カードゲームで回復するたびに、バディー精霊が耳元で囁いてくる   作:銀層

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紅白戦開始

セントラルカード高校の試合ログが届いた。

 

「ようやく届いたな。それぞれ5試合分、確認していこうか」

リュウが腕を組みながら言った。

俺たちはホログラムディスプレイを囲み、セントラルカード高校から送られてきたログを開いた。

 

 

【1試合目:不死デッキ】

属性:自然・闇

タイプ:エクストラウィン系

特徴:墓地からの召喚を繰り返し、《闇属性を20回墓地から召喚成功》で特殊勝利

バディースキル:達成条件を満たした瞬間、即勝利。

 

 

【2試合目:メカデッキ】

属性:電

タイプ:装備型ミッドレンジ~コントロール

特徴:メカ族のユニットに「マシンパーツ」を装着して強化。

各パーツは2コスト2/1のようなステータスを追加可能。

バディースキル:メカ族が5体破壊されるたびに、手札にマシンパーツをランダムに生成。

 

序盤はメカ族を破壊し、手札に溜まったメカを一気に合体させていくスタイル。

 

【3試合目:海賊デッキ】

属性:水

バディースキル:金貨(魔道具)1コスト生成

特徴:各海賊が金貨を使用して異なる効果を発揮。横展開が早く、金貨が揃うと一気に加速。

 

【4試合目:多属性呪文デッキ】

属性:水・自然・火

バディースキル:呪文を50回発動すると勝利

特徴:水と自然でマナ・手札伸ばし、火で盤面除去しつつ呪文を稼ぐ。

 

【5試合目:稲妻騎士団デッキ】

属性:電

バディースキル:『騎士団』攻撃時に+2される(攻撃が終了すると元の攻撃力に戻る)

特徴:速攻~ミッドレンジのビート型。展開して殴るデッキ。

 

試合ごとの総括(俺の見立て)

1試合目(不死):クロやや不利

手札破壊が刺さりにくく、勝敗は《幽霊将軍マギア》の早期召喚にかかっている。

 

2試合目(メカ):ミコト 相性五分

コントロールと展開のバランス次第。お互いに読み合いが重要。

 

3試合目(海賊):よくわからん

相手も自分も“押し付け合い”のタイプ。情報戦ではなく、構築とプレイングが全て。

 

4試合目(呪文勝利):ユカリやや有利

手札にモンスターを抱えてしまうため、モンスター除去されない。ただし、火を闇に変更には注意。

 

5試合目(騎士団):リュウやや不利

速攻に押し切られる可能性が高く、展開勝負では分が悪い。

 

「俺の場合、メタカードを積むよりも、初期の展開力が強いデッキと実戦して慣れたい」

俺の目には、真剣な光が宿っていた。

 

「とりあえず……ミコト、すまないが練習相手になってくれ」

 

「……私でいいの?」

ミコトは一瞬目を伏せるが、すぐに口元に笑みを浮かべてうなずいた。

「私も展開力には自信あるから。全力でやるよ」

 

「ありがとう。今のうちに、体が覚えるくらい対処パターン叩き込みたい」

 

「全国中継されるから、プロとの練習試合もしていきたいわね」

ミコトはとつぶやいた。

 

その目には、緊張と期待が入り混じった光がある。

今までと違って、今回はただの学園内イベントではない。全国の目が、自分たちに注がれる。

 

「クロ、紹介してよ」

冗談交じりのようで、けっこう本気のトーンだった。

彼女も、自分の実力が通用するかを知りたがっている。

 

クロは、少し眉をひそめながら、ため息まじりに頷いた。

 

「……探してみるよ。知り合いにプレイスタイルの人がいたかどうか……」

「プロ相手にそっちが頭下げるのは、俺だからね……」

「分かってる。分かってるわよ」

 

クロは少し肩をすくめて笑った。

 

「とりあえず、プロとの試合が叶うまでは、学園内で似たデッキと模擬戦しておいて」

クロはスマホを開き、色々と連絡しているみたいだった。

 

 

クロの忠告通り、学園内の上位層との対戦もこなしてきた。

相手は精鋭揃い。デッキの動きも無駄がなく、プレイも洗練されていた。

だが、勝率は7割。数字だけ見れば上々だった。

 

――だが、それでも足りない。

 

理由は明白だった。

試合ログの相手は、もっと強かった。

 

プレイングだけでなく、デッキ構築、カードの引き方、タイミングの精度。

どれをとっても「学園内上位層」とは違う、“本物の試合感”があった。

 

~~

 

カード屋のバイトにやってきた。

理由としてはプロとの戦うため、いわゆるコーチング量をもらうためだ

 

「店長、いつもいきなり来てごめん」

「2人が来てくれると、店に活気が出てきていいことだよ」

「有名校で忙しいのも分かってる。けど、ここに来てくれるのは正直うれしいんだよ」

 

にこやかな店長は、変わらない。

この店には、昔の自分が詰まっている。だから、話しやすい。

 

「店長、バニラカード100枚売りにきたけど、いいかな? できれば査定は今日中で頼みたい」

「……金が必要になってきたか」

 

こちらの目的は明確だった。

「プロと戦いたい。対抗戦に備えて、ちゃんとコーチングも受けたい。そのための資金が必要」

 

「なるほどな」

店長は頷き、真剣な顔つきになった。

 

「店長、ごめん。私の査定もお願い」

そう言ってミコトが、カードがぎっしり詰まったケースを差し出した。

 

「……多いな」

「4000枚。バニラばっか。査定大変でしょ? だから3万でいいよ」

 

店長はカードをざっと確認した後、無言で引き出しから封筒を出してきた。

 

「今日のバイト代込みでいいか?」

俺には1万円。ミコトには6万円。

 

「店長、相場より高いけど……いいの?」

ミコトと俺は申し訳なさそうになっている。

 

「お客さんが得するようなトレードしてくれてるからな」

「それに、この店に強いプレイヤーがいるっていう評判が、一番の宣伝になる」

「そういう意味でも、いつものお礼だよ」

 

受け取った現金は重みがあった。

 

 

「それにしても、お前たち、強くなったな」

「細かい実力までは正直分からないけどさ。あの学園で5位以内に入ってるって事実だけでも、十分すごいよ」

「プロと練習したいなんて言うようになるとは……ほんと、大きくなったなって、実感するよ」

店長の目は、まるで巣立ちを見送る親鳥のようだった。

少し寂しそうで、それでも誇らしげで。

俺たちを見ているその視線には、無数の想いがにじんでいた。

 

 

カード屋を出るとき、店内にいた常連客たちが声をかけてくれた。

 

「紅白戦、楽しみにしてるぞ!」

「テレビに映るんだろ?録画しとくからな!」

「負けんなよー!お前らならやれるって!」

 

俺とミコトは、少し照れくさそうに笑いながら、何度も頭を下げた。

 

──支えられている。

本当に、それを実感する。

 

仲間がいて、店長がいて、こうやって応援してくれる人たちがいる。

ただカードをしているだけじゃない。誰かの想いを背負って戦っているんだ。

 

「……頑張らなきゃな」

小さくこぼした俺の言葉に、隣でミコトが応えた。

 

「うん。……まだまだ強くなれるよ、私たち」

 

少し冷たい夕風が、制服の裾を揺らす。

 

でも、心は暖かかった。

ほんの少しでもいい。この想いに応えられるように。

 

もっと強くなりたい。成長したい。

ただの勝ち負けじゃなく、「支えてくれた人たちに誇れる自分」になるために。

 

~~~

 

人から必要とされている彼を見て、ルミナは少し寂しい。

 

私との時間が、少しずつ、誰かに奪われていくような気がする。

 

いや、違う。

奪われてるんじゃない。

ただ、彼が前に進んでるだけ。ちゃんと、努力して、結果を出して――だから、祝福されて当然。

 

わかってる。

それなのに、胸の奥が少しだけきゅっと締めつけられるのは、どうしてなんだろう。

 

……私が、弱いだけ?

 

一緒にいるときは、くだらない話をして笑って、バカみたいな言い合いもして。

その時間が、いつの間にか私の支えになってた。

ほんの少しだけでも、私のことを一番に見てくれているような気がしていた。

 

でも、今はもう違う。

みんなが彼を褒めて、プロとの対戦も始まって、

私の声が、少しずつ彼の世界から遠ざかってるようで。

 

「家にいるときだけでも、甘えたい」なんて、そんなこと言えるわけがない。

 

だって私は、ただの精霊。

カードの力がなければ、ここにすらいない存在で。

 

なのに、こんなにも人らしい心を持ってしまった。

こんなにも、あなたに触れていたいなんて、思ってしまった。

 

 

 

これが罪じゃないのなら、何だというの。

これは、報われない欲望。

ただ一緒にいたい、それだけなのに――それすらも、望んではいけない気がしてしまう。

 

……ねえ、ご主人様。

 

あなたが私を選んでくれたあの日から、

私はずっと、あなたに「甘えて」いたのかもしれない。

 

でも、それがもう、終わりなのだとしたら。

 

せめて。

最後まで、あなたのそばで、笑っていたい。

 

「今日も頑張って、笑顔になろう」

 

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