とある青年呪具屋の呪術記録《カースレコード》   作:サマーオイル悟

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第3.5章:渋谷事変 〜前哨戦〜
第20話:死ぬほど準備できないなら、死ね。


 

 五条悟などが呪胎九相図の3兄弟から聞き出した情報は、ある程度精査・厳選された上で、生徒達に伝達された。

 曰く、ハロウィンの渋谷にて大規模な呪術テロを起こすつもりであるという事。

 曰く、特級呪物・獄門疆を用いて、五条悟を封印するつもりである事。

 曰く、主犯は特級術師・夏油傑の姿をしており、夏油傑の名を騙っている。

 曰く、呪霊だけではなく、複数の呪詛師とも手を組んでいるという事。

 

 などなど、開示できるだけの情報を、生徒の頭が混乱しない程度に全て開示された。

 その理由は、言わずもがな。自称・夏油傑による大規模呪術テロ──「渋谷事変」と仮称するが──その対策を練る為である。

 

 学年を問わず手の空いた生徒は招集され、中には日下部篤也などの教員、伊地知潔高など顔見知りの補助監督、春夏は直接的には知らないが、虎杖とはそれなりに親しいらしい七海建人という七三分けの堅物そうな呪術師、それを慕う猪野琢真などなど、多くの人間が集まった。

 

 初めは大人も子供も関係なく話し合いが行われたものの、大人達の会話は少々難しく、理解が難しい子供達の思考にブレーキが掛けられているようにも見えるという事で、途中から、大人組と子供組とで分かれることに。

 春夏と脹相も、当然、子供組である。

 

 ──ちなみに呪胎九相図3兄弟と生徒達の対面については、聞き取り調査の直後に実施されており、一応、それなりには受け入れてもらえている。

 なお、血塗と壊相の「おつかい」を邪魔した上、殺しかけたという事に由来してか、脹相の中では、虎杖と釘崎へのヘイトは0ではないらしいが……。

 それについては、春夏と伏黒が脹相と彼らの間に割って入ることで、ギリギリ、事なきを得ている。

 

「──改造人間?」

 

「うん。魂をイジる事で肉体を改造するんだって。ソイツ、真人っていうツギハギ顔の呪霊なんだけど本当にクソ野郎で……俺の友達を……」

 

「真人……銀髪でオッドアイの、アイツだよな?」

 

「春夏先輩、まさかアイツのこと知ってんの?」

 

「高専から呪物を盗んだのが真人だ。俺はアイツに逃げられた」

 

「……春夏先輩でもダメなのか」

 

「祓う気になれば祓えたよ。強がりじゃなくてな。けど、あの時の俺は、呪霊よりも、盗まれた呪物に気持ちが向いてた。だから囮にも引っ掛かったし、逃げられた。だから、もしもこれからそいつによる人的被害が出るとしたら…………俺のせいだな」

 

「春夏先輩のせいじゃねぇ、真人のせいなんだから先輩が気にする必要はねーよ」

 

「でも虎杖は、そんな感じの考え方してないか?」

 

「!? 俺、そんなこと考えちゃいねーよ!」

 

「虎杖ってさ、自分の中の宿儺が暴れたことによる被害も自分のせいだって考えてるんじゃないのか? お前がそうやって自分を追い詰めるクセがあるのを危惧してるヤツが居る。誰とは言わんが、そいつに相談されてね。いい機会だから言っちまおうか」

 

 伏黒がチラリと2人の方を見る。

 

「だから、虎杖が思う『宿儺のせいで傷付いた人が居る=俺のせいだ』っつー思考はな、真人のことを取り逃がした俺をも責める思考の仕方なんだよな。理屈としては同じなの……分かるっしょ?」

 

「違う……だって宿儺に身体を明け渡した俺のせいでそうなるなら……俺が制御を手放したからだ」

 

「俺なんかは、制御を手放すもクソも無いけどな。虎杖とは違って自分の意思で真人を祓わず、呪物を優先した。……ぶっちゃけ、虎杖よりも重い罪だ」

 

 特級呪霊としては圧倒的に上澄みの漏瑚を何度も見逃している事実については、特に何も言わない。普通に考えれば、明らかにアウトな案件だ。

 

「違う。──違う! 泥棒を殺すより盗まれた物を取り返そうとしただけだ! 何も間違ってない!」

 

「相手が特級呪霊、且つ、これから大勢の人を殺すかもしれないヤベェ奴でも……そう言える?」

 

「ッ……!」

 

「──俺が何を言いたいか、分かる?」

 

「…………」

 

「何かあっても自分を責めんなよ、ってことだよ。これまでの事も、これからの事もだな。お前には、俺という罪人仲間がいるんだ」

 

「ッ……」

 

「本当に呪術テロが起きたら、誰にも予測できないとんでもない事態に発展する可能性すらあるよな。いざとなれば、宿儺の力を借りなきゃいけない事もあるかもしれないし、ふとした拍子に虎杖が制御を手放す──なんて事が、起こり得るかもしれない。無いとは思うが、その可能性は0じゃないだろ?」

 

「ん……それは、避けたいけどな……」

 

「その結果、何かヤベェ事が起きたら、どうする? お前の事だ、自分を責めるだろうさ」

 

「……」

 

「俺の話を聞いて、それでも自分を責めるんなら、それでもいいよ。でもその時は同じくらいの熱量で俺のことも責めろ。全力で嫌って、全力で罵倒し、全力で殺意を抱け。周囲の人間が心配するくらいに自分を責めるお前には、それができるだろうから」

 

「できねーよ、そんな事……自分と他人は違うんだ、同じようになんか……できるワケがない……」

 

「そうでないなら、ただのダブスタになっちまう。同じようなことやってんのに、俺は悪いけど先輩は悪くない、ってのはさ。自分を庇う為のダブスタはネット上でよく見るが、他人を庇う為のダブスタはあんまり見た覚えは無いなぁ。虎杖ってばその辺のネット民よか真面目だからなぁ」

 

「そんな事は無いよ……俺なんて……」

 

「──とまぁ、そんな可能性が考えられるくらい、渋谷はハチャメチャになる可能性があるってこと。可能性の話をし始めたらキリが無いけどさ、可能な限り考えておいて、それへの対策も考えないとな」

 

「……やっぱスゲェよ、先輩」

 

「凄くねぇよ。こんなの漫画から教わった事だ」

 

「漫画? 何の漫画?」

 

「BLEACH。知ってる?」

 

「知ってるよ。俺、ジャンプっ子だし」

 

「だったら話は早い。千年血戦篇の中の浦原さんのセリフに、俺にとっての、とある教訓があるんだ。

『死なない為に死ぬほど準備する事なんて、みんなやってる事でしょう』──ってセリフ。知ってる? 原作を読んだなら知ってるだろ?」

 

「知ってる! ……けど、まさかそれとは……」

 

「かなり感銘を受けたよ、あのセリフには。だから今の俺が在ると言っても過言じゃあないだろうな」

 

「先輩の家が呪具屋だから自然とそうなったのかと思ったよ」

 

「ハハッ、それも確かにあるかもしれないけどな。俺の家は呪具屋──俺も、やり方によっては呪具や呪物を作る事ができる。死ぬほど『準備』して──俺も、渋谷でのテロに備えておかないとなぁ……」

 

「……俺には、何ができるかな……」

 

「さぁ。虎杖の得意そうな事とか、虎杖にできる事なんかを知ってるのは、俺より担任の五条先生とか伏黒とかだろ。彼らを頼りな。道具が欲しいなら、俺を頼りな。その時は、可能な限り助けてやるさ」

 

「……おう! そーする!」

 

(死なない為に死ぬほど準備する…………か……)

 

 ────その後。

 伊地知を連れ回し、準1級〜特級案件の任務を、可能な限り春夏、または春夏と脹相コンビでこなし本番に向けての「準備」、または訓練を始めた。

 特訓をするより、実戦で鍛えるのがいいかも──そう考えた春夏だった。

 なお伊地知は、春夏も五条に少し近いレベルで、人使いが荒いタイプかもしれない──と戦々恐々とするようになってしまったという……。




◆次回、遂に最強のアイツが降臨────!!

もし良ければ、下の方にある読了ボタンで拡散とか宣伝とか……欲を言えば高評価もお願いします!
次回、作者の推しトップ3に入る「アイツ」が遂に登場します。ほんとここまで長かったです(泣)





夏コミに当選したら、完結まで全て含めた何冊かの本にしちゃおっかな……序破急みたいな感じで。
序:起首雷同まで
破:渋谷事変
Q:死滅回游
シン:最終決戦、オマケ(過去作とそのオマケも)

ぶっちゃけ完結後のオマケだけで1冊作れるがね。
話数的にも、文字数的にも。

メインストーリー完結は今年の12月21日です。
オマケ話がしばらく続きますケド。
夏コミの4ヶ月も後ですし、しかも夏コミの頃には死滅回游編がクライマックス頃なのです。
先が気になるって方が少しくらい居るのでは?と。

いや、そういう方が居てほしいです。
もっと春夏と漏瑚と魔虚羅を見て!!
魔虚羅にスポットライト当てたオマケだけで7話もあるんだよ……ふざけんな、筆乗りすぎたよ(白目)

狗巻くんの呪言のアレコレもあるし。
オマケも楽しみにしててくれると嬉しいです。
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