とある青年呪具屋の呪術記録《カースレコード》   作:サマーオイル悟

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第40話:京都、それは因縁の地。

 

 呪術高専東京校地下、薨星宮(こうせいぐう)にて。

 

「僕達はその羂索の目的と、五条先生に掛けられた呪いの解き方を聞きに来ました。知っていることを話してもらえませんか?」

 

 乙骨憂太、禪院真希、伏黒恵、虎杖悠仁、脹相、後に合流を果たした特級術師・九十九由基は天元と接触する為に、遥か地下の薨星宮に降りて、目玉が4つに増えて、親指のような形状に進化したらしい天元と接触していた。

 そして、羂索からの護衛を求める天元との交渉の結果、脹相と九十九由基が残る事になり。

 死滅回游という儀式に関する説明を、天元は皆に話して聞かせ。泳者が全員死ぬか、全員参加を拒否して死ぬか、この2択を選ぶまで終わらないことを告げると、頭の回る乙骨と伏黒はある事を察する。

 

「僕らも死滅回游に参加して、津美紀さんやゲームに消極的な人が回游を抜けるルールを追加するしかないね」

 

 伏黒の姉、伏黒津美紀も、ゲームに巻き込まれてしまっている。伏黒の見込みでは、呪物を摂取した受肉タイプではなく、術式に目覚めた覚醒タイプ。受肉は基本的に不可逆。一度受肉すれば元の肉体の自我は上書きされ、消える。

 もしかしたら彼は、姉は覚醒タイプだと思いたいだけなのかもしれない。

 ──なんにせよ。

 

「五条先生の解呪も、並行しましょう。あの人さえ居れば1人で全て方が付く」

 

「天元様、教えて」

 

『あらゆる術式を強制解除する「天逆鉾」、またはあらゆる術式効果を乱し相殺する「黒縄」──このどちらかが必要だ。しかし「天逆鉾」は、12年前に五条悟が海外に封印したか破壊してしまった』

 

「何してんの先生!!」

 

『「黒縄」も去年、五条悟が全て消してしまった』

 

「何してんだあの人!!」

 

「『黒縄』の残りは、僕とミゲルさんがアフリカで探してたんだけど、これに関しては無駄足だった。もう無いって言われちゃったよ」

 

「海外って、それで行ってたんですね……」

 

 五条悟は現在、科学的な毒の他に、呪術的な毒にまで侵されている。科学的な毒だけであれば、家入硝子が除去できたハズだが、後者が前者を強制的に繋ぎ止めており、五条悟の肉体は弱まるばかり。

 

 2日、最悪でも3日に一度は、弱った臓器を全て入れ替えるような大規模な手術をする必要がある。

 しかし元の予定は「殺害」ではなく「封印」だ。その事からも、最悪でも仮死状態に陥るくらいで、命を落とさせはしないだろう──というのが天元の見込みである。

 

 もし五条悟を殺してしまえば、また六眼が現れる可能性が出てくる。因果の鎖が破壊されたとしても可能性が消えるワケじゃない。羂索は慎重だった。

 そして、その「呪術的な毒」を強制的に消し去る為に、天逆鉾か黒縄が必要だったのだが。

 

「手はあるんだろ?」

 

『あぁ。天逆鉾は、元は、三叉の呪具だったんだ。しかしその中の1つが欠け、それ以降「天逆鉾」は十手のような形になった呪具を指す言葉になった。五条悟が封印または破壊したのは、欠けた後の物。その欠片は、今でもこの国に健在だよ』

 

「つまり、その呪具の一欠片を探し出せ! って? そんな、宝探しじゃあるまいしさ」

 

『その「天逆鉾の欠片」は、渡辺道具店の現当主、渡辺春夏が所有している』

 

「なっ」

 

「は?」

 

「ええっ!?」

 

『欠片となってしまった天逆鉾は、呪具ではなく、呪物としてカテゴリーを変え、だが謎の呪いを持つ金属片として渡辺道具店に保管されていた。効力が元より格段に落ちてしまったし、それ故に、効力を確認できなかったから、店主としては、商品として店に並べられなかったんだろうね。そしてそれを、渡辺春夏が「所有」した事により、本来の天逆鉾の効力を取り戻している』

 

「そういやさ、乙骨先輩が俺のこと殺しに来た時、近くに春夏先輩も居るよって言ってなかったっけ? 五条先生の方は、割とすぐどうにかなりそーだな」

 

「うああ……!!」

 

 天元、虎杖の話を聞いた乙骨は、頭を抱えながらその場に蹲る。彼のその謎の行動に、その場に居た者達は──特に伏黒と真希は揃って目を見開くが。

 

「どうしたんだよ憂太?」

 

「先輩?」

 

「春夏先輩、多分もう、東京には居ない……!!」

 

「は?」

 

「どうしてそう思うんです?」

 

「ほら──僕この前、春夏先輩と話す機会があったでしょ? その時、羂索から聞いた話を、少しだけ教えてもらったんだ。──春夏先輩と、羅喜さんに縁がある人も、羂索の催す殺し合いに──つまり、死滅回游に参加しているらしくてね……」

 

「……じゃあ、つまり、アレか? 春夏は……」

 

「春夏先輩はもう、死滅回游に参加してる……?」

 

「多分、そうだと思う。例によって、結界で電波が断たれてるだろうから、もう先輩に連絡はつかないだろうし……しかも、どこの結界だか……」

 

『渡辺春夏は、京都の結界(コロニー)に居るよ』

 

「え!?」

 

『渡辺道具店は京都一の大店。そして茨木童子は、かつて京の都で猛威を奮った鬼呪霊軍団の副頭領。どちらも京都に縁がある。──そして、死滅回游の結界は京都にも1つ展開されている。渡辺春夏は、そこに居る。回游の結界は私を拒絶しているから、これ以上の情報は無い』

 

 回游の結界は、全部で10ヶ所に展開されている。青森・岩手・宮城・東京‪✕‬2・愛知・京都・大阪・広島・鹿児島、その内の京都結界に春夏は居る。

 

『しかし、渡辺春夏を頼るのはやめた方がいい』

 

「どうしてですか?」

 

「家が呪霊に壊されたところを、五条先生が助けてくれたって先輩から聞いてるから、大丈夫じゃね? 恩人みたいなもんでしょ?」

 

「「……」」

 

『伏黒恵、禪院真希。君達は知っているようだね』

 

「え? 伏黒、何か知ってんの?」

 

「……ああ」

 

『プライバシー保護の観点から、ザックリ言おう。彼は五条悟に恩がある──が、五条悟はそれ以前に妹を喪うきっかけを作った張本人でもある。だから恩を塗り潰して余りある程の恨みがある。五条悟を解呪する為──と言った所で、彼がその呪物を──もしくは手を貸してくれるとは考えにくいだろう』

 

「ん? でも春夏先輩って、五条先生を助けるのに家入さんのオペ手伝ってるじゃん。恨みがあるのに助けるのって、矛盾してね?」

 

『彼に「五条悟へのオペ」を手伝っているつもりは微塵も無い。家入硝子の頼みを(・・・・・・・・)聞いている(・・・・・)。ただ、それだけだろう。彼は根っからの道具屋だ、頼みは断れないらしい。しかしそれも五条悟の為となれば断るだろうね』

 

「『天逆鉾の欠片』を五条先生に使わなかったのはわざとだって言いたいのかよ?」

 

『そこまでは言えない。いや、分からない。私とて人の心までは分からないからね。単に忘れていたのかもしれないし、呪術的なモノとはいえ、毒物まで解除できるとは思わなかったのかもしれない。毎度領域まで展開してくれているようだから、五条悟を助けたい気持ち自体は0ではないんだろうけどね。そうでないと、適当に理由を付けて領域を展開などしないだろう』

 

「──要するに、あの春夏少年は五条悟解呪に協力してくれるか分からないってことなんだな。もっと確実な方法とかは無いのか?」

 

『東京第2結界に「天使」を名乗る1000年前の術師が居る。彼女の術式は──あらゆる術式を消滅させる。五条悟の肉体を蝕む毒物も消滅させる事は容易だろう』

 

 ◆

 

 その数時間前──11月9日0時。

 東京にて乙骨憂太と別れ、禪院直哉を瀕死にまで追い込み放置して、呪霊集めを再開させた春夏は。羂索の言葉通りの「縁者」を求めて、地元・京都に展開された結界(コロニー)のそばに来ていた……。

 

「……殺し合い……か」

 

『春夏に殺し合いができるかしら?』

 

「呪霊の参加者とか居ねぇかなぁ。居たら、呪霊を集中的に狩りてえな。呪霊操術で取り込みたいし」

 

『望み薄じゃない? 漏瑚はどう思う?』

 

『──夏油、いや羂索は、人間同士の殺し合いなどどうとも思わない。参加者はやはり、人間だろう。術式に目覚めた人間、そして呪物を摂取した人間、つまり受肉体──おおよそ、そんなところだろうと思うがな……』

 

『そうよねぇ。私もそう思うわ』

 

「……受肉体も人間だからなぁ……人殺しはできればしたくないけどな」

 

『じゃあ、こういうのはどうかしら? 春夏からは人間を襲わない。襲われた場合は返り討ちにする。呪霊は祓うなり取り込むなり好きにすればいいわ』

 

「うーん。……それくらいがいい、かなぁ……」

 

『フンッ、つまらん。だが渡辺春夏、お前は、多少話しただけの呪霊を祓わず見逃すような(ぬる)い男だ。それくらいが貴様には合っているのかもしれんぞ』

 

「……ん……そーすっかな」

 

 一歩、また一歩と結界に近付く。するとある程度接近したところで、謎の式神のような、マスコットキャラクターのようなものがポンと3体現れた。

 

『『『よぉ、俺はコガネ! この結界の中では死滅回游って殺し合いのゲームが開催中だ! 一度足を踏み入れたらオマエも泳者(プレイヤー)!! それでもオマエは結界に入るのかい!?』』』

 

「ああ」

 

『問題ないわ』

 

『邪魔者は燃やし尽くせばいいのだろう?』

 

『渡辺春夏が死滅回游へ参加しました。総則を参照しますか?』

 

『茨木童子が死滅回游へ参加しました。総則を参照しますか?』

 

『漏瑚が死滅回游へ参加しました。総則を参照しますか?』

 

「……一応、見とくか。殺し合えばそれでいいよってワケじゃないだろうし」

 

『死滅回游の総則の説明をいたします』

 

 春夏はコガネの説明を一言一句聞き逃さずに全てメモに残す。暗記できる内容だろうとメモに残す、店員として染み付いた、春夏特有の行動であった。

 

『面倒なことをするな。さっさと入ればよかろう。総則など戦いながら覚えればよい。人生ゲームだの麻雀だの、儂らはプレイしながら覚えたのだぞ?? それができぬ貴様ではあるまい』

 

『諦めなさい漏瑚。春夏は、基本的に説明書を読むタイプなのよ』

 

『強化する代わりに術式の使い方を指南しろと儂にせがんだのも、そういう事か……』

 

『そうそう。説明書代わりよ』

 

「よし、メモOKっと。さっさとポイント集めて、適当にルール追加しようね」

 

『……春夏。悪党のような顔になっておるぞ』

 

「へっ。そいつは心外。けど、悪党みたいな気分を無理矢理にでも作ってないと、変に病む気がする。ましてや、知らない土地じゃねーしな……」

 

 不意討ちに備えて、念の為にと茨木童子と漏瑚を顕現させたまま、京都結界(コロニー)に足を踏み入れた。

 それが悪手だったと知るのは、数秒後であった。




死滅回游への参加前日の、春夏のチン道中。
1万字超えの大ボリュームでお届け……。
https://syosetu.org/novel/385773/6.html

今更ですが。
春夏のイメージソング:Blizzard(三浦大知)
モジュロ編まで踏まえた上でこの曲を選びました。
多分、この曲が一番、春夏に近いと思う。
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