこに皇族騎士は機転を利かせる女をアピールする。
「フッフッフ…。愚かなり国軍め…!ご安心ください!勇者様!」
皇族騎士は待ってました。とばかりに、右手を上げ合図する。ほかの茂みが動いた。
皇族騎士たちの集団が、呪詛に封印されたバハムート。檻に入れられたミノタウロスなど、ボスを檻に入れて勇者の目の前に差し出した。
「勇者様のためにボスをすべて捕らえておきました!」
「卑怯だぞ!皇族騎士!」
したり顔の皇族騎士と、ぐぬぬ顔の白銀騎兵の二人に勇者は罵声を浴びせる。
「強すぎて倒せねよーっ!」
勇者絶賛レベル1である。最序盤のミノタウロスですらレベル30である。
「フ…ッ、ご心配なく」
皇族騎士は失笑しつつ、同じ皇族騎士に顎で合図した。
「おい、勇者様のために弱らせろ」「ハッ」
「ピギー」
バハムートに聖剣が刺されている。
「かわいそうだろ!やめてさしあげろ!」
「そういうのじゃないんだ!お前ら何も分かってない!」
「勇者の気持ちは分かるのじゃ。こいつらは品がない」
大魔導士がぽつりとつぶやいた。
「なんだと!」「やんのか?」
皇族騎士と白銀騎兵が憤怒する。
「わちきがスライムを召喚してやるのじゃ」
「へへ…。お前…、陰湿なオタクかと思ってたけど、いいやつだな」
やっぱり、流行のMBTIでも内向型が最高ってわかんだね!
大魔導士は簡単な演唱で、スライムを5万匹召喚した。
「さあ、倒したまえ」
「今度は多すぎるんだよ!」
勇者は慟哭した。
「だ、大丈夫、勇者様。わたくしが付いています…。神に仇為すものに制裁を…」
聖女は天界から天使兵を10万招集した。
「好き勝手に二人で戦争すんなよぉおおお!」
4人は《勇者ってこういうのが好きなんでしょ?》みたいな勘違いを力が
果てるまで繰り返していた。