消滅したらネオだった件   作:ライノア

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第八話前編:新生の炎

KIA SIDE

イフリートの戦いから俺とリムルは彼女の様子を(うかが)っていた。リムルがイフリートを捕食して分離させた事で、もう命の灯火は(いく)ばくも持たないだろう。

それでも同郷の身として、最後まで面倒をみようと決めたのだった。

それから一週間が経過した。鳥の(さえず)りが奏でられ、日差しが部屋の中心を照らす中、寝室で目覚めたシズさんが俺達に謝礼を述べる。

 

シズ「...スライムさん、キーア君。有難(ありがと)う」

 

意識が朦朧(もうろう)としている中、魔人化しても記憶は鮮明だった様だ。

シズさんは自分の身にあった事を語る様に呟く。

 

シズ「私は(また)、大切な人を...殺してしまうところだった。この手で...」

リムル「ねぇ、スライムさん。聞いてくれるかな?」

シズ「あんまり喋らない方が...」

キーア「いや、話させてやってくれ。俺の知りたいんだ、シズさんの身に何があったのかを...」

シズ「うん。その前に、私という人がこの村に居たって事を覚えていてほしい」

 

嵐牙とフェリルは思念伝達を通じて、意識が朦朧としていたシズさんの身に何があったのかを全て語った。

召喚された暁に、何者かによって召喚されたケーニッヒという魔人を自分の意志とは関係なしにこの手で焼き殺した事。

イフリートの力を制御出来ずに初めて出来た友人ピリノと、自身が名付けた魔物ピノ諸共(もろとも)焼死体にしてしまった事。

 

シズ「ピリノとピノが死んだ後、私は魔王の側近として仕え続けて...そして出会えたの」

リムル「誰に...?」

 

自分を心を救ってくれた人であるとシズさんは目を(つむ)りながら答えた。

 

シズ「...勇者」

 

シズさんを召喚した男はとある戦いで自分の城を捨て、殿(しんがり)としてシズさんを遺した。

そして出会ったのが、シズさんと同じ仮面を付けていた女性の勇者だった。

炎の精霊であるイフリートの意志であるのは(さだ)かではあるが、それともシズさん自身の意志なのか、ただ理解する猶予(ゆうよ)もなかった。

シズさんはその勇者を見た瞬間に勝てないと直感していたが、それでも魔王が遺した城を死守すべく立ち向かった。

その心理がイフリートの意識を抑制したのか、ほんの少し自我が戻る。

 

シズ「()ぐ、殺されると思った...でも、話し掛けてきた。『どうして此処に居るのか』...『どうやって生きてきたのか』...魔人である、私の話を信じてくれて...『もう大丈夫だよ』って」

 

その言葉に感情を取り戻したシズさんは心から救われ、これまでにあった悲劇をありったけ打つける子供の様に勇者の胸の中で、声が枯れるまで泣いた。

 

シズ「私は、感情を取り戻した。勇者に、彼女に保護され...その仮面は、彼女がくれたんだ。魔力抵抗を高めて、私の中に居るイフリートを抑え込めるって...」

 

シズさんは枕元の近くに置かれていた仮面に手を伸ばそうとしたが、目覚めたばかりのシズさんに無理はさせたくないと、リムルは伸縮させた義手で仮面を手渡す。

仰向けになった自分の胸元に置かれた仮面に触れながら、シズさんは続けて語った。

 

シズ「彼女と共に旅をして...この世界の事や、魔法を教わって、仮面の力でイフリートの力をある程度使える様になって...誰かを助けて、戦って...」

キーア「...それで、いつしか爆炎の支配者と呼ばれる様になったのか」

 

勇者に保護される身となったシズさんは、彼女に類似した服を(まと)って"抗魔(こうま)の仮面"と呼ばれる仮面でイフリートを抑制。同時に火傷(あと)を隠したのだった。

火傷が刻まれた全身をローブで隠してシズさんは勇者に付き従い、時が経つに連れて"爆炎の支配者"の二つ名で呼ばれるようになっていった。

 

リムル「確かにイフリートは手強かったけど、シズさんのはすげぇ攻撃だったもんな!カッコいいよ!」

 

リムルは義手でサムズアップをすると、シズさんは静かに笑みを浮かべる。

 

シズ「彼女と一緒に旅をして、嬉しくて、幸せだったな...でも、あの人は姿を消した。理由は分からないけど、どうしてだろう?どうして...?」

 

一緒に旅をしていた勇者は突然にして、自らが付けていた抗魔の仮面をシズさんに託して旅立った。

その理由は今でも(わか)らなかったが、彼女には彼女なりに譲れぬ思いがあったんだろう。

 

シズ「『きっと、又会えるから』あの人はそう言って行った...あの日から私は、強くなろうと決心した。『苦しんでる人を助けたい』って...結構頑張ったんだ。何十年もだよ?偉いと思わない?」

リムル「...ああ。偉いよ」

キーア「功績を残しただけでも、尊敬するよ」

 

それからシズさんは英雄として幅広く活躍し、数々の魔物と戦い続けた。

自分の功績をリムルは(うなず)く様に体を上下に動かし、俺も同様に(ねぎら)いの言葉を掛けながら頷く。

 

シズ「英雄って呼ばれる様になって...だけど、私ももう若くはなくて...イフリートの制御も怪しくなってきて...一歩間違えたら、イフリートを解き放つかもしれない。そう考えると怖くなって...このままじゃ、大切な人を...!」

 

シズさんにあの悲劇が思い出すだけでフラッシュバックし、抗魔の仮面を握り締める。

 

シズ「だから私は冒険者を引退して、指導者になった」

 

いつしかイフリートが解放され、又しても自分のせいで誰かを殺めてしまう事を恐れたシズさんは冒険者を引退。

現在の自由組合の前身とも言える冒険者互助組合の組織に協力してその発展を務めた。

冒険者の教導を行い、後進の育成にも(たずさ)わったそうだ。

 

リムル「指導者...?」

シズ「学校の、先生」

リムル「おおっ、学校があるのか!」

キーア「どの異世界にも学校があるのは当たり前だしな」

 

指導者の言葉に、俺は夜の蝶での占いで見た光景を思い出す。

 

シズ「イングラシア王国っていう国でね、異世界から来た子達の...」

キーア「''達''って事は、この世界に召喚された人間は結構居たんだな」

シズ「スライムさんが言ってたゲームの台詞を教えてくれたのも、その内の一人だよ」

「「...僕は悪いスライムじゃないよ」」

 

某RPGゲームの台詞を同時にハモらせる二人は笑い合う光景に、俺は口元を緩める。

シズさんは表情を戻して、五人の生徒達と過ごした日々を振り返る。

それはシズさんにとってはこれまでの人生で掛け替えのない宝物だった。

 

シズ「楽しかったなぁ...平和な日々だった。私の元を去って行った子も居るけど...でも、グランドマスターになった子も居て...」

キーア「''グランドマスター''?」

シズ「うん、各国のギルドを統括する最高責任者...私が教えられる事はもう無くなったと思った。そして寿命が残り少ないのか、イフリートの意識を抑え込めなくなってきて...思い出した事が一つだけあったから。『旅に出よう』って」

キーア「あんたを召喚した...男を殺す為か?」

 

自分がイフリートを制御出来るのはもう長く持たないと悟ったシズさんは、寿命が尽きる前に果てるならせめて、魔王に一矢報いてやりたい。そしてシズさんは旅立つ事を決意した。

 

シズ「分からないわ。でも...会って、確かめたい事があったの。だから私は...」

 

何かの天啓(てんけい)であるのか、ファルムス王国の自由組合支部から『ヴェルドラの消失を確認の為、引き続き調査を行う』との情報がシズさんの耳に入った。

何方(どちら)にせよ森を突き抜ける必要はあった様で、三人の冒険者に上手く潜り込んだ。

特徴はシズさんの教え子の一人に聞いてもらったため知っていた。聞いていた通り、明るく気のいいチームだった。

その教え子には、最後の旅で良い仲間に出会えた事を感謝していた。

 

シズ「本当に良い子達。ちょっと危なっかしいけど...」

リムル「そうだな」

キーア「否定はしない」

シズ「...楽しかった。でも、もう...」

 

自分の寿命がもう()ぐ尽きる。

それを告げられる様に、俺は天井の窓際を一瞥(いちべつ)すると二羽の鳥が飛び去って行くのを見た。

自分の命の灯火が尽きる前に、シズさんは俺達の転生前の名前を(たず)ねる。

 

シズ「ねぇ、スライムさんにキーア君。名前は何ていうの?」

リムル「え?俺はリムルって...」

キーア「転生前の名前だ」

 

今の自分の名前を名乗ってしまったリムルは自分が人間だった頃の本名を名乗る。

 

リムル「俺は悟。三上悟だ」

キーア「アキノリ。吉木、アキノリ」

シズ「私は静江。井沢静江...悟さん、アキノリ君。お願いがあるんだけど、聞いてくれる?」

リムル「...良いよ。何でも聞いてくれ」

 

本当の名前で自己紹介を終えたシズさんは深呼吸をして、俺達に頼み事をする。

碌でもない願いだろうが構わない。最後まで面倒を見ると決めたのだから。

どれだけ下らなくても願いくらいは聞いてやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シズ「...私を、食べて」

「「!?」」

 

その言葉に俺とリムルは驚愕(きょうがく)する。

 

シズ「私に掛けられた呪い、食べてくれたみたいに...嬉しかった。この世界が...嫌い。でも、憎めない。まるであの男の様...だから、だから...この世界に取り込まれたく、ない。最後の...お願い」

 

手を伸ばすシズさんの手を俺は優しく握りながら、その願いに隠した本心を見抜く。

 

キーア「...シズさん。それは嘘なんだろ?本当は、あんたは生きたいんじゃないのか?」

シズ「...えっ?」

キーア「ドワルゴンの占いで、あんたが五人の子供達に囲まれているのを見た。その子供達は、あんたにとって大切な存在なんじゃないのか?」

シズ「......」

キーア「確かに俺達はあんたに出会って日はそんなに経ってないけど、シズさんは俺やリムル以外で唯一出会えた同郷で、過酷な境遇を生きてきた召喚者だ。それにシズさんには、まだやり残したい事や心残りがある(はず)なんだ!命の大小なんて、どの世界にも存在しない!だからっ!だから例えこの先、息をするのが苦しくても、今を生きる事を諦めないでほしい!俺とリムルが作る平和な街で皆が笑い合う姿を、見ていてほしいっ...!!」

 

大粒の涙を流しながら俺は(にご)した声で、シズさんに生きててもらいたいと懇願(こんがん)する。

シズさんを救う方法既に知っていたリムルは言葉を繋ぐ。

 

リムル「俺もシズさんには生きててほしいし、救いたい。キーアには不可能を可能にする力がある。少しでも可能性があるなら、それに()けてみないか?」

シズ「アキノリ君...悟君...」

 

俺とリムルの言葉にシズさんはこれまでの事を振り返る。

そして少し間を置いて、生に縋る様にシズさんは涙を流して願う。

 

シズ「...私は、生きたい。あの子達が、今を生きる姿を見たい」

リムル「それで十分だ。キーア」

キーア「...ああ」

 

生きたいと願うシズさんの頼みは、俺にとっては容易(たやす)い事だった。

呪いはマキシマムゲーマーで掻き消した筈だが、俺達はシズさんの憎しみという名の依頼を引き受ける事になる。

シズさんに安心して第二の人生を謳歌出来る様にする為の答えに、迷いはなかった。

俺は涙を(ぬぐ)ってネオディケイドライバーを腰に巻き、ディケイドのライダーカードを取り出す。

 

キーア「...変身」

【カメンライド ディケイド!】

 

ディケイドに変身が完了し、続けてフェニックスロボフォームのカードを装填する。

 

【フォームライド ビルド フェニックスロボ!】

『フェニックスロボ!イェア!』

 

フェニックスロボになった俺は、右手に炎を宿しながらシズさんに自分を召喚した男の名を問う。

 

ディケイド「あんたの憎しみ(依頼)は、俺達が引き継ぐ(受けた)。だからもう、誰かを憎まなくていい...あんたを召喚した男の名は?」

 

俺の言葉に目を見開いたシズさんは火傷(あと)が残る顔を引き()らせ、祈る様に口を開く。

 

シズ「レオン・クロムウェル。最強の"魔王"の一人...」

キーア「約束する。三上悟と吉木アキノリ...否。リムル=テンペストとキーア・R=テンペストの名に()いて、魔王レオンにきちんと、あんたを召喚したツケを十倍にして必ず払わせる」

シズ「...有難う」

 

謝礼の言葉と共に俺は右手から(かざ)した炎をシズさんに向ける。

 

《ユニークスキル『構築者(クミカエルモノ)』を使用しますか?YES/NO》

ディケイド「(...ああ)それじゃあ、行くぞ。新生の炎(リジェネレートフレイム)!!」

 

放浪者から構築者の使用を尋ねる。このスキルは相手の体の構造を再構築させる事が出来る様だ。

右手から放たれた新生の炎が、シズさんを優しく包み込む。

そして暫く時間が経過し、炎が消えると放浪者からの吉報が俺の耳に届く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《...告。構築者とリジェネレートフレイムの同時使用により、個体名シズエ・イザワは、肉体が新たに再構築されました。魔王レオン・クロムウェルに掛けられた呪いは既に消滅している為、命に別状はありません》

 

 

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