消滅したらネオだった件   作:ライノア

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第3日記前編『梅雨明けと水鉄砲と夏の到来』

武命「夏ですね...」

キーア「ああ。此処(ここ)出たら更にあちぃぞ?」

 

梅雨(つゆ)が明けて、日差しが(あつ)い夏が始まった。

辺りには(せみ)のさざめきが響き渡り、夏風が草木や花を優しく揺らす。

リムルと武命が木陰(こかげ)日向(ひなた)ぼっこをしていたが、俺は転生前は草アレルギーである為かその様子を服が(ほつ)れない程度に太い木の(みき)に背中をそっと乗せ、腕を組んで見守っている。

 

朱菜「ふぅっ...」

黄爛「暑いね...」

 

日向ぼっこを終えた俺達は木の家に戻ると、朱菜と黄爛が向日葵(ひまわり)如雨露(じょうろ)の水をあげていた。

その大きさは通常の三倍くらいで、武命が少し後退して口を開けながら驚いていた。

 

武命「うわあっ!向日葵!?でっけえ...!」

朱菜「あ、キーア様、リムル様。武命さんまで!」

リムル「おおっ!向日葵か〜。夏っぽいな!」

黄爛「うん。キーア様達の話を参考にして、似た花を植えてみたんだ」

キーア「有難(ありがと)な。それにしても似た花、か...」

 

俺達は異世界の向日葵を見上げる。中央の種はまるで単眼にも見える。

まぁ、この花は向日葵と()うよりは向日葵擬き(・・)だがな。

風に揺れて風鈴の音が響く中で俺達は麦茶を飲み、リムルがストローを通して口の中で飲んだ麦茶が分解されてそのまま分解される。

 

武命「ぇええっ!?弾けたっ!?」

キーア「武命も驚くのも無理もないか。何せスライムだしな」

武命「あ、そういえばそうでしたね。そういえば咲夜さん、実は話したい事があって...」

 

麦茶を飲みながら武命は相談を持ち出すと、もう一つのアタッシュケースを取り出す。

因みに武命が姫崎達のところから逃げた際に回収していたものだ。

俺がケースを開けてみるとT2メモリが26本ロゴデザインが表示されていないせいか内包されていたチップが埋め込まれていた。

所謂、これは何の記憶も入っていない空のT2メモリだ。

 

武命「実はこのT2メモリ、あいつらから逃げる際に記憶が空のままで...」

キーア「そうだったのか...」

武命「はい。あいつらに言われた通りの記憶を発現させる予定でしたが、流石に利用される訳には行かなかったので...其処でです!俺が元居た世界での記憶をインプットして、印象に残った記憶を発現させる。是非、咲夜さん達にも協力してほしいんです」

 

発現する予定の記憶は省くが、武命は逃走する前に記憶を発現する専用の装置と共にこのアタッシュケースを持っていた。

俺達はその意見を承諾した。

 

キーア「()る程、そういう事なら大体分かった。是非(ぜひ)とも協力するぜ」

リムル「俺も出来(でき)る限りの事なら手伝うよ」

武命「有難う御座(ござ)います!では、早速。先ずは俺の記憶から...」

 

武命は専用の装置を頭に付けると、空のT2メモリにそれぞれの色とロゴデザインが現れる。

ビースト(B)、エッジ(E)、ハウス(H)、ライアー(L)、ミラー(M)、ヌードル(N)、オールド(O)、ペット(P)のロゴデザインが浮かび上がる。

俺も専用の装置を付けてみるとアップル(A)、インビジブル(I)、ストレス(S)、バイラス(V)の四本。リムルもジュエル(J)、ウォーター(W)、ナイト(K)、クインビー(Q) 、ユニオン(U)の五本が表示された。

合計17本の新たなT2メモリが生成され、残りはC、D、F、G、R、T、X、Y、Zの九本となった。

リムルは新たなメモリの誕生に心を躍らせている。

 

リムル「おおっ!新しいT2メモリ!どんな能力になるのか楽しみだな〜!」

 

子供の様に(はしゃ)いでいるリムル。

 

キーア、武命「「え...?」」

 

向日葵擬きが興味深そうに芯を湾曲に縮ませて様子を(うかが)い、リムルが背後を振り返ると夏風に揺れたかの様な音で誤魔化(ごまか)して元の状態に戻る。

 

リムル「あ...?」

 

再度リムルが前を向くと、かさこそと向日葵(もど)きが顔を近付けていた。

 

リムル「見られている………………?」

「「はい(ああ)。既に見られてます(るぞ)」」

 

そう俺と武命はバッサリと言い切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

特別OP『ダイスケ/夏めく坂道』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先程の向日葵擬きに対する地味な恐怖を覚えた俺達は、街の様子を見てみる。

皆暑さに参っている様子で、俺とリムルは熱変動耐性があるので汗は掻かない体質となっている。

ヴェルドラを(まつ)っている(ほこら)に手を合わせ(おが)んでいたリグルドを俺達三人で、おしくら饅頭(まんじゅう)の要領で互いの背中を合わせて座って見ていた。

 

武命「この世界の夏って、元の世界とは変わんねぇ暑さなんだなぁ...」

キーア「なぁ、リグルド」

リグルド「ぬぅお、ぬぅっ...!」

リムル「なんか、皆参ってるみたいなんだけど...?」

 

ヴェルドラを祀っている祠に手を合わせて拝んでいたリグルドに俺が話し掛けると、一礼し終えて俺達の方へと向き直る。

 

リグルド「うーん...ええ。私共の記憶でも、こんなに暑い夏は......初めてです」

 

身体から汗が蒸気となって放出しているのにも関わらず、リグルドは鼻で笑って暑さに耐え忍んでいる。

リムルは何かを思い出したかの様に流動的な体を縮こませる。

 

リムル「あっ、あれ?若しかして...森を切り拓いて街を作っちゃったから、自然環境に変化が...?」

キーア「いや、んな訳ないだろ」

 

森を切り拓いて街を作った影響で日光が当たり(やす)くなったリムルの憶測を、俺はキッパリと否定する。

 

リグルド「いいえ!きっとこれは、暴風竜様が姿を消された為かと!」

リムル「そ、そっか……………?」

 

リグルドが慌てて(なだ)めるが、それだとどの道俺達が原因である事に変わりはない。

リグルドはしゃがんで小声で囁く。

 

リグルド「んん..何せ神様のなされた事ですから。リムル様とキーア様には...」

キーア「うーん...」

リグルド「暴風竜様ですし...セーフです、セーフ。うん」

リムル「...ヴェルドラだもんな!ヴェルドラじゃあ、しょうがないよなぁ〜!」

 

リムルが冷や汗を掻いてヴェルドラの祠を見ながら相槌(あいづち)を打つ。

これはこれで酷いが、色々と悪いなヴェルドラ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

執務室に向かい、朱菜、紫苑、黄爛と共に事務作業を行っている。

その際にネオディケイドライバー内のB達に森林開拓による自然への影響の結果を頼んでおいた。

ヒートアイランド現象と云うものが発生して次々と倒れるのは余りにも(よろ)しくなく、それでテンペストにエアコンの(たぐい)は無い為、事前に調べておく必要性があったからだ。

開いた窓に日差しが照射(しょうしゃ)されている夏空を(なが)めながら、俺とリムルは向き直りつつ一つの疑問を問う。

 

キーア「...なぁ、お前ら。少し疑問に思ったんだが」

「「「ん……………?」」」

リムル「その格好で暑くないのか?」

 

紫苑はスーツで朱菜は和服を着ていた為、暑くないのかの疑問を抱いていた。

 

紫苑「へっちゃらです。夏好きなんで」

朱菜「私共は、仮にも役職を頂いておりますので」

黄爛「どんな時でも、恥ずかしくない姿で働いてるから」

リムル「気にしすぎて、倒れないでね?」

エース「適度に水分補給はしてくれよ?」

 

俺達の気遣う言葉に、紫苑が堂々と度を越えた一言を言う。

 

紫苑「ご心配なく!どうしても暑い時は、見えない所から一枚抜きますから。今日みたいに!」

リムル「ああ?」

キーア、武命「「は?(えぇ)...」」

朱菜、黄爛、橙矢「「はっ(ええっ)...!?」」

 

朱菜と黄爛、橙矢の三人は紫苑を即刻執務室から追い出す。

 

紫苑「えっ、あ、ちょっ...えっ?何ですかぁ...!?」

黄爛「そんな事堂々と言うもんじゃないって!」

朱菜「リムル様、キーア様!ちょーっと失礼しま...すッ!!」

橙矢「御免二人共。ちょっと紫苑姉ちゃん(しか)ってくるから「リムル様、キーア様!これ、スースーして快適ですよ!」だからちゃんと状況見てから言ってよ!」

 

背中でドアを開けながら押し出し、黄爛と橙矢が腕を掴んで紫苑をそのまま連行していった。

 

キーア「そう云えば、そろそろ西瓜(すいか)が冷えてる頃だな」

リムル「おっ、良いね。行ってみるか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達は武命を連れて井戸がある場所へと向かい、森に設置されてあった木製(もくせい)のテーブルで切った西瓜を麦茶をセットに食っていた。

 

リムル「はぁ〜、美味いっ!」

武命「西瓜か。こうして食べるのは初めてだな...」

キーア「そんなに美味ぇか。っと、そろそろ夏野菜が冷えてる頃だ」

 

西瓜を食い終えて井戸の方へと向かうと、井戸水には『麦湯』と描かれた瓢箪(ひょうたん)に入っている麦茶や西瓜、トマト、胡瓜(きゅうり)の夏野菜を(たる)に詰めていた。

前に武命がアイズエイジT2メモリのマキシマムドライブで発生させた氷の一欠片をある程度樽の周りを囲む様に井戸の中に入れておいたのだ。

夏野菜を回収した俺達は、ゴブタ達の方へと向かう。

 

ゴブタ「おぉ〜っ!リムル様、キーア様!感謝感激っス!!んぐっ、んぐっ、んぐっ...プハァ〜ッ!生き返るっス〜!!」

リムル「うんうん!」

 

ゴブタが俺達に謝意の言葉を述べ、番と描かれた団扇(うちわ)を片手に持ちながら麦茶を飲む。

ゴブタ達もこの暑い中で警備を真剣に専念してるからな。脱水症で倒れるのは避けて欲しいが為の差し入れだ。

 

ゴブテ「リムル様、キーア様!冷たくてすっごく美味しいです!」

キーア「お前らも暑い中で警備を頑張ってくれてるからな。これは俺達からの差し入れだ」

リムル「夏と云えば色々あるけど、これは外せないよな〜!」

ゴブタ「そういうもんなんスかね。他には、何があるんスか?」

 

ゴブタの質問にリムルは即答する。

 

リムル「そうだなぁ...子供の頃は、よく虫()りしたな!」

ゴブタ「えっ?スライムって、子供の時は虫捕るんスか?」

キーア「......」

 

リムルは此処が異世界である事を一時的に忘れていた即答に、俺は苦悶(くもん)の表情を浮かべながら片手で顔を覆う。

すると、リムルは用意した板で甲虫の全体像を描いた絵をゴブタ達に見せる。

 

リムル「これこれ。こういう奴が好きだったんだ!」

ゴブタ「...こいつなら、この近くにも居るっスけど?」

 

ゴブタが不安そうな表情で甲虫(カブトムシ)の存在に萎縮(いしゅく)しているが、(むし)ろリムルにとっては興味本位が唆られる。

 

リムル「おっ!マジ!?丁度良いから、虫捕りに行こうぜ!」

キーア「いや、抑も俺とお前はゼギオン達で間に合ってるだろ?」

 

因みに『ゼギオン』と云うのは、俺達が怪我をしているところを助けた蟲魔族(インセクター)と呼ばれる甲虫の魔物だ。

その他に助けた蜜蜂(みつばち)の『アピト』や、働き(あり)の『ミュルド』も俺達の配下だ。

 

リムル「良いねえ、虫捕り!夏だねぇ!」

武命「楽しそうですね、リムルさん...まぁ、ゴブタ達は乗り気じゃなさそうですけど」

ゴブタ「自分、あまり気乗りしないっス...」

 

夏風が木陰で遮断(しゃだん)された森を歩いている中で(とんび)が鳴き、木の根元には(きのこ)が生えている。

其処には小さい黒蛇が威嚇(いかく)し、ブラックスパイダーがギチギチと(あご)を鳴らして獲物を待ち構えていた。

 

リムル「あ?何お前、鍬形(クワガタ)派?」

ゴブタ「いやぁ、そういう事じゃn…………あっ!?」

 

問い詰められたゴブタが視線を()らしていると、虫の羽音(はおと)が大きくなる。

羽音がした方へ振り向くと、通常より数十倍にデカイカブトムシが土煙を上げながら此方(こちら)へ向かって来ていた。

 

ゴブゾウ達「「「「「「ああっ…………!」」」」」」

リムル「あっ…………!」

キーア、武命「「...でっっっっか!?」」

ゴブタ「うぇえっ...!?」

 

ゴブゾウ達が驚いて少しだけ後退し、俺達はそれぞれ左右に避ける。

だが、やな予感が的中して青褪(あおざ)めていたゴブタは恐怖で(たたず)んでいたため回避に間に合わず、背中から突進を受けて天高く打ち上げられた。

 

ゴブタ「ギャアアアアアアッ......!!!!」

 

その後はエターナルに変身した武命がエターナルに変身してバードのマキシマムドライブでゴブタを救出。

水鉄砲対決ではゴブタチームに武命、リムルチームに俺が加わり、それぞれ岩陰に身を潜めて戦闘体勢に入る。

ルールとしては炎の類に入ったり、チート級やフォームの使用は禁止。

勿論(もちろん)の事、イリュージョンも禁止。

武命の場合はヒート、ロケット、ウェザーの三つだけでなく対象を瞬間移動させるゾーンも禁止となっている。

 

ゴブタ「油断したっすねえ、リムル様、キーア様。皆、準備は良いっすか?」

ゴブゾウ達『ダス(ええ)(おう)!』

ゴブタ「作戦開始っス。先ずは武命、キーア様の相手は任せるっスよ」

エターナル「勿論、俺もその気でいたからな。お手並拝見と行かせて貰いますよ、咲夜さん...!」

 

ゴブタの合図で俺はライダーカードを素早く取り出す。

 

【フォームライド オーズ シャウタ!】

『シャッシャ・シャウタ!シャッシャ・シャウタ!』

 

シャウタコンボとなった俺は頭部『シャチヘッド』の額の中央に位置する水滴を模したクリスタル器官『オークォーツ』からジェット水流を噴射させてゴブタ達を牽制させ、立て続けに五指を保護る手首『ウナギグラバー』からも水流を放って一時的に視界を(はば)んだ。

 

『バード!マキシマムドライブ!』

ディケイド、エターナル「「リムル(ゴブタ達)は一旦待機だ!」」

 

武命が首元に羽織(はお)っている漆黒のローブ『エターナルローブ』をゴブタに預けて地面を蹴り上げ、バードT2メモリをマキシマムスロットに装填。

背中から生えた臙脂(えんじ)色の翼のエネルギーが形成され、上空に飛翔して距離を開けつつ(かざz)した手から火球を放つ。

俺は片手のウナギグラバーから水流を放出して火球を相殺(そうさい)する。

 

『ファング!マキシマムドライブ!』

 

その間にライドブッカーからカードを取り出した直前に、武命がエターナルエッジにファングT2メモリを装填し、急降下してファングメモリのメモリモードの幻影と共に迫る。

 

【フォームライド クウガ ライジングタイタン!】

 

エターナルエッジと共に(せま)り来る幻影の牙が届く直前でディヴァインサイドハンドルを閉じるタイミングが間一髪(いっぱつ)で間に合った。

金に(ふち)取られた紫の重装甲に変化したクウガが電気の力を帯びた強化形態の一つ『ライジングタイタンフォーム』へと姿を変え、咬合(こうごう)の一撃を大きく後退させながらも素早くライダーカードを装填しようとライドブッカーに手を出す。

 

【フォームライド ゴースト!ムサシ!】

『剣豪!ズバッと!超剣豪!』

『メッタルゥ!マキシマムドライブ!アクセル!マキシマムドライブ!』

 

()かさずエターナルエッジにメタルT2メモリ、ロストドライバーのマキシマムスロットにアクセルT2メモリを装填した武命は再度俺に肉薄して全身を硬質化させた状態で赤いオーラを纏わせて加速

刃物の扱いに手慣れていたのか、エターナルエッジを振るう(たび)に急所を確実に狙ってきている。

ネオディケイドライバーから飛び出したムサシパーカーゴーストの剣戟(けんげき)で武命との距離を開けた俺は距離を詰め返す様にムサシ魂となり、二刀流モードにしたガンガンセイバーで何度も受け流す。

 

ゴブタ「す、すげぇ剣幕っス...武命の奴、結構刃物の扱いに慣れてないっスか...!?」

 

リムルやゴブタ達はその剣幕に()かれて戦況を見つつ、出るタイミングを窺っている。

 

エターナル「がぁっ!?」

キーア「ぐっ...!」

 

一突きを受け流したカウンターで互いの装甲に火花が散り、後退する際にT2メモリとライダーカードを装填する。

 

【フォームライド フォーゼ ロケットドリル!】

『Rocket.Drill on.』

『ユニコーン!マキシマムドライブ!クイーン!マキシマムドライブ!』

 

武命が突いたエターナルエッジの刃先に螺旋(らせん)のエネルギーが(まと)われ、左腕には六角形のバリアが展開される。

噴き出した蒸気が斬り払う様に俺は螺旋で薙いでフォーゼに姿を変えるが、通常形態のベースステイツとは若干(じゃっかん)違かった。

頭部、両肩、四肢(しし)はベースステイツのままで、アンダースーツの両腕と胸部中心や両(ひざ)まではオレンジに変化。

右腕に装備された『ロケットモジュール』の推進(すいしん)ノズルが付いた『エグゾーストスラスター』が付いている本体ブロック『ブースターケイシング』が『ドリルモジュール』のモーター部分『パワードモーター』が融合し、ドリルモジュールのドリルビット部分『ディギービット』の先端は『スピアヘッドフォワード』が重なっている。

『ロケットドリルステイツ』となった俺は背中のジェットパックユニット『スラストマニューバー』で推進剤を噴射させつつ、右腕のモジュールのディギービットを200rpmで高速回転させてロケットモジュール特有の出力と進行方向を調整。約二倍の11.2tものパンチ力と強大な貫通力を生み出す。

その威力は武命が左腕に薄く幾十(いくじゅう)にも重ねたシールド数枚が割れる程で、突き出した右腕による受け流しはまるで役に立たなかった。

 

【アタックライド ウインチ!】

エターナル「もう、何でもアリです、ねェッ!!ぐっ...!?」

 

武命は幾十に重ねたバリアを盾にして避けるが、即座にウインチモジュールを装備してブーストフッカーの射出と同時にブレイズリードを武命の右腕に(くく)り付けて思い切り振り下ろした。

 

ディケイド「ふんッ!!」

『アクセル!マキシマムドライブ!』

 

その反動でエターナルエッジが右手から離れ、俺はスピニングターンを牽引(けんいん)スピード最大でうつ伏せに倒れた武命を引き()らせつつ右腕のモジュールを回転させて振り下ろした。

 

『バイオレンス!マキシマムドライブ!』

 

直後に二度目のアクセルのマキシマムドライブで間一髪で避けた武命は続けてマキシマムスロットにバイオレンスT2メモリを装填。

隆起した右腕で俺を軽々と引っ張り、残った左腕で宙に上げると同時に自らも宙に上がった。

 

【アタックライド マジックハンド!シザース!ネット!エアロ!】

『アイスエイジ!マキシマムドライブ!』

 

武命はアイスエイジT2メモリを装填したエターナルエッジを水が入った(たる)目掛けて投擲(とうてき)してマキシマムスロットにパペティアーT2メモリを取り出す。

 

エターナル「こうなる事は分かっていましたよ」

『パペティアー!マキシマムドライブ!』

ディケイド「相手が過去の俺だからって...余り、舐めないでもらいたいな!!」

 

俺は武命がマキシマムスロットのボタンを押すより早く素早くライダーカードを装填。

クリムゾンカラーのマジックハンド『マジックハンドモジュール』を右腕、ディープイエローの鋏『シザースモジュール』を左腕、サーモンピンクの虫取り(あみ)『ネットモジュール』を右足、そして左足にはスカイブルーの空気圧縮装置『エアロモジュール』を装備する。

 

同時に姿がベースステイツに戻り、片手の五本指から放たれた無数の糸が迫る直前にシザースモジュールの金属刃『クロッサーブレード』の左右の刃をパワージェネレーター『アドジャストスクリュー』により稼働。

最大20tもの出力で無数の糸を切断しつつ、マジックハンドモジュールのアーム部分『ライトアームブーム』の容易(ようい)な操作で各関節部分『ハイピッチジョイント』の複雑な動きで再び迫り来る無数の糸を()けながらモジュールの先端部にあるマジックハンドユニット『エンドエフェクトピンチ』で岩陰にあった岩を()り上げて迫り来るエターナルエッジのグリップをギリギリで掴んでそのままお返しする。

 

立て続けに右足を大きく振り下ろすと、網状のエネルギー発振器『アークグリット』で空中に発生させた人一人が収まるサイズの電子ネットが武命を頭上から被せて捕縛させ、(ふち)の円形フレーム『ローディングヘッド』に内蔵されているコントロールユニットで地面に叩き付けた。

 

『ルナァ!マキシマムドライブ!』

 

だが、この直前でマキシマムスロットのT2メモリをルナに差し替えていた様で、分身した二人のエターナルが本体の代わりにそれぞれエターナルエッジにT2メモリを装填する。

 

『オーシャン!マキシマムドライブ!サイクロン!マキシマムドライブ!』

ディケイド「充填完了...喰らえッ!!」

 

さっきまで俺はエアロモジュールの四つのノズルと回転翼『アトモスファン』で周囲の空気を吸引し、柔軟性と耐久性に(すぐ)れる接続換気ダクト『ノーズダクト』を通して(すね)部のエアタンク『バキュームコンプレッサー』に集積。

解放された高圧縮の突風とウォータースパウトが水飛沫(しぶき)となって相殺され、周囲に一時的な雨が降り注ぐ。

 

ディケイド、エターナル「「今だ、リムル()!!」」

 

雨が降るのを合図に、リムルが岩陰から現れる。

俺達の掛け声でリムルが岩陰から体を縮めて進行し、ゴブタとゴブツの水鉄砲を避けながら構える。

ゴブタが不敵な笑みを浮かべると、ゴブテが肩に背負っていたバズーカ型の水鉄砲のグリップをゴブテが押し出し、真正面に直行した水流がリムルの水鉄砲を弾く。

 

『トリガー!マキシマムドライブ!』

 

リムルが体勢(たいせい)を立て直しつつも別の水鉄砲を構える直前に、ゴブタが武命の分身に投げ渡されていたであろうエターナルエッジにトリガーT2メモリを装填。

刃先から放たれた無数の青い弾丸がリムルの水鉄砲に風穴(かざあな)を開けて無力化させた。

 

リムル「貰っ...ぁあっ!?」

 

呆気に取られていたリムルだが、狙っていたのはリムルの水鉄砲だけでなかった。

俺とリムルが隠れていた岩を貫通して貯蔵タンクの樽に風穴が開けられ、貫通した穴から一斉に水が漏れ出る。

 

ディケイド「リムル!」

エターナル「おっと...貴方の相手は俺ですよ?」

 

俺がリムルに気を取られていると、武命に鍔迫り合いを仕掛けられ行く手を阻まれた。

ゴブタ達が俺とリムルの前に現れる。

 

ゴブタ「ナイス妨害っスよ武命。弾切れにタンク切れっスねぇ、リムル様...!」

リムル「ぐっ...!」

ゴブタ「全身(くま)なくビッチャビチャにしてやるっスよ。ビッチャビチャに......フヘヘへへへ!皆、一斉放火っス!!」

 

ゴブタの合図で水鉄砲による一斉放火が行われる。

ゴブタが麦藁(むぎわら)帽子を打ち飛ばすのを皮切りに、ゴブゾウ以外の四人が一斉に水を掛ける。

締め括りでゴブゾウの巨大な水鉄砲で、宣言通りに全身隈なくリムルは水(びた)しになった。

 

リムル「うぇぇっ...!汚ねぇぞ、お前ら!?」

エターナル「よく言えますね。此処は異世界...戦場に汚ねぇもクソもないですよ?」

ゴブタ「そうっスよ。悔しかったら反撃してみると良いっスよぉ〜?フハハハ...!」

リムル「ぐぅっ...!」

ゴブタ「ああ...!自分たちがあのリムル様とエース様を翻弄してるっス...何スか?この()き上がる気持ち......!」

 

ゴブタが悦に浸ってリムルに水鉄砲を掛けている。

俺だったら死んでもゴブタの水鉄砲に当たるのは御免だ。

この時、俺の相手が武命で本当に良かったと心から安堵しているが、そろそろ反撃させてもらう。

 

ディケイド「うぉらァッ!!」

エターナル「ぐっ...!?」

【フォームライド ダブル!ルナトリガー!】

 

ルナサイドの半身である左側の強化皮膚(ひふ)『ガイアーマー』が水色に縁取られた青色『トリガーサイド』となり、胸部に固定されている銃型武器『トリガーマグナム』を生体磁気ポイント『マグネホルスター』から着脱。

接続端子(たんんし)()ねたグリップ『イデアターミナルグリップ』を握り、引き金『イデアトリガー』をセロ距離で弾いて武命の胸部装甲に当てて銃撃した。

牽制(けんせい)させた後はトリガーマグナムの銃口『ガイアマズル』から吐き出されたエネルギー弾を伸縮自在に操り、左手首のブレスレット『トリガーブレス』で腕部を中心に強化増幅。

アメイジングアームのお陰でエネルギー弾を俺の意志で自由自在に曲げられ、百発百中の精密な射撃でゴブタ達の水鉄砲を(ことごと)く撃ち抜いた。

 

ゴブタ「...えっ!?水鉄砲が!?」

ディケイド「ちょっとこれ借りるぞ!」

『オーシャン!マキシマムドライブ!』

 

ゴブタ達が一瞬にして戸惑っている最中に俺はオーロラカーテンを通じて素早く距離を取りつつ、オーロラカーテンを通じてオーシャンT2メモリを奪取。

そのままガイアメモリの装填口『マキシマムスロット』に装填し、可変型の銃身『グリップバレル』を上に45度上げて照準(しょうじゅん)(さだ)める。

 

ディケイド「トリガー...オーシャンスプラッシュ!!」

 

ガイアマズルから放たれた水流とリムルの口から放たれた水圧がゴブタ達を巻き込み、木木を一直線に()ぎ倒していく。

地形は一直線に(えぐ)れ、辺りに大きな水()まりを生み出していた。

 

ゴブタ「...口から出すのは、ズルいっス」

リムル「ふぅっ...済まん。思わず」

ディケイド「お前の論理だ。文句はあるまい」

 

うつ伏せに()うめくゴブタの抗議に、俺は堂々と正論を突き付けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

TOUYA SIDE

 

黄爛「あ、七色の橋...!確か、虹って云うんだっけ?」

 

兄ちゃん達が武命のトレーニングに付き添っていると思われる林には虹が掛かる中で、嵐牙が木陰で溜め息を吐いていた。

 

嵐牙「わぅぅっ...」

紫苑「どうしたのです嵐牙?」

黄爛「そんな所で溜め息()いちゃって、何か悩み事とかでもあったの?」

 

秘書たる姉ちゃん達が(たず)ねると、嵐牙が悩みを打ち明ける。

 

嵐牙『実は最近、お二人があs.....いや、お呼びが掛からぬのだ』

紫苑「ほう?」

橙矢「いや、今遊ぶって言いかけなかった!?」

嵐牙『(かつ)ては、何処(どこ)へ行くにも、背に乗ってくれて...!その後にはナデナデとか...』

 

俺が突っ込みながらも嵐牙は涙を流し、夏空を見ながら兄ちゃん達と出会った以降の日々を(さみ)しげに思い返す。

 

紫苑「ナデナデ...」

黄爛「分かる」

嵐牙『スリスリとか...』

紫苑「スリスリ...!」

橙矢「分かる」

 

此処までは良いものの、紫苑姉ちゃんにとっては地雷にも成り得る言葉が飛び()う。

 

嵐牙『...ペロペロした仲なのに』

真眼「ペッ、ペロペロォ〜ッ!!!?」

橙矢「紫苑姉ちゃん、嵐牙は犬系の魔物だからこういう時もあるんだよ」

紫苑「そんな事はどうだっていい!私だってまだなのに...!」

 

嵐牙の独白な発言に、紫苑姉ちゃんは飛んだ嫉妬心を燃え上がらせている。

そんな紫苑姉ちゃんの些細な嫉妬を嵐牙は鼻で笑い、背を向けて言った。

 

嵐牙『はっ...』

紫苑「むっ!?」

嵐牙『()しや知らぬ間に、お二人の不興を買ってしまったのでは?』

紫苑「知りませんよ、この犬!!」

嵐牙『ん?』

 

紫苑姉ちゃんも背を向けて嵐牙に反論する。

 

紫苑「どうせ、(たてがみ)が暑苦しいとかの理由では?夏だし...」

嵐牙『四六時中ベタベタしてるお前達の方が暑苦しいわ粗忽(そこつ)女!!』

紫苑「ぎっ...!!」

 

嵐牙が振り返り、威嚇しながらの言い方であった為か、紫苑姉ちゃんは鬼笛を不協和音に吹いて変身してそのまま戦闘に入る。

戦いの一部始終を見ていたひまわり擬きは、葉っぱで顔を覆って目に當る砂埃が入らない様にしている。

 

勝鬼「第一秘書である私が、いつもお(そば)に居るのは当然でしょ...!?」

嵐牙『我こそは...従者として如何(いか)なる時も、お供せねばッ!!」

黄爛「喧嘩する程仲が良いと云うんだか...」

フェリル「そうであるな」

 

牙狼族の父親であるフェリルもその様子を一つの成長として見届けていた。

俺は戦極ドライバーを腰に巻き、オレンジとは別の黒い縞模様のロックシードを取り出して仲裁に入ろうとしたけど、俺の肩に手を置いた姉ちゃんが首を横に振り、フェリルに後ろへ押し出されて止められる。

 

黄爛「橙矢。止めたい気持ちは分かるけど、これはこれでやり過ぎだから」

フェリル『そのロックシードは一度使えば、(しば)しの間は使えんぞ』

紫苑「私だって、せめてスリスリ...!」

嵐牙『我が主達に不埒(ふらち)な真似はッ...!不埒な真似はッ...!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キーア「こんなクソあちぃ中で(いさか)い起こさないでくれや。逆に熱中症になっちまうぞ...?」

リムル「今度組ませてみるか」




バード、サイクロン、ファング、アイスエイジ、オーシャン、クイーン、メタル、トリガー、ユニコーン
-未使用のT2メモリ-
ダミー、ジーン、ヒート、ジョーカー、ナスカ、ロケット、スカル、ウェザー、エクストリーム、イエスタデイ、ゾーン

-今回生み出した新たなT2メモリ(『あの日の夏が飽和する。』のネタバレ注意!)-
武命:ビースト(小説『獣』の表紙。父親の事を獣と(たと)えており、(かつ)て殺意を剥き出しにしていた自分をも『獣』と自嘲(じちょう)していた)、エッジ(刃物を使用していた)、ハウス(武命の『この家に愛なんてない』)、ライアー(瑠花に『嘘つき』と言われたから)、ミラー(小説『獣』の表紙)、ヌードル(鳳仙で働いていた)、オールド(父親の事を『クソジジイ』、『クソ親父』と罵倒していた)、ペット(ペットショップで展示された小動物達を見ていた描写から)
キーア:アップル(花言葉『後悔』)、ストレス(『あの悲劇』までは激情態になる事が一度もなかったから)、インビジブル(アタックライド『インビジブル』)、バイラス(転生前の祖母がC型肝炎に発症していた)

リムル:ジュエル(最初に解析したのが鉱石)、ウォーター(体が水っぽいから)、ナイト(出会ったパーティーのリーダーが騎士)、クインビー(蟲魔族のアピトが蜂だから)、ユニオン(各種族と同盟を結んだから)

今後の展開で変身しそうな人物は...?

  • 彩月×斬月
  • 頂槍×バロン
  • 紫盾×龍玄
  • 紅華×天鬼
  • ヴァラハ×ブラーボ
  • カプア×スカル(T2・帽子なし)
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