とある青年呪具屋の呪術記録《カースレコード》   作:サマーオイル悟

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ルーキー日間7位!(先週の水曜)
ありがとうございます!
ランキング入りなんて久しぶりだなぁ……。
金曜までランキング残ってたの驚きました。

漏瑚推しは集まれ。そのまま来年まで待って。


第18話:お兄ちゃんズ、戯れる

 

「────夏油傑だ。何度も言うが、呪霊を率い、俺達を受肉させた袈裟の男は、そう名乗っていた」

 

「だからァ、それはおかしいんだっての。そいつは去年、僕がきっちり殺してんのよ」

 

「貴方がその人物を殺し損なったか、もしくは彼が偽名を名乗っているとかそんな所じゃないかな?」

 

「わざわざ故人の名を騙るとか故人への冒涜だろ、ふざけやがって。──ってオイそこのちっこいの。今は真面目な話をしてンだよ。何してるんだ?」

 

「へへへ、絵を描いてみたぞ! そいつの絵だ! 俺はあまり何回も会ってないから、うろ覚えだし。服も袈裟? じゃなくてフード被ってたんだけど」

 

 血塗が見覚えのある「夏油傑」の似顔絵を描く。黒っぽい合羽のようなモノに身を包み、しかしその特徴的な目付きや前髪、額の縫い目は嫌でも彼らの記憶に残っているようだった。

 どこから持ち込んだのか、書類の裏にクレヨンで書き殴ったその「夏油傑」は、脹相と壊相が見るとまさにこれだと頷くような完成度であった。

 

「夏油傑の似顔絵か! 服装は──普段の服装とは違うが、確かにこんな顔だった! 目が細くて額に縫い目があって、前髪を1本の束にして垂らした、そうだ、まさにこんな髪型だった……!」

 

「フッ、やはり血塗は天才だ。俺なら描けない」

 

 兄2人が血塗を褒めるのを見て、五条悟は大きな溜め息を隠しもせずに漏らすが、似顔絵を見ると、途端に顔を青くさせた。

 血塗の描いた「夏油傑」の似顔絵は、まさに彼もよく知る「夏油傑」にそっくりだったからだ。

 確かに服装は違うものの、顔付きや大体の輪郭、そして天内や黒井からも指摘されるほどに特徴的なその前髪。

 五条が知る彼との相違点と言えば、縫い目くらいだろう。

 

「忌庫に保管されていたお前ら呪胎九相図が、()の知る『夏油傑』を知っているワケがない……!」

 

「だから言っているだろう。俺達3兄弟は夏油傑の目論見によって持ち出され、受肉させられたんだ。だから知っている。本人は『夏油傑』と名乗った。何度も言わせるな」

 

「ついでに言いますと、夏油傑は五条悟──貴方の封印を目論んでいます。万全に準備を整えた上で。そして、渋谷でね……」

 

「……封印? 僕を、封印する……?」

 

「ええ。獄門疆とかいう特級呪物を使うのだとか。春夏が言うには、『それを使えば五条悟と言えども封印は可能だろう』……との事でしたよ?」

 

 口元に指を当て、何やら考え込む。長い沈黙だ。血塗はその隙に真人、漏瑚や花御などの呪霊組をもその「夏油傑」の隣に描いている。

 そして、その長い沈黙の末に……。

 

「────脹相、壊相、血塗。知ってる事について全て話せ。いや、話してくれ。場合によっちゃあ、お前ら3兄弟の処遇については僕と春夏が全面的にバックアップするよう手配する。どうする?」

 

「フン……そうでなくては困る」

 

「ご安心を。私達兄弟は元よりそのつもりですよ。知る限り全ての事をお話しします」

 

「そうだぞ! 似顔絵とかは俺に任せてくれ!」

 

 ◆

 

 数日後────。

 

「と、いうことで! 春夏のクラスに脹相と壊相と血塗の3人が入る事になったよ〜!」

 

「よろしく頼む」

 

「よろしくお願いしますよ、春夏」

 

「よろしくなぁ!!」

 

「なんでぇ!?!?」

 

 尋問という名の聞き取り調査を終えて、しばらく経つ頃。普段、春夏が過ごしている4年特別教室に呪胎九相図3兄弟が五条悟と共に机と椅子を持ってやってくると──上記のセリフと共に、3人揃って春夏に笑いかける。

 

「だってさぁ、4年特別教室(ここ)、春夏ぼっちじゃん? 1人は寂しいよ〜?」

 

「寂しくねーーーよ!」

 

「あー。春夏にはお嫁さんが居るもんねぇ。いつもイチャついてたとこ悪いけど、今日からは少しだけ控えるよーに。ぼっちとはいえ、学校だからね?」

 

「まだ嫁じゃねーよッ!! ……あっ」

 

「おやおや春夏くぅん? 『まだ』って事は〜?」

 

「うっさいわ!!」

 

「──って冗談は、とりあえず置いといて。まぁ、簡単に言うとさ。敵さんから呪胎九相図の3兄弟を引き抜いたのは春夏で、そんな彼らを受け入れると決めたのは僕だ。だから僕と春夏で面倒を見よう。ただそれだけの話だよ」

 

「! ……それは、まぁ……そりゃ、そうなるわな」

 

「書類上は別の奴が担任だけど、そいつは保守派で頭も堅いから、実質、僕が担任。で、春夏がクラス委員長って事で、1つ、よろしく頼むよ〜」

 

「任務とかは?」

 

「それについては、調整中というか、検討中だよ。脹相はともかく、壊相や血塗を行かせるのは色々とまだ不安材料が残るから、この2人にはとりあえず呪術や呪術界の基礎を覚えてもらうよ。極ノ番まで会得している壊相にとっては、退屈な話が多くなるかもしれないけれど……」

 

「結構。呪術の基礎はともかく、呪術界についてはとんと知りませんから。初めて聞くつもりで真剣に学ばせて頂きます」

 

「俺も、頑張って覚えるぞぉ!」

 

「……五条悟。俺は……?」

 

「脹相は──何となくだけど、君は、口で言うより身体で覚えた方がいいっしょ。任務とかに出ながら少しずつ覚えていけばいいよ。あ、分かんない事があったら春夏先輩に聞いてね」

 

「俺も呪術界については大して知らないんだが!? 道具屋の中立具合、舐めんなよ!? 派閥とかすらろくに知らないんだからな!? そもそも知ろうとしてないんだから!」

 

「脹相よりは知ってるから、大丈夫大丈夫!」

 

「あのなぁ……!」

 

 自分は教えられる立場に無い、無茶振りだ──と訴えかける春夏だが、言葉に対してすらも無下限の術式を発動しているのか、春夏のそれらの言葉は、近付けるのに届かなかった。

 こうして、春夏のクラスに新たに九相図3兄弟が編入してきて実質的に4人のクラスに──そして、その内2人こと血塗と壊相が基礎の勉強をする為に教室を出れば、脹相と春夏の2人きりになる……。

 

「まさか同じクラスで机を並べる事になるたぁな。人生ってのは分かんないね」

 

「同感だ。こんな生活が始まるとは、露ほども予想していなかった。……これから何が始まるんだ?」

 

「授業とか特に無いからな。俺はいつもテキトーに好きに過ごしてるよ。呪具の手入れ、訓練、あとは余った任務があればそれをこなす。後輩と談笑し、補助監督と談笑し……まぁ、そんなもんだねぇ……」

 

「ふむ……」

 

「訓練でもするか? 呪具は俺のを貸してやるよ。高専のだと、保守派のヤツに文句言われそうだし。俺のなら問題はねえ。異論あるかい?」

 

「無い。よろしく頼む」

 

「……って、脹相は呪具とか……」

 

「使った事は無い」

 

「デスヨネー。術式持ちっぽいもんな。どんな術式持ってんの?」

 

「血液を操作する術式だ。名を、赤血操術という」

 

「あー、赤血操術ね。御三家の1つ、加茂家相伝の術式で有名な術式じゃぁん……赤血操術ゥッ!?」

 

「そうだが……?」

 

「あッ……!!」

 

 春夏は思い出した。呪胎九相図とは、およそ明治時代あたりに加茂憲倫が生み出したとされるモノ。呪霊の子を孕む女性を利用して実験し、孕ませて、己の血を混ぜた。結果として生まれたのが、彼ら、呪胎九相図。

 呪術界、いや呪物好きの間では割と有名な話だ。だからその加茂憲倫は、史上最悪の呪術師としても有名、何なら御三家の汚点としても知られている。

 そう、つまり脹相には加茂家の血が流れている。加茂家の相伝の術式である赤血操術が使えるのは、至極当然の話なのである。

 

「いいじゃん! じゃ、呪具は無し! 赤血操術でバトろうぜ!」

 

「俺は構わんが……しかし……」

 

「?」

 

「俺の血は、春夏には毒だ」

 

「他人の血が入り込むんだし、そりゃあ、医学とか生物学的に見りゃ毒になりうるだろーけど……」

 

「そうじゃない。俺には、呪霊の血が流れている。人間には毒になる。反転術式でさえ治癒は難しく、かなり高度な治療を要する……と聞いている」

 

「うへ~。回復は呪具頼りの俺には無理な話だな。んじゃ、毒だけ抜いてよ」

 

「毒液から毒を抜いたら何も残らんぞ。そうなれば俺は何を操ればいいんだ」

 

「だははははっ、そりゃそーだ!」

 

「フッ……」

 

 結局、徒手格闘の訓練という話でまとまった。

 正直、春夏は彼を侮っていた。呪物だった頃からイメージトレーニングしかしていなかったという話だったので「適度に手を抜いて相手しようかな」と思っていたのだ。別に脹相をバカにしているとか、していないだとか、そういう話では全くない。単に

「格闘技初心者」を相手にするつもりだった。

 ────それがどうだろう。体さばきといい拳の重さといい、幼少期から特級呪霊を相手に戦闘法を磨き上げた春夏と遜色ないどころか、なんなら彼を上回っているではないか。

 マジかコイツ──と、春夏は目を剥いて驚いた。

 

「マジかお前……普通に強ぇ……」

 

「イメージトレーニングは欠かさなかったからな」

 

「イメトレでそんなになるのかよ。刃〇シリーズのキャラじゃねーんだぞ……」

 

「〇牙シリーズ……?」

 

「格闘技漫画ね。全巻持ってるから貸してやるよ。新シリーズも始まったとこでさ。──ところで目のところの……その模様? 何それ?」

 

「『赫鱗躍動(せきりんやくどう)(さい)』を使用すると出る」

 

「せき……? 質問ばっかりでごめん、何それ?」

 

「体内の血液を操作する事で、身体能力を爆発的に向上させる、赤血操術の技だ」

 

「ただの徒手格闘の訓練に術式使ってんじゃねーよバカチンコ!!」

 

「お゙ぐぉっ……!?」

 

 春夏の拳がメリメリと脹相の腹に突き刺さる。

 

「今の拳は……重かった、ぞ……」

 

「ったりめーだ! 攻撃ではなく単なるツッコミ、脹相を傷付ける為のモノではない──という縛りで一時的に拳を強化したんだからなっ!」

 

「なん、だと……!? そんな裏技が……」

 

「信じるんじゃねーよド天然か!!」

 

「お゙ふっ」

 

 垂直の鋭いチョップが、脹相の頭に突き立った。どこまでも天然で、お人好しな脹相であった。

 こんな2人が揃って任務に出るのは──もう少し後の話である。




書類上、春夏達の本当の担任は宇佐美です。
が、五条先生が名前を勝手に使ってるだけなので、宇佐美本人はそれを知りません。酷いですね。

それでは皆様、良いお年をお過ごしください。
また来週。
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