アキラを落ち着かせたあと、悠介がアミリオンをモニターの前に座らせる。
「それじゃあFairy、たのんだよ」
「ンナナ…」
【ボンプと接続中、視覚データを取得します………取得完了、再生します】
数秒後、アミリオンが電源の切れたかのように座り込むと画面に映像が映り出される。
赤牙組の残党に追い回されていたニコに猫又が接近し、ある依頼を出した。
依頼は、シルバーヘッドに奪われた家族の形見を取り戻したいという内容だった。
赤牙組と一悶着あったニコはあまり乗り気では無かったが報酬の話を聞いて、即引き受ける事を決断。
彼女曰く、形見があるかもしれないという赤牙組のアジトは三箇所ともホロウ災害に巻き込まれているらしい。
猫又は赤牙組の拠点に関する情報を持っている。ニコはそれが現在調べている金庫の謎を解明する手がかりになるかもしれないと踏んだ。
次の日、邪兎屋一行は猫又の案内の下、ホロウを探索することにした。
ホロウレイダーやエーテリアスとの戦闘をしながら探索していたが一箇所目、二箇所目を探しても、中々目的のものは見つからない。
ここで、ニコにとって予想外のことが起きた。
三箇所目の拠点は『デッドエンドホロウ』の中にあると言うのだ。
『デッドエンドホロウ』は、ヴィジョンが地下鉄改修プロジェクトの爆薬を運ぶルートの一部となっている。
問題はそのデッドエンドホロウにとある要警戒エーテリアスが生息していることだ。
そのエーテリアスの名は『デッドエンドブッチャー』。
ヴィジョンは最初、デッドエンドブッチャーを殲滅し、爆破エリアへの安全なルートを確保するつもりだった。
しかしデッドエンドブッチャーは予想以上に強く、仕方なくホロウ経由で爆薬を運び込むことになったのだ。
当然、そのまま探索に行きましょうとはならなかったが、まあデッドエンドブッチャーを避けつつ物探しをすればいいだろう、という結論となり、依頼は続行。
『なーにがデッドエンドホロウよ!クライアントがご所望なのよ、明日にでも乗り込んでやろうじゃないの!』
『ホント?やった〜!それじゃ、あたしの家族の形見は任せたにゃ〜』
「うぅ…猫を被ってる自分を見るのがこんなに恥ずかしいなんて…!」
映像に映る自分の姿を見た猫又は、恥ずかしいのか顔を赤らめている。
「へぇ、あの「にゃ」って、ワザとだったの?」
「えっ!?い、いやいや!ネコのシリオンは皆こんな感じだ…にゃあ〜」
「うん…状況は大体分かったよ。あんたは今日、ニコたちと赤牙組の拠点を探しに、デッドエンドホロウに向かったんだね。」
「そう!それからも色々あって…とにかくニコたちは今、爆破エリアにいる!」
【マスター。ただいまニュースチャンネルにて、今回の以来に関連しているとみなされる情報が放送されています。お見逃しなく】
Fairyの通告に悠介が急いでテレビをつける。
『速報です。生中継でお送りいたします__間もなく、ヴィジョンの最後の輸送列車が出発し、デッドエンドホロウへと入ります!』
『情報によると、この無人列車は自動運転モードで走行し、爆破解体に使う最後の爆薬を目的地まで輸送するとのことです』
『列車が到着次第、現場の監視拠点に控えてるパールマンさん自ら指示を出し、爆破解体が実施される予定です。』
『パールマンさんは、爆破解体の準備が整った事を確認してから技術スタッフと共に現場から撤収、市街地の本部に戻るようです…』
爆薬を載せた無人列車が発車されだという報道に猫又の顔が青く染まる。
「ま、まずい!最後の列車がもう発車しちゃう!視覚記録の続きを見ている時間はないぞ!何とかして爆発を阻止しないと!ニコが埋立地の灰になっちゃう!」
「どうやって?みんなの前で列車を止めちゃったりなんかしたら、その場で治安局に捕まるのがオチだよ」
「一条さんに言えば何とかしてくれそうだけど…」
「ニコたちがホロウレイダーをやってる事もバレる…」
三人がそう悩んでいるとFairyがある提案を伝えた。
【提案。いっそ、ホロウの中で列車を止めるのはいかがでしょう。】
「そっか!外から直接ホロウの中の様子は探知出来ないんだから、捕まる心配もないぞ!」
「うん…今からデッドエンドホロウに潜入して、列車が必ず通る道を阻むことができれば、確かに理論上は可能だ。」
「Fairy、列車の位置をリアルタイムで把握できる?」
【可能。目標車両までの安全なルートを計算しています。】
「オッケー、今回は緊急事態だし、デッドエンドホロウの中で列車を止める方法を探そ!」
「それじゃあ悠介さん、猫又、ホロウへ行く準備を」
「はい!」「んにゃ!」
こうして、ヴィジョンの列車を止めるべく4人は行動に移った。
「それじゃあ猫又ちゃん、コレ被って」
「ん?これってヘルメット?」
「うん、今からバイクに乗るからね」
猫又にヘルメットを渡すと裏口の駐車場へ出る、すると猫又がホロウチェイサーを見て目を開き驚いた。
「っ!?コレって治安局の最新の白バイじゃにゃいか!なんで悠介がこんなとんでもないモノを」
「色々あってね、とにかく今はホロウに行かないと。猫又ちゃんは俺の後ろに」
「う、うん!」
悠介がヘルメットを被りながらそう言った。猫又はヘルメットを被り、悠介の後ろに座る。
「しっかり俺に掴まってて!」
「わかった!」
猫又は落ちないよう、悠介のお腹に手を回した。エンジンをかけ走り出す。
発車してから20分後、デッドエンドホロウへの入口を見つけ
悠介はそのまま突入した。
デッドエンドホロウ内部
悠介と猫又、そしてイアスと同期したリンは無事ホロウ内部へ入ることが出来た。
「もしもし、3人共聞こえてる?」
「おお、凄い…!直接ホロウの中と通信できるプロキシなんて初めてだぞ。どうりでニコが新エリー都最強のプロキシって言うわけだ!……って悠介も一緒に来るのか?」
「もちろん、俺だって戦えるからね」
「でもあんた、武器もなんも持ってないじゃないか…」
「まぁ見ててよ、俺の変身」
私服姿で武器も持っていない悠介を止めようとする猫又。しかし、「俺の変身」と言いサムズアップする悠介に彼女は首を傾げた。
悠介が足を肩幅に開き両手を丹田の辺りに翳し、アークルが現れる。
右腕を勢いよく左斜め上に伸ばし、右手は小指と薬指を折って同時に左手を右腰辺りに添える。
「変身ッッ!!」
変身と叫び、右手を左腰にある左手の上に素早く移動させ、左のサイドバックルを軽くグッと押し込む動作をする。
身体を開き、両腕を緩やかに腰の高さで広げる。アークルの真ん中にある霊石アマダムが赤く輝き出す。
体に装甲が纏わり、悠介はクウガになる。変身した悠介の姿を目撃した猫又は驚きの声を上げた。
「にゃあ!?その姿…まさかあんたが新エリー都で話題になってるクウガだったのか!?」
「あれ?その様子だとニコから聞かされてなかった?」
「ニコからは『めっちゃ強いパエトーンの協力者』としか聞かされてないぞ…」
「そんな風に評価されてたとはね。けどコレで俺も戦えるって事が分かったでしょ?」
「うん、クウガが居れば鬼に金棒ってやつだぞ!」
「2人とも、準備は出来たみたいだね。それじゃあ今から列車を止めるための計画を始めるよ。行動する前に先ず要点をおさらいしよう。」
今回の目標は、爆薬を載せたヴィジョンの無人列車。
自動運転モードの列車はコンピューターが操ってる、その線路に障害物を置けば、強制的に進路をトンネルの方に変えられる。
そして列車がトンネルに入って減速し始めたら、猫又がその隙にイアス(リン)を列車の上へ投げる。
イアス(リン)が列車のメンテナンスハッチから運転室に行き、列車を止める。
「それと、デッドエンドブッチャーの具体的な位置は不明のままだ。くれぐれも慎重に行動するんだよ」
「「了解!」」
「それじゃあ行動開始だ。グッドラック!」
【制御室までのルート情報を同期中……こちらからお入りください】
「よし!早く列車の進路を変えに行くぞ!」
Fairyが安全なルートを演算し、その道を走って行く。
すると、大きな音と共に、地震のような大きな揺れが発生した。
「ホロウエリアの活性が変化している。皆、気をつけて」
「この異変で列車が遅れてくれるといいけど…」
ズゥゥウウン…
また揺れが起こった。さっきより激しい揺れである。
「待った。この震動…やけに近くないかい?」
【警告!極めて危険な個体を検出。直ちに回避してください。】
Fairyからの警告を聞き、皆は物陰へと隠れる。
すると、ハンマーを持った巨大なエーテリアスがコチラへやって来た!
「うわあ!ビリーが言ってた化け物だ!」
デッドエンドブッチャーの姿を陰から見て驚く猫又。そしてデッドエンドブッチャーはコチラに気づくことなく歩いていき、姿を消した。
「アレが要警戒エーテリアス…凄まじい迫力だ。」
「ねぇクウガ。最悪アイツと対峙する事になったらアレに勝てる?」
「どうだろう…ミレニアム特別バージョンをもって戦えば勝てる可能性はあると思うけど」
「ミレニアム特別バージョン?なんだソレ?」
「それよりも早く列車の制御室でしょ?急ごう!」
ミレニアム特別バージョンという言葉に猫又とイアス(リン)は首を傾げながらもクウガの後を追った。
制御室付近までやって来たクウガ一行。しかし、3人の目の前には廃棄された車両があり、行く手を塞がれていた。
「ん?この電車は一体…プロキシ、あたしたち道を間違えてない?」
「猫又、君たちの進路は間違ってないよ。見たところ、この車両は外的な力で破壊されている。おおかたエーテリアスの仕業だろう。」
「うにゃ!恐ろしい馬鹿力だ…」
車両にはナニカに掴まれた跡が残っていた。こんな事が出来るのはデッドエンドブッチャーだけだろう。
「次の目的は、車両の向こう側だ。何とかして行けそうかい?」
「あたしだけなら、ギリギリ下をくぐって行けるかもしれないけど…ボンプを連れてくのは無理。しかもこの辺りは地盤沈下のせいで深い穴だらけだから回り込む事も出来ないぞ。」
「じゃあ飛び越えれば良いんじゃないかな?青のクウガならあの位の高さ、2人担げばひとっ飛びだし…」
「おおっ!そんな事出来るのか!?」
「それじゃあ早速……超変し…」
そう言いクウガはドラゴンフォームへ超変身しようとポーズを構えようとしたその時
《あ、あの…えっと…》
車両の向こう側から少女の声が聞こえ、クウガは動きを止める。
「んにゃっ!?今、誰か喋った…?まさか電車が!?しかも可愛い女の子の声だったぞ!」
《ええっ?》
「電車さん!あたしたち急いでるの。ちょっとだけでいいからそこ退いてくれない?」
「お願い!電車さん!」
「……2人とも、多分車両の向こう側に声の主が居るんじゃないかな?」
2人の反応に苦笑いしながらそう答えるクウガ。すると向こう側の少女が話しかけてきた。
《あの…皆様は、ホロウ調査協会の調査員様ですか?》
「相手の名前を聞く前に、まずは自分から名乗るのが業界のルールだよ。」
《えっ?そ、そうなんですか?ごめんなさい、そのようなルールを…存じ上げておりませんでした。》
イアス(リン)にそう言われた少女は謝り、自分の名を名乗った。
《えっと…私はカリン、家事代行会社の従業員です。星座は双子座、血液型はRh-、好きなことはお掃除です。市民ナンバーは…》
「そ、そんなに細かく紹介してくれなくても…それで、カリンちゃんはどうしてこんなところに?」
《つ、ついさっき、危険なエーテリアスを避けて通ろうとしましたら、同行していた皆さんとはぐれてしまったんです!》
カリンと名乗った少女は、デッドエンドブッチャーを避けて通ろうとしたのだが他の従業員達とはぐれてしまったらしい。
《私はキャロットデータを所持していなくて…調査員のお三方なら、きっとホロウから脱出するルートをご存知ですよね?ど、どうか私も連れてっていただけませんか?》
「ホロウで迷った一般人…か。それにしても、家事代行の人なんかがどうして危険なホロウなんかに?…どうする?あの子を助けてあげる?」
「助けてたくても、まず向こう側へ行けたらの話だからな…それが無理なら今すぐ引き返して、他のルートをいくべきだ。さもないと、計画の時間に間に合わない。」
皆がどうするか悩んでいると…
《あ、あの!勝手に聞き耳を立てちゃってすみません!も、もし私が、お三方を車両のこちら側までお招きできれば…そのまま調査員様について行ってもよろしい、ということでしょうか?》
「にゃ?あたしたちがそっち側に行く方法があるの?」
《だ、大体そんな感じです!ちょっとだけお待ちください!すぐ済みますので!》
カリンの言う通りに2人は待つ事にする。
「しかしどうやって…」
「下から来るのか?」
猫又がそう言って車両の下を覗き込んだ瞬間…
ギュオオオオオオッッ!!!
「にょわあ!!ヤな音だ…!」
突然、何かを駆動させるような大きな音が響き渡った。その音に猫又は思わず耳を塞ぐ。暫くして音が静まり、猫又が警戒しながら扉へ近づいたその時
ガガガガガガガガガッッッ!!!
「いやあーーー!!?」
「危ないよ!!」
突如高速回転する刃……チェーンソーの丸ノコが電車のドアを突き破るのだった!!
至近距離で当たりそうだった猫又は飛び退きながら悲鳴をあげ、イアス(リン)が危ないと怒る。
ズバッ!ズバッ!!ズバババッ!!!
「ひいっ!?うあっ!?わったったった…ふにゃん!!」
「大丈夫?」
チェーンソーは縦、横、斜めとドアを切り裂いていく。ギリギリで回避した猫又は足のバランスを崩してクウガとイアス(リン)のいる方へ尻もちをつき、イアス(リン)が駆け寄る。
「皆、俺の後ろへ!」
恐ろしい光景にクウガは猫又とイアス(リン)を自分の後ろへ避難させ警戒する。
そして、チェーンソーでこじ開けられたドアが倒れて砂埃が舞う。その中から出てきたのは……
「んしょ!……うん、破れてない…ひゃあ!?お、お待たせいたしました!はじめまして!」
抹茶色の髪をツインテールにし、メイド服を着た少女だった。
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