とある青年呪具屋の呪術記録《カースレコード》 作:サマーオイル悟
アンケートは渋谷事変ラストまで置いておきます。
まだの方はぜひ、投票をお願いいたします。
後書きに、渋谷事変のちょっとしたダイジェストがありますので、参考までに。
「さてと。休憩もしたし、そろそろ行こうか」
『あ、ご主人っ! あの、あのねっ……!』
「どした?」
『これ、ご主人が気になってた「呪物」だよっ!』
マコラの小さな手に乗っているのは、赤い、目がサイコロのように付いた立方体の物体。五条悟をも封印した特級呪物、獄門疆であった。
「はぁ!? おま……? えっ、なんでコレ!?」
『最後、アイツから逃げてくる時にね、転がってたコレを持ってきたのっ!』
「ど……どーして……えぇ??」
『ご主人が、呪物を集めるの好きだから! だからマコラも、ご主人に合わせる為に「適応」したの! ご主人の式神になる時にね、ご主人にとって最適な行動をする為に……!』
「マコラ……マコラぁぁ〜〜〜ッッ!!」
自分でさえ忘れていた、五条悟解放後の獄門疆の回収。それを魔虚羅がこなしていたと知り、春夏はたまらず彼女を抱き締めてしまう。
式神とは主人のサポートをするものだが、彼女のコレは、あまりにも行き届きすぎている。痒い所に手が届くとはまさにこの事である。
『んぅ……ご、ご主人? どーしたの……??』
「いい子過ぎるよ、マコラ〜……。ご褒美になんでも買ってあげるからね……」
『わぁ……! じゃあね、マコラね、犬が欲しい!』
「…………犬?」
『白と黒の、2匹の犬っ!』
「まさかとは思うけど、十種影法術の玉犬のことを言ってるワケじゃないよな?」
『あ……』
「まさかなの!?」
『マコラのしんそーしんりに、根付いてるのかも? 分かんないけど!』
「おいおい……」
『んふふ〜……♪』
(そういやこの魔虚羅、十種影法術からは独立した存在になったけど。術式の付与とか、できるのか? 自律型呪具みたいなもんだしできるかも、だよな? もしできたら、
ぽむぽむ、と苦笑しながら魔虚羅の頭を撫でる。しかしその時、魔虚羅の頭の翼がビクンッと大きく震え、春夏の呪力センサーが警戒音を鳴らす。
「宿儺の指の気配……!!」
『しかも、何本も……10本近いよっ!』
その頃、渋谷の某所にて。虎杖悠仁の肉体に根を張る両面宿儺が、再びその力を得ようとしていた。
◆◆◆
『──フンッ、手間をかけさせおって。殺さぬよう加減をするのがどれ程、骨が折れることか。それが貴様に分かるか? 虎杖悠仁……!!』
脹相とエンカウントするハズだった虎杖悠仁は、特級呪霊・漏瑚とのエンカウントを果たし、しかし力及ばず瀕死にまで追い込まれていた。
『……おい、ガキ共』
「「!!」」
『そこに居るのは分かっておる。貴様ら宿儺の指を持っているな? コイツにそれを食わせるがいい。虎杖悠仁を宿儺にするのだろう?』
陰からその様子を見ていた夏油一派の呪詛師──菜々子と美々子は、漏瑚からそう声を掛けられて、恐る恐る、瀕死の虎杖悠仁に駆け寄り、そして指を飲ませた。
『なんだ、1本だけか。しかしこれで、虎杖悠仁の中には少なくとも16本の指がある事になるな』
虎杖悠仁は両面宿儺の「檻」である。ゆっくりと取り込ませ続ければ、両面宿儺が顕現する余裕などあろうハズもない。しかしこのように一気に何本も食わされてしまうと、檻として適応が追い付かず、強制的に宿儺が顕現してしまう。
羂索が五条悟を諦めて茨木童子を手に入れようと舵を切ったのは、獄門疆での封印が失敗した場合の代案が「宿儺の復活」だったからである。
五条悟を引きずって逃げる魔虚羅を本気で追わず茨木童子を手に入れようと作戦を変更したのも──全ては、宿儺という代案が用意されているからだ。
交流会の際、真人が忌庫から盗んだ指を、6本中3本は取り戻した春夏。しかしその後、羂索一派は別の所から春夏に取り返されてしまった分の3本を補う事で、正史と同様に、ここで虎杖悠仁に大量の指を食わせる事ができるようになり、それと同時に正史の虎杖悠仁よりも多く指を摂取する事になる。
尚、その「別の所」とは、呪詛師・裏梅である。
宿儺は正史において、虎杖の元を離れたあとで、配下の裏梅が用意していた「宿儺の指」を摂取するという流れになる。しかし、宿儺を顕現させるには一度に大量に摂取させなくてはならない為、羂索は裏梅にワガママを言って、彼女が保有する「宿儺の指」を全て、漏瑚に譲らせていたのだった。
その甲斐があってか、本来この場で食わせる事ができるのは、美々子と菜々子が食わせた1本と──羂索一派が持つ7本の合計8本で、虎杖悠仁の中に13本の指が眠ることになる予定であったが。裏梅が保有する3本を加える事で合計本数は16本となる。
正史よりこの時点での摂取本数が1本多いのは、渡辺道具店に祀られていた1本を、虎杖悠仁が既に摂取しているからなのは言うまでもない。
ちなみに、春夏が真人より取り戻した指3本は、後日、五条が虎杖に3日に分けて食べさせている。なのでこの時点で彼が摂取した指は合計で19本。
更に、虎杖悠仁の体内には生まれつき1本が封印されている為、実際にはこの時点で20本全ての指を取り込んでいた……。
「────1秒やる。
『ッッッッッ!!!!!』
「「!!!」」
大量の指を摂取させられた事により、虎杖悠仁は宿儺の制御権を手放す。それと同時に、両面宿儺、渋谷にて顕現を果たす────。
◆
そして、その頃──渋谷の某所にて、改造人間の処理と非術師の避難誘導を準1級術師である狗巻と共に任されていた
「何、だ?」
「兄さん……こ、これ、は……ッ!?」
「あに、じゃぁ……ッ!?」
突如──呪胎九相図3兄弟の脳内に溢れ出した、
まるで普通の家族のように、食卓を囲む3兄弟。未だ忌庫に眠る6人の弟達もそこに居る。しかし、そこに有り得ない参加者が1人。
虎杖悠仁である。
「ほら、兄ちゃんも! あーーーん!」
器用にフォークにスパゲティを巻くなり、脹相にそれを食わせ、彼もまたそれを受け入れて。口元を赤く汚す血塗の口を拭いてやり、そんな幼い弟達の様子を、壊相は慈しむような優しい視線で見守る。
まるで九相図3兄弟、否、9兄弟の一員のように虎杖悠仁は、当たり前に、そこに居た。
「……何だ……何なんだ、
「兄さん……これってまさか……まさか、なのか?」
「虎杖、ゆ、ゆーじ……おれの……おれたちの……」
「「「弟、なのか……!?」」」
正史において、脹相自らが虎杖悠仁を殺しかけて気付いた「真実」──しかし渡辺春夏の暗躍により人間側に籍を置く事になった脹相はこれまでずっと虎杖悠仁と不仲であった。
というのも、虎杖悠仁(と釘崎野薔薇)は壊相と血塗の「はじめてのおつかい」を妨害した上、少々ハプニングがあったとはいえ、殺しかけたからだ。
敵対していないからこそ彼らを殺さないよう我慢しているだけ。言ってしまえば、それだけだった。
だから脹相は「虎杖は殺したい程に憎い。しかし春夏の手前、我慢しているだけ」だった。
それが、どうだろう。
術式の副次効果により、身内の身に起きる大きな異変を感じ取れる特殊体質を持つ九相図3兄弟は。
3人同時に「虎杖悠仁が死にかけている」という事実を、目にせずとも、感じ取っていたのである。
「何なんだ……どうして、だ……どうして……!」
「──とりあえず落ち着こう、兄さん。考えるのは後にしよう」
「だなっ! まずは悠仁を助けに行かないとっ!」
「ふふっ。末弟の存在を知覚できたからなのかな、血塗にも
「ああ!」
血の涙を流しながら、血塗は陽気に笑う。
しかし、先程まで九相図3兄弟が急に頭を抱えて蹲り、汗を流して目を白黒させてしまったが故に、避難誘導を大体終わらせた狗巻が、彼らの元に急ぎ駆け寄る。
「ツナ!?」
「えぇと、相変わらず何を仰っているのかイマイチ理解できませんが、私達は大丈夫ですよ。少々──大事な事を思い出しただけなのです」
「こんぶ……すじこ、高菜?」
「……私達の末弟が、この渋谷のどこかで死にかけているようです。私達は兄として、そんな彼を急いで助けに行かねばなりません。狗巻さん──私達を、行かせてくれますね?」
九相図3兄弟に弟は居ない。正確には居るが──彼らは未だに高専の忌庫に保管されている。だから壊相が言う「死にかけの弟」とやらが誰の事なのか狗巻にはさっぱり理解できなかった。
何なら嘘だとすら思えた。狗巻は監視役としての役割も背負っている。そんな監視役から逃れる為の嘘だろうと、そうだと思った。
しかし血塗、壊相の真剣味と決意に満ちた瞳と、脹相の困惑はありつつも助ける意思だけは確実だと思わせる強い瞳が、狗巻に彼ら3人を信じさせた。
「──しゃけ!!」
「私達の行動に目を瞑り、自由を下さったこと──心から感謝致します」
「ありがとうなぁ、先輩!」
「……感謝する。説明は、後ほど、必ず……」
「しゃけしゃけ!」
こうして、弟を助けようと飛び出した呪胎九相図3兄弟は、夜の渋谷に解き放たれた────。
本作の渋谷事変のダイジェスト
①五条悟、獄門疆に囚われる
②メカ丸の保険が発動
(原作通り五条悟封印後(ただし閉門前)に発動)
③虎杖悠仁&冥冥に五条悟封印の話が伝わる
④五条悟の封印が完了するも獄門疆が処理落ちし、ミニメカ丸がそれを発見して真人がソレを破壊し、呪霊達は各地に散っていき、羂索はその場に待機
⑤虎杖「五条先生が封印されたんだけどー!!」
⑥虎杖の声を聞き、粟坂二良&オガミ婆、始動
(オガミ婆は羂索からの「依頼」を1つ済ませて、それから「孫」にパパ黒を降霊した)
⑦粟坂二良vs伏黒&虎杖、降霊パパ黒vsイノタク
⑧春夏、B5Fに突入して五条悟の封印を解くなりそのまま羂索戦に突入
(茨木童子と羂索のやり取りもあって、暫く続く)
⑨伏黒「五条悟が渋谷に来てるぞ!」
粟坂「ウソが下手だなぁ、封印されたってお前らが言ったんじゃねぇか……えっ、マジで?????」
⑩長年の呪詛師としての勘が働いたのか、それとも野生の勘か、五条が一応健在だと悟った粟坂二良はその場で降参し、帳のもとを伏黒達に渡すなり逃亡
⑪パパ黒にボコられ瀕死状態のイノタクの事もあり伏黒と虎杖は別行動を開始
⑫伏黒、陀艮の領域に入り七海達のサポートに回り最終的にパパ黒が陀艮を祓い、伏黒と共に外に出て伏黒親子対決が開始→パパ黒が自殺→重面、参戦!
⑬陀艮がやられた気配を感じ取り、漏瑚が参戦
⑭七海、直毘人、真希を焼いて、虎杖の捜索を再開
⑮真人を探しながらあちこち走り回っていた虎杖と漏瑚がエンカウントし虎杖は敗北、瀕死になる
⑯脹相、壊相、血塗に存在しない記憶が流れた事で虎杖悠仁が弟であると知り、虎杖を助けに行く為、狗巻の元を離れる
⑰美々子&菜々子、漏瑚が虎杖に指を食わせる
⑱羂索から逃れつつ獄門疆を奪った春夏、休憩中に呪霊操術を会得しつつ、⑰の宿儺の指を感じ取る
⑲宿儺、顕現←イマココ!
ちなみに、本作でもミミナナは「1本」のありかを教える代わりに羂索の殺害を宿儺に依頼しますが、当然、2人揃って処されています。
そして2人が教える予定の「1本」は渡辺道具店で祀られていたモノなので、もう食べてま〜すという救いの無いオチ。
今、本作とは別作品としてモジュロ編を書いています。「本編が終わったら、オマケを挟んでモジュロ編に」と思っていたのですが、オマケの話数が思ったより増えちゃった(18話もある)ので、アンケートに投票頂けますと幸いです。
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本編→オマケ→モジュロ編の流れ
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本編→オマケとモジュロ編は並行で