カードゲームで回復するたびに、バディー精霊が耳元で囁いてくる 作:銀層
あの紅白戦から、どれほどの時が流れただろうか。
俺たちは多くの試練をくぐり抜けてきた。
悪の組織との戦い、プロ試験、幾度にも及ぶダンジョン探索。
そのすべてが俺たちを、そして彼女をも変えた。
「ふふ、ご主人様。あの頃はさ、誰にも見えなくてさ。ほんと、消えちゃいたくなる夜とか、あったんだよ?」
俺の肩に乗ったルミナが、ふわりと笑いながら、遠い昔を懐かしむように言った。
「みんなが見つめてるのは、ご主人様だけで……私のことなんて、視界の外だったんだもん。悔しかったなあ~……悲しかったなあ~……」
その声音は明るかったが、どこか少しだけ揺れていた。
「バディって、ただ支えるだけの存在じゃないでしょ? 私だって、一緒に見てほしかったのに」
俺は何も言えなかった。
あの頃のルミナが抱えていた孤独と焦りに、気づけなかった自分を思い出してしまったから。
「でもさ、あのダンジョンを超えてから……ふふっ、いろんな人が声かけてくるんだよ~。『それが噂の妖精か?』とか、『写真撮っていい?』とか。もう~、人気者すぎて困っちゃう!」
そう言いながら、彼女はドヤ顔を浮かべて、俺の頭にぴょんと飛び乗った。
「ねぇ、ご主人様……ちゃんと見てくれてる?」
「見てるよ。お前の全部。……昔も、今も」
そう言うと、ルミナは一瞬だけ黙り、そっと目を伏せた。
「……なら、もう十分だよ」
彼女は、誰にも見えなかった日々を懐かしむように言った。
「コンプレックスも、焦りも、今は全部、私の羽になったから」
夕焼けの空の下、肩に感じるぬくもりが、いつになく頼もしく思えた。
「これからもずっと、そばにいるよ。私、バディだもんね!」
「ああ。お前がいてくれれば、どこだって戦えるさ」
心から、そう思えた。
あの孤独だった妖精は、今や、誰よりも輝いている。
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バディーと結婚するなんて、昔の自分ならきっと冗談だと笑っただろう。
でも、今は――本気で考えている。
ルミナと歩んできた日々。
誰にも見えなかった彼女と、誰よりも近くで寄り添ってきた。
「子どもは……残せないかもしれないけどね」
ルミナがぽつりとつぶやいた夜があった。
そのとき俺は、すぐにこう返したんだ。
「それでも、お前と生きたいって思ってる」
命をつなぐことはできないかもしれない。
けれど、心を重ねて、過ごす日々がある。
それだけで十分だと、本気で思えた。
あいつが誰の目にも映らなかった時期、俺だけが彼女に触れられた。
そのぬくもりを、彼女は誰にも教えられなかった。
「ご主人様、……あの頃、ちゃんと私のこと、見てくれてたから」
「今でも、変わらないよ」
「じゃあさ……結婚、しよっか」
その言葉は、まるで風のように、優しく吹き抜けた。
バディーという枠を超えて、パートナーとして、家族として。
命のカタチは違っていても、確かに“愛している”と、言える関係。
ふたりで決めたその未来は、
どんなカードの効果にも、どんなルールにも縛られない、
世界にひとつだけの“絆”の証だった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
やや強引な終わり方ですみません。
作品自体を完結させることが大切だと思っています。
少し、スランプの状態になっており筆が重くなってしまっています。
気分が乗りましたら、最終回の前の話をしっかりと補完していきたいです。