消滅したらネオだった件   作:ライノア

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~これまでの消ネオは...?~

「黒幕の正体は''ディケイド''。いずれはこの世界を破壊する最低最悪の悪魔よ」

「私とイフリートは馬が合わなかったんだと思う。当時のイフリートは魔王レオンに対する忠誠心が強かったから...」

「同胞の無念、その億分の一でも、貴様らの首で贖ってもらおう!」

「「邪悪なる(醜い)豚共の仲間め!!」」

「確かに俺達は、お前らを甘くみていた。其処は反省すべき点でもある」

(...御免、皆。やっぱりあたし、まだこの男が仇敵じゃないって認められないかも)


第十話前編:橙色の大鬼族と名付け

OP『氷川きよし/限界突破×サバイバー』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

KIA SIDE

 

キーア「さぁ、どうだ...!?」

 

木に(くく)り付けた(ひも)に掛けられているアンティーク(もど)きのランプの照明が、より静寂な空気を漂わせる。

そんな俺の左(はし)に居る黄色い大鬼族(オーガ)の隣で息を飲んでいたのは、中性顔でオレンジ髪の大鬼族。

何故黄色い大鬼族の隣に居るのかと言うと...今から3~4時間前に(さかのぼ)る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

村に帰る前に俺達は大鬼族の村を訪れる事となり、俺がガタキリバに変身して周囲を捜索(そうさく)。他にも生存者が居るかを確認する為だ。

大鬼族達も同行しようとしていたが、『俺に任せてほしい』と意地を張ったせいでリムル達のところで待機する事となった。

 

ガタキリバ『おーい!誰か居たぞ!』

 

ガタキリバの一人が崩れた家の前で声を上げる。

俺は()ぐに駆け付けると、其処には飢餓(きが)で今でも倒れそうになっているオレンジ髪で12歳くらいの大鬼族の少年が居た。

その声はか細く、豚頭族(オーク)の襲撃で重傷を負ったせいか今でも息が絶えそうにもなっていた。

 

ガタキリバ『リーダー!』

ディケイド『分かってる。直ぐ助けてやるからな!』

【フォームライド ビルド フェニックスロボ!】

『フェニックスロボ!イェア...!』

ディケイド「新生の炎(リジェネレートフレイム)!!」

 

俺はリジェネレートフレイムで包み込んだオレンジの大鬼族を新たな生命体として新生させ、意識を一気に回復させる。

 

ディケイド『...よし。これでもう大丈夫だ』

オレンジの大鬼族『...あれ?か、体が...治ってる?貴方は、誰...?』

ディケイド『もう大丈夫だ。俺が来たからな』

 

他のガタキリバ達に捜索を任せながらも、ディケイドの姿に戻った俺は口を緩める。

すると、黄色い大鬼族が駆け寄ってきた。

 

黄色い大鬼族『あ、居た!』

橙色の大鬼族『...姉ちゃん!!』

 

黄色い大鬼族とオレンジの大鬼族は再会を喜んで抱き締め合う。

 

橙色の大鬼族『姉ちゃん...!怖かったよぉっ...!』

黄色い大鬼族『もう大丈夫。お姉ちゃんが付いてるからね...』

ディケイド『知り合いなのか?』

 

俺の問いに黄色い大鬼族は(うなず)く。

 

黄色い大鬼族『...あたしの、たった一人の弟。あの襲撃で父ちゃんと母ちゃんと一緒に死んじゃったかと思ってたけど、生きてて良かった...』

 

実の弟の無事を確認した黄色い大鬼族が安堵(あんど)すると、オレンジの大鬼族は俺に指を差す。

 

オレンジの大鬼族「あのね、姉ちゃん。あの人が俺を助けてくれたんだ!」

黄色い大鬼族「...そう。良かったね」

 

黄色い大鬼族は、オレンジの大鬼族の頭を優しく()でる。

他のガタキリバ達の連絡を受けたが、どうやらこれ以上の生存者は出ていない様だ。

 

ディケイド『そうか。これ以上の生存者は居ないのか...』

ガタキリバ『ああ。俺達もあちこち探して回ったが、どうやらこの子しか居ないみたいだ...』

ディケイド『...分かった。気を取り直して帰るぞ』

 

他のガタキリバ達もカメンライドを駆使して村中を探し回ったが、どうやら他の生存者は居なかった様だ。

俺は変身を解除し、手を(かざ)してオーロラカーテンを出現させる。

 

リムル「今の技って...オーロラカーテンか!?」

キーア「ああ。緊急事態に使う予定だったが、今回は特別だ」

 

そして今に至り、夜の(うたげ)にて緊張感のある空気が漂っていた。

全員の視線が向けられる中、リムルは人間の姿で牛鹿を使った串焼き肉の一個を噛み締める。

 

リムル「うっ...!」

 

固唾(かたず)を飲むゴブリン達。リムルは顎を下げ、身を震わせる。

 

リグルド「リ、リムル様...?」

リグル「お口に合いませんでしたか...?」

 

突然苦しみ出す様なリアクションに訝しみながらもリグルとリグルドは声を掛ける。

次に帰ってきた反応は、俺の予想通りでもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リムル「...うんまぁぁぁぁいっ!!!!」

 

歓声が上がり、リグルドは(とげ)付きの帽子を首に掛けている中年体躯のホブゴブリン『ゴブイチ』によくやったと肩を置く。

シズさんの体をコピーした事で(ようや)く取り戻した人間時代の味覚。

其処から宴会はどんちゃん騒ぎになる中、状況の一部始終を見ていた俺も串焼き肉を食っている。

俺がこの場に居ないのは、リムルの気を遣ってやる為だ。

森の出口付近の草叢(くさむら)()いたマットに座っているのは、俺、シズさん、カイジンさん、リグルド、リグル、赤・黄色・緑・白・オレンジの大鬼族の十人。

俺達は赤い大鬼族の話を聞いており、カイジンさんは飲んでいた酒を一気に噴き出す。

 

カイジン「豚頭族が大鬼族に仕掛けてきただって!?そんな馬鹿な...!!」

赤い大鬼族「...事実だ」

カイジン「あり得るのか...そんな事?」

リグルド「...分かりません」

 

カイジンさんが疑問を投げ掛けるも、リグルドもリグルも分からず仕舞(じま)い。

そんな中で、焼き串肉を食っていたゴブタが通りすがりながら問い返す。

 

ゴブタ「そんなにおかしい事なんスか?」

リグル「ゴブタ...」

カイジン「当然だ。オーガとオークじゃ強さが(けた)が違う。格下のオークが仕掛ける事自体あり得ん...」

黄色い大鬼族「...でも、あいつらはやって来た。ある日突然にあたし達の里を襲撃してきた。森を埋め尽くす程の圧倒的な戦力で、あの醜い豚共に里を奪われた。それも銀の鎧を纏って...!」

 

豚頭族が鎧を装備していた事にカイジンさんは疑問を問う。

 

カイジン「豚頭族が鎧を...?」

赤い大鬼族「ああ。人間の着用する様な全身鎧(フルプレートメイル)だ」

カイジン「...だとすると」

リグルド「豚頭族だけで動いているとは思いませんな...」

カイジン「豚頭族がそんな高価な物を用意出来る訳がない...」

 

そして襲撃の際に黄色い大鬼族は両親に命を拾われ、橙色の大鬼族は死にかける程の重症を負い、赤い大鬼族は駆け付けたところで頭領である父親を目の前で殺されていた。

 

赤い大鬼族「その通りだ。軍勢の中に...!」

カイジン「仮面の魔人...」

 

赤い大鬼族は歯(ぎし)りを立てながら口を開く。

 

赤い大鬼族「...あれは上位魔人だ。間違いない」

彩月「つまり、その上位魔人をリムル様とキーア様だと誤認してしまい、戦いを挑んでしまったと...?」

赤い大鬼族「...ああ」

ゴブタ「...つまりどういう事っスか?」

リグル「豚頭族が、誰か魔王の勢力のいずれかに(くみ)した...と言う事ではないか?」

 

話を聞いていたゴブタは「成る程っス...?」といまいちピンと来ていない様に首を(かし)げる。

此処で魔王の単語が出て来たので、今一度ヴェルドラの話を振り返る。

無論、シズさんを召喚した張本人である魔王レオンとは限らない。

カイジンさんが(あご)に手を当てて呟く。

 

カイジン「...魔王か」

リグルド「しかし、魔王が何故...?」

赤い大鬼族「分からぬ。はっきりしているのは...三百人いた同胞を、もうたった九人しかいないという事だ」

シズ「少なくとも、その魔王がレオン・クロムウェルではなさそうね」

リムル「()る程な。そりゃ悔しい訳だ」

 

リムルが肉を咀嚼しながら向き直った俺達の方へと歩み寄る。

どうやらリムルも話を聞いていた様だ。

 

シズ「リムルさん」

キーア「あの若様の話、聞いてたのか?」

リムル「ああ」

 

木に背中を向けるリムルに、赤い大鬼族は声を掛ける。

 

赤い大鬼族「肉はもう良いのか?リムル殿」

リムル「ちょっと食休み」

 

リムルに目を向けていたのは赤い大鬼族の妹、姫様だ。

 

リムル「お前の妹凄いよな。薬草や香草に詳しくて、ゴブリン達と仲良くなった...」

赤い大鬼族「箱入りだったからな。頼られるのが嬉しいんだろう」

 

ピンクの大鬼族が春菜達と気が合ったのかあっという間に仲良くなっていた。

 

キーア「...それで、お前らはこれからどうしたい?」

黄色い大鬼族「...''どう''って?」

キーア「今後の方針に決まってるだろ。再起を図るにせよ、他の地に移り住むにせよ、仲間の命運は自称次期頭領()に掛かってんだろ?」

 

黒い大鬼族が骨付き肉にガブリ付き、紫の大鬼族がバランス良くステップを踏む様子を見ながら問い掛ける。

 

黄色い大鬼族「あたし達の知った事じゃない。与えられたこの力をもっと鍛えて、父ちゃんと母ちゃんの(かたき)を討つ...!!」

リムル「そう言ってはいるが、()てはあるのか?」

「「っ!?...」」

 

リムルの指摘に黄色い大鬼族と赤い大鬼族は目を見開く。

赤い大鬼族は誤魔化(ごまか)す様に酒を飲み、黄色い大鬼族は串焼き肉を(ほお)張る。

 

キーア「...このリアクションだと、復讐以外は何も考えてなかったな?」

黄色い大鬼族「う、うるさい!あ、あんた達には関係ないでしょ!?」

 

暫くして静寂な空気が俺達に漂い、俺はある相談を持ち掛ける。

 

キーア「...少し提案なんだけどよ。俺がさっき助けたガキを含めて、俺達の部下になる気はあるか?」

「「部下...?」」

リムル「ま、俺達が支払うのは...衣食住の保証のみだけどな。拠点があった方がいいだろ?」

 

俺達の提案に、赤い大鬼族は一瞬だけ躊躇(ためら)う。

 

赤い大鬼族「しかし、それではこの町を俺達の復讐に巻き込む事に...」

キーア「まぁ、別にお前らの為に言っている訳じゃない。武装した豚頭族が数千もの大群を引き連れて襲撃してきたんだろ?それに、魔王が裏で糸を引いているのかもしれないしな」

リグル「豚頭族共は、このジュラの大森林の支配権を狙っているやもしれませんな...」

 

リグルの推測に俺とリムルは頷く。

 

リムル「この町だって、決して安全とは言えないだろうな...そんな訳で、戦力は多い方がこちらとしても都合がいい」

キーア「逆にお前らが窮地(きゅうち)に追いやられた時は、俺達が加勢する」

リムル「俺達は仲間を見捨てない」

 

赤い大鬼族は少し間を置いて(うつむ)く。

 

赤い大鬼族「...成る程。少し、考えさせてくれ」

リムル「おう、じっくり考えてくれ。さてと、俺はもう少し肉を貰ってこようかな?」

キーア「あっ。後、俺の分も頼むぞー?」

 

暫くして、赤い大鬼族と黄色い大鬼族が森林へ(おもむ)いている際に青い大鬼族と緑の大鬼族が話し掛ける。

 

シズ「アキノリ君、ちょっと良いかな?」

 

俺も様子が気になったのでこっそり後を付けようとした際に、シズさんに声を掛けられる。

どうやらシズさんも少し思うところがあったので、同行させる事にした。

 

青い大鬼族「...悪い話ではないな。だが、決めるのはお前だ」

緑の大鬼族「私達は貴方と姫様に従う」

黄色い大鬼族「...あたしも、じっくり考えてくる」

橙色の大鬼族「...姉ちゃん?」

 

心配そうな声で橙色の大鬼族は実姉に声を掛ける。

 

黄色い大鬼族「...大丈夫だよ。お姉ちゃんは、大丈夫だから」

 

そう言って黄色い大鬼族は赤い大鬼族と共に、更に森の奥へと進んで行く。

立ち止まったところで自分の無力さを発散させるかの様に、木に右拳(うけん)を強く打ち込む。

 

「「あたし()にもっと力があれば...!!」」

キーア「強くなるのは良いが、余り力に(おぼ)れたりするなよ」

「「!!」」

 

俺の警告とも()える言葉に、二人は向き直る。

 

赤い大鬼族「キーア殿...シズ殿まで...」

黄色い大鬼族「あんた達...何で...?」

キーア「来たのは俺の意志じゃない。お前の弟が、余りにもお前を心配していたからな...それで頼まれたんだよ。『復讐に突っ走ろうとしている姉ちゃんを止めてくれ』って。それとシズさんもお前の事が少し気に掛かってたから、仕方なくだ」

黄色い大鬼族「っ...!!」

 

俺が来た理由を、自分の弟の依頼であると知った黄色い大鬼族は目を()らしながら本音を吐き出す。

 

黄色い大鬼族「...あの子は、あたしが魔物に襲われていた時も果敢に立ち向かって...若様と兄が来るまで、諦めずに奮闘してた。今でも自慢の弟だよ?でも、あたしは兄や若様みたいに力はそんなにないし、戦う覚悟が全然足りてなかった...」

 

どうやら俺と同じくB達の本気を見て、少しだけ焦りを感じていた様だ。

そりゃ分身したガタキリバとニンニンコミックによるカメンライドを見たら、戦意を失いそうにもなる。

 

黄色い大鬼族「あの力を手にした時、最初はもう誰にも負けたりしないって思ってた。でも、現実はそう簡単に実現させてくれなかった。力を手にした後に、更に上の力を見せつけられたら...(また)、弱いあたしに戻っちゃうんじゃないかって...!」

 

里を蹂躙され同胞を殺された悔しさと自分達をも匹敵する圧倒的な力による絶望感。

二つの感情が混ざり、黄色い大鬼族の目には本音を吐き出す度に涙が込み上がってくる。

 

キーア「まぁ、そりゃ自分より強い相手に実力を見せつけられたら、心が折れそうにもなるよな」

 

大鬼族達の事情を()み取った俺は、(かつ)ての仲間を突き放した出来事を語る。

 

キーア「...俺はな、この世界に転移する前の仲間を突き放してしまった事があるんだ」

黄色い大鬼族「自分の、仲間を...まさか、異世界人?」

キーア「まぁ、そんなところだ。俺の持つディケイドの力は、怒りに飲まれると感情が制御出来なくなる程に情緒(じょうちょ)不安定になってしまう。力を暴走させたせいで、化け物扱いされて、周りに迷惑を掛け続けて...若し今後の旅でも暴走してしまったら又迷惑を掛けてしまう...暴走した力を制御出来なかった俺は、自責の念に狩られて...」

「「......」」

 

二人は俺が異世界人である事を知った上で、無言でその言葉の意味を悟る。

力に溺れれば、自身を自滅に追いやってしまうだけだからな。今此処で言っておいて良かった気がする。

 

キーア「確かに力ってのは、手に入れれば『何でも叶う』『何でも出来る』って、最初は思う事があるかも知れない...けどな。使い方を誤れば、時には人を傷付け、自らを自滅に追いやってしまう事だってある。俺は、嘗ての仲間達とそういう奴らを何度か見てきた」

シズ「私もこの世界に召喚されて、憑依されたイフリートの力を、最初は制御出来なかった。そのせいで、初めて出来た友達をこの手で(あや)めてしまった...勇者に救われて、貰った仮面の抗魔の力で数十年間イフリートの意識を抑え込んでいたの。それから寿命が尽きようとしていたせいか、私はイフリートの意識を抑え込めなくなっていた」

黄色い大鬼族「そんな...事が...」

シズ「でも、そんな私をアキノリ君は救ってくれた。その時気付いたの。私がもっとイフリートと心を通わせていたら、こんな事にはならずに済んだんじゃないかって...でも、良かった。貴女(あなた)が此処で止まってくれて」

 

そう言ってシズさんがゆっくりと歩み寄り、優しく黄色い大鬼族を抱き締めながら言った。

 

シズ「もう大丈夫よ。頑張ったね」

黄色い大鬼族「っ!うぅっ...!うぁぁぁぁぁぁっ...!!」

 

黄色い大鬼族はシズさんに縋り付き、涙が枯れ果てるまで泣き続けた。

それから数時間後。宴は既に終わっており、俺の肩で泣き疲れていた黄色い大鬼族がゆっくりと上体を起こして目を覚ます。

 

黄色い大鬼族「...言っとくけど。あたしはまだ、あんたを仇敵(きゅうてき)じゃないと認めた訳じゃない。でも、あんたが力を暴走させて仲間を突き放してしまった事だけは...少し同情出来(でき)る」

 

俺は片方の瞼を少し開けて寝たフリをして、黄色い大鬼族の独り言を聞いていた。

 

黄色い大鬼族「若し起きてるなら、あの人間に伝えて。『こんな私を止めてくれて有難(ありがと)う』って...」

 

謝礼の言葉を残すと、黄色い大鬼族は様子の一部始終を見ていたであろう緑の大鬼族の方へと牛歩していく。

その背中を見届ける様に、俺は口元を緩めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌朝。俺達専用のテントで、赤い大鬼族と黄色い大鬼族が俺の前に立っている。

 

リムル「...決めたのか?」

赤い大鬼族「大鬼族の種族は戦闘種族だ。人に仕え、戦場に駆ける事に抵抗はない。主が強者なら、(なお)の事喜んで仕えよう」

 

赤い大鬼族の話によると、大鬼族は傭兵(ようへい)家業を行う者達も嘗ては存在していたらしい。

魔王が起こす(いくさ)の先陣を駆けたり、時代(ごと)に活躍する一族もいたそうで、こいつら達もそうした一族だったのだろう。

二人が俺達の配下となるのに、忌避(きひ)感は感じなかった事に納得した。

 

黄色い大鬼族「...契約は、豚頭族の親玉を討ち滅ぼすまででいい?」

キーア「お前らがそれで良いなら、俺達が止める権利は一切ない。俺達に協力して村を作るのも良いし、旅立って村を立て直すのも良しだ」

赤い大鬼族「...昨夜の申し出、(うけたまわ)りました。貴方様方の配下に、加わらせて頂きます」

 

赤い大鬼族は深く息を吐いて、黄色い大鬼族と共に俺達に(ひざまず)く。

今直ぐに刺し違えてでも仇を討ちたいだろうに、こいつらの気持ちを配慮しておくべきだったと俺とリムルは痛感した。

自分自身へと不甲斐なさと一族の頭として、自分の無力さを払拭するかの様な電光石火の如く成し遂げようとする責任感での決意表明だ。

 

キーア「...表を上げろ。俺達はお前らを受け入れる」

リムル「皆を此処へ呼べ」

「「はっ(うん)...」」

 

俺達の出来る事は、その決断を悔いなきものにしてやるだけだ。

二人が他の大鬼族達を集め、左右を見渡して全員揃ったのを確認した上で本題に入る。

 

キーア「全員集まったな?早速だが、本題に入りたい。リムル」

リムル「ああ。俺達の配下となった証に名をやろう」

『!!』

 

大鬼族達全員が目を見開く。

 

赤い大鬼族「俺達全員に...!?」

キーア「何そんなに驚いてんだよ?名前ないと不便だろうが」

赤い大鬼族「しかし...」

 

赤い大鬼族の言葉を繋ぐ様に、ピンクの大鬼族が躊躇(ためら)いがちに戸惑う。

 

ピンクの大鬼族「お、お待ち下さい。名付けとは本来大変危険を(ともな)うもの。それこそ高位の...!」

キーア「''スリープモード''の事を言いたいんだろ?リムルは大丈夫だと心の中でクソ意地張ってるみたいだが、名付けした途端にぶっ倒れるのは俺の目に見えてる。それとも、俺達に名前を貰うのがそんなに嫌か?」

ピンクの大鬼族「そういう事では...「異論などない」お兄様!」

 

赤い大鬼族は名付けられる事に抵抗はなかった。

 

赤い大鬼族「...有難く頂(ちょうだい)する」

白い大鬼族「若がそう言うのであれば...」

オレンジの大鬼族「僕も名前欲しいよ!姉ちゃんもそう思うでしょ?」

黄色い大鬼族「あたし!?あたしは、名前...あった方がいい、かな...?」

 

黄色い大鬼族も最初は戸惑っていたが、オレンジの大鬼族の後押しで名付けを半ば受け入れる。

 

キーア「...決まりだな。それじゃあ早速始めよう。俺は黄色・緑・オレンジをやるから、リムルはそれ以外の奴を頼む」

リムル「ああ、そっちの三人はお前に譲るよ。実は最初に見た時から閃いていたんだ」

キーア「奇遇だな。俺も『命名者』のお陰でネーミングセンスは抜群になってる」

 

専用のベットから降りたリムルは赤い大鬼族、俺は黄色い大鬼族の前に立って名付けを始める。

 

「「お前(の名)は————」」

 

何かが地面に倒れ伏した音が聞こえたが、それに構わず俺は三人の大鬼族に名を付けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キーア「リムルがぶっ倒れてから、丁度三日目か....」

???「紫苑(シオン)。そろそろ交代の時間です」

???「いいえ姫様、リムル様のお世話は私がします。どうぞお休みなさって下さい」

???「紫苑ったらもう...」

キーア「全くお前ら。主の世話をするなら成る可く平等にな?」

 

リムルがスリープモードになってぶっ倒れてから三日後が経った。

俺達は名付けられた大鬼族と共にリムルの様子を窺っていた。

二人の大鬼族がリムルの世話をするかでたわいもない話をする中で、リムルが小さく唸りながら意識を取り戻す。

 

キーア「おっ、早速我らがリーダーのお目覚めだ」

「「リムル様、お(はよ)御座(ござ)います!」」

リムル「ええっと...どちら様でしたっけ?」

キーア「お前なぁ...自分が名付けた奴の名前まで忘れるなんて、無慈悲にも程があるぞ?」

???「まぁ、それはいいよ兄ちゃん。リムル様が無事に目が覚めたなら俺は嬉しいよ!」

 

橙色の大鬼族は俺の毒舌を否定するかの様にリムルの回復を喜んでいる。

 

???「お目覚めになられたか。リムル様」

キーア「来てたのか。紅丸(ベニマル)

リムル「紅丸?大鬼族の若様だよな...?」

紅丸「はっ。今は進化して鬼人となり、頂戴した名の、紅丸を名乗っております」

放浪者《鬼人とは、大鬼族から(まれ)に生まれる種族の事です》

 

2mくらいあった背丈が大体180cmくらいに収まり、身体の均等(きんとう)が取れている紅丸。

次期頭領である為か、(うち)に秘めた魔素量も大幅に増えている。

 

朱菜「リムル様、朱菜(シュナ)です。お目覚めになられて、本当に良かった...」

 

(ひたい)に生えている二対(にたい)の角は細くなり、目の下にあった赤い涙ラインは消滅している朱菜。

 

紫怨「紫苑です。リムル様に付けて頂いた名前、とても気に入っています」

 

野生身が薄れて知的な雰囲気になり、身長は俺と同じ170cmくらいになっている紫苑。

 

リムル「紅丸の後ろに控えているのは、俺の腕を切り飛ばしてくれた爺さん。それと、真ん中に居るのはキーアの変身能力を一時的に封じた奴だな?」

キーア「白老(ハクロウ)緑羽(リョクバ)だ」

白老「ほっほ。(いじ)めてくださいますが、一瞬で再生され、焦ったのは此方(こちら)でしたぞ?」

緑羽「私も、あの灰色の壁を使って取り返されたのは意外でした。ですが、次は焦るつもりはありませんよ?」

キーア「ほぉ?随分と言ってくれるじゃねぇか...」

 

小柄な身長から一気に若返った印象を残す白老。朱菜と同様に額の角は進化の影響で短くなっていた。

身体は細いがある程度の筋肉はあり、どんな女性をも魅了させる程の顔を持つ緑羽。

 

リムル「ん?其処の二人は確か...」

蒼影「蒼影(ソウエイ)の名を(たまわ)りました。ご回復、お(よろこ)び申し上げます。リムル様」

橙矢「橙矢(トウヤ)だよ!リムル様。お目覚めになられて本当に良かった!」

リムル「お、おう...?」

 

鋭い目付きが大分落ち着き、肌は白くなっている蒼影。

子供っぽさが(あふ)れ、牙狼の毛皮を仕様した服を着ている中性顔の橙矢。

 

放浪者《上位の魔物に名付けをした場合、それに見合う魔素を消費します》

リムル(つまり、たった六人に俺の魔素の殆ど持って行かれたって事か...先に言ってほしかったよね、それ)

キーア(まぁ、スリープモードで記憶があやふやになってるのは仕方ないとして...お前が余りにも呑気過ぎるから、大賢者が敢えて言わなかっただけだ)

リムル「(うぐっ!?お前ホント容赦なく突いて来るよな!まぁそれは置いといて)...後二人はどうした?」

 

俺達は思念伝達での会話で喧嘩腰になりかけたが、そんな事よりもこの場に居る大鬼族が居るのを確認するのを優先した。今此処に居るのは六人だから、後二人だな。

後二人の大鬼族についてリムルが(たず)ねると、橙矢は即答する。

 

橙矢「黒おじさんはカイジンおじさんの工房に居るよ。もう()ぐ来る頃だと思うけど...」

リムル「黒おじさん...?」

???「リムル様が目覚めただべか!?」

リグル「お、来た様ですな」

リムル(どう変わったんだろ...!?)

 

リムルは黒い大鬼族の変化に期待を膨らませる。

(ねずみ)色のカーテンを潜って来たのは、紺色の甚平を着ているおっさん。

顔付きは前より穏やかになり、昨日骨付き肉をガブリついていた印象をぶち壊す程に大きく変化していた。

その証拠としてゴツかった体格が、細身(ほそみ)になっている。

 

???「リムル様!キーア様から思念伝達で話を聞いて駆け付けてきたべ。元気になって良かっただよ!」

リムル「おお〜っ!」

黒兵衛「分かっただな?オラ、黒兵衛(クロベエ)だ」

リムル「普通のおっさんになってる!?でも、凄くほっとする!仲良くしような黒兵衛!」

黒兵衛「んだ!」

 

照れながら返事をする黒兵衛。

これで来ていない大鬼族は後一人となった。

 

リムル「...と言いたいところだが、残すは後一人だな。確か、蛮鬼に変身してた黄色い大鬼族だよな?」

キーア「ああ。あいつも、もう直ぐ来ると思うが...」

???「キーア様、橙矢。御免、遅れた!」

シズ「リムルさん、アキノリ君。入るね」

 

鼠色のカーテンを潜り抜けてきたのは、シズさんと黄色い大鬼族だった。

白老と同じく白い二本の角は半分くらいに短くなり、顔付きは活力がありそうな雰囲気を漂わせる。

実姉が来た事に橙矢は喜びの声を上げる。

 

橙矢「あ、姉ちゃん!シズさんまで!」

キーア「待ってたぞ。黄爛(オウラン)

黄爛「うん。リムル様が目覚めたって聞いて、急いで修行の片付けをしてたらちょっと遅れちゃったんだ。その時、シズお姉ちゃんが手伝ってくれて...」

キーア「''シズお姉ちゃん''?まぁ、それは一旦置いといて...これで全員揃ったな?早速だが、本題に入りたい。お前らの持つ変身音叉(おんさ)、変身鬼笛(おにぶえ)、変身鬼弦(きげん)について話がある」

 

俺が音撃戦士に変身する為のアイテムについて話題に出すと、紅丸達は見覚えがあるかの様に姿勢を正す。

 

黄爛「...キーア様は、あたし達と対峙した時に『これを何処で手に入れた?』って言ってたよね?貰ったの。黒いフードを被った、色艶(いろつや)のある怪しい女から」

キーア「怪しい女?」

 

黄爛が頷き、俺は不安の表情を浮かべる。

恐らくその女は俺と同じく異世界人とはいえ、こんな簡単にライダーシステムを入手して他人に与えられる訳がない。

紅丸が俺の前に立って変身鬼弦・音叉・鬼笛の三つを取り出す。

 

キーア「音撃戦士の変身アイテム...まだあったのか」

紅丸「はい。この三つは全て、妹があの女に渡された物です」

黄爛「奴はあたし達にそれぞれ一個ずつくれたけど、姫様にはこの三つを渡して『自分に見合った物で変身しなさい』『残った方は煮るなり焼くなり好きにしなさい。何なら証拠隠滅にしても構わないわ』って去り際に言ってたの。だからこの三つはシズお姉ちゃんや若様、姫様と相談して、リムル様達に預からせてもらう事にしたんだ」

 

赤い大鬼族達はそれぞれ一つずつで、朱菜は全種類か。

この三つは緊急事態以外は保管しておいた方が良さそうだな。

 

キーア「...分かった、この三つは俺が預かろう。この件は後でリムルと相談しておく」

 

俺は今後の戦いに警戒すべく、音撃戦士の変身アイテムを一時的に預かる事にした。

だがその一方で、ジュラの大森林で起きている異変は確実に侵食を続けて行ったのだった...。

転スラ日記のストーリーは...

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