消滅したらネオだった件   作:ライノア

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~これまでの消ネオは...?~

「紫苑...秘書のお仕事はちゃんと出来ているのですか?」

「更に言えば、そのゴブリン達の親玉がスライムと人間だという...」

「吾輩は、蜥蜴人族のガビルである。お前らも配下に加えてやろう...光栄に思うがよいッ!!」

『蜥蜴。この者を倒せたのなら、貴様の話一考してやろう』

「魔物を統べる者よ。そして、世界の破壊者 ディケイド。貴方達に、豚頭帝の討伐を依頼したいのです」


第十二話前編:交渉

KIA SIDE

 

トレイニーさんが浮遊でテーブルからゆっくりと床に着地。

リムルは豚頭帝(オークロード)討伐に口を開く。

 

リムル「豚頭帝の討伐...?」

キーア「俺達がか?」

トレイニー「ええ。そうです」

 

トレイニーさんが穏やかな笑顔で返すと、紅丸が前に出て弁論(べんろん)する。

 

紅丸「いきなり現れて、随分身勝手な物言いじゃないか。樹妖精(ドライアド)のトレイニーとやら...何故この町へ来た?ゴブリンよりも強い種族は居るだろう?」

キーア「確かにそうかもしれないが紅丸。大鬼族(オーガ)の村が健在だったなら、そっちに(おもむ)いていただろう。そうであったとしても、俺とリムルの存在を無視する事は出来ない」

トレイニー「その通りですわ。我々の集落が豚頭帝に狙われれば、樹妖精だけでは抵抗出来ませんの。ですからこうして、強き者に助力を願いに来たのです」

 

リムルは仮説だと思っていた事を呟きながら(あご)に手を当てる。

 

リムル「豚頭帝が居る事態、俺達の中では仮説だったんだけど...」

トレイニー「樹妖精はこの森で起きた事ならば、大抵把握しておりますの...居ますよ。豚頭帝」

 

豚頭帝の存在が事実であると告げたトレイニーさんはテーブルの上にあったポテトチップス一枚を口に運ぶ。

 

リグルド「樹妖精様がお認めに...!」

カイジン「ならば、本当に...」

 

リムルが少し(うな)り、トレイニーさんに返事を待つ様に告げる。

 

リムル「返事は少し待ってくれ。鬼人達の援護はするが、率先して藪を突くつもりはないんだ。情報を整理してから答えさせてくれ。こう見えて、此処の主だからな」

キーア「胸を張って言ってるつもりだが、こいつは半分頭が抜けてるところがある。俺もリムルと同じく、この村の主として成る()く状況を整理してから答えたい」

 

数分後、(いま)だに部屋内にて緊張が走る。

何故ならトレイニーさんがリグルドとカイジンさんの間で優雅に紅茶を飲んでいるからだ。

 

キーア「それじゃあ、会議を続けるぞ。豚頭族達の目的に関して、何か思い当たる事は?」

朱菜「思い当たる事が一つあります。今一度確認しますが蒼影。わたくし達の村...キーア様と調査してきたそうですが、生存者は...」

蒼影「...はい」

 

俺がそう尋ねると、朱菜は(そで)で口を隠しながら心当たりを打ち明けた。

蒼影に再度村の様子を確認すると、肩の力を抜きながら顎を引いて答える。

返事だけで表情を一切変えずに答えた蒼影であったが、その声色(こわいろ)からしてみれば橙矢以外の生存者は居ない事を意味する。

朱菜は蒼影の低い声色を聞いて一瞬で理解してしまった。

 

朱菜「...その様子では橙矢以外の生存者は、居なかったのですね」

蒼影「...はい。橙矢以外の同胞の者も、豚頭族の一人も...」

リムル「何が?いだっ!?」

 

リムルは話を聞いてはいたが、少し手刀で後頭部を軽く叩く。

 

キーア「少しは真面目に察しろよ。要するに、死体の一つもなかったって事だろ?」

蒼影「...はい」

 

蒼影の即答に紅丸は繋げる。

 

紅丸「二十万もの大軍が喰えるだけの食料を、どうやって(まかな)っているのか疑問だったが...」

リムル「それってまさか...!」

キーア「やっと能天気なお前でも飲み込めた様だな。全ては蒼影と紅丸の憶測通りだ。恐らくこれは、ユニークスキルの影響だろう」

トレイニー「...その通りですわ。ユニークスキル『飢餓者(ウエルモノ)』」

「「『飢餓者』...?」」

 

リムルはトレイニーさんが告げたスキルの名を警戒の声色で復唱する。

トレイニーさんがティーカップを皿に置くと、そのスキルについて説明した。

 

トレイニー「世に混乱を招く災厄の魔物...『豚頭帝』が生まれながら保有しているスキルで、豚頭帝の支配下にある全ての者に影響を及ぼし、イナゴの様に周囲の者を食べ尽くし、喰らった相手の力や能力までをも取り込み、自分の(かて)とするのですが...リムル様の捕食者と似ていますわね」

 

冷徹な表情で開眼させたトレイニーさんの碧い瞳が、リムルを凝視する。

 

トレイニー「飢餓者の代償は、満たされる事のない飢餓(きが)感。豚頭族達は果てしない()えを満たし、力を得る為だけに進むのですが...ただそれだけの、彼らの王の望み(ゆえ)に」

 

トレイニーさんはティーカップの中で揺らぐ紅茶を口に入れる。

俺はリムルとの思念伝達で話し合う。

 

リムル(豚頭族の狙いは、大鬼族(オーガ)蜥蜴人族(リザードマン)と云った森の上位種族を滅ぼすことではなく、その力を奪う事...か?)

キーア(流石のお前でも疑問に思うか。俺も飢餓者の能力を聞いて、色々と(かんが)みたが、まさか、な...)

リムル(...キーア?)

キーア(悪い、深く考え過ぎた様だ。この話は会議が終わってからにしよう。()ずは、この気不味い空気を(なご)ませようぜ)

 

俺がそう言うと、リムルは欠伸を混じえて背伸びをする。

 

リムル「さて、となるとだな...うちは安全とは言い(がた)いな」

キーア「牙狼族に鬼人、そしてホブゴブリン。味は()も角、豚頭族達が欲しがりそうなフルコースばかりだ。このポテトチップスも同じで、味が違えば食感が違う様にな」

 

俺は例えでポテトチップスを一枚皆に見せて言う。

 

緑羽「...一番あいつらが狙いそうな(えさ)、忘れてはいませんかねぇ?リムル様」

リムル「えっ、何が?」

黄爛「此処に居るでしょ?最強のスライムと、最強の破壊者が」

リムル「何処に?」

キーア「いやどう聞いてもお前と俺だろーが!?」

 

俺がツッコミに構わず、リムルはポテトチップスを口に運ぶ。

相変わらずの気分屋な態度に我が主はこうでないと、紅丸は笑みを浮かべる。

トレイニーさんはティーカップを置いて話を戻す。

 

トレイニー「...それに、豚頭帝誕生の切っ掛けとして、魔人の存在を確認しております。貴方様方は放っておけない相手かと思いますけど」

リムル「魔人か...」

キーア「これは俺の勝手な憶測だが...恐らく、その魔人はゲルミュッドの事を差している」

トレイニー「ええ。それに、其処の鬼人達は()()()と呼ばれる存在の誘惑に乗り、キーア様の『仮面ライダー』と呼ばれる戦士の力を与えているのは、魔人ではなく人間なのです。その人間も、(いず)れかの魔王の手の物ですから」

 

俺は確認としてシズさんに聞いてみる。

 

キーア「その女も異世界人である可能性が高いという事か...シズさん。一応確認だが、魔王レオンはああいう性格の奴なのか?」

シズ「いや、レオンはこんな事する様な魔王じゃなかった...(はず)だと思う」

キーア「...だろうな。(そもそ)も魔王レオンはライダーシステムを持っている様な奴でもないし、明らかにあの女と呼ばれる存在である可能性が大だ」

 

ジュラの森の出来事は大体把握しているという事か。()れないお人だ。

リムルが(うつむ)いてシズさんの身に起きた悲劇を思い返す中、トレイニーさんは立席して俺達の名前を呼ぶと、直ぐに席から立った。

 

トレイニー「リムル=テンペスト様、並びにキーア・R=テンペスト様」

キーア「...ああ」

トレイニー「改めて豚頭帝の討伐を依頼します。暴風竜ヴェルドラの加護を受け、牙狼族を下し、鬼人を庇護する貴方様方なら、豚頭帝に遅れを取る事はないでしょう...」

キーア「...分かった、俺はあんたを信用する。リムルはどうなんだ?」

 

リムルは流石に信頼(にく)かったのか、少し手に顎を置いて考え込む。

 

キーア「C、D。実際に樹妖精ってどういう存在なんだ?」

 

俺はネオディケイドライバー越しのCとDに樹妖精に関する情報を要求する。

放浪者と同化した影響で、知識は博識なものとなっている。

 

C『樹妖精はジュラの大森林の管理者みたいな存在だよ』

D『不届き者や森に対する害意を持つ者に鉄槌(てっつい)を下すとも言われているそうだ』

キーア(天罰ねぇ...怒らせれば怖い、という事か)

リムル(でもなぁ、二十万だぞ?)

キーア(言い訳ぶってる場合じゃないだろ?少しは自信持てよ。ここまで来たなら、もうやるしかない)

 

リムルは大賢者に思念伝達で愚痴を述べるが、紫苑がリムルに抱き付いてきた。

 

紫苑「当然です!」

リムル「うえぇっ!?」

紫苑「リムル様とキーア様ならば豚頭帝など敵ではありません!」

橙矢「そうだよ!兄ちゃんとリムル様は俺にとっては命の恩人だから!」

 

紫苑と橙矢の奴、大胆に決めつけやがって...。

まぁ、俺も(はな)から受けるつもりだったから今更断る訳にはいかないだろう。

 

トレイニー「まぁ。やはりそうですわね?」

紫苑「ええっ!」

 

その様子を見ていた朱菜は少しジト目で此方(こちら)を見やる。

流石に観念したのかリムルがスライムの姿に戻ると、紫苑が慌てて両手でキャッチする。

 

リムル「...分かったよ。豚頭帝の討伐は俺達が引き受ける」

キーア「お前らもそのつもりで居てくれ」

 

俺達の討伐依頼宣言に、リムル陣営が次々と立ち上がる。

 

朱菜「はいっ!勿論(もちろん)です。リムル様、キーア様!」

紅丸「どうせ最初からそのつもりだ」

シズ「ええ」

カイジン「俺達ゃ、旦那達を信じて付いて行くだけさ」

リグルド「その通りですぞッ!我等の力を見せつけてやりましょう!!」

 

俺の陣営側も同じ気持ちだった。

 

彩月「私達も、出来る限りの事をやるまでです!」

緑羽「これは流離(さすら)っている場合でもないねぇ...」

黄爛「...うん」

トレイニー「...ふふっ」

 

討伐依頼を受けた俺達の和む空気にトレイニーさんは笑みを浮かべた。

覚悟を決めて、俺達は会議を続行した。

 

リムル「豚頭族二十万を相手取るとなると、蜥蜴人族との同盟を前向きに検討したいところだが...使者がアレなんだよなぁ...」

 

呆然とながらも愚痴を(こぼ)しながら()め息を()くリムル。

 

ガビル『我が名は...ガビルッ!!!!』

リムル「話が通じる相手と交渉したいところだが...」

キーア「その事なら、もうとっくに済んでいる」

 

俺がそう言うと、蒼影が席から立つ。

 

蒼影「リムル様。蜥蜴人族の首領に直接話を着けても(よろ)しいですか?」

リムル「蒼影...出来るのか?」

蒼影「...はい」

キーア「それなら蒼影。俺ももう一つの代表として、緑羽を連れて同行したい」

 

俺の同行宣言に、全員が驚愕する。

 

蒼影「キーア様もですか?」

キーア「同盟は俺かリムルが直接の何方かを直接見ないと、交渉は困難だ。俺が同行すればてっとり早いだろ?」

リムル「...分かった。蜥蜴人族と合流し、豚頭族を叩く。決戦は、蜥蜴人族の支配領域である湿地帯になるだろう...これは蜥蜴人族との共同戦線が前提条件だ。頼んだぞ蒼影、緑羽。キーアも二人の事をちゃんと見とけよ?」

キーア「分かってる。それじゃ、ちょっくら行って来る」

黄爛「キーア様。気を付けてね...」

 

黄爛に見送られながら俺と緑羽は蒼影の肩に手を乗せ、影移動で蜥蜴人族の居る場所まで瞬間移動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Gabiru side

 

耳から虫が(かな)でる音色が耳に伝い、吾輩(わがはい)は低く唸りながらも意識が覚醒した。

視界には夜空を移し、無数に散らばった星の輝きによって夜空を迷彩させる。

 

ガビル「......」

水色服の蜥蜴人族「ガビル様ぁ〜!」

ガビル「ぬわあっ!?」

 

起き上がると同時に部下の一人が泣き付いてきた為か、吾輩は再度仰向けとなる。

その声に呼応したのか、部下の二人が吾輩の無事を安(あんど)していた。

 

茶色い軽装甲の蜥蜴人族「やっと起きたかよ」

水色服の蜥蜴人族「うわぁ〜ん!ガビル様ぁ〜!」

ガビル「こ、此処は...!?」

 

吾輩は部下の体重に(あらが)って起き上がりつつmも辺りを見渡す。

どうやら部下達は吾輩が目を覚ますまで、ずっとこの森に居た様だ。

 

ガビル「そうだ。吾輩は...あの巫山戯(ふざけ)た顔の男に!」

 

何が起きたのかを思い出すのに(しば)しの時を要したが、同時に憤慨さを覚える。

ゲルミュッド様と同行していたシエリ様から授かった仮面ライダーと呼ばれる戦士の力。

それを一時的に奪われ、ホブゴブリンが戦極(せんごく)ドライバーとロックシードで変身した新たなライダーに後頭部を強く殴打され、吾輩の意識は一時的に飛んでいた。

泣き付く部下の頭を()でながら吾輩は確信した。あのホブゴブリンこそがこの町の真の首領なのだと。

 

ガビル「...うん。すっかり(だま)されたわ」

水色服の蜥蜴人族「ど、どゆこと?」

 

吾輩はゆっくりと立ち上がりながら即答する。

 

ガビル「...簡単な事よ。吾輩を制したあの者こそ、あの村の本当の主に違いないッ!」

「「「何とっ!?」」」

茶色い軽装甲の蜥蜴人族「あれが?」

水色服の蜥蜴人族「そうでないとガビル様負けたりしないよ!」

忍者服の蜥蜴人族「(しか)り」

 

部下達は身を寄せ集めながら、あのスライムと人間の施策に騙されたのだと語る。

 

水色服の蜥蜴人族「汚い!騙してガビル様の油断を誘うだなんて!」

忍者服の蜥蜴人族「卑怯なり!」

茶色い軽装甲の蜥蜴人族「巫山戯んな!!」

ガビル「まぁ落ち着け。弱者なりの知恵というものだろう...」

 

興奮状態に陥っている部下達を吾輩は(いさ)める。

 

忍者服の蜥蜴人族「器の大きさ、山の如し!」

茶色い軽装甲の蜥蜴人族「流石ガビル様!」

水色服の蜥蜴人族「よっ、次期首領!」

???「いやぁ〜。カッコええなぁ、ガビルはん!」

ガビル「いやいや。吾輩などそれほどでも————って、何!?なぁっ...!?」

 

聞き覚えのない陽気な声が耳に入り、背後を振り返ると其処には見知らぬ男が吾輩に拍手を送っていた。

紫を基調とした(しま)模様の服を(まと)い、赤い髪が左右に垂れる。

独特な被り物を頭に被り、顔には左目を閉じている黒い道化師の仮面を付けている。

 

水色服の蜥蜴人族「最初から居たよこの人」

???「聞いた通りええ男前やないか!」

 

謎の男は丁重な態度で自己紹介を始める。

 

ラプラス「わいはラプラスと云う者です」

ガビル「ラプラス...?」

ラプラス 「ゲルミュッド様とシエリ様の使いで、あんたに警告をしに来たんや」

ガビル「おおっ!ゲルミュッド様とシエリ様の...!!」

 

ゲルミュッド様と顔見知りなお方だと聞き、吾輩は盛大に声を上げる。

 

水色服の蜥蜴人族「ゲルミュッド様とシエリ様って...?」

忍者服の蜥蜴人族「ガビル様に名と仮面ライダーの力を授けたと云うお方だ」

ガビル「御足労(そくろう)をお掛けしたな。して、ゲルミュッド様とシエリ様の警告とは?」

ラプラス 「これが(また)偉い事になっとるんですわ!」

 

そう言いながらラプラス殿は大袈(げさ)に体を回転させつつ、吾輩の前に立って警告を(うなが)す。

 

ラプラス「今回の豚頭族の軍勢...どうやら本当に豚頭帝が率いてるらしいでっせ」

「「「豚頭帝!!?」」」

 

取り巻きの三人は驚愕の声を上げ、部下達は一斉にざわつき始める。

吾輩は冷静な態度でラプラス殿の話を聞き入れる。

 

ラプラス「蜥蜴人族の首領は出来たお人やけど...もうかなりのお年やし。正直なとこ、お父上と荷が重いんとちゃいます?」

ガビル「......」

 

ラプラス殿の視線を合わせた吾輩は、目を細める。

やはり吾輩に関する事は、ゲルミュッド様とシエリ様を通じて全てお見通しと云う事か。

ならば、話は早い。

 

ガビル「豚頭族軍撃退の後に、首領の座を受け継ごうと思っていたが...それでは間に合わん様だな!」

ラプラス 「せやせや!」

 

ラプラス殿は小刻みに頷き、吾輩達は早速湿地帯に戻るべく走蜥蜴(ホバーリザード)に早々と(また)がる。

 

ガビル「ラプラス殿。挨拶(あいさつ)もそこそこだが、吾輩達は————「ええってええって!湿地帯に戻りはるんやろ?はよ行った方がええで?」...(かたじけな)い。出発するぞ!!」

ガビルの部下達『おおーっ!!』

 

部下達と共に、吾輩は湿地帯に戻るべく走蜥蜴を走行させた...。

 

ラプラス 「...精々頑張りや。ガビルはん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

KIA SIDE

 

キーア「...一体何があった?」

リムル「聞くなッ!!」

 

俺が帰って来た際には、リムルが女性陣に着せ替え人形の様に女性ものの服を着せられていた。

事情を聞いてみたが、恥ずかしさの余りにリムルはこれ以上の深堀りはするなと念を押す。

一応、紅丸達の新しい衣装はガルムさん達に受注済みだ。

辛辣(しんらつ)な表情で口角を下げる中、唯一リムルの着せ替えに参加していない黄爛が俺に声を掛けてきた。

その端には緑羽と橙矢が居る。

 

黄爛「ねぇ、キーア様。ちょっと話があるんだけど...いいかな?」

キーア「分かった、どうやらお前も心当たりがあるみたいだな...悪いリムル。一旦抜けるぞ」

 

俺はリムルに一言掛けて、宿を後にする。

 

キーア「それで、話ってのは何だ?」

黄爛「...うん。実はね————」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

NO SIDE

 

豚頭族達『蹂躙(じゅうりん)せよ!蹂躙せよ!蹂躙せよ!蹂躙せよ!』

 

声高に叫びながら目を血の様に(にご)らせて、豚頭族の軍隊は湿地帯を進軍していく。

彼等に正常な思考は存在せず、目に映る動くものは全て餌である。

彼等は常に空腹であり、彼等の思考は餌を食べると云うその一点に集約される。

蜥蜴人族の首領は玉座に座って瞑目(めいもく)する中、親衛隊隊長が心配の声を上げる。

 

親衛隊長「...首領。如何致しましょう?」

副隊長「豚頭族軍が徐々に迫って来ておりますが...」

蜥蜴人族首領「籠城(ろうじょう)するしかあるまい。二十万の豚頭族に(すべ)はない...」

 

豚頭帝が出現したのならば、自分達と同格の強さになっている可能性すらあった。

数の有利さで此方が疲弊(ひへい)したところを攻められるだけでも厳しいと云うのに、一兵辺りの戦力に差が無くなったとしたら勝ち目が無くなる。

豚頭帝の存在が有るならば、兵糧が無くなる事に期待は出来ない。

援軍に当てがあるなら籠城も有効だが、出口を封鎖されたら飢死(がし)するのは此方である。

 

蜥蜴人族「首領ーっ!首領!侵入者です!首領に会わせろと...!」

 

苦渋の決断を()いられる中、首領は開眼する。

何故なら部下が慌てて侵入者の情報を伝達しにきたからだ。

王室の側にいた護衛が槍を構え、親衛姉妹と副隊長は警戒心を高める。

 

蜥蜴人族首領「...会おう。連れて参れ」

親衛隊長の妹「父上。流石に危険なのでは?」

蜥蜴人族首領「其方(そなた)らも感じるか?この妖気...」

副隊長「はい、只者(ただもの)ではありません。これは、蜥蜴人族の精鋭百体で掛かったとしても...!」

 

(かつ)て感じた事の無い強力なオーラを漂わせる存在の接近を感知した。

首領はその隠す気の無い妖気を感じ、抵抗しない方が良い事を悟る。

警戒しながら待つ事暫し、首領と対面がしたいと語る侵入者が姿を現す。

影を擦り抜ける様に二人の魔物が現れる。

浅黒い肌に青黒い髪。額には白い角、青い瞳を持つ身長190cm程の背丈がある魔物。

浅白い肌に緑の結び髪。同じく額には角を持つが色は黒で、薄紫色の瞳を持つ美形の魔物。

二人の魔物の中心に立っているのは髪を丸刈りにした中年体躯の男。

その者達の持つ雰囲気は泰然(たいぜん)としていて掴み所が無い。

圧倒的な力を感じさせ、周囲には戦士百名程が首領の命令で一斉に飛び掛かれる様に身構えて

いる。

 

蜥蜴人族首領「...失礼、今取り込んでおりましてな。お持てなしも出来ませぬ」

 

首領の言葉に気色ばんだのは、まだ若い蜥蜴人族の戦士達。

この様な怪しい魔物を連れている人間に謙る必要などないと思っていた。

だが、首領はその感情を好ましく思ったが今は不味いとも感じている。

この者達の機嫌を損ねれば、鏖殺(おうさつ)される恐れがあるからだ。

まだ若い戦士達には圧倒的に経験が足りない。相手の力量を把握する能力に欠けているのである。

首領の様に長く生き、そうした危機意識を発達させていないが故に、目前の魔物の実力を把握出来ていない。

だが、そんな首領の考えを見通していたのか、二人の魔物は牛歩しながら口を開く。

 

蒼影「気(づか)いは無用だ。俺達は単なる使者...我が主人の言葉を伝えに来ただけなのでな」

 

それだけを伝えると、首領は視線を側に居る親衛姉妹と副隊長に送る。

部下達もそれに応じて警戒心を解き、矛を収める。

 

蜥蜴人族首領「...して、用件は?」

緑羽「我が主達は、蜥蜴人族との同盟を望んでおります」

蜥蜴人族首領「同盟?はて、其方達の主は儂は知らんのだがねぇ...」

キーア「その主人というのが、この俺、キーア・R=テンペスト。そして相棒のリムル=テンペストの二人です。樹妖精様から直接要請を受け、豚頭族軍討伐の依頼を受けております」

 

その言葉に全員が目を見開く。

 

蜥蜴人族首領「森の管理者が、直接...!?」

キーア「ええ。豚頭族を率いているのは、貴方の予測通り...豚頭帝です」

蜥蜴人族戦士A「豚頭帝...!?」

キーア「この意味を踏まえて、よく検討しておく様に」

 

気にする事では無いという態度を崩さずに、言い放って来た。

簡潔な内容は兎も角、一方的で明確な言葉に首領は思考を巡らす。

魔物を従える存在の一人が人間。その様な存在が味方に付いてくれるならば、(ある)いは豚頭帝にも対抗し得るのではないかと。

同盟と言うからには一方的な隷属(れいぞく)ではないという事。対等な関係として扱ってくれるだろう。

この話を受けるしかないと思った刹那、蜥蜴人族の兵士が突然鼻で笑って抗議してきた。

 

蜥蜴人族兵士A「はっ!リムルだと?聞いた事もない!どうせそいつも、この人間と同じで豚頭帝を恐れて泣き付いてきたんだろう!?素直に『助けてくれ』と言えば良い物を...!」

蜥蜴人族首領「止めろ。口を(つつし)むのだ」

蜥蜴人族兵士A「しゅ、首領!その様な態度では、舐められ————こ、これは...!?」

 

ゴブリンの協力を取り付けに行かせたガビル配下の者で、首領は舌打ちしたい気分に囚われる。

(いく)ら相手の実力が(わか)らないからと言って、自らの尺度で同盟の申し出を勝手に断ろうとするとは言語同断。

兵士が蒼影に手を出そうとした矢先に首筋から血が出ているのを確信した。

緑羽が(つばめ)返しの構えに入り、兵士はその場で身動きが取れずに蒼影の出した鋼糸(こうし)が徐々に食い込む。

この場で切り捨てられるか、首を()ねられるか。迫る二つの選択肢(公開処刑)に兵士は惶怖(こうふ)する。

 

キーア「止めねぇか蒼影、緑羽!何も俺は其処までやれと言ってはいない。主を愚弄(ぐろう)されて(いか)る気持ちは分からなくもないが、一人でも殺せば余計に交渉し難くなる」

「「ッ...!」」

 

キーアの制止の怒声に蒼影は鋼糸を緩め、緑羽は刀から手を離す。

 

キーア「おい。これやるから軽く手当てしてやれ」

 

命拾いをした兵士はその場で尻餅を突き、キーアは包帯を兵士に駆け寄った一人の蜥蜴人族に投げ渡す。

キーアは(ひざまず)きながら頭を下げて首領に謝礼を示す。確かに相手に非礼な部分があるのは事実だが、相手は使者。何の権限も無い者達が無礼を働いても良い理由にはならない。

しかも相手の非礼についても、圧倒的に格上の者が自ら出向いて来た事により相殺(そうさい)されているのだ。

血気盛んな性格の者達だと思い込み、交渉には向かないだろうと連れて行かせなかったのだが、それが裏目に出てしまった。

二人の魔物は目を()らすことなく首領を見つめたままだった。騒ぎ立てた兵士を相手にする気など全くなかった。

首領は安堵(あんど)した。一部の大局が見えない者のせいで、この話が流れる事があってはならない。

 

キーア「対等な話であるのにも関わらず、うちの部下が無礼を申した事は()びます。俺が止めていなかったら、其処の兵士は迷わず首を刎ねられた上で全身を切り刻まれていた事でしょう」

蜥蜴人族首領「うむ。見たところ、其方の左右に居るのは南西に暮らす大鬼族であろう?」

 

首領の尋ねに緑羽は即答する。

 

緑羽「合っていますが、半分違いますねぇ...我が二人の主人から蒼影と緑羽の名を貰った上に、鬼人へと進化した身で御座(ござ)います」

蜥蜴人族首領「鬼人...?」

親衛隊長「大鬼族の中から、稀に生まれるという上位種族...!」

親衛隊長の妹「まさか、本当に実在していたなんて...!」

 

緑羽の説明に首領と、二人の体調は驚(きょうがく)する。

 

蜥蜴人族首領「ならば、其方達に名を与えた其処の人間と同じく、もう一人の主人はそれ以上の存在...という訳か。蒼影と緑羽とやら、そしてキーア殿...一つ条件がある」

キーア「聞きましょう」

蜥蜴人族首領「其方のもう一人の主人、リムル=テンペストと会いたい」

キーア「(うけたまわ)りました。では俺達は準備を整え次第、七日後...一週間後には此方へ合流致します。その時に必ず、俺の戦友であるリムルとの対面の機会を与えると約束しましょう。それまでは決して先走って戦闘を仕掛ける事のない様に」

蜥蜴人族首領「...承知した」

 

交渉が完了したらその場を後にするだけだが、キーアは一旦足を止めて振り返らずに警告を促す。

 

キーア「最後に一つ、リムルから貴方への伝言です。『背後には気を付けろ』と...」

 

気を取り直してキーアはアタッシュケースを放り投げ、蒼影と緑羽の肩に捕まると音もなく闇に溶ける様に消えた。豚頭族達も強化されるかもしれないが、此方にも援軍が来るのだ。

どの程度の援軍かは知らないが、少なくとも、キーアという名の人間が蒼影と緑羽という鬼人を連れているなら十分な助けになる。

ほんの僅かな可能性にかけて打って出るよりも、援軍を待ち戦力を温存する方が賢い。

首領は安堵の表情を浮かべながら玉座に座り、親衛隊長姉妹と副隊長に戦士達を召集する様に命じる。

 

親衛隊長、副隊長「「首領!」」

親衛隊長の妹「お父さん!」

蜥蜴人族首領「...どうにか、光明(こうみょう)が見えた様だ。皆を集めろ」

 

微かな希望を胸に、首領は召集した戦士達に宣言する。

 

蜥蜴人族首領「既に、この地下大洞窟(どうくつ)まで迫って来ている。だが、恐れる事はない。七日後には、強力な援軍が見込める。それでは、我々は籠城し戦力を温存するのだ。間違っても攻撃に打って出ようなどと思うな。戦死すれば、餌になり奴等の力が増すと思え!それが、豚頭帝を相手に戦うと云う事だ」

 

首領は自身の持つ水渦槍(ボルテックススピア)を地面を突いて続ける。

 

蜥蜴人族首領「援軍と合流した後、反撃に転じる。その時まで耐えるのだ!誰一人死ぬ事は許さん!!」

蜥蜴人族兵士達『おおーっ!!』

 

蜥蜴人族の戦士達は雄叫びを上げ、来るべき決戦に向けて深く静かに迷宮に潜むのだった。

オークロード戦 手前のオーバーキルは・・・

  • オーズとビルドの一人ライダー大戦
  • ファイナルフォームライド大集合
  • もういっそのこと全部やれ
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