とある青年呪具屋の呪術記録《カースレコード》   作:サマーオイル悟

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第33話:渋谷事変⑧ 洗脳

 

「おいおいおいおい、マジで魔虚羅じゃん……!」

 

「春夏先輩ッ!!」

 

「春夏!」

 

「来た……!」

 

「春夏〜!!」

 

 火礫蟲による高速移動の果て、魔虚羅の頭上へと着地を決めた春夏は、ほんの一時的にだが魔虚羅の行動を抑えるのに成功。そして虎杖達に事情を少しだけでも聞き出そうとするが、魔虚羅は春夏のその強烈な押さえ付けから今にも飛び出し、再び彼らに襲い掛かろうとしていた。

 

「伏黒はどこだ!?」

 

「俺達が逃げてきた方に居る! 宿儺が反転術式を使ってたから、怪我してるけど生きてる! でも、まだ気絶してると思う……!」

 

「生きてるなら良かった! けどもう魔虚羅レイドバトル始まるから死なねーように逃げろ! 儀式に巻き込まれたヤツは特に、絶対に、死なすなよッ! 伏黒と、伏黒が倒そうとしてたのがそれ(・・)だ!」

 

「そういえば、宿儺が黄色のサイドテールみたいな髪型のヤツを助けてたな……アイツか!」

 

 虎杖がそんな事を呟く。それを聞いた春夏は黄のサイドテールの呪詛師こと重面春太を探すが、目に映る範囲には居ない。気配も隠しているようだが、呪具を持つ重面は春夏の探知からは逃れられない。

 

「反対方向に逃げてるな。虎杖! 伏黒が命懸けで倒そうとしてたって事は、何かしら訳有りだろう! そいつ探して捕えられるか!?」

 

「モーマンタイ! 行ってく……」

 

「待て、悠仁。──春夏。その任務は、俺と弟達にやらせてほしい。必ず捕らえてみせる」

 

「は!? それくらい俺だってできるって!」

 

「そうじゃない。悠仁、お前は真人を祓いたがっていただろう。友人の仇だと、釘崎野薔薇と伏黒恵に話していたのを聞いた」

 

「……!!」

 

「真人は渋谷に来ているハズだ。本来の計画では、そうする予定だったんだ。だから悠仁は真人の所に行け。それがいいだろう。あんな雑魚に構う暇は、お前には無いハズだ」

 

「黄色サイドテールの術師──恐らく重面春太だ。目の下に、紫色の逆三角形の紋様が3つずつある、妙に肌の露出が多い呪詛師だ。寝返る前に見た事があるから覚えているよ」

 

「肌の露出がどうこうって、兄者が言えた事か?」

 

「何か言ったかい、血塗?」

 

「な、なんでもないよ!」

 

 などなど、やんややんやと話が広がりそうで遂に魔虚羅も堪らず動き出し、頭に乗る春夏を掴もうと両手を伸ばすが。

 ひょいと飛び退いた春夏は、ガッツリ組み合った魔虚羅の手を蹴り飛ばす──アスファルトが割れる勢いで地面に沈む。

 

「──じゃ、そういう事で作戦開始な! 魔虚羅は俺に任せてそっちはそっちで集中してくれ!」

 

「ゴメン、先輩! また後で!」

 

「謝るな、気にするな。後輩なら先輩を頼りな」

 

 呪術高専歴はお前の方が長いけどネ──と、心の中で付け加えながら、春夏は立ち上がった魔虚羅をあの時のように真っ直ぐに見上げる。

 

「マコラ。……あー、えっと、俺のマコラ」

 

『はいっ!』

 

「勝てる? アイツに」

 

『無理! 将棋で言う千日手だよ!』

 

「だろうな。でもお前は俺の術式で強化されてる。だからアッチの魔虚羅より明確に『上』のハズだ。魔虚羅が100の強さを持ってたとして、お前は、100に加えて俺の術式の分を上乗せしてるんだ。それでも勝てないのか?」

 

 魔虚羅が春夏を襲い始める。しかし、まだ何にも適応していないからなのか、拳を繰り出す、右手の剣で切り付けるなど基礎的な攻撃しかしてこない。

 魔虚羅と言葉を重ねつつ、春夏はヒョイヒョイと攻撃を躱し続ける。

 

『無理! 適応に適応を重ねるから、どんな攻撃もお互いに適応し合う、泥試合になると思うの……』

 

 頭の翼が垂れ下がり声のトーンも落ちる。魔虚羅同士だから分かるのだろう、適応に適応を重ねるとどうなるのか、どんな結果に至る──いや、結果に到達する事ができるのかどうか。

 彼女曰く「否」らしい。決して結果に到達できぬゴールド・エクスペリエンス・レクイエム状態。

 

「……俺の領域や極ノ番は効くんだよな?」

 

『効くよ! だから魔虚羅はマコラになったの!』

 

「なら、いざとなったらそうするか。けど、流石にそれはちょっとな……伏黒からすれば複雑だよな」

 

『あ……マコラ量産計画!?』

 

「そんなんしないってば。──漏瑚、お前の攻撃で消し飛ばせない?」

 

『一瞬でいい、隙を作れるか?』

 

「む、無茶言いやがる、どうやってアイツを足止めすんだよ……!」

 

『違う。お前が退避できるだけの隙を、だ』

 

「!! そういう事なら……!」

 

 羂索より強制的に奪った反重力の術式を付与した呪具を取り出す。魔虚羅は春夏に拳を繰り出すが、今度は春夏はそれを呪具で受け止めて……。

 

「飛んでけ!!」

 

 ロケットに括り付けられたかのように、魔虚羅は宙に浮かび、物理演算がバグってしまったゲームの如く、微妙な猫背を維持したまま吹っ飛んでいく。

 

『いいぞ春夏。このまま狙い撃ちしてくれるわ!』

 

「一撃必殺級の攻撃で頼む!」

 

『言われずともだ』

 

 漏瑚は魔虚羅の真下に火山を生成する。次いで、周囲のビルや瓦礫の山にまでも、モコモコモコンと幾つもの火山を生やし。

 火礫蟲による春夏の退避を経て、打ち上げられた魔虚羅が落下してくると共に、漏瑚の攻撃が炸裂。

 

『消えるがいい!!』

 

 ジュアァッと放たれた何本もの熱線は、魔虚羅を焼くどころか瞬時に消し飛ばし──しかしやはり、魔虚羅はそれを再生させる。

 鬱陶しい音の発生源を踏み付けるように、漏瑚の火山を踏み、マグマに足を突っ込む形になろうとも火山の破壊を開始した。

 

ガコンッ

 

『ぬぅ……』

 

「『適応』しやがった……」

 

 深夜の野球場にて魔虚羅と戦ったあの時、春夏も気付いたことがあった。魔虚羅の「適応」は、何か適応したいモノがあれば、段階を経て適応すると。

 マグマに適応し始めた時、最初は、全く効かなくなったワケではなかった。が、何度も適応する毎に効きが悪くなっていくような手応えだった。

 

「時間経過か、攻撃を何度も受ける事で適応がより高精度になっていくのか。どっちだろ?」

 

『どちらもありうる──それだけだろう』

 

『どっちもだよ! 何度も受ければ適応が加速してもっと適応しやすくなるし! 一度でも受ければ、継続して適応するよ!』

 

『……なんてヤツだ、魔虚羅というヤツは……!』

 

「多分、今の攻撃、俺なら死んでたよな」

 

『例の仮面で防いだやもしれんがな』

 

「……」

 

 否、今の漏瑚は春夏の契約呪霊となった事により強化されている。契約呪霊という事は、それは即ち春夏の所有物であり、彼の術式の対象である。

 更に茨木童子の呪力を与えられていることから、今の漏瑚は既に宿儺と戦う前より強化されている。

 恐らく宿儺の指で換算すれば16本分程度だろう。この辺りになると春夏が愛用する「耐呪ノ仮面」も防ぎきれなくなる。春夏の領域内なら性能も底上げされるものの、もしも領域外であれば、破壊されてしまってもおかしくはない。

 漏瑚が放った夥しい数のその熱線を見て、春夏の全身には、暑いハズなのに冷や汗が流れていた。

 

『極ノ番「隕」──!!』

 

 魔虚羅が破壊したビルも、火山の残骸も、溶岩の名残も全てを巻き込み、包み込むと、巨大な隕石を形作る。

 春夏も大概、極ノ番でさっさと決着をつけようとしてしまいがちだが、彼もまた、春夏と似たようなタイプらしい。

 魔虚羅はその「隕」を、右手の剣で受け止める。

 

ガコンッ

 

『正のエネルギーだと……!』

 

「『隕』を中和してる……?」

 

 凄まじい熱と呪力を帯びた「隕」が、どんどん、風船が萎むように、目に見えて威力が落ちていく。特級呪霊として最高峰と言える程に高まったハズの漏瑚の攻撃が、中和されていく。

 

『──今だ、春夏ァ! ヤツを処理してしまえ!』

 

「なっ」

 

『ヤツはまだこの儂の呪力を中和しきれておらん! この隙を突け!』

 

「け、けど、もう『渡辺春夏に適応した魔虚羅』は要らないぞ!?」

 

『貴様ッそんな事を言っている場合か! 死ぬぞ! それとも消し飛ばせるだけの大火力があるか!?』

 

「〜〜〜〜ッ、分かったよ、もうっ!」

 

 春夏の術式を利用すれば、魔虚羅の「適応」に、バグを起こせる。春夏の領域が破壊されないことが大前提ではあるが……。

 漏瑚の怒鳴り声に負けた春夏は隕を中和している魔虚羅の背後に回り込むや否や呪具ではないただの薙刀を突き刺して。

 

「極ノ番『求』ッ!! ……ついでに領域展開!!」

 

 ──月下霧消之理。領域内の呪力を帯びた全てのものは、春夏の所有物となる。この瞬間、魔虚羅を構成する式神としての機能の中で「伏黒恵の十種影法術の式神」と「渡辺春夏の所有物」という2つの要素が共存し、矛盾を起こす。

 魔虚羅には上記の矛盾(バグ)が起こり、そして魔虚羅が対処中の漏瑚の放った「隕」にもまた春夏の所有物という判定が下され、極めて強化される。

 落下の勢いは強まり、それに呼応するようにして魔虚羅も正のエネルギーを強めに流して、早く中和しようと足掻いている。

 

ガコンッ

 

ガコンッ

 

ガコンッ

 

「ははッ! 始まった……!」

 

 春夏は普段、領域に必中効果を付与していない。正確には、領域展開を完遂した時に、マニュアルで必中効果を後付けする。

 そうする事で押し合いに強くさせる意味もある。しかし何より大きいのは、霊装呪法の真髄を無闇に相手にぶつけてしまわないようにする為だ。

 

 霊装呪法での領域展開の必中効果には、幾つかの段階がある。

 第一に、呪力出力の強制制限や補助。これを課すことで味方にはバフになり、敵にはデバフになる。普段の春夏が使用している領域効果は主にコレだ。

 第二に、行動制限。普段はあまり使用しないので春夏と茨木童子、そして羂索──伏黒恵など春夏の領域に巻き込まれた者しか知らない事だが、実は、行動においても制限を設ける事ができる。

 そして第三に……。

 

ガコンッ

 

ガコンッ

 

ガコンッ

 

 金色の繭に包まれるように縮んだ魔虚羅はやがて隕を中和し終えると、法陣だけが頭上でクルクルとバグを起こしたように回転しまくっている。

 

ゴシュ……ジン……

 

「8時間くらいカラオケで歌ったのか? 枯れ方が凄いな……なんか懐かしさすらある」

 

『❍︎♋︎⬧︎⧫︎♏︎❒︎⑤︎⑤︎』

 

「ウィングディングスやめろ、コシヒカリかよ」

 

ごしゅじんさま……

 

「日本語でおk」

 

ご主人……

 

「ボーカ〇イド、いやボイス〇イドか? ダメだ、ロリボで頼む」

 

ご主人……

 

「マコラと声被ってる。声優さんの使い回しかな? 視聴者達から予算を心配されちまうぞ? 今どきは双子キャラさえ声優さんを変えるのが割と普通だ。声は変えてくれよな。直毘人さんにもアニメネタを交えて何か言われそうだし……」

 

『マコラって、こんな子供みたいな声なの……?』

 

「そうだけど、自分の声は自分で分からないっての式神でもそうなの? 面白いこと知っちゃったな、後で伏黒にも教えてやろ」

 

ガガガガガガガガガガガガガガガガガガ……

 

「あの回転、まるでNow Loading……だよなぁ」

 

ガコンッ

 

「……終わったか」

 

『──あのさぁ! ご主人だからって凄いワガママ言うのやめてくんない!? ご主人のワガママに、マコの適応が追い付かないじゃん!』

 

「!?」

 

 パキンと光の繭が割れ、欠片が飛び散る。中から幼女と化した魔虚羅が飛び出してくると。1人目の魔虚羅、否「マコラ」とは違う白いツインテールを揺らし、同じく目隠れ──ただし片目隠れで紅眼を覗かせた幼女が春夏の前に立った。

 

『とゆーワケでっ! 八握剣異戒神将魔虚羅改め、マコ! ご主人の麾下に入ったげるわ! せいぜい上手く使いなさいよね!』

 

「わ……わァ……」

 

『泣いちゃった!』

 

『え? 何よ、その反応? マコ、普通にショックなんですけどー?』

 

『オイ茨木童子。何故、春夏は急に泣き始めた?』

 

『春夏、私のようなお姉さん系、または男の娘──女の子みたいな男子、みたいなのが好きなのよね。弟の影響だと思うのだけど』

 

『は?』

 

『しかも、好みも「お淑やか系」で一貫してるの。つまり、今回の魔虚羅みたいな「メスガキ系」は、春夏にとって、好みではないのよねェ。他にも理由あるけど、どちらにせよ、苦手と言えるんじゃないかしら。可哀想な春夏……』

 

『すまぬ茨木童子、先程、なんと言った? 女の子みたいな男の子が何とか言っておったか? しかも弟がどうとか??』

 

『そうよ?』

 

(情報が完結しない。何も理解できん。脳が理解を拒んでいる──故に、何も反応できない……!!)

 

『ざーこざーこ♡ マコを倒せないからって儀式を強制終了させる事しかできないクソザコご主人っ♡ 逃げの一手しか打てない♡ なぁなぁの八方美人♡ バグを誘発して自己洗脳させてるだけのドクズッ♡ 人外魔境ハーレム決戦っ♡ 恥を知れっ♡♡』

 

「うああああああああああああああああ!!!!」

 

『ご、ご主人をいじめないでぇっ!』

 

『いじめてないよ、お姉ちゃん。ご主人とマコは、遊んでるだけだから♡』

 

『そうなの? それならいっか!』

 

「よくねえええええええええ!!!」

 

 こうして、大したことない紆余曲折を経て伏黒がヤケクソで召喚した魔虚羅に纏わる騒動は、沈静化することに成功。被害者は1名。春夏の精神(メンタル)だけ。

 SAN値ゼロ、人外のみ、勝者あり────。

 

 ◆

 

「早く追いかけよう兄者! アイツだ!」

 

「はぁっ、はぁっ、流石は血塗だ、俺より速い!」

 

「夏油傑のあの似顔絵といい、ちょくちょく、活躍してくれるよ、血塗は……!」

 

 春夏が魔虚羅の相手をしている中、三兄弟は未だ逃走を続ける重面春太を追跡していた。まず3人はバラけて捜索し、発見した者は呪力で狼煙を上げて合図を送る。

 血塗はスタミナと速力にものを言わせてアチコチ走り回り、重面を発見。手のついた剣のような妙な呪具を手に、彼は逃走しているようだった。

 血塗は呪力で合図を送り兄2人はすぐにその場に集合し、揃っての追尾に至る。

 

「あ、春夏達の方が静かになったぞ!」

 

「どうするんだい、兄さん?」

 

「壊相、血塗は術式を使うな。ここは、生け捕りに向く俺がやる────『赤縛』ッ!!」

 

 射程圏内に入ると同時に脹相は赤血操術を使用。赤いリボンのようになった血を操ると、重面の足を絡め取り転ばせ、そして縛り上げてしまった。

 

「何だ、何なんだよ、お前らはぁっ!!」

 

「伏黒は儀式を利用し、お前を殺そうとしていた。お前──何をした?」

 

「何って、ただスーツの人間を狩っただけだろ!? あのクソ術師は俺と会う前からボロボロだったし! ていうかそんなのどーでもいいだろ、お前らなんて裏切ったクセにッ! ここで会ったことは黙ってておいてやるから、コレ解けよ、クソッ!!」

 

「スーツ? ……補助監督の事か?」

 

「そうだと思う。あの時、明治神宮に私達を迎えに来た伊地知さんや新田さんは、それが制服なのか、常にスーツを着ているね」

 

「狩った……って、殺したってことか!?」

 

「何だと!? あの伊地知を、か……!?」

 

「私達の境遇を慮り、車内でも気安く話しかけて、笑顔を絶やさなかった……あの新田さんを……?」

 

「いや知るかよそんなの!」

 

 重面は「弱い者いじめ」が好きだ。しかし、今の彼には、目の前に立つ3人が「弱い者」になど到底見えなかった。小柄な血塗でさえ身動きが取れない今の重面には逆らえない相手にしか見えなかった。

 ────が、しかし。

 

「へへ……」

 

「おっと。後ろから切りつけるとは、無粋ですね」

 

「は……?」

 

 壊相は後ろに手を回すと、手が付いて自立行動が可能な彼の呪具を軽々と掴み取ってしまう。奇襲に気付けなかった脹相と血塗は、驚愕に目を見開く。

 

(気配は隠してたハズだ、音も立てないよう慎重に来させてたハズ! まるで後ろに目がある(・・・・・・・)みたいに(・・・・)掴み取りやがって、クソッ!!)

 

「あなた、今、こう思いましたね? 『後ろに目があるみたいに攻撃を止めた』……と」

 

「!!」

 

「ご明察。普通の服を着ていないお陰で、風通しが良いばかりか背後からの奇襲にも気付けるのです。まさに一石二鳥。──という事で、私の背中を見たこの呪具は、非常に心苦しいのですが……」

 

「あっ。まさか、兄者……」

 

「フッ。構わないだろう。今回ばかりは、春夏でも親指を立ててくれるさ」

 

「?」

 

「バチ、(ごわ)、しッッ!!!」

 

 バキッ、と派手な音を立てて、壊相の背中の口は重面の呪具の刃を噛み砕いてしまった。

 

「あ……あぁぁ〜っ!? 何やってんのお前!?」

 

「私の背中を見た者は殺す、と決めていますので。受肉後に言いませんでしたか?」

 

「だったらどーしてそんな背中を見せびらかす服を着てんだよ、考える頭ァ死んでんのかよ!?」

 

「ムレるんだよ……!!」

 

「それで背中を見たら殺すって理不尽──」

 

黙れ。何の罪もない補助監督を殺したお前がッ、壊相の思想に唾を吐きかけるな!!」

 

「げはァッ……」

 

 脹相の爪先が重面の腹にメリメリと突き刺さり、嫌な音を立てる。何本かは骨が逝っただろう、だが重面のそんな怪我を気にしてやるほど、この3人は優しくない。

 

「ところでコレ、手だけで動くんだけど」

 

「刃を失っても呪具として生きているという事か? そんな呪具もあるのか……」

 

「刃は付け替え式なんじゃないかー?」

 

「その発想は無かったよ。やっぱり血塗は発想力が豊かだね」

 

「標本にして飾ってみよう。三兄弟揃った初任務を綺麗に飾らせてくれたお礼として、春夏に贈ろう。春夏なら喜ぶんじゃないか? 呪具屋だし」

 

「いいね、そうしようか」

 

「ナイスアイディアだなっ!」

 

 こうして3人は拘束した重面を無事、高専陣営に引き渡す事に成功。今後の重面は死ぬまで「彼だけ楽しくない」日々を味わう事になるのだろう。

 ────なお、重面を高専陣営に引き渡した時、伊地知と新田の無事を知った九相図三兄弟はホッと胸を撫で下ろし──それと同時に、やはり何人もの補助監督が重面の手で殺されていた事を知らされ、夜蛾の前にも関わらず、重面を殺してしまいそうになってしまい、彼に拳骨されたのは別の話である。

 

 ◆

 

『──見付けたぞ、真人。当初の予定よりも各地に改造人間を放っているようだナ? お陰で探すのに骨が折れタ。まぁ、機械の身に骨など無いがナ』

 

『……は?』

 

『10月19日ぶり、と言うべきかナ?』

 

『……マジ?』

 

『大マジ。元気ピンピンダ』

 

 時刻は不明。場所──渋谷某所にて。

 真人は、確かに自分の手で殺したハズのメカ丸とロボ越しに再会していた……。




マコ
CV:梅澤めぐ(衣斐レナ)
イメージソング:Gardens(川田まみ)

今、本作とは別作品としてモジュロ編を書いています。「本編が終わったら、オマケを挟んでモジュロ編に」と思っていたのですが、オマケの話数が思ったより増えちゃった(18話もある)ので、アンケートに投票頂けますと幸いです。

  • 本編→オマケ→モジュロ編の流れ
  • 本編→オマケとモジュロ編は並行で
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