とある青年呪具屋の呪術記録《カースレコード》   作:サマーオイル悟

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魔虚羅の法陣がアホみたいにガコンガコンとスゴく回転して「存在そのものに適応か!?」ってネタが公式(≡)から出されるとは思わないだろ(笑)

宿儺と真人くらいゲラゲラしたわ。
先に投稿できて良かったよ。
今はただ、芥見先生に感謝を。



第25話:不真面目男と裏切り者①

 

 ある日、春夏が外で薙刀術の訓練をしていると。茶色い顔に緑の目をしたキャラクターのバッチ──らしきものを装備した一機のドローンが、無機質な羽音と共に、春夏の傍にやってきた。

 

『渡辺春夏……だナ?』

 

「あん? 誰?」

 

『京都校のメカ丸だ。あの交流会に参加していタ。お前は4年だから、不参加だったと聞いていル』

 

「あー、噂のロボくん。話は聞いてる。何の用?」

 

『最期に……一言、礼だけ言いたくてナ』

 

「?」

 

『ありがとう。脹相達を──呪胎九相図の受肉体を人間側に引き入れてくれテ。お陰で奴らの目論見は人間側にも伝わってるだろウ』

 

「待て。脹相達の事は東京校の人間しか知らねえ。どーして京都校のお前が────お前、まさか!」

 

『察しが良くて助かル。夏油がお前を新たな悩みの種だと認識するだけはあるナ』

 

「テメーまさか、呪術師にも関わらず、呪術師側を裏切ってたのか?」

 

『……端的に言えば、そうなル。しかし、二重スパイみたいな立場だと思ってもらえたなら助かるガ』

 

「それを信じるに値する根拠は?」

 

『無イ。だが、せめてものケジメとして、夏油傑と真人は……俺が殺してみせル』

 

「……」

 

『お前のお陰ダ。お前が呪胎九相図を人間の仲間へ引き込んでくれたから、夏油達の作戦は、そちらに伝わっタ。潜入していた俺の目的の1つが、まさにその『人間側への伝達』だっタ。だから、脹相達のお陰で、間接的にではあるが、目的は達成されタ。キッカケを作ってくれたお前には、礼を言いたイ。五条悟にも話は伝わってるのだろウ?』

 

「礼っつーんなら、ドローン越しじゃなくて対面が基本だろう? それから、日本茶に合う菓子折りを持参するんだな。忘れるんじゃないぜ」

 

『……会いに来いと、そう言っているのカ?』

 

「たりめーだ。よく分からんが、とりあえずお前は呪霊側に潜入してんだろ? 二重スパイってこたぁ怪しまれない為にもある程度は術師側の情報を敵に流してるハズだ。違うか?」

 

『……そうダ。お前が漏瑚を祓わず逃がした事も含めあちらには伝えてあル』

 

「フンッ。教員が潜入など促すハズも無い。つまり高確率でお前の独断での潜入だ。そんな中で味方の情報を敵に流したら、仲のいい奴以外からは裏切り認定されかねん。──お前が、そんなアホな手段に出たのは黙っててやるよ。だから『黙っててくれた礼』をする為に、東京まで来な」

 

『お前が黙っていてもいずれは露見すると思うが、まぁ、分かっタ。生きていれば、必ずそうしよウ』

 

「弱気だな。死ぬ気か?」

 

『死ぬ気は毛頭無イ。──皆に、会いに行くんダ。死んでいられるか……!』

 

 スピーカー越しでも伝わるほど、メカ丸の声には力強い決意が込められていた。それを汲み取って、春夏はニヤリと口角を釣り上げた。

 会ったこともないし、写真越しだろうとも顔すら見たこともない。それでもメカ丸の言っている事はきっと本当なのだろう──と、春夏は直感した。

 

「へぇ。何か策がありそうだな。じゃ、ダメ押しにイイモンくれてやるよ。料金は、後払いでイイさ。このドローンに括り付けとけばいいか?」

 

『押し売りカ? すまないが、別に興味は無いぞ』

 

「あ、そう? 虎杖から色々と話聞いてさ、真人の術式への対策に、と思ったんだけど。要らないなら別にいいんだぜ。押し売りする気は無いさ。在庫(・・)を余計に減らさずに済むんだからな」

 

『……何だト?』

 

「ま、使った時にどうなるかは、賭けなんだけど。ノッてみるかい? 二重スパイのメカ丸くん?」

 

 ◆

 

 それから数時間後。高専内某所、五条悟の私室のような部屋にて。夕陽が差し込む窓を背に、彼は、正面から春夏を部屋に迎え入れた。

 

「お。来たね、春夏。思ったより遅かったね」

 

「『特訓が終わったら来てね』って、何の用だ?」

 

「今度のハロウィンの時、呪詛師・夏油傑とそれの率いる呪霊一派との戦いが起きるでしょ? 一応、一般人は避難させる予定になってるけど──多分、今回はムリだ。渋谷ハロウィンだからね。きっと、中止にしようものならとんでもない大騒ぎになる。何となく、予想つくでしょ?」

 

「まぁ、うん。ネット上じゃあ、バカの祭典とすら揶揄されるようなイベントだもんな。中止する方が危ないまであるんじゃ? 暴動とか起きるでしょ」

 

「さっすがに暴動起こすほどバカじゃないっしょ。でもまぁ、それに近い事を『上』も考えてるんだ。だから、十中八九、というかほぼ確実に一般人──非術師が現場に溢れ返ることになる」

 

「……だろうね」

 

「それに加え『脹相らが寝返った事で、敵が作戦を変えているかもしれないだろう』ってさ。つまり、わざわざ政府を通して渋谷ハロウィンのイベントを中止させるだけの根拠に欠けている……ってコト」

 

「言わんとする事は分かるけど。渋谷ハロウィンに合わせるからには、それ自体に意味があるんだろ。それに、夏油は百鬼夜行の宣戦布告もしたんだろ? 渋谷ハロウィンに合わせてテロ起こします──って内容が呪術師側に知られたくらいで、それを変えるようなヤツなのか?」

 

「──ま、変えないだろうね。僕もそう思ってる。ただ、そうなると、一般人が居る中での戦闘になる可能性もある。百鬼夜行の時は避難させられたが、今回は、アッチが自分からテロ予告を漏らしに来たワケじゃないから、作戦変えるかもっていう懸念も分かるんだよね。百鬼夜行の時とはワケが違う」

 

 問題は無い。春夏が京都に居た頃、帳なんて一切下ろさず、一般人の目を盗んで戦っていたのが殆どだった。帳を下ろす事があるとすれば、それこそ、準1級レベルと思われる呪霊を祓う時くらいだ。

 だから、春夏にとっては一般人に紛れて戦うのはある意味で「これまで通り」である。そこが虎杖や他の術師と違うところである。

 

「今回はあの禪院家にも応援を頼んである。多分、4年である春夏にも現場に出てもらう事になるし、現地での行動について、色々と指示が来るだろう。でも──そんなの、全部無視していい」

 

「……へ?」

 

「多分だけど、春夏は、僕と同じタイプだと思う。僕とは違って他者と連携も組めるけど、春夏の力(・・・・)を十全に発揮するには、誰かと組むより1人の方が、色々と都合がいいと思うんだ」

 

「だから、指示が来ても無視していい……と?」

 

「そ。茨木童子や女児化した魔虚羅についてもそうだけど、多分、春夏はワンマンの方が向いてるよ。だから、好きに行動していい。──いや、違うな。好きに行動しなさい。春夏の思うままにね」

 

「俺は別にそれでいいけど、変な話だな。呪術師はチームプレイ……じゃなかったのか?」

 

「あの後、思い直したんだ。呪霊の相手をする方と盗まれた呪物を追いかける方。十分にチームプレイだったなってね。春夏は、遊撃隊みたいなものさ。だからその事は気にしないで。その、悪かったよ。余計な事を言ったね」

 

「別に、それについて謝ってほしいワケじゃねー。寧ろ、アンタが俺に謝るべきは、俺を勝手に1級に推薦したことじゃないのか? そのせいで……ッ」

 

「……。全てが終わったら、好きにしなよ。殴るなり蹴るなり、好きにしていい」

 

「全てが終わったらって、いつになることやらな。つか何を以て『全てが終わった』判定するんだよ。呪霊が湧かなくなる、なんて有り得ないし、そんな未来が来るとしても遠すぎる未来だろうに」

 

「んもー、春夏ってば夢が無いなぁ。何事にもね、終わりってのが来る。何を以て終わりとするかは、人によって変わると思うけどね」

 

「深いようで浅いこと言ってるな」

 

「んなっ!? そういうこと言っちゃう!?」

 

「好きに行動しろ──用件はそれだけ?」

 

「まぁね〜。あ、これから予定あるんだっけ?」

 

「ま……戦う前には準備が必要だから。色々とさ」

 

「そか。わかった、気を付けるんだよ。──今度の戦いについて、確認しておきたいコトとかは無い? 僕も準備があるからしばらく会えなくなると思う。聞いておきたいことがあれば、早めに頼むよ」

 

「あー……その……あの、なんと言えばいいか……」

 

「何だい?」

 

「虎杖が言ってたヤツ。──改造人間、だっけか。それは……人間、なのか?」

 

「うん。硝子が解剖したところ、見た目はともかく中身はちゃんとしっかり人間らしいよ」

 

「治すことは……」

 

「できない。魂が歪められているから、肉体自体も歪んでいる。魂は精度とかも関係なく反転術式では治せない。だから、肉体もまた治せない。そういう不可逆的な術式なんだ。見掛けたら殺すしかない。いや……殺すのがその人の為だ」

 

「……分かった」

 

「あと呪詛師もね。生け捕りでも構いやしないけどぶっちゃけ、殺した方が後が楽だよ。少なくとも、向こうはこっちを殺しにくるからね」

 

「了解した。その方が楽なら、そうしよう」

 

「……春夏、やっぱイイ具合に術師に向いてるよ」

 

「向いてないよ。俺はどこまでもただの蒐集家で、ただの呪具屋で、技術屋だから」




次回。遂に、渋谷事変スタート!!
また、アンケートにご協力をお願いいたします。

そして「不真面目男と裏切り者②」はオマケ第16話ですので、番号についてはお気になさらず。

このまま外伝へGO!
渋谷事変前夜、春夏はナニを想う……。↓
https://syosetu.org/novel/385773/3.html

今、本作とは別作品としてモジュロ編を書いています。「本編が終わったら、オマケを挟んでモジュロ編に」と思っていたのですが、オマケの話数が思ったより増えちゃった(18話もある)ので、アンケートに投票頂けますと幸いです。

  • 本編→オマケ→モジュロ編の流れ
  • 本編→オマケとモジュロ編は並行で
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