ハイラル城下町は上を下への大騒ぎとなった。
魔王が復活し、料理人に扮してハイラル城に潜入していた、との知らせが広がったからである。
だが城は、過去の「黒鬼の乱」の反省をもとに、素早く町内にお触れ書きを掲示し情報開示を行った。民の疑念と動揺を鎮めるためである。(注*1)
その触れ書きいわく、魔王は縄につけられ、城の地下深くにある厳重に警備された牢に閉じ込められ裁判を待っている、と。また、その発表においては裁判の日程も示された。
ハイラル王国にも裁判所はある。土地の境界の争いや金銭の貸し借りのトラブルなどについては下級裁判官が訴えを取り上げて判決を下すようになっており、事件の規模が大きくなるほど高位の裁判官が任につくのである。そして、国家反逆罪などの重大事件については、元老院議員と法学者たちが列席のうえ女王自らが裁きを下すことになっていた。(注*2)
裁判の当日、城には傍聴希望者が殺到し、整理券を配らねばならぬほどであった。その大多数は、もはやザント-ガノンドロフの乱の恐怖を忘れ、ただ単に魔王を一目見ようとする物見高い町民たちであったが。
また、城の一階の誓願の間が急遽改装された。五つあるバルコニーからはフロアに降りる階段が設置され、そのすぐ足元に女王や議員や高官たちの席が設けられた。一方で検察官と証人と傍聴人たちのためにも多数の椅子が並べられ、広間の中央には被告人の席が設置された。
開廷の時間の三十分前には、おびただしい数の傍聴人で傍聴席は満員になり、扉の外には入りきれなかった町民が大勢たむろしていた。
開廷時間が近づくと、扉が開かれ地下牢から引き出されたガノンドロフが兵士たちに引っ立てられ入ってきた。上半身には太い鎖がぐるぐる巻きにされている。それを見ると傍聴席にどよめきが広がった。
「おい、あれラーメン屋の店主じゃあないか?」
「じょ..冗談じゃあない。俺あそこの常連だったんだ。突然閉店したと思ったらこういうことだったのか...」
「やだ..どうしよう。私もあそこで食べたことある。毒とか入ってないかしら」
町民たちがひそひそと囁きかわす中、被告人は誓願の間の中央に据えられた席に座らされた。
傍聴席には、泣き腫らした目をしてハンカチを手にしたテルマ、そして傍らにリーナの姿もあった。
やがて左右のバルコニーの扉が開き、高官たちが階段を降りてそれぞれの席につく。最後に正面のバルコニーの扉が開かれて女王が姿を現した。女王が階段を降りている間、その場にいた者たちは誰が言い出すともなく全員が一斉に起立し、脱帽してひざをかがめた。
全員がふたたび着席する。普段お触れを読み上げるために使われる高い台の上に立った執事が開廷を告げた。
まず、検察官が立って罪状を読み上げた。国家転覆企図、殺人、誘拐、窃盗から器物破損まで七十近くの罪状が挙げられた。
次に証人が立てられた。ザントによる侵攻と城側の降伏のさい居合わせた兵士たちや、当時のゼルダ姫を補佐していた役人たちのうち存命の者が事件の顛末を語った。仲間を失った兵士たちや、魔王への協力を拒んで投獄され仲間が牢で朽ち果てていくのを見た者が証言したときには、証人本人が嗚咽により証言を中断した場面もあった。
さらに、占領時のハイラル城の様子を証言するためラフレルとリンクが呼び出された。本当はモイ、アッシュおよびシャッドにも召喚状が出されたのであるが、モイはあまりに急な日程のため間に合わず、アッシュとシャッドはまだ入院中であったからである。
ラフレルは、城の中庭に突入後、夥しい数の魔物と戦った旨を話した。じつに、自分が見ただけでも魔物の数が百匹は下らなかったと彼が話したとき傍聴席には驚きの声が上がった。すでに彼の著書で書かれていたことではあったが、それでもそれだけ多数の魔物に城を占拠させつつ町民にそれを気取らせなかったのは魔王の狡知の極みである。そのことに驚きが走ったのである。
最後にリンクが証言台に立った。リンクはラフレルと重複する部分の証言は省くと断りを入れたうえで、主に城の内部で目撃したことを語った。城の各所には罠が仕掛けられ、複数の強力な魔物たちと戦ったこと。また、謁見の間に辿り着いたときにはゼルダ姫が魔王に憑依されて襲い掛かってきた旨を彼が話し始めると、傍聴席からひときわ大きなどよめきが生じ、さらに罵声を上げる者たちまで出た。
「信じられん、女王様のお身体を....」
「なんと汚らわしい!」
「許せん。縛り首では足りん、火あぶり、いや、八つ裂きだ!」
官吏が傍聴席を鎮めると、リンクは証言を続けた。影の国の王女の力を借りて魔獣に変身したガノンドロフを打ち倒したこと。そしてハイラル西平原での、弓矢を持ったゼルダ姫を馬の後ろに乗せた騎馬戦。さらに一対一の剣の対決で彼を倒したこと。
最後まで話したリンクが引き下がると、再び検察官が進み出て、以上の証言で罪状の全てが裏付けされたと結論し、死刑を求刑した。
次に、証人席にいたラフレルを除く元老院議員と法務官たちからなる会議体が、女王に対する提言をまとめた提言書を提出した。これも検察の死刑求刑を支持するものであった。
判決の時が近づいたことを感じ、その場に居合わせた者たち全ての目がゼルダ女王に注がれた。彼女はこう切り出した。
「では、判決の前に皆に尋ねます。この中で被告人を弁護する者はおりますか?」
当時のハイラルの裁判制度では職業弁護人は存在せず、その場に居合わせた者の中で、被告人に同情した者のうち誰でも弁論してよいことになっていた。多くの場合は誰も進み出ることはなかったにせよ、公平な裁きを期するため、判決の前には必ずこのように弁護人を募る習慣になっていたのである。
するとテルマが立ち上がった。彼女は衆人の目が注がれる中証人席に進み出ようとしたが、何かを話そうとしても激しく嗚咽してしまい声が出ず、結局証言を許されずに自席に戻されてしまった。
「もう一度尋ねます。他に被告人を弁護する者はおりますか?」
少しの沈黙の後、立ち上がった者があった。他ならぬリンクである。
あまりにも意外な展開に、傍聴席がふたたび大きくどよめいた。
「どういうことだ?勇者だろ?なんで魔王を?」
「信じられない。殺し合った宿敵じゃあないか」
傍聴人たちが口々に言い合うので官吏が静粛を要請しなければならないほどであった。
ようやく部屋が静まるとリンクは証人席に立った。彼は帽子を取ると、少し言葉を探したうえでこう言った。
「皆さん、ご承知のとおり僕は何の教養もないただの農夫です。ですから巧みな言葉を使ったり、法律の知識で自分の考えを裏付けることはできません。ただ僕が経験したことを話します」
そう切り出すと彼は続けた。
「僕は魔王と対決しました。命をかけて戦ったのです。それは彼がこの王国を奪おうとする悪だったからであり、僕はこの王国を守りたかったからでした。その敵同士だった僕らは一年後再び出会いました。その時彼は、こう言いました。彼は僕の剣に刺されて一度死んだ。そして、その時の彼自身は今も死んだままだ、と。そして彼自身の野心も死んだ、と」
ここで一旦切って唾を飲み込むとリンクは口を開いた。
「僕は信用していませんでした。だって口ではなんだって言えるからです。けれど、僕がゲルド砂漠の深いダンジョンで魔物たちに追い詰められたとき、彼は駆けつけて救ってくれたんです。そのことは、今は入院してるけど仲間のシャッドも知っています」
再び傍聴席がどよめき、官吏が声を上げて静粛にさせる。リンクは静まったころを見計らって続けた。
「それだってもしかすると信用を得るための演技かも知れない、そんな風に考えることもできるかも知れません。でも僕は剣士として、何年かを戦いに費やしてきた者として思います。戦いっていうものは、したことのない人には想像もつかないほど危険なものです。どれほど修練を重ねても、危険は伴います。死ぬこともあります。どんなに強い人でもです。だから、表向きを偽って他の目的のためにわざわざ危険を冒して戦いをするなんていうことは普通の人にはできないんじゃあないかな、って僕は思います」
一息にしゃべるとリンクは少し休み、再び口を開いた。
「僕は彼の心の中は知りません。でも、彼がしたことは知っています。復活する前、彼は悪人でした。自分の野望のために人を犠牲にして、平気で人を操り奪い取る奴でした。でも、復活した後の彼はそれとはまったく違う行動をしました。別人のように違っていたんです」
そう言ってリンクは弁護を結んだ。
「僕は彼の判決について何か口を挟むつもりはありません。僕にはその知識がありませんから。だけど、今のガノンドロフがどういう人間なのか、それについて僕の知っている限りのことを皆さんに知っていただきたくて。例え彼が死刑になるにせよ、こういうこともした人間だったんだってことを、皆さんに思い出していただきたいと思います」
リンクは自席に戻った。もはや他に弁護する者はいないことを確認すると、ゼルダ女王は被告人席に向き直った。
「被告人ガノンドロフ」
女王は告げた。
「判決を下す前に弁明があれば聞きましょう」
これはゼルダ女王が常に行う習慣であった。通常ハイラルの裁判では被告人がけがしごとを言ったり自分を訴えた者に復讐をほのめかして脅したりすることを防ぐため、公開の場で被告人自身の弁明をさせることはない。だがゼルダ女王は自らが裁くときは常に被告人に弁明をさせることを旨としていた。
皆の目が一斉に被告人席に注がれた。上半身を縛られたままガノンドロフは立ち上がった。しばらく黙っていた魔王だったが、やがてこう切り出した。
「儂は自らの刑について言うことはない。罪状は全て事実だ」
そう簡潔に述べると、ガノンドロフは続けた。
「陛下、もう少し言わせていただいていいですかな?」
「いいでしょう」廷臣たちが心配そうに女王を見たが、彼女はそう答えた。
「儂の店には雇い人が二人おる。その二人は儂の素性を一切知らなかった。だから町内の方々、くれぐれもその二人に疑いの目を向けたり差別だてをすることのないようお願いしたい」
次にガノンドロフは肩越しに振り返ってリンクの方を見た。
「そこにいる勇者の小僧は儂の料理を気に入ってくれた。できればこやつのために、あの味が誰かに引き継がれるようにしてもらいたい」
聴衆は困惑したどよめきを漏らした。「正直、俺あの味大好きだったんだよなぁ」「私も。なんかやめられないんだよね。落ち着くっていうか」そんな声が聞こえてきて、テルマとリーナは堅く手を握り合って頷いていた。
「ガノンドロフ殿。今一つ尋ねたいことがあります」そこまで聞くとゼルダ女王は言った。
「私の心の中で判決は既に決まっています。ですからあなたが今どんなことを言おうと判決の軽重が変わることはありません。それを知っておかれた上で答えなさい」
そう言われたガノンドロフは黙ってゼルダ女王を見た。女王は尋ねた。
「貴殿が勇者の剣で刺し貫かれたとき、いったい何が起こったのですか?」
女王の問いに、ガノンドロフは少し沈黙した。だが顔を上げると、魔王は答えた。
「それを端的に申し上げるのは難しいですな、陛下」
「では順を追って説明しなさい。時間がかかっても構いません」ゼルダは言う。「しかし陛下....」隣にいた廷臣が口を挟もうとするのを、彼女は手を上げて制した。
頭を整理しているのか、ガノンドロフはしばらく黙していたが、やがて顔を上げるとその口を開いた。
「儂は生涯を悪に捧げてきた。奪い、殺し、恐怖を与え、支配する。だがその儂の生き方に常に立ちはだかってきた者たちがいる。それは勇者だ。あの小僧もその一人だった」
彼は肩越しに傍聴席にいたリンクを少し振り返った。
「あの小僧が儂に戦いを挑み、儂は謁見の間で奴と向き合った。そして魔獣の姿で敗北を喫した後、儂は再び自らの姿を現した。そして今度はあの影の国の王女ミドナが儂に戦いを挑み、儂はこれを倒した。いや、倒したと思っていた」
回想するように魔王は宙を見上げた。
「だが、その対決を終えゼルダと小僧を追ってハイラル西平原に着いたとき、気づいたのだ。あの影の王女は、儂の一撃を喰らって死んだ振りをし、去り際に儂の魔力の大部分を封じていた。儂はその時悟った。儂は敗北する運命にある、と」(注*3)
少し間を置くと、ガノンドロフは続けた。
「ゼルダは儂に言ったものだ。人には善か悪かを選択する力があると。儂は知っての通り悪のみを旨として生きていた。だが、人が善を求めていることも知っている。全ての者のうちに悪が埋もれている。それなのに、人は善をなすこと、そして善のなされる世界に住むことを夢見ている。なんとも不思議ではないか?」
ガノンドロフはそう言って聴衆を見回した。
「無礼者め。陛下と言え陛下と!」廷臣の一人が立ち上がって叫ぶ。だがゼルダは手を上げて静まらせ、続けるようガノンドロフに促した。再び魔王が話し始める。
「儂は魔力の大部分を失った。だが、それでも人間としての膂力や技は、あの小僧よりもはるかに勝っていた。事実、儂もいくつかの刀傷は負ったが、小僧は満身創痍だった。だが、光の剣があやつに力を与えたのだ。あやつはその身体で、まるで何かに操られたかのように儂に向かってきたのだ」
魔王は息を継ぐと再び口を開く。
「この世を造った存在がいて、我らの心に善と悪の両方を備えたのなら、どうだろう。人間というもの一人一人は弱いゆえ、その中で善が悪に勝つことは稀かも知れぬ。しかし、もしもこの世の全てを司る者が善と悪との戦いをも司るならば、そのような本源的な戦いの際には彼は必ず善の側を勝利させるのではないか?儂は魔力を失ったときそう思ったのだ。だが.....」
ガノンドロフはじっと目の前の床を見つめた。
「だが人の心に善と悪を備えさせた何者かが儂を敗北させんとしていることが分かったとしても、それでも儂は最後まで戦いたかった。儂は折れたくはなかった。この生き方こそ儂の生き方、征服し、奪い、君臨することを志す儂でなくなれば、儂はもはや儂ではない。その道を追い求める過程で死ぬならばそれが本望であったのだ」
そこまで一気に言うと、ガノンドロフは声を落とした。
「そうして儂は奴の剣に刺し貫かれた。儂は自分の最後を悟った。だがその時だった」
長い沈黙が流れる。怪訝に思った廷臣たちがゼルダ女王の顔を見た。だが、女王は石のようにじっと動かずガノンドロフを注視している。
「儂の心に、あやつが話しかけてきたのだ」
黙って目の前の床を見つめていた魔王はまた口を開いた。少し黙ると彼はまた言った。
「突如として、ザントが儂に話しかけてきた。儂が自らの傀儡とし、影の国を征服させ、さらにハイラル城を攻め落とさせた、あのザントだ」(注*4)
傍聴人たちの中にわずかなざわめきが広がった。聴衆たちの中にはザントの名前とその人物が一致しない者もいるらしく、互いに囁きかわし教え合っている声が聞こえる。しばらくそれを待つように言葉を切った魔王だったが、やがてまた静寂が戻ると彼は話し始めた。
「奴の魂だ。儂は死人の魂と話す術を持っておったから、奴と会話することができた」
「死人の魂だと...なんとおぞましい...」廷臣たちの一人が口を手で覆った。だがゼルダ女王は表情を変えない。
「奴は儂にこう言った。『わが神ガノンドロフよ。どうか我に再び力を与えたまえ』と。『我が渇望する影の宮殿を己の物とし、我の恋い慕うミドナ王女を我が妻とする力を。そのために私は何度でも死に何度でも蘇りますゆえ』」
ガノンドロフは少し口をつぐむ。そして回想から目覚めたかのように顔を上げた。
「本来自らに与えられていないものをひたすらに追い求め、そのために戦い、奪い、殺す。しかも死んで魂になってまでもそれを恋い焦がれ続け、飢え乾き続ける。儂は奴の声を聞いたとき、まるで自分自身を見ているように感じたものだ。その時儂は吐き気がした。もっとも剣に腹を刺し貫かれていたから吐くこともできなかったがな」
そう言って少し自分で笑いながら周囲を見回したガノンドロフだったが、誰もそれにつられて笑っていないのを見ると真顔に戻った。
「それまでの儂は、儂の生き方に誇りを持っていた。たとえ世界を造った何者かが儂の生き方を否定したとしても、それでも儂は儂の生き方を貫き通すつもりだった。それが滅びに向かう道だったとしてもだ。それならば儂は誇り高く滅びよう。そう思っていた。だが、その時ザントを通して儂は生まれて初めて自らの姿を外から見たのだ。それはあまりにも惨めで哀れだった。儂は自分がまるで太陽の照りつけるゲルド砂漠に落ちている動物の死骸にたかる蛆虫のように見えた。身を捩らせ、飢えて渇望し、ひたすら肉の欲望を満たすことを求める。だがそやつらはその後の自分の運命を知らぬ。やがては自らが喰い尽くした死骸とともに砂漠の真ん中で干からびてしまうのだ」
魔王は僅かに溜め息をついた。
「ともあれ儂は奴の頼みを聞くどころではなかった。だから面倒になった儂は奴に言ってやった。『貴様はもはや我がしもべではない。自分の好きにしろ』とな。すると奴は突然儂を罵り始めた。『私を裏切るのか。もはやお前は我が神ではない。この卑怯者、この裏切り者、この偽善者め』また奴はこうも言った。『早くこちらに来い。この炎で焼かれる黄泉に。私一人では苦しまぬぞ。お前をこちらに引き寄せてやる。お前も私とともに永遠に苦しめ』と」
ゼルダ女王は微動だにせずに聞いていたが、おぞましい証言を聞いた廷臣たちの中には目を大きく見開き額に冷や汗を浮かべる者もいた。
「なんのことはない、奴はただ自分の欲望に仕えていただけだった。儂のことを『我が神』とまで呼びながらな!自らの欲望が叶えられないとわかった途端奴は儂を罵り始めたのだ。それを知ったとき、儂には見えたのだ。儂の人生もまた、自らを自らの主人とし自らの欲することを為しているように見えて、実はまったくそうではなかった、ということがな。儂自身もむしろ奴と同じような奴隷だった。儂自身の中にある悪と欲望の」
そこまで話してしまうと、ガノンドロフは目を軽く閉じた。
「儂は意識が薄れる中思った。儂はもはやそのような惨めな奴隷の生き方をやめたいと。そうではなく儂は儂の魂、心、全存在をもって正しいと思える道を見極め、その道を生きたい、とその時初めて思った。そう思った瞬間、儂の胸に刺さった剣が光を発し始めたような気がした。儂自身が光に包まれたような感覚さえあった。やがてすぐに気を失ったがな」
リンクは証言するガノンドロフの背中を見つめていた。自分の聖剣には不思議な力があることはミドナから聞いていた。だが、それはリンク自身の想像を遥かに超えるものだったのだ。リンクの心に、そのような剣を預けられたことの自覚が生じ、彼は胸に込み上げる緊張感と決意に動かされ、思わず拳を握った。
「.........そこから先は覚えておらぬ」
そう言って魔王が口をつぐんだ。静寂の中、テルマの啜り泣く僅かな声が響いた。
「儂の話は以上になる」少し間を置くとガノンドロフは締めくくった。
「陛下、これで答えとしては十分ですかな?」
「十分です。よく答えてくれました」ゼルダ女王は言った。
「それでは判決を下します」
一呼吸置くと、周囲を見渡してゼルダ女王は口を開いた。途端にその場が静まり返った。ただ、テルマが声を抑えて啜り泣く音だけが僅かに聞こえる。高官や官吏たち、百人以上にも及ぶ傍聴人たちの目が一斉に女王に注がれた。
「被告人ガノンドロフ。あなたへの判決は....」