とある青年呪具屋の呪術記録《カースレコード》 作:サマーオイル悟
「さっきから何なんだッ、京都結界はッ!! 何を考えているのよ、渡辺と酒呑童子は!!」
「俺しか身を捧げる先が無いからって、そう無駄にキレんなよ、ゲロ女」
「るせぇチンカス! 誰がお前なんかに! 黙ってお前の粗末な点を寄越せ!!」
「まぁまぁ2人共、落ち着いてください……」
「お前は落ち着いてる暇とか無いんじゃないのか? 誰かに身を捧げなくちゃいけないんだろ?」
「この『身を捧げる』も、曖昧でよく分かりませんけどね。内容が不明瞭である以上は、とりあえず、これを回避する為に点を取る必要がありますし……。僕らで点を平等にしません?」
「俺にメリットが無さすぎる、論外だな」
「その圧倒的自己中な物言い、流石は藤原よね」
「僕、菅原らしいんですけど……」
「嘘つけお前は藤原だ。嘘でなくとも藤原と菅原のハイブリッドだ、死んでしまえ」
「えぇ〜……」
「乙骨がドルゥヴを殺した今──この仙台結界では俺がトップのようだから、特に焦る必要は無いな。俺にゲロ女を抱く趣味は無いが、仮にそうしないと死ぬってんなら抱いてやらん事もない。何やかんやお前らとの戦いは、死ぬ程の退屈はしないからな。どうする、烏鷺? 乙骨?」
「だから! 誰がお前なんかに身を捧げるか!!」
「? 抱くって、どういう事です??」
「おいおい、カマトトぶるなよ。お前も高校生なら知ってるだろ?」
「僕……最近まで友達とか居なかったし、そういう、隠語みたいなのもよく分からなくて……。ハグって意味ですよね??」
「……マジか」
「? マジですけど……違うんですか?」
「フンッ、藤原に友など不要よね。周りのヤツ全て手下としか思っていない分際でよく言う。なんなら手下どころか人とすら思ってないんじゃないの?」
「だからどうしてそうなるんですかっ!」
「烏鷺──お前はいちいち乙骨に突っかかるなよ。見ていて痛々しい。いつの人間だ、お前? 藤原に並々ならぬ恨みがありそうだし、藤原氏の全盛──平安あたりの人間だろ? それが現代のガキンチョ1人に突っかかるだなんてよ、みっともないったらありゃしねぇぜ」
「お前から殺す、石流ッ!!!」
『私ハ、鉄ノ味ガ好キダ!!』
「「聞いてねえよ死んどけゴキブリ野郎!!!」」
◆
『渡辺春夏……渡辺……そうか、渡辺綱の血筋か』
『どうなさいますか? 生け捕りにしますか?』
『渡辺綱ならともかく、血が薄まった子孫ではな。わざわざ我が出るまでもあるまい。点を奪い適当に殺しておけ、金』
『御意』
◆
「春夏さん、呪霊倒してきました! 5点です!」
「僕は10点です!」
『田中太郎之助から、5点が譲渡されました。鈴木権左衛門から、10点が譲渡されました』
「ありがとう田中さん、鈴木さん」
「あたしぃ、戦えないし? フツーに、春夏くんにあたしを捧げてもイイんだケド……♡」
「勘弁してください、嫁が居るので……」
「んもぅ、それじゃ〜あたしはどうやってこの身を捧げればいいのよ?」
「適当に呪霊を祓ってきてください、呪具なら俺が貸しますから……」
「そもそも、じゅれー? ってのも見えないしぃ? 見えないモノをどう倒すってのよ〜」
(興味本位で参加した、マジモンの一般人か。逆によく今日まで生き残ってたな……)
酒呑童子が例の総則を追加して数時間後。春夏の率いる酒呑童子討伐隊は、酒呑童子の率いる大江山鬼呪霊一派に次ぐ大所帯になっていた。
やはり大抵の泳者は、高得点者に己を捧げるなら呪霊の酒呑童子などではなく人間である春夏を選ぶらしく、どうやって特定したのか次々と春夏の元に人間が、呪霊が寄ってきていた。
呪霊は問答無用で呪霊操術で取り込み、人間には呪具を貸し与えて泳者を狩りに行かせ、点を春夏に譲渡させるという形式で「捧げ」てもらっていた。
更には結界内に放ち泳者を狩らせていたマコラのお陰もあって、春夏の得点は遂に400点を迎え、酒呑童子にそこそこ大きな差を付け始めていた。
そして遂に、春夏、茨木童子、漏瑚は酒呑童子が根城としている大江山にある屋敷に到着した。
門前には、春夏の倍程度の身長の、1本角の鬼が仁王立ちで、彼らを待ち構えていた。溢れる呪力の気配から、これこそが金童子であると春夏は推測。
業龍剡月刀を構え、春夏は茨木童子、漏瑚よりも一歩、前に出る。
恐らくは1級、下手すれば特級クラス。きっと、呪霊操術を行使したところで、領域に入れない限り問答無用では取り込めないだろう。
しかしここで領域を使うのは愚策。己の手で敵を屠るしかない──春夏がそう思った矢先に、門番の金童子が口を開く。
『貴様が渡辺春夏だな?』
「見て分かるのか?」
『見れば分かる、お前の強さ。呪術師だな? その呪力、練り上げられている。誰より酒呑様に近い。死にたくなくば大人しく点を差し出し、我が主──酒呑様に服従すると誓え』
「お前こそ死にたくなければ俺に服従しろ」
『我は既に酒呑様に忠誠を誓っている。お前になど服従するものか』
「交渉決裂って事でOK?」
『点さえ差し出せば、命は助けてやると言っているというのに、この愚か者めが。良かろう、酒呑様の命令通り、お前を殺してやる。英雄・渡辺綱の血も時と共に薄まっているだろう。お前に我は倒せん』
「勝手に言ってろ」
業龍剡月刀の切っ先を金童子に向ける。すると、金童子は名乗りを上げる武士のように声を上げる。
『我が名は! 大江山四天王が1人、金童子ッ!! そして我が術式は! 要塞の如き鉄壁の我が肉体、我が拳を! 更なる高みへと至らしめるものッ!! 刮目せよ、体感せよ、震撼せよ、渡辺綱の血よ!! 術式解放──「金剛拳」ッ!!』
ただでさえ筋肉ダルマのような金童子の巨体は、術式を使用した事により、宝石の如き輝きをも放つように見える。金剛拳──恐らく守備に全振りした術式なのだろう。
「……とりあえず、これはどーだ?」
酒呑童子を無駄に刺激しないように、背後の酒呑童子の屋敷を破壊しないよう気を付けながら、軽く熱線を放ってみる。普通の呪霊はこれで死ぬが──術式を解放した金童子はこれを受けても大した事は無いと言わんばかりに堂々としている。
『グハハハハハハッ!! 効くか、そんなもの!! 今度はこちらの番だッ!!』
「ッ!?」
魔虚羅の頭を、ほんの一瞬とはいえ、溶かし崩す熱線。それを受けても、金童子はピンピンしているどころか、平然とカウンターを仕掛けてきていた。
優に3mは超えるであろう巨体を金剛石のように硬化させた金童子は、地を蹴り飛び上がると春夏を一気に踏み付けにせんと迫る。
「狙い撃ちだ──『
クラスメイトである脹相の「苅祓」に想を得た、熱線を輪状にして放つ、業龍剡月刀ならではの技。漏瑚本人も使った事が無いこの技は、果たしてこの硬すぎる敵に通じるのか────。
「なッ」
『効かぬと言っておろうがッッ!!!』
バチッとリングを手で弾いた金童子は、未だ空を舞う彼を見つめる春夏を、グシャッと音を立てて、踏み付けにしてしまう。
春夏も呪力で強化して受けている、全身骨折などしようもないが、その急速な加圧に耐えかね、彼の下半身は悲鳴を上げている。
『何やってんのよご主人っ!』
「やめろ、マコ……手ェ出すな……!!」
『なっ!?』
「コイツは俺が殺すか取り込む、そろそろ俺だって活躍しねえと……羅喜や漏瑚に合わせる顔が無い」
『だからってッ、このままじゃ死ぬだけでしょ!? 何考えてんのバカご主人!』
『フハハハハハハハッ!! お前はお前の設定した総則により身を滅ぼす事になる! 往生せよッ!! 憎き渡辺の血よッ!!』
「……」
嗚呼──これまで何だかんだやってこれたのは、漏瑚の強い術式に頼っていたからだったのか。
それが通じなければこんなにもアッサリと敗北を喫する──その程度だったのか。こんなザマを晒すようでは、直哉の言う「ハリボテの特級」の言葉が現実そのものではないか。
────ふざけるなよ、と春夏は血を吐きながら彼を踏み付けにする金童子を放り投げた。
『ほぅ……我が肉体を投げるか』
「ゲホッ。エ゙ホッ、ガハッ……!」
と、その時。何ヶ所かは折れていたであろう彼の足が、ダメージを受けていた幾つもの内臓が急速に癒されていく。茨木童子、否。漏瑚、否──これは反転術式、
「……マコか」
影の中に戻ったと思いきや、影の中に居ながら、春夏に反転術式を施していたらしい。まさか、顕現させなくても、影の中からも術の行使が可能とは、春夏には思いもよらなかった。
『反転術式……
「……どうやろ。マコちゃんに聞いてみよか?」
『!?』
「なーんて」
春夏は加速し、投げ飛ばした金童子に迫る。
禪院直哉との戦闘で会得した「投射呪法」を今、ここで使用したのである。
(何だ!? 妙な加速をした……これも術式か?)
春夏の扱う投射呪法はフリーズしたくないが為にあまり大きな、派手な動きを作ることはできない。まだ不慣れだし、土壇場で使うには大きなリスクが付きまとう。
だから春夏は、投射呪法を使う時には、あんまり大きな動きを作るのではなく──
『アレはどういう事だ? 春夏が禪院直哉の術式を込めたのは、服だったハズだ。だが春夏は、まるで靴に術式を込めているかのように──、靴に呪力を流して術式を発動させている!!』
『あ。アレをヤッたの、
『? どういう事だ?』
『霊装呪法の使い手だけが使える極ノ番の派生──拡張術式の1つ。その名も「呪い移し」よ』
『極ノ番の派生……「呪い移し」だと……?』
『極ノ番を使って触媒に付与したその「呪い」を、一時的に外して、別の触媒に植え付ける。ただし、自分の極ノ番で生み出した呪具・呪物にしか使用ができない技。多分、そういう縛りで成り立ってる技なんだと思うわ。ちなみにだけど、ここまで術式を極めたのは春夏だけよ♡ 春夏の次に術式を極めた高祖父でさえも、こんな芸当はできなかった……』
『……最強の当主になる、というのは口だけではないというワケか』
『もちろん。あの子、そういう
『フン、成程な。……ならば……』
『漏瑚?』
今、直哉の「投射呪法」が込められているのは、春夏の靴だった。それ故に直哉のように敵に触れて術式を発動させることでフリーズさせるには、手で触れるのではなく、蹴りを入れるかのように、足で触れなくてはならなくなっている。
「クッソ、硬ェんだよ!! 要塞ってのもあながち誇張じゃねぇんだな……!」
『身動きを封じようが貴様の攻撃など我に通じぬ! 我に勝ちたくば圧倒的な「力」を見せることだ!』
「ほざけッ!!」
幸い、フリーズは何度も効く。だからこそ春夏が一方的に金童子をボコボコにしているように見えるだろうが、その実──攻撃する度に1ダメージしか与えられていないようなもの。勝てるワケが無い。倒す前に春夏が力尽きる。
漏瑚の術式による熱線でさえ弾き飛ばせるのも、分かるような気がした。
緩やかな加速ではあるが、今の春夏は高速道路を走行できる速度を安定して出せているし、金童子を殴る際の力だって、車を一撃で破砕できる程度には力も高まっている。……だというのに。
「────硬すぎるんだよ、チクショウ……!!」
『……余興もこれまでか。ならば死ねい!!』
「……極ノ番『求』……!!」
『なにが極ノ番か! そんなモノ我に通じるか!』
金童子は、春夏の胸に穴を開けようと、術式にて硬化させたその拳を全力で春夏に振るう────。
が、しかし。
『何故だ……何故、何らの手応えも無いのだ……』
「……極ノ番って言ってんだろ。通じるかよ」
『!? 何も発動してなど……!!』
「発動してるから無事なんだよ」
『よもや防御力を高める術式か!? おのれ、我とキャラが被っているではないか!!』
「キャラとか横文字使うなよ、武人キャラ。それと安心しろ、まだ被ってないからさ。被るとしたら、これから先のことだろうから」
『ほざけェェ──ギャッ!?』
ボウッ、と顔を燃やされた金童子は、顔を抱えて地面に転げ回る。スタスタと平然とやってくるは、火山のような頭部の、単眼の呪霊……。
『全く、待ち侘びたぞ』
「わり。アイツ、全然攻撃してこねぇんだもん……。身体強化系の術式だとさ、攻撃を受けない事には、極ノ番が使えなくてな……」
『ん? 裏梅の術式に使用した時は、攻撃を受けたワケではなかったと思うが?』
「俺の極ノ番が使用可能なパターンは2つだけだ。攻撃を受ける時、そして術式の産物に触れる時だ。直哉の時は前者で、漏瑚の時は前者と後者の両方。魔虚羅や裏梅の時は後者だね」
だから本来なら、魔虚羅が手に入るのではなく、十種影法術そのものを手に入れるハズだったが──そこは魔虚羅の適応バグのおかげという事なのだと春夏は解釈している。
『成程、そうであったか。しかし……』
しかしその理屈で言えば、春夏は──と、漏瑚は思案する。そして彼のその考えは殆ど正解だった。
理論上、春夏は両面宿儺の領域「伏魔御廚子」を無傷で耐え切る事ができる。極ノ番を使用し続け、彼の術式を何度も何度も何度も何度も──それこそ領域が消えるまで何度も「御廚子」を上書きする。そうする事により、春夏は斬撃の嵐を完璧に無効化する事ができてしまうのである。
────しかしこの「理論上」という言葉を使用するという事は、つまり「現実的ではない」という意味の裏返しでもある。
霊装呪法の極ノ番とは、霊装呪法での領域展開と同等の呪力を消費する。春夏で3回分、乙骨憂太の呪力量で換算すると6回分となる。
斬撃の嵐を全て無効化するほど回数を重ねる事は現実的に見て不可能であるし、魔虚羅の時のように消費呪力を増やす事で極ノ番を「継続させる」のは現実的に可能だが、伏魔御廚子を耐久できるだけの時間分、耐久できるかは──呪力量の差からして、やはりコレも現実的ではないと言わざるを得ない。
紙を42回折る事により月に行くが如く、あくまで理論上だけの話だ。それ故に、漏瑚のそんな考えは正解でもあるし、同時に間違いでもあった。
しかし漏瑚の考えなど、春夏が知る由もなく。
「どったの?」
『いや。それより、どうするのだ? 此奴の術式は既に得たのだろう? 呪霊操術で、取り込むのか? それとも祓うのか?』
「取り込むさ。どうせだったら四天王コンプリートしたいからね。弱らせるの、手伝ってくれないか? どうも硬すぎるんだよな、コイツ……」
『全く、まだまだ若いな。貸せ、儂の術式を込めたその呪具。使い方を、よく見るがいい』
業龍剡月刀を漏瑚に渡して、春夏は裏梅の術式を込めた大太刀「
漏瑚は早速術式を行使して──否、呪具に呪力を流して呪具に込められた術式を発動させると共に、自分自身の術式をも発動させている。
彼の握る業龍剡月刀は、触れれば溶けそうな程に凄まじい熱を帯びている。ユラユラ揺らめく陽炎がその凄まじい熱を春夏の視界に訴えかけてくる。
それを見て、春夏も紅蓮氷牙に呪力を流し込み、術式を発動。熱された空気が冷え、水となり、刃は更に大きく凍りつき、刃は一回りも二回りも大きく成長する。
『──ゆくぞ。儂に合わせるのだ』
「おうッ!」
土煙を後方に飛ばし、漏瑚と共に前に踏み込む。金童子は、自分を斬れるワケが無いと、余裕綽々な様子で全身に呪力を漲らせる。
胴体を輪切りにするが如く、その刃を真一文字に振り抜こうとしたその刹那──漏瑚の呪力が、一際大きく膨れ上がったのを肌で感じ。
漏瑚と同じように呪力を膨れ上がらせた春夏は、それを一気に紅蓮氷牙に流し込むと。漏瑚と共に、金童子の腹に刃を叩きつけ、燃え上がる呪力を──凍て付く呪力を炸裂させた。
『ゲギャアアァァアアッッ!?!?』
すると、金童子の胴体はパカリと2つに割れて、腹から上下に二分割されてしまった。
「す、げ……何だ今の……」
『呪具が壊れるギリギリまで瞬間的に呪力を流し、それを解放した。それだけの事だ。同時に、お前もやった事だ。わざわざ説明するまでもない。ほら、返すぞ』
「あ……お、おう……」
アレだけ凄まじい熱を帯びていた業龍剡月刀は、彼から返された今、何の熱も帯びていない。あんな空気が歪むような熱を帯びていたのが嘘のようだ。
春夏は、漏瑚のその呪力や術式の使い方を見て、呪具に込められた術式をただ発動させてるだけではダメなのだと──当たり前だが、しかし大事な事に気付かされた。
『おのれ貴様らァァァ! 金剛石の如き我が肉体をよくも、よくもよくもよくもォォォォ!!!』
『なんだ、反撃も余裕か。大部分を残しすぎたか』
「黙ってオチておけば良かったのに」
『ほざくな雑魚があああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!!!』
地を震わせる大声を上げて、上半身のみとなった金童子は、ふよふよと浮かびながら突撃してきた。理屈は不明だが、酒呑童子も生首状態で襲ってきたという逸話がある、金童子のコレも同じような現象なのだろうと春夏は勝手に結論付けて、紅蓮氷牙を構える。
「お前の硬さはもう、
呪力を込め、胴体ではなく首を切断。
するとその瞬間、空間は歪み、呪力は黒く光る。不意にクリティカルとなったその攻撃は、金童子の金剛石の如き身体をも容易に打ち砕き……。
『なんだってェェェーーーーーッッッ!??』
綺麗に生首だけとなった金童子を、呪霊操術にて手元に収め、焦げ茶色の球体へと成型してしまう。すかさずそれを飲み込み、一息つく。
『春夏、さっきのって……』
「あぁ、黒閃だね……めっちゃ久しぶりに出たよ」
『黒閃? 今の、黒い火花か……?』
『
「あ、あぁ……秋冬の足が吹っ飛ばされた時にね」
『あぁ、
「そうなの? あの時は怒りに任せてたしな……」
『思えば、あなたの急成長はあの後からだったわ。秋冬がやられたから必死に己の術式と向き合って、鍛えたのかと思ってたけど。丁度そのタイミングで黒閃を、ね。ふふっ、伸び代に期待ねぇ♪』
「……何はともあれ、四天王コンプリートだ……!」
鉄壁の防御力を手に入れ、呪具の使い方を学び、戦力を増やし。更に黒閃によるバフを得た春夏は、遂に本丸、酒呑童子との戦いへと赴く。
しかし、酒呑童子との決戦を前に、春夏と漏瑚は薄らと
(呪具の強化率が、落ちてる? 体調は悪くねえ、気分もかなりノッてる。黒閃のおかげだろーけど、そのせいで
(先程の呪霊──金童子とか言ったか。確かに堅い呪霊だった。恐らくは花御よりも。しかし、春夏が儂に助力を求めるほどの呪霊ではなかった。儂をも弄ぶ春夏がこの程度の呪霊に手こずるハズが無い。何か……何かが、おかしい……ッ!)
(金童子、昔より硬くなったのかしら? 春夏なら難なく倒せるレベルに思えたけれど。硬い硬いって話ばかり先行して、生まれ変わった金童子は本当にガチガチに固くなったのかしら。確かに、それなら有り得なくもないけれど……)
3人それそれが、決戦を前に何かしらの違和感を覚えていた。……何かが、始まろうとしていた。
ポケモン、ゲットだぜ!のノリで四天王コンプ。
通常時なら、金童子より花御の方が硬いです。
ただ、防御に特化した術式なので、術式使用中のみ花御より硬いです。