消滅したらネオだった件   作:ライノア

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~これまでの消ネオは...?~

「貴様が魔王 豚頭魔王になって、このジュラの森を支配するのだ!」

「ゲルミュッド!あんたみたいな奴は、此処であたし達がぶっ潰す!!」

「俺は豚頭魔王!この世の全てを喰らう者なり!!名をゲルド...魔王、ゲルドである!!」

「だから貴方も...生きて罪を償えるなら、その道を捨てないでほしい」

「十大魔王が人柱 人形傀儡師 クレイマンに、其処まで言わせるとはねぇ...」



第三章:出来た街、新たな災厄
第十五話前編:ジュラの森大同盟


豚頭帝(オークロード)討伐後の早朝(そうちょう)。俺とリムルは街の様子を見るべく、オーロラカーテンで一時的に帰ってきた。

 

キーア「リグルド、彩月。村の警護ご苦労だったな」

リグルド「リムル様、キーア様!?」

彩月「いつ戻られたのですか!?」

リムル「キーアのオーロラカーテンで一時的にな。村の皆は?」

リグルド「見ての通り全員ご無事です!帰って来たという事は、豚頭帝を討伐し終えたのですね!?直ぐに(うたげ)の準備を———」

 

リグルドの早とちりに俺は()ぐに平静に事柄(ことがら)の内容を話す。

 

キーア「落ち着けリグルド、宴は一ヶ月後に行えばいい。皆、俺達の事を心配してると思って報告しに来たんだが、直ぐに戻らないといけなくてな...」

リグルド「何とッ!?」

リムル「今、湿地帯の大洞窟(どうくつ)で戦後の話し合いをしようとしているから、早くそっちに戻らないといけない。朱菜達の方には『これから忙しくなるから覚悟はしておけ』と伝えておいてくれ」

彩月「分かりました。ですが、少しくらい休まれてからでも...」

 

彩月はリグルドの次に俺達に気を(つか)ってくれているが、そう気長に休める程の時間は今の俺達にはなかった。

 

リムル「俺達だって休みたいけどな。苦手な仕事が待ってるんだよ」

キーア「俺もリムルも戦後処理の対応をしなければならない。どうせ休むなら、会議が終わってからにしたいしな」

彩月「そうですか...分かりました。会議、頑張って下さい!」

キーア「ああ、お前らの顔が見れて安心した。気を遣ってくれて有難な」

 

そう言って俺は出現させたオーロラカーテンを潜り、ジュラの湿地帯にある大洞窟に戻るのだった。

毎度思うが、戦う事よりも戦後の後始末は一番大変だ。

こういう会議はこれまでの旅で(かつ)ての旅仲間である雄大や冬海のお陰で何とか乗り切れたが、今回は二人は居ない。()してや本来のディエンドの変身者であるレグレットも居ない。

あの三人が居ないのはとても心(さみ)しいが、一人の代表としてやらなければならない。

豚頭魔王(オークディザスター)こと鬼餓(きが)蘇芳(すおう)討伐の翌日。

湿地帯大洞窟で、首領さんの部屋を借りて会議を行う形となった。

 

会議に参加しているのは俺とリムル。

紅丸、蒼影、紫苑、白老、黄爛、緑羽、橙矢の鬼人族七人とシズさん。

蜥蜴人族からは首領さん、親衛姉妹、副隊長の三人。

一方でガビルは反逆罪で牢獄に入れられていた。親子とはいえ、示しが付かないとまずいんだろうな。

トレイニーさんとガビルに連れられたゴブリン隊数名。

そして最後に豚頭族(オーク)からはゲルド王の息子と、Cに命を拾われた元豚頭将軍。そして部族連合代表の十大族長達。

豚頭族達の顔色が悪く、沈鬱(ちんうつ)な表情で(うつむ)いている。

飢餓者(ウエルモノ)の影響がなくなり、理性的な様子な分だけ麻痺(まひ)していた罪の意識も出てきている。

今でも死にそうな表情をしているが、今回の騒乱の原因となったのは豚頭族だ。(いく)ら豚頭帝に操られていたとは云えど、彼等に責任が無いという事にはならない。

それを理解しているからこそ、表情が優れない。更には持ち込んだ食料が底を尽きかけているのも原因の一つでもある。

 

共食いによるスキルの影響を受け、()えながらも進撃が可能だっただけに過ぎず、能力の影響下から出て共食いなんて普通なら出来るものではない。

彼らの抜き差しならぬ現状が重い空気を作り出し、戦争責任を追求されても仕方がなく賠償(ばいしょう)など行う能力もない。

それどころか氏族を飢えさせている現状をどうする事も出来なかったのが、戦争の根本的原因だ。

どのみち数が減ったとは言え(いま)だに18万もの兵が居る。飢えさせず全員に渡る食料はない。

それだけの兵がいても、戦争を継続する能力がない事こそが、豚頭族の追い詰められた状況を証明していた。

飢餓者の影響下になければ、本当に飢えて死ぬだけだった。

その18万と云う数は女性や若者。子供までを含め、ガタキリバやニンニンコミック達が切り落とした生首や四肢を(まと)めてフェニックスロボで生き返らせた者も含まれている。

リムルはスライム状態で紫苑の(ひざ)と胸に挟まれているが、何も問題はないので良しとした。

(そもそ)も鬼餓蘇芳を倒す際に正体はバレているため、今更隠す必要もなかった。

 

トレイニー「それでは議長 リムル=テンペストさん、並びに補佐キーア・R=テンペストさん。始めて下さい」

キーア「...はい」

 

俺は背筋を伸ばしながら返事をする。

会議は重々しい空気で開始される中、トレイニーさんは期待の笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

OP『メグルモノ/寺島拓篤』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その他の者達も同様に俺達に視線を向ける。

リムルは転生前はサラリーマンであったと話してくれたが、どうやらこういう雰囲気は苦手で慣れていない。

俺でも内心緊張してるんだ、その気持ちは分からなくもない。

さっきも言ったが、俺はこれまでの旅で雄大や冬美、本来のディエンドの変身者であるレグレットが居たからこそ何とか乗り切った。

だが、あの三人はもう居ない。一人の盟主の補佐として、黙って何も言えないと()った心の中での言い訳は出来ないのだから。

 

リムル「えー。こういう会議は初めてで、苦手なんだ。だから思った事だけを言う。その後、皆で検討して欲しい。最初に明言するが、俺は豚頭族に罪を問う考えはない」

ゲルドの息子「っ!?」

 

そう前置きしてからリムルは自分の考えを話し出すと、豚頭族達は一瞬だけざわつき始める。

 

リムル「被害の大きい蜥蜴人族(リザードマン)からしたら不服だろうが、聞いてくれ。抑もの原因は、飢饉(ききん)による飢餓(きが)だ。同じ立場だったならば、他の種族の者であっても同様の判断をしたかもしれない」

キーア「...と、云うのは建前(たてまえ)なんだろ?リムル」

首領「...では、本音を(うかが)っても(よろ)しいかな?」

 

首領さんの質問に、俺は一礼してからリムルと共に口を開く。

 

「「豚頭族の罪は、全て俺達が引き受けた。文句があるなら俺達に言え」」

ゲルドの息子「お、お待ち頂きたい!幾ら何でも、それでは道理が...!!」

キーア「それが、俺達がゲルド王と()わした約束だ」

 

魔王ゲルドとしてではなく、オービッグの王としてのゲルドと交わした約束だと言い切る。

席から立ったゲルドの息子は膝から崩れ落ちる様に着席し、豚頭族達は再び顔を俯かせる。

 

首領「()る程。しかし、それは少々(ずる)いお答えですな」

 

首領さんも腕を組みながら受け入れてくれているものの、同じ一族を纏める立場として少し疑問点があった。

だが、此処で俺達が引き下がれる訳がない。

 

キーア「まぁ、そう簡単には受け入れられないでしょう。ですが、一つだけ言える事があります。紅丸、黄爛」

 

紅丸と黄爛が俺達に視線を合わせつつ前に出て、俺の言おうとした事を代弁する。

 

紅丸「魔物に共通する唯一不変のルールがある」

黄爛「弱肉強食。立ち向かった時点で覚悟は出来ていた(はず)だよ」

キーア「お前らも里を滅ぼされた身でもあるが、文句はないんだろ?」

黄爛「ないって云うなら嘘になるけど、()し次があるなら同じ不格好(ふかっこう)(さら)せないよ」

 

その視線は蜥蜴人族達に向けられていた。

実際にBが蒼影と緑羽の三人で、豚頭族に戦意喪失するまで立ち向かっていた光景を目撃していた。

この言葉は魔物であるからこそ言えるが、人間だったならばそれはケダモノの論理でしかならない。

 

副隊長「...弱肉強食、確かに正論ですね。此処で駄々を()ねてしまっては、蜥蜴人族としての沽券(こけん)は大いに下がるでしょう」

キーア「首領さんも宜しいのですか?」

首領「元よりこの戦の勝者はリムル様とキーア様です。貴方方の決定に、異論などありません。ですが、一つ...どうしても確認させて頂きたい」

キーア「...聞きましょう」

首領「豚頭族をどうなさるのですか?豚頭族の罪を問わぬと云う事は、生き残った彼ら...全てを受け入れるおつもりですか?」

 

豚頭族達の罪を受け入れる理由に少しだけ疑問を抱く首領さん。

この立場が人間だったならば、こうはいかなかったかもしれないな。

全員が生き残る為に、俺はゆっくりと席から立って即答する。

 

キーア「...確かに数は減ったとは云え、18万は下らないでしょう...其処でです。リムルと事前に話し合って決めたのですが、皆で協力出来ればと思っております」

首領「協力...」

親衛隊長の妹「と言いますと...?」

キーア「それについてはリムルが話しますので」

 

俺は腕に抱えていたリムルを紫苑に返すと、一二歩後ろに下がって着席した。

 

リムル「蜥蜴人族からは良質の水資源と魚を、ゴブリンからは住む場所を、俺達の街からは加工品を提供する。そしてその見返りとして、豚頭族からは労働力を提供してもらう」

 

豚頭族達が一斉に声を上げる。

 

リムル「ジュラの森の各種族間で大同盟を結び、相互に協力関係を(きづ)く。他種族共生国家とか出来たら、面白いと思うんだけどなぁ...!」

ゲルドの息子「わ、我々が、その同盟に参加して頂ける...と?」

 

恐る恐るゲルドの息子が問い掛ける。

 

キーア「帰る場所も行く当てもないんだろ?居場所を用意してやるから、無理しない程度に働け。後、サボる事は許しまへんで?」

豚頭族の代表達『ははっ!!』

 

自分達に居場所を用意してくれた事への感激に震え、涙を目に浮かべた豚頭族達は正座をしながら頭を大きく下げる。

 

ゲルドの息子「勿論...勿論ですとも!命()けで働かせてもらいます!!」

キーア「命じゃあなく、全身全霊を()けろよ?首領さんも、それで宜しいですね?」

首領「うむ。是非、協力させて頂きたい」

 

首領さんも力強く頷く。これで計画への参入に乗り気であるらしい。

皆の同意を得て、ジュラの森大同盟は成立に向けて動き出せる。

 

リムル「トレイニーさんもいいかな?」

トレイニー「宜しいでしょう...わたくしの属するトレント族からも、森の実りを提供致しましょう。当面、豚頭族達の飢えを(いや)す事が出来るかと思います」

豚頭族達『おおっ...!!』

 

一族全員が飢饉からへの解放感で、口を開けて涙を流す。

これで豚頭族達の飢餓問題は解決だな。

 

トレイニー「...では、森の管理者として、わたくしトレイニーが宣誓します。リムル様をジュラの大森林の新たな盟主、キーア様をその補佐として認め...」

リムル(盟主!?)

トレイニー「盟主リムル様と補佐キーア様の名の下に、ジュラの森大同盟は成立致しました」

 

トレイニーさんに続き、紅丸達が俺達に(ひざまず)く。

リムルは突然盟主に選ばれた事への理解が追い付かず、冷や汗を流す。

 

リムル(え、ちょっ!?な、何か俺盟主にされちゃったけど...トレイニーさんじゃないのぉっ!?)

キーア(良かったなリムル、お前盟主だってよ。これからお前の補佐として、俺がお前の間抜け癖を徐々に治してやるから精々覚悟しておけよな?)

 

思念伝達で俺に煽られたリムルはヤケクソ気味で盟主の座を受け入れた。

お前にも期待してるぞ、リムル様(相棒)

 

リムル「(覚悟って...い、いいよ。やるよ!やりますよ!破壊者様の教育でも何でも受けてやりますよ!)じゃあ、あの...そういう事みたいなんで皆宜しく頼む!」

キーア「野郎共!これからの頑張りに期待しているぞ!!」

 

こうして、冷や汗が止まらないリムルを置き去りにジュラの森大同盟が成立したのだった。

参加種族は、リムルと愉快な仲間達。

ゴブリン、蜥蜴人族、豚頭族、樹人族(トレント)

この同盟の盟主には、なし崩し的にリムルが着く事となった。

この日、リムルと俺の名前が初めて歴史に刻まれたのである。

そしてインターバルを挟む中、俺は首領さんとトレイニーさん。B達イリュージョンズはリムルの所に赴く。

 

首領「これはこれはキーア様。どう致しましたかな?」

キーア「首領さん、一つだけお(たず)ね申し上げたい。ガビルは...牢獄に囚われている貴方の息子さんは一体どうなるのでしょうか?」

首領「キーア様の介入もあって蜥蜴人族の戦士達は誰一人死ぬ事はなかった。それ(ゆえ)(わし)幽閉(ゆうへい)した罪も含め本来ならば死罪になるのが当然でしょう。だが、息子は息子なりに一族と儂を思って行った行動...ですから、キーア様からしてみれば甘いと言われるかもしれませんが破門とし追放するつもりです」

 

やはりそういうつもりだったか。

あの時CとDを湿地隊に置いて正解だった。

それに、俺としても都合が良過ぎだ。

 

キーア「そうですか...ですが、俺にとっては丁度良い機会です。どうせ追放するおつもりであるならば、俺達の街に来る様、仕向けてくれませんか?」

首領「それは、どう云う...?」

キーア「初めて会った時の印象なんですが、かなりのお調子者でした。ですが、例え無様な姿を晒したとしても、仲間を思い助ける姿に一騎討ちで戦っている姿はとても勇敢に思えました。確かに彼はお調子者ですが、それらを除けば実力もあるし根は真面目です。そんな人材を失うのは惜しいと思って助けたまでですから」

首領「少し調子に乗るところは否定出来ませぬな。しかし、息子をそんなに評価して頂いていたとは...分かりました。それで、用は息子の件だけではありませんな?」

 

流石は首領さんだ。トレイニーさんの気配を既に(とら)えていたか。

俺が背後に目を()ると、トレイニーさんが姿を現す。

 

キーア「トレイニーさんなら、分かってるんじゃないですか?」

トレイニー「...はい。キーア様がわたくしに話したい事、それは魔王ゲルドの復活の件についてですね?」

 

トレイニーさんの話に俺はとあるライダーカードを取り出すと、首領さんは驚愕(きょうがく)で目を見開く。

そのライダーカードには、進化前のゲルドの姿が描かれていたからだ。

 

首領「キーア様、それは...!?」

キーア「首領さん、落ち着いて聞いて下さい。確かにゲルド王はリムルによって捕食されました。ですが、それは飽く(まで)肉体だけであって魂は俺が保護しました」

首領「いやはや、まさか魂をその様な札に変えるとは...!」

トレイニー「成る程。キーア様は、わたくし達に()()()()()()()()()()()()()()()()()...そう仰りたいのですね?」

キーア「ええ、今からそれを証拠として見せます。魔王ゲルド...否、ゲルド王の記憶と覚悟の姿を」

 

俺は思念伝達で首領さんとトレイニーさんにゲルドの記憶を見せる。

(ひび)割れた大地の中、()せ細った子供達に引きちぎった片腕を喰わせた事。

ジュラの森に(おもむ)く際に倒れ、ゲルミュッドと姫崎に出会い仮面ライダー鬼餓になってしまった事。

そして精神世界に侵入した俺達と約束を交わし、謝意の言葉を伝えながら魂が保護された事。

 

首領「まさか、これ程までとは...」

トレイニー「話を聞くのと見るのでは、やはり違いますね」

 

その光景を見た二人は悲しげな表情となる。

 

キーア「今見て頂いた通り、俺はゲルド王と約束しました。だからこそ、二人にはその復活を認めて頂きたいのです」

首領「成る程。魔王ゲルドが変貌した鬼餓蘇芳とやらは既にリムル様によって倒された。なら、これから蘇るとしてもそれは魔王ゲルドでも鬼餓蘇芳でもありませんな。それに、先程見せてもらった魔王ゲルドの決意は同じ一族を纏める者として気持ちは分かる。儂は復活を認めましょう...」

トレイニー「わたくしも異論はありません。豚頭帝の討伐を依頼したのは、飢餓者によるこの森の危機を救う為ですから」

キーア「お二人のご協力、感謝致します...!」

首領「感謝したいのは此方(こちら)ですな。息子の事を...頼みます」

 

俺はお辞儀をすると、首領さんにガビルの事を任せられた。

 

キーア「...そうだ。首領さんに名を与えたいのですが、如何なさいますか?」

首領「何と!儂に名を!?」

キーア「ええ。これからも一族を纏め上げる為にも必要な事ですし」

トレイニー「そうですね。わたくしも良いと思います」

首領「...では、喜んで名を貰いましょう」

 

こうして二人にゲルド王の復活を認めてもらい、首領さんにはアビルの名を授けた。

ガビルの名前の由来は鰐の仲間であるガビアルから由来しているのか、五十音に(なら)って付けさせてもらった。

その一方で、イリュージョンズ達は...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

C SIDE

 

俺達イリュージョンズは大洞窟を出ようとした紅丸達を呼び止めるゲルドの息子を見掛けた。その隣にはゲルド王に喰われかけたところを俺が助けた豚頭将軍。

常時灰色のマフラーがトレードマークだったから、見ただけで分かり(やす)かった。

 

マフラーの豚頭族「大鬼族(オーガ)...いや、鬼人の方々よ」

紅丸「...何か用か?」

 

罪の意識はまだあったのか、ゲルドの息子はフードで顔を(おお)い、マフラーの豚頭族は口を覆っている。

 

マフラーの豚頭族「...本当は、今でも里を襲った豚頭族を根絶やしにしたいのだろう?」

ゲルドの息子「弱肉強食とは云っても、憎しみはそう簡単に割り切れるものではない。我らは、 大鬼族の里を...!」

 

二人の豚頭族は頭を下げる。

 

マフラーの豚頭族「あの赤い(うさぎ)の戦士に命拾いした事、()びて...詫びきれはしない。虫のいい話であるのは重々承知している」

ゲルドの息子「だが、どうかこの首二つでご容赦願えないだろうか...!?」

 

二人は死を覚悟して決して頭を上げようとしなかった。

流石はゲルド王の側近だ、死をも恐れないその責任感はきっと誰よりも強いだろう。

静寂(せいじゃく)な空気が(ただよ)う中、紅丸が口を開いた。

その声色(こわいろ)は、まるで怒りと憎悪が込み上げられなかったかの(ごと)く。

 

紅丸「...戦いの後、今後もリムル様とキーア様の元であり続けたいと伝えたら、俺達に役職を下さった」

紫苑「私と黄爛は武士!リムル様とキーア様の護衛役ですよ。秘書も()ねてます!」

橙矢「白老爺ちゃんは指南役、蒼影兄ちゃんは隠密、緑羽おじさんは(うかみ)役。村で待機している姫様と黒おじさんにも役職を与えるなんて...戦闘の最中に考えてる余裕は普通ないと思うよ」

紅丸「で、俺は侍大将の座を(たまわ)った...軍事を預ける役所だ。そんなとこに()いちまった以上、有能な人材を勝手に始末するにはいかんだろう?」

 

踵を返す音で二人は頭を上げる中、橙矢は一旦足を止めて口を開く。

 

橙矢「リムル様と兄ちゃんに仇なす存在なら容赦はしないけど、同盟に参加して、盟主の恩恵を受ける貴方達を敵とは見做さない」

マフラーの豚頭族「(あだ)なすなど滅相な!あの方々は我らを...父王(ふおう)を救って下さった。従いこそすれ、敵対などあり得ん...!!」

黄爛「だったら、あたし達は同じ主を頂く仲間...精々リムル様とキーア様の役に立って。あたし達はそれを、詫びとして受け取っておくから」

 

黄爛は振り向かずに大洞窟を後にした紅丸達の背中を見届けた二人は、ゆっくりと立ち上がって頭を下げる。

 

マフラーの豚頭族「感謝する。鬼人の者達よ...」

ゲルドの息子「父王 ゲルドの名に誓って...!」

 

紅丸は器も大きいし、黄爛は復讐心を乗り越えて豚頭族を仲間として受け入れた。

俺達も二人の事を見習わないと。後であの二人に新しい豚頭族の指導者として名前を付けてあげなくちゃいけない。

まぁ、マフラーの豚頭族は助けた張本人である俺が付けるんだけどね。

暫くして場所を移し、俺達はリムルと共に湿地帯で二人の豚頭族を連れて来た。

理由は言うまでもなく、名付けだ。

そしてもう一人追加で、記憶を(のぞ)いたリーダーとBのオーラを浴びて泡を噴いた豚頭族も居る。

飢餓者の効果が消えて、見た目で判断していた自分を死ぬ程悔やんでいたらしい。

その結果ゲルドの息子をリムル、マフラーは俺、最後に半袖の青龍刀がBが名付けを担当する事となった。

 

リムル「お前は...豚頭魔王ゲルドの意思を継いでもらうべく、名をゲルドとする」

シーア「マフラーの君はハワイ神話のカマプアアを捩って、名をカプアとする」

キービ「最後にお前はヒンドゥー教の化身ヴァラーハを捩り、名をヴァラハとする」

「「「ははっ!!」」」

リムル「豚頭族達をしっかり導くんだぞ」

 

ゲルド達の体が発光する様に黄色いオーラが纏われ、ゲルドは豚頭族から猪人王(オークキング)。カプアとヴァラハは猪人族(ハイオーク)へと進化した。

ガビルを圧倒していた豚頭将軍が生きていたら、デジモンのヴィカラーラモンを捩ってDにカヴラの名を付ける役割を与えていた。でも本人は既に遺体も灰と化してるから肝心の名付けが出来なかった。

こればかりは仕方がない。お盆が来たら、名付ける代わりに二万の兵士と共に(とむら)ってあげよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、紅丸の指揮を元に嵐牙狼族と満月牙狼族(フルムーンウルフ)を連れての食糧(しょくりょう)運搬が行われた。

ゲルド王の肉体が消滅した現在、飢餓者の影響が弱まり、体が弱っている者から死ぬのは時間の問題だ。

それを防ぐ為には魔素が失われる直前にリムルがその魔素を喰らい、名付けによる同等量の魔素を与える。

そう。この十三日間を掛けて、リムルにとって最大の名付け地獄が始まった。

名付け地獄が始まっている一方、十日目にリーダーがゲルド達三人と十代族長達を集めていた。

 

キーア「お前らを集めたのは他でもない。ゲルド王について話がある」

キービ「一か八かだが、俺達の能力でゲルド王を新たな肉体を持って(よみがえ)らせる」

ゲルド「何と!我らが父王の為にこれ程の事を...感謝しても足りない。本当に有難(ありがと)御座(ござ)います」

シーア「礼なんていいよ。俺達はゲルド王のその強い決意に()れたんだ。三人共、これからも父王と共に豚頭族達を導いてあげて」

「「「ははっ!!」」」

 

ゲルド達は一斉に跪くけど、俺達は即座に話を戻す。

 

ディーア「話を戻すが、お前らの父王の新しい名はリーダーが与える」

キーア「D。お前が唯一余ってるが、良いのか?」

ディーア「ああ、今回は三人に譲るつもりでいたしな。やっぱりゲルド王の新しい名を与えるべき存在は、リムルにトリを繋いでくれたリーダーしかいないさ」

キーア「...そうか。なら遠慮なく名付けさせてもらう」

 

そう言って俺はネオディエンドライバーを取り出し、(わに)の横顔を模した電仮面が付けられた電王に似たライダーが描かれたライダーカードを装填。

ポンプアクションでフォアエンドを親指で突き出す。

 

【カメンライド ガッオーウ!】

 

フォアエンドを戻し、ゲルド王の顔が描かれたライダーカードを装填し再度フォアエンドを突き出す。

 

【ソウルインラーイド キングゲルド!】

キーア「はっ!!」

 

トリガーを引き、エンドトリガーから出現した光の玉が三原色の人影と重なってライダーを形作る。

召喚されたのは素体が電王に似ているライダー。

両腕には金色のラインが走り、銅色の胸部装甲『オーラアーマー』の各所に牙状の装飾(そうしょく)(ほどこ)され、鰐の横顔を二つに分けた様なV字型の電仮面が付けられている。

時間をも喰らう神の列車を奪い''喰らう''という三大欲求の一つに貪欲な『仮面ライダーガオウ』は、ゲルド達の方へ牛歩(ぎゅうほ)していく。

立ち(すく)んでいたゲルドは雰囲気だけで分かったのだ。このガオウの変身者はオリジナルではなく、とある者の魂が宿っているという事を。

中央に目が充血した様な銀の装飾を持つ漆黒のベルト『ガオウベルト』を外すと装甲が(こぼ)れ落ちる砂の様に崩れ、変身者がその姿を現す。

それはリムルに喰われた筈の...魔王種に覚醒する前の姿のゲルド本人であった。

そう。さっきの光の玉はゲルド王の魂でガオウベルトの使い方を分かっていたのは、ガオウの肉体を得てその記憶が一瞬にして脳に入ったからだ。

 

ゲルド「父王!!」

初代ゲルド「息子よ。この様な形で会えるとはな...」

ゲルド「...はい。やっと、やっと本当の意味で解放されたのですね...!!」

 

ゲルド達はゲルドとの再会に涙を流しながら抱き寄る。

 

初代ゲルド「泣くな。それにしても立派な姿になったな。そして、お前達にも迷惑を掛けてしまった...」

カプア「滅相も御座いません!貴方が居てくれたからこそ、こうして我らが居るのです!」

ヴァラハ「リムル様とキーア様が、我らと大同盟を結びました。もう飢饉に晒される心配はありません!」

初代ゲルド「そうか...我らは本当の意味で救われたのだな。これで飢えで死んでしまった者達の顔も、少しは浮かばれるだろう」

 

ゲルド達の戦後処理の話を聞いたゲルド王は安堵(あんど)の表情を浮かべる。

 

キーア「良かったですね、こうして同胞達に会えて...」

初代ゲルド「キーア様。この様な形で息子に再会させるだけでなく、同胞を救って下さり礼を言う...そして鬼人の子らよ。邪悪な(こま)にされていたとはいえ、お前達の故郷を滅ぼしてしまった事、本当に申し訳ない」

 

ゲルドは息子や豚頭軍と共に、ひっそりと隠れていた黄爛と橙矢にこれまでの過ちを謝罪する。

 

橙矢「別に良いよ。俺も姉ちゃんも、とっくに貴方の罪を許してる」

黄爛「豚頭族の皆と、笑い合える街を作るんでしょ?だったら、いつまでも後ろを向かないで」

初代ゲルド「...感謝する。キーア様、こんな俺を尊敬して謙遜(けんそん)な態度で接している様ですが、最早それは不要です。これからは貴方様の配下として、新たな名を(たまわ)りたい」

キーア「分かった。じゃあ、お前の新しい名前はローマ神話の死神の名を取り、名をオルクスとする。これから宜しく頼むぜ」

オルクス「はっ!!」

 

こうしてオルクスは俺の配下となった。

そして、名付け地獄を終えたリムルがスリープモードになってしまったのは言うまでもないが...。

後のガビルに連れられたゴブリンの戦士達は先に帰ったそうで、CとDの介入で七千人全てが生き残った。

大丈夫だろうか?と少し心配気味になっていたが、これは彼等なりの問題だ。

此方が口を出す事はしないし、過剰に手を差し伸べたりする必要はない。

一通りの引継ぎを終えった俺達は、アビルさんに挨拶して湿地帯を後にする。

実際には三週間程度しか経過していないが、俺とリムルだけが長く戦っていた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

GABIRU SIDE

 

吾輩(わがはい)は父アビルの前に引き立てられてきた。(いくさ)の終了と同時に(ろう)に入れられたのだ。

朝と夕の二回、食事を差し入れされるだけで誰も何も言わない。そんな生活が二週間も続いた。

確かに吾輩が謀反を起こした事は事実だ。良かれと思って仕出かした事であったが、結果は種族の存亡に関わる寸前まで追い詰めようとした。

あのスライムとディケイドの介入があって、蜥蜴人族の戦士達は全員生きて帰ってこれたが、それでも吾輩の責任である事に変わりはない。

言い訳する事は出来ないし、するつもりもない。

吾輩は死罪であろう。それでいい、そうでなければ示しが付かん。

その事に不満は無い。ただ...心残りがあるとするならば、聞いてみたかった。

「何故、吾輩を助けてくれたのか」と。こんな...何の価値もない間抜けを。

最後に受けたゲルミュッド様からの裏切り。そんな事がどうでもいいと思える程のスライムとディケイドから差し伸べられた手。

下等な魔物に、我々魔物に本来苦戦を強いられる筈の人間。そう思っていた。それは間違いではないが、正解でもなかった。

あの魔物と人間は特別なのだ。ユニークやネームドとか、そんな話ではなく特別な存在。

吾輩はこの二週間、ずっとその事を考えていた。

 

アビル「...顔を上げい」

ガビル「っ...!」

 

父アビルの声に、吾輩は瞑目(めいもく)していた目を開く。

重い空気の中、親父殿と目を合わせる。

 

アビル「判決を申し渡す」

 

感情を見せぬ威厳のある父親。やはり、吾輩は死罪か...それで良い。

群れを率いる者が、弱みを見せる事はない。規律は守らなければ示しが付かん。

恨みはない...せめて、堂々と死罪を受け入れようぞ!

玉座から立ち上がった親父殿から判決を言い渡されるが、次の言葉に吾輩は驚きで口を開いてしまう。

 

アビル「...ガビルを破門し、追放する。二度と蜥蜴人族を名乗る事は許さぬ。即刻、追い払うがいい!」

ガビル(何、だと...!?)

 

親父殿の親衛隊達に両腕を取られ、洞窟の外まで連行された。

そして雑に外へと放り出され、呆然としていた吾輩に親衛隊が何かを手渡された。

 

親衛隊「忘れ物だ。ほら」

 

シエリ様から貰っていた四つの戦極ドライバーとゲネシスドライバー、ロックシードやエナジーロックシードが全て内包されている二つのアタッシュケース。

そして風呂敷と一緒に纏められた細長い包み。目を見開くと同時に手に持った重みで判った。親父殿の形見である水渦槍(ボルテクススピア)であると。

 

ガビル「これはっ...!シエリ様から与えられたライダーシステムに、水渦槍ではないか!?これは蜥蜴人族の首領が持つべき物...!」

親衛隊「首領のお考えだ。黙って受け取れ」

 

その言葉に吾輩の目に涙が溢れる。

(すす)り泣いた声で出す事は出来なかった。吾輩は破門されたのだ。

その代わりとして万感の思いと感謝の気持ちを込めて、親衛隊の一人に一礼する。

そして振り向きもせずに吾輩は歩き出した。

前に一度訪れた事のある、現在整備されているであろう町へと向かって。

 

???「ガビル様〜!わ〜い!」

軽装甲の蜥蜴人族「ガビル様ー!!」

水色服の蜥蜴人族「待っていましたよガビル様!」

軽装甲の蜥蜴人族「ったく、待ちくたびれたぜ!」

忍者服の蜥蜴人族「時は鐘鳴り...!」

 

暫く進むと、前方から声が聞こえてきた。

岩陰から現れたのは、吾輩を(した)う三人組と豚頭族達に喰われかけた一人の部下だった。

 

ガビル「なっ!?何をしておるのだお前達!吾輩は破門になったのだぞ!?」

水色服の蜥蜴人族「ガビル様が破門なら、みーんな破門ですよ!」

忍者服の蜥蜴人族「(しか)り!」

豚頭族に喰われかけた蜥蜴人族「皆、貴方を尊敬しています。そんな俺達を置いて行くなんて、流石に水臭いですよ?」

ガビル「お前ら...馬鹿だなっ...!」

 

吾輩は背を向けて涙を腕で(ぬぐ)った。

本当にバカな奴等だ。此処は涙を見せる所ではない。

吾輩は親父殿の様に、威厳(いげん)を込めて宣言した。

 

ガビル「しょうがない奴等であるな...分かった。纏めて面倒を見てやろう!吾輩に付いて来るがいいッ!!」

軽装甲の蜥蜴人族「ひゅぅ〜、流石だぜ!」

水色服の蜥蜴人族「カックいい〜!」

忍者服の蜥蜴人族「至極(しごく)当然!」

 

吾輩達は歩き出した。

その歩みは先程までとは異なり、自信に満ちたものであった。

親父殿、見ていて下さい。吾輩は一から出直します。この槍に()じぬ男になる為に。

若しも許されるのであれば、あの方々の元で...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

KIA SIDE

あれから三ヶ月が経過した。

俺達は新しくなった和風の自室で(くつろ)いでいる。

順当に皆が町へと帰り着き、それぞれの仕事を割り振られ落ち着きを取り戻していった。

町は急速に形を(ととの)えつつあり、名付けによって豚頭族達は猪人族へと進化。その仕事ぶりはカイジンさんを(うな)らせる程であった。

猪人王となったゲルドと父王オルクスは時によく働いてくれるが、働き過ぎるところが多々ある。

 

リムル「ちゃんと休んでるか?」

オルクス「リムル様。キーア様まで...!」

ゲルド「飯が食えて、寝床(ねどこ)も貰っているのですから休みなど不要です」

キーア「二人共、無理は禁物だ。体を休みたい時は一日くらいでいい」

「「は、はい...」」

 

責任感が強すぎるのが玉に(きず)な親子だ。今度、飲み屋街が出来たら飯とか誘ってみるか。

猪人族達に勉強熱心な奴等が居れば、案外早く実現するだろう。

今まで(とどこお)っていた部分に人手を付けられる様になり、労働力を得た事で街は一気に建設作業が進行していく。

流石に各家庭に水道を引く余裕はなかったので、各所に()み上げ式の井戸を設置した。

これを利用して水道を通し、トイレも水洗にした道下水道で完備した。

道路は現在建築中で蜥蜴人族達や各地との物流も(はかど)るし、依頼した風呂ももう直ぐ完成する予定だ。

まだ成果が出ていない分野も多いが、取り敢えず体裁は整ったと云ったところか。

そんなある日、俺達が食堂で飯を食おうとした矢先に何故かガビル達がテーブルに居座っていた。

 

キーア「オメェら何やっとんじゃ?」

ガビル「ぬぁっ!?いやぁっはっはっは!このガビル。リムル殿とキーア殿のお力になりたく()せ参じましたぞ!!」

水色服の蜥蜴人族「ガビル様、カッコいい〜!」

忍者服の蜥蜴人族「当然である!」

 

相も変わらず取り巻き三人組がガビルを称賛するが、紫苑と黄爛が臨戦態勢に入る。

 

紫苑「では、斬りますね?」

黄爛「一旦たんこぶ作ったろか?」

ガビル「だぁーっ!いやいやいやいや!是非とも吾輩達を配下に加えて頂きたいのです!必ず、お役に立ってご覧に入れますので、何卒(なにとぞ)...」

「「「何卒!」」」

 

ガビルと取り巻き三人が跪く。

 

水色服の蜥蜴人族「ガビル様が、こう言っていますので...」

豚頭族に喰われかけた蜥蜴人族「あ、あの...この前は助けて下さり、有難う御座います」

キーア「お前は...豚頭族軍に喰われかけた奴だな?」

豚頭族に喰われかけた蜥蜴人族「はい。俺達が此処へ来た理由は、もう一つありまして...これを見て頂けると、大体分かりますので」

 

ガビル達と同じく跪いていた一人の蜥蜴人族が二つのアタッシュケースを差し出す。

戦極ドライバーとゲネシスドライバーが入っていたアタッシュケースだ。

実は俺がリムルに複製させてもらった後に色々と調べて見つけた物で、裏には様々なロックシードが収納されていた。

ゲネシスドライバーの方にはレモンエナジー、チェリーエナジー、ピーチエナジー、メロンエナジー、REX版ドラゴンフルーツエナジーの五つ。

戦極ドライバーの方にはブラッドオレンジ、ウォーターメロン、レモン、ライチの四つが内包されていた。

 

豚頭族に喰われかけた蜥蜴人族「この力は元々、俺達が最初から持っていた訳ではありません。ですから、この力を貴方方に返そうと思って此処へ(おもむ)きました」

キーア「...何だそんな事か、そう言うと思ったよ。けど、この力はガビルや其処の取り巻き三人を含めて上手く扱えていたしな。使いたければ、お前も好きに使え」

豚頭族に喰われかけた蜥蜴人族「お、俺も使っても宜しいのですか!?こんな、戦犯になりかけた俺を...許して頂けると言うのですか!?」

キーア「ああ。確かにお前は戦犯になりかけたかもしれない。けど俺は、こうしてお前らガビル陣営があの戦で誰一人死ななかった事を心から安堵(あんど)している。これからは同じ(てつ)を踏まない様に、努力して強くなれ。俺が言える事はそれだけだ」

豚頭族に喰われかけた蜥蜴人族「は、はいっ!!」

 

豚頭族に喰われかけた蜥蜴人族は堂々と頭を下げると、親衛姉妹と副隊長が前に出る。

その後ろには親衛隊が四人居た。

 

親衛隊長の妹「お兄ちゃんは深く反省しているのです。どうか(つぐな)いの機会をお与え下さい」

キーア「親衛姉妹と副隊長まで...」

親衛隊長「私達姉妹は兄と違って、勘当になった訳ではありません」

ガビル「何っ!?」

副隊長「アビル様が『見聞を広めよ』と、俺達を送り出してくれたのです。キーア様から名を賜った以上、統率(とうそつ)は百年は揺らがないでしょう」

 

ガビルは自分の後を追ってきたと勘違いしていたが、バッサリと言い切られてしまう。

 

ガビル「吾輩を(した)って付いて来たのでは...!?」

「「(全然)違います(うから)」」

ガビル「ガーン!!」

リムル「成る程ねぇ」

キーア「アビルさんも考えるなぁ...」

 

親衛姉妹と副隊長が此処へ来た理由を納得する中、ガビルと親衛隊長の舌戦(ぜっせん)が始まった。

 

親衛隊長「一応は、兄上は尊敬してます。でも今は、蒼影様が...」

ガビル「お前は昔から生意気なのである」

親衛隊長「兄上も少しは自重を覚えて下さい」

ガビル「何を!?」

「「まぁまぁ...」」

 

舌戦が繰り広げられる中、ガビルの部下と親衛隊達は負けじと我らがリーダーを応援する。

 

ガビルの部下「ガビル様負けるなー!!」

親衛隊「隊長!言ってやって下さいよ!!」

リムル「仲が良いのか悪いのか...」

キーア「...良いんだろうな」

 

全員が配下に加わったので、リムルが親衛隊長とその従者(じゅうしゃ)。取り巻き三人を含めたガビルの部下全員に名前を付ける。

Bは親衛隊長の妹で、俺は副隊長。そしてCとDが豚頭族軍に喰われかけた蜥蜴人族に名を与える事にした。

 

リムル「じゃあ順番に...蒼華(ソーカ)東華(トーカ)西華(サイカ)南槍(ナンソウ)北槍(ホクソウ)だ」

キービ「親衛隊隊長こと蒼華の妹。お前は(あお)の文字と(つい)にすべく、名を紅華(モミカ)とする」

キーア「そして、ガビル三兄妹の幼馴染。お前は紅と蒼を混ぜた盾になってもらうべく、名を紫盾(シジュン)とする。四季(しき)(めぐ)りつつ、大切な者を守れる盾であれ」

シーア「最後に君だけど、本来ならガビルの新しい名前として与えたかったものを付ける」

ディーア「自身が尊敬すべき目標を越え、(おのれ)の失敗を(かて)に変えれる頂点の槍を目指せ。お前に頂槍(チョウソウ)の名を与える」

 

因みにイリュージョンズはネオディケイドライバーや俺に思念伝達での話し相手になってはいるが、今回は特別に全員が実体化を果たしている。

豚頭族軍に喰われかけた蜥蜴人族こと頂槍は、与えられた名付けに感銘(かんめい)していた。

 

「「有難う御座います...」」

頂槍「頂点の槍...深く心に感銘致しました。この名に相応(ふさわ)しい男になれる様、日々精進(しょうじん)する事を誓います」

 

その後ろでガビルがつぶらな(ひとみ)で名付けの様子を見ていた。

 

リムル「ガビル君。(うらや)ましそうにするなよ?お前にはガビルと云う立派な名前があるだろ?」

キーア「リムルの言う通りだ。元はゲルミュッドが付けた名前だろうが、その名前は大事にした方がいい。ガビル...良い響きじゃねぇか」

リムル「うわっ、魔素がこっそり...!」

ガビル「ぬぁっ!?おおおおおおおお〜っ!!」

 

俺とリムルから魔素が吸い取られ、ゲルド達と同じくらいに黄色いオーラが輝く。

 

リムル「(ガビルの奴光ってる...)えっ、まさか名前って上書き出来るの!?」

キーア「いよっしゃ実験成功ォッ!!!!」

リムル「え、実験ってどういう事だよキーア!?」

キーア「実はだな、お前がスリープモードになってる間にふと考えてたんだよ。同じ名前を持つ者に同じ名前を与えたらどうなるかってな」

 

実は俺達がずっと疑問に思っていた『名付け親が死ぬと、今度は違う名前で名付けをやり直せるのでは?』と想定した上で言ってみたが、やはり予想通りだったな。

俺はそれを実験と称して、新たな発見に歓喜の声を上げる。 

 

ガビル「あ、有難う御座います!吾輩、一生付いて行きます!!」

 

こうしてガビルの部下達にも名前を与える事となり、木の実系アーマードライダーに変身していたガビルの取り巻き三人には『ヤシチ』『スケロウ』『カクシン』の名が与えられた。

ガビル達は蜥蜴人族から竜の角と翼が生えた龍人(ドラゴニュート)へと進化し、蒼華達を蒼影と緑羽のところに預けた。

 

蒼影「...配下に加えろと?」

緑羽「私達の好きな様に鍛えても宜しいのですかねぇ?」

リムル「うん。蒼影と緑羽の好きに鍛え上げていいよ」

 

蒼華達は忍者を彷彿(ほうふつ)とさせる衣装を、紅華達は和風の衣装を身に纏っている。

 

蒼影「リムル様達の望みのままに...」

緑羽「必ずや、お二人の期待に応えてみせますねぇ」

蒼華「一生懸命、働かせて頂きます!」

「「宜しくお願いします!」」

 

因みに緑羽の方に預けたのは紅華、紫盾、頂槍の三人。

紅華と紫盾は蒼華と同じく人間に近い姿となり、頂槍の方は何やら『魔法龍人(ウィザードラゴニュート)』と云うややこしい種族名となっている。

本人によると、その気になれば本来の姿に戻れるそうだが、戦闘以外は人間の姿を維持しているんだとか。

ガビル達はヴェルドラの洞窟でヒポクテ草の栽培を行っている。

湿度もあって、住処(すみか)としては丁度良いだろう。

洞窟内でガビルが(くわ)(もち)いながら土を耕している姿を見掛けたので、リムルと共に声を掛ける。

龍人へと進化し、アビルさんと同様に進化によって(うろこ)の色が緑から紫に変色していた。

 

リムル「ガビル君、育成状況はどうかね?」

ガビル「ふはははっ。よくぞ聞いてくれました!順調ですぞ...吾輩の努力の結晶をご覧下さい!」

リムル「どれどれ...」

 

ガビルは植木鉢に植えていた草を見せる。

だが、その草を見たリムルは怒りマークを表示しながらガビルの顔に体当たりをかます。

 

リムル「雑草じゃねーか!!」

キーア「え、何と!?これは失敬...このガビル、少しばかり(こう)を焦っておりました...!!」

リムル「この高密度の魔素で雑草育てる方が難しいだろ?」

キーア「まぁ、失敗は誰にでもあるさ。気長に見て行こうぜ」

 

ヴェルドラの洞窟を出た俺達は外の空気を大きく吸う。

何だかんだあったが、(しばら)くの間は落ち着いて暮らせそうだ。

 




次回は一時的に転すら日記編に移行します。

メイジドライバーは...

  • そのままシズさんが使う
  • 複製してからシズさんが使う
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