消滅したらネオだった件   作:ライノア

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~これまでの消ネオは?~

「幼馴染みの誼みだ、俺が個人的に調査だけはしてやる」

「ヴェルドラを喰ってから何日過ぎたんだろう...?」

「『''暴風竜ヴェルドラ''が封印されていた洞窟を調査しろ』ってギルドマスターに頼まれたんだ」

「俺達がこの村を助けるなら、その見返りは何だ?お前達は俺達に何を差し出せる?」

「我々に守護をお与え下さい...さすれば我らは、リムル様とキーア様に忠誠を誓いましょう!」

「お前達のその願い...暴風竜ヴェルドラに代わり、このリムル=テンペストと!」

「キーア・R=テンペストが聞き届ける!!」


第三話前編:ゴブリン村での戦い

OP『氷川きよし/限界突破サバイバー』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

KIA SIDE

 

守護者となった俺達は何をすべきかを考えていた。

自分の認識では用心棒だが、俺達に対する扱いが大袈裟(げさ)だ。

それは()も角、戦えそうな者だけを集合させてもらった。見るからにして期待出来そうにない程に貧相でボロボロになっていて、残りの遠巻きのゴブリン達が此方を窺っている。

 

リムル(うーん、牙狼族と戦うのは余り期待出来ないな。貧弱そうだし、襤褸襤褸(ボロボロ)...)

キーア(心の中でそう思ってるだろうが、差別的な判断は自滅を(うなが)す様なもんだぞ?)

リムル(分かってるって。にしても、プレッシャーだなあ...)

 

他のゴブリン達の増援はなく、この状況は村長さんにとっては発狂するくらいの恐怖であった。

逃げても食料もないまま餓死するだけで、餓死する直前に牙狼族の餌食(えじき)になる。

どちらを選択しても死から(まぬが)れない。野生動物の如く弱肉強食はどの異世界にでもある事だ。

そんな集められたゴブリン達は信仰に近い眼差(まなざ)しを俺達に向ける。

自分にとっては重圧な目線を向けられ、気の利いた言葉が思い浮かばなかったリムルは真面に赤いバンダナのゴブリン...リーダーに状況を(たず)ねる。

 

リムル「皆、状況は分かっているな?」

ゴブリンのリーダー「はい!生きるか死ぬの戦いになると覚悟は出来(でて)ております!!」

 

即答したリーダーの敬礼を、背後に居た身長の半分程度あった小型のゴブリンが興味本意で無言にジェスチャー。

ゴブリンのリーダーの決意が終わると他のゴブリン達が背筋を伸ばし、反応が遅れた甲冑(かっちゅう)のゴブリンも後に背筋を伸ばした。

 

キーア「良い決意表明だが、懸けるのは自分達の命ではない。全身全霊、何かを成し遂げる強い心だ。気負ったところで、負ける時は負けるからな」

リムル「全員気楽にな。最善を尽くす、その事だけを考えろ!」

 

俺達の格言を聞いたゴブリン達は感心した気持ちで希望ある声を上げる。

(ほお)を少し染めたリムルは計画を始める前に確認しておきたい事があった。

 

リムル「先ずは、負傷者のところに案内してくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

村長「出来るだけ手当てはしましたが...」

キーア「こりゃ酷ぇな。致命傷だ」

 

村長に負傷者のところに案内されると、其処に移ったのは一(まと)めに横たえられ、仰向けになったゴブリン達が小さく苦鳴を上げていた。

牙狼族の攻撃によって爪や牙で引き裂かれた傷口が裂けて()んでいた。

 

列の中央に置かれていた(たる)の水を飲ませながら薬草らしき物で治療を施していたらしいが、このまま放置すれば数日経たない内に死んでしまうだろう。

止血すべく体に巻いていたゴブリンの包帯は深く刻まれていた影響で血が多少(にじ)んでいる。

俺はリムルに転生した時期について(たず)ねる。

 

リムル「思った以上に深いな。爪や牙で引き裂かれたのか...まぁ、やってみるか」

キーア「そうだリムル。一つ聞きたいんだが...お前、死んだの何年だ?」

リムル「えっ?2013年だが...それがどうかした?」

キーア「2013年...大体分かった。これより、ゴブリン達の治療を開始する」

 

口癖を呟いた俺はネオディケイドライバーを腰に当て、ライドブッカーからディケイドのカードを取り出す。

 

キーア「変身!」

【カメンライド ディケイド!】

 

ディケイドに変身した俺は、更にライダーカードを取り出す。

描かれたのは、くの字を(かたど)ったピンクのヘッドパーツにスキーゴーグルに類似(るいじ)したバイザーにオレンジの目を持つライダー。

 

ディケイド「驚くのはまだ早い。変身!」

【カメンライド エグゼーイド!】

『マイティジャーンプ!マイティキーック!マイティマイティアクション!エーックス!』

 

ファイルファインダーからピンクの等身大パネルが出現し、同時にキャラクターの顔が描かれたアイコンをデコピンでタッチ。

タッチした事でアニメ風のエフェクトで『Select!』の文字が表示され、選択したアイコンと略同時に通り抜ける。

ピンクのピクセルエフェクトが広がり、俺はライダーカードに描かれたリムルが(いま)だに知らないライダーへと姿を変える。

くの字のヘッドパーツにスキーゴーグルに似たバイザーにはアニメ風のオレンジの目。

銀の胸部装甲の右側には赤・青・黄色・緑といった色取り取りの方向ボタンに似たパーツが付けられ、反対側には体力を示す暖色系のゲージ『ライダーゲージ』の下には剣とハンマーのパネルが表示されていた。

更に言うと、胸部装甲の背中には頭部と同じ顔のパーツが施されている。

患者の運命を変える為に戦うドクターライダー『エグゼイド』。リムルはまだ見ぬライダーの姿を見て驚愕(きょうがく)していた。

 

リムル「エ、エグゼイド!?まさか、ウィザードの次のライダーか!?」

ディケイド「いや、その三年後のライダーだ」

【アタックライド エナジーアイテムホルダー!】

 

アタックライドカードを装填し、片手にピクセルのエフェクトが集約すると、メダル型のアイテム『エナジーアイテム』が24枚分内包されているホルダー『エナジーアイテムホルダー』を手に持つ。

俺はエナジーアイテムホルダーを開き、左右に分裂する黒いシルエットが描かれた桃色のエナジーアイテム『分身』を取り出す。

 

ディケイド「リムル、これを使え」

リムル「未来のライダーの力に頼るのはちょっと勇気がいるけど...此処はお前の力を借りるよ!」

『分身!』

 

三年後のライダーの力を頼るのを少しだけ躊躇(ためら)うリムルだが、一人増えれば割と手短に終わると判断した。

後、リムル。力は貸したり与えたりするものじゃなくて『合わせるもの』な?

 

リムル「おおっ!俺が一人増えた!これなら作業に困らないな!」

 

分身のエナジーアイテムを獲得した二人に分裂したリムルは手前で横に寝っ転がっていたゴブリン二体を捕食。

 

長老「リムル様、キーア様。一体何を...!?」

ディケイド「まぁ、見とけ...「ペッ!」って、吐き出すの雑だなおい!?」

『風船化!伸縮化!』

 

本来なら倒した敵を分解するが、今回は治療に専念しているのでそのまま口から(つば)を飛ばす様にリムルは雑な形で吐き出す。

その光景を見ていた俺はエナジーアイテムホルダーにあった体が(ふくら)らんで宙に浮かぶ(あわ)い緑色のエナジーアイテム『風船化』と、左手を思い切り伸ばす黒いシルエットが描かれたピンクのエナジーアイテム『伸縮化』を素早く獲得して自らの体を膨張(

ぼうちょう)させる。

クッション代わりになった俺の体で、吐き出されたゴブリン二体を受け止める。

 

ゴブリンの負傷者A「あれ?俺達...!」

 

弾力で衝撃を(やわ)らぎ、更には伸縮化の効果で身体をゴムの様に自在に伸縮させ、弾力で地面に叩き付けられる直前のゴブリンを纏めて受け止めた。

地面に落ちたゴブリン二体は一気に意識が覚醒し、その様子を一部始終見ていた長老は愕然(がくぜん)とする。

何と吐き出されたゴブリン二体の傷は(またた)く間に完治していた。

 

村長「き、傷が...!!」

ゴブリン二体「「治っている!?」」

リムル「おおっ!やってみるもんだな〜!捕食し、体内に貯めてある回復薬をぶっかけただけで今んなに効果があるとは...!すげぇ効能だな。回復薬!」

 

実は俺も見てはいたが、恐らくは捕食者で飲み込んだゴブリンに体内で溜め込んでいた回復薬を掛けていた。

体内に貯めた影響で、ポケモンでいうところの凄い傷薬並みの回復力だ。

 

ディケイド「ピッチャー!いつでも良いぜ!」

リムル「おうよ!ほい次!ほい次!ヒポクテ草を食いまくってまだまだたっぷりある。皆治してやる!」

 

リムルは分裂した分身と共に次々と回復したゴブリン達を吐き出し、その旅に俺が伸縮した腕で全員受け止める。

 

長老「さ、流石はリムル様とキーア様...!」

「「「「「ハ、ハハーッ!」」」」」

 

村長とゴブリン達は俺達の力を蘇生の力だと勘違いして平伏していた。

 

ディケイド「何も土下座なんてしなくても...うおっと!」

リムル「ナイスキャーッチ!これで怪我人は一通り全部だな。次に(さく)を作る。村の防備を固めるぞ!」

『うん!(はいぃ...)』

 

全員の治療が終え、早速柵の設置を始める。

大木を切って作るのは時間の無駄だと判断し、ある物...つまりは家の素材を流用して作る様に命じた。自分たちの命が掛かっているからな。当然ゴブリン達に躊躇(ためら)いはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

NO SIDE

 

満月の夜、一匹の狼が(とが)った岩場で唸りを上げて(たたず)んでいた。

濃い紺色の体毛が特徴的で、爪と牙を武器に敵を引き裂き噛み砕くその種族達の名は『牙狼族』。

右目に傷がある牙狼族のボスはゴブリンの村を睥睨(へいげい)している。

 

牙狼族のボス『良い夜だ、この森からヴェルドラの加護は失われた。恐るる者はもうない...今夜あのゴブリンの村を滅ぼし、このジュラの森への足掛かりを作ろうぞ!!』

牙狼達『ウオォォォォォォォォォン!!!!』

牙狼族のボス『我らがこの森の支配者となるのだ!!』

牙狼達『ウオォォォォォォォォォン!!!!』

 

暴風竜ヴェルドラの加護の消失により、我々が恐れる敵はいない。

ゴブリンの村を滅ぼし一族の足掛かりを作る。その後は時間を掛けて周囲の魔物達を狩り尽くし、この森の支配者となる。

同胞の牙狼達が我らがリーダーの鼓舞で遠吠えを上げた。

 

牙狼族のボス『我らの爪は如何(いか)なる魔物も引き裂き、牙は如何なる魔物を喰い破る!』

 

牙狼族のボスは唸りながら我が同胞の力を語る。

爪で如何なる敵を引き裂き、牙で装甲をも喰い破る。『肉を切って骨を切る』という(ことわざ)がある様に、自分達にはその力がある。

いずれは更なる力を求めて南への侵攻を視野に入れていた。

遠吠えを上げ、岩場から降りたボスに続いて他の牙狼達もゴブリンの村に向かって疾走。

牙狼族のボスは立ち止まり、変わり果てたゴブリンの村を見る。

村を覆う見慣れぬ物が目に映った。村の家々が取り壊され、貧相な人間の村にありそうな木の柵。

 

牙狼族のボス『ふん!あの様な貧弱な柵...何の役に立つ!?』

???『...親父殿、あれを』

 

柵の貧弱さに牙狼族のボスは嘲笑う。

だが、口部と背中の白い毛。額に刻まれた青い星模様が特徴の我が息子が、自身の前に立ちながら冷静な態度で声を掛ける。

目を凝らすと柵の開口部には、あぐらをかいてその膝にスライムを乗せていた一人の人間が待ち伏せしていた。

 

牙狼族のボス『スライムと、人間...?』

キーア「お前らが牙狼族だな?村長の息子が世話になった様で何よりだ」

リムル「このまま立ち去るなら何もしない。さっさと立ち去るがいい!」

牙狼族のボス『小賢(こざか)しい!スライムと人間如きが我ら牙狼に命令するな!あの柵を()ぎ倒せ!ゴブリン共を血祭りに上げろォォォォォッ!!!!』

 

十数匹の牙狼達がゴブリンの柵を薙ぎ倒すべく、俊敏な動きで進行を始める。

自分達の持つスキル『思念伝達』によって牙狼族は群れで一体の魔物となる。

言葉を出すよりも早く、真価を発揮した連携でこれまでゴブリン達を数匹(ほふ)ってきた。

勝てる者など存在しない。そう思った牙狼族のボスは口角を上げた瞬間、その余裕そうな表情は驚愕(きょうがく)へと変わった。

 

牙狼族のボス『何だ!?何に(さえぎ)られた...!?』

村長の息子「止まった...()て!射てッ!」

 

柵に辿り着く直前の牙狼達が次々と倒れていったのだ。牙狼族の長が戸惑う瞬間を狙って柵の隙間からゴブリン達が矢を放ち、牙狼達を射抜いていく。

その時、牙狼族のボスは同胞が遮られた原因に気付く。それは仲間の血が付着した銀の糸。

 

牙狼族のボス『これは...糸!?』

リムル「スキル『鋼糸』だ」

牙狼族のボス『貴様らの仕業か...!?』

キーア「だとしたらどうする?」

牙狼族のボス『矮小(わいしょう)なる魔物と人間の分際で...ッ!?』

 

鋼糸による刃物に近い殺傷力で次々と牙狼達の肉を引き裂き、その隙を狙ったゴブリン達に射抜かれる。

牙狼族のボスは自分の思い描いた展開との違いに狼狽(うろた)えていた。

我ら牙狼族は集団でこそ真価を発揮出来る種族。ボスの不信は致命的な結果を招く。

その事を冷静ながらも十分に理解していた故に、最大の過ちを犯した。

あの程度の隙間がある柵を壊せない不甲斐(ふがい)なさより、仲間の腹立ちが自分に向かうのを恐れていたのだ。

スライムや人間など我々の敵ではない。群れの最強の存在として自分の力を誇示する必要があると判断した牙狼族のボスは襲い掛かろうとしたが、人間————リノア・キーアが黒いハンドルの付いたマゼンタ色のベルト ネオディケイドライバーを腰に巻くのを目撃する。

左右のハンドルを開き、巻き付いたベルトの右側に出現したホルダーからカードを印籠(いんろう)の如く取り出す。

 

キーア「変身!」

【カメンライド ディケイド!】

 

19の幻影がキーアに重なり、灰色の装甲を形成。

ネオディケイドライバーの赤いレンズから七枚のプレートが刺さると、灰色だった体色がマゼンタに染まり、翠色(すいしょく)の目と額の黄色いレンズが変身完了の合図を鳴らす。

 

牙狼族のボス『''ディケイド''?そうか...貴様が''ディケイド''かッ!?いずれこの世界を破壊する''魔王''にも匹敵する力を持つとされる魔人と噂に聞くが、その正体がたかが人間とはな!期待していた我が愚かだった...スライムとゴブリン共の前に、先ずは貴様から捻り潰してやるッ!!!!』

 

牙狼族のボスは仲間の(あだ)を討つべく、ディケイドと呼ばれた魔人の正体である人間に向かって疾走。

射抜けれた同胞の亡骸(なきがら)を駆け抜け、付着した仲間の血と月の光で反射された鋼糸を()み千切る。

 

キーア「...リムル。こいつは俺がやる」

リムル「分かった、お前に任せたぞキーア」

 

リムルに選手交代を許可され、牙狼族のボスの前に立ち塞がったディケイドはライドブッカーからカードを取り出す。

描かれたのは兎の横顔と戦車の横側を(かたど)るアンテナを持つ赤と青二色のライダー。

 

【カメンライド ビルド!】

『鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イェーイ!』

 

赤と青の二色。軽装甲の半身が挟まった事で蒸気が噴き出されると、変身が完了したディケイドの姿が大きく変わり出す。

 

リムル「(また)俺の知らないライダーだ!今度は...兎と戦車!?」

 

ドライバーに装填したカードに描かれた通り、頭部の複眼は兎の横顔と戦車の横側を連想させ、青い右足首にはキャタピラ、赤い左足にはバネが内臓されている。

創造、作るという意味の『ビルド』。天才科学者が変身する『仮面ライダービルド』に姿を変えた全身を屈ませたディケイドは左足を地面に踏み込むと、内臓されているバネ『ホップスプリンガー』による跳躍力で一気に牙狼族のボスとの距離を詰め、そのまま左手首『BLDインパクトグローブ』による中国拳法の技『八景』を繰り出す。

本来ならインパクトグローブによる衝撃波を(ともな)うパンチで牙狼族の内部機能を破壊する事も可能だが、あまりそれは好ましくない事だと判断したキーアの配慮でスキル『力量操作』による威力調整で内部破壊しない程度に突き飛ばす。

 

ディケイド「さて、その爪の切れ味と牙の咬合(こうごう)力はどれ程のものか...お手並拝見と行こうか」

牙狼族のボス『たかが姿を変えたところで()に乗るな!!』

 

吹っ飛ばされた牙狼族のボスは直ぐに態勢を整え、自慢の武器である爪と牙でディケイドに襲い掛かる。

直前にディケイドは銀と青のビルドが描かれたカードをドライバーに素早く装填。

 

ディケイド「...ビルドアップ」

【フォームライド ビルド!スマホウルフ!】

『繋がる一匹狼!スマホウルフ!イェイ!』

 

銀とターコイズブルーの半身が重なり、ディケイドを新たな形態に変化させる。

狼の横顔と電話アプリを模した複眼。三つに連なる稲妻模様の右肩装甲に狼の顔を模した右手甲には鉤爪、左腕には巨大なスマホ型の盾が備えられている。

ビルド『スマホウルフフォーム』になったディケイドは、狼を模した視覚センサー『レフトアイウルフ』で牙狼族の長の攻撃パターンを見極め、反攻と撃滅の戦術を編み出す。

 

頭のデカいゴブリン「又変わったっす!」

ディケイド「狼には狼...ってな」

 

更にはウルフサイドを保護する銀色の装甲『シルヴァチェストアーマー』と頭部『シルヴァヘッドアーマー』の防御性能を最大限に高めると、月の光による反射で狼の毛並み以上の美しさを引き出させる。先ずは牙狼族の長の爪と鉤爪を備えた攻撃装置『ウルフェイタルクロー』との一騎討ちが繰り広げられる。

どちらも引けを取らない程に火花を散らし、伸縮自在の爪を避けながら牙狼族の長は距離を詰めながら攻撃のチャンスを(うかが)う。

ディケイドがスマホウルフの左足部『ルプスラッシュレッグ』と右手首『ルプスラッシュアーム』による銀色の光刃を纏った高速ラッシュを叩き込む。

牙狼族の長を死なない程度にダメージを負わせ締めに右拳『BLDハウリンググローブ』によるアッパーカットで宙に打ち上げた。そして打ち上げた牙狼族の長に追い討ちを仕掛ける様に、解き放たれた狼の頭部を模したエネルギー波が獲物に牙を剥く。

牙狼族の長は狼のエネルギー波を前に、噛み砕かれる直前に急降下させた体を捻って回避。

急降下による一撃で、ディケイドの左腕に備えられたパッド型の盾『ビルドパッドシールド』の液晶画面を突き刺してみせた。

 

ディケイド「ふんッ!!」

牙狼族の長『ぐうッ!?』

長の息子『親父殿ッ!!』

 

弾き返された牙狼族の長は距離を詰めながら攻撃を仕掛け、ディケイドは右肩装甲『BLDハウリングショルダー』によるショルダータックルをセロ距離でかます。

先端が狼の牙の如く鋭利な突進は、牙狼族の長を泣き叫ばせるほどの痛覚を覚えさせる。

怯んだ隙にディケイドはビルドのファイナルアタックライドカードを取り出す。

 

牙狼族の長『これしきッ...!!』

【ファイナルアタックライド ビ、ビ、ビ、ビルド!】

『ボルテーックフィニーッシュ!イェーイ!』

 

自身の周囲に映写したスマホのアイコンの中を走る黒い狼の幻影が牙狼族の長を何度も(けしか)けて宙に打ち上げる。

牙狼族の長が体勢を整える直後にディケイドは距離を詰め、ウルフェイタルクローを顔直前にまで寸止めした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

DECADE SIDE

 

ディケイド「中々出来るな。流石は長と言ったところか...仲間との連携にボスであるお前の統率力は天下一品だが、俺とリムルには遠く及ばない。素直に負けを認めるなら、命までは取らない」

牙狼族の長『何故だ...何故人間である貴様が、下等な魔物の味方をするのだ!?』

ディケイド「村長達はリムルと俺の大事な仲間だ。それにお前が下等と見做しているスライムのリムルは通常のスライムとは違って、俺と同じくお前らの十倍は強いぞ。(おのれ)の強さに過信し過ぎた上に敵の強さを計算出来ないお前に代わって、俺達がその計算の仕方を教えてやるよ。リムル、あの近くの木を切り倒してくれ。()()く最大出力で頼む。俺も出来るだけ協力する」

 

自身の敗北を認められないでいた牙狼族の長を降伏させるべく、蝙蝠(こうもり)の羽の様に()り上がった黄色い複眼を持つライダーカードをドライバーに装填する。

 

【カメンライド キバ!】

 

全身に波紋が浮かび上がり、体色が(にご)ると同時に体形を変化。

(やが)てはステントグラスの様に飛び散るとその姿を変える。

額に緑の宝玉が埋め込まれており、蝙蝠の羽を模した釣り上がった黄色い複眼。

銀の鎧に黒く縁取られた筋質の赤い胴体。両肩と右足の装甲には鎖で封印を施されたかの様に縛られている。運命の鎖を解き放つ仮面ライダーキバへと俺は姿を変えた。

だが、まだこれで終わりじゃない。

 

【フォームライド キバ ガルル!】

 

ネオディケイドライバーから飛び出たのは青い狼の獣人の彫像。

グリップを手に持つと狼の顔が現れ、湾曲(わんきょく)した黄色い刀身を露出させた刀剣『魔獣剣ガルルセイバー』へと変形させる。

両腕と胸部が鎖に覆われ、解き放つと同時に左腕が変化する。

右肩はキバの初期形態でもあるキバフォームと同じだが、左肩は狼男の毛皮の様に四つに波打ち、青い胴体は胸骨を思わせる。

複眼は黄色から青へと変色した『ガルルフォーム』へとフォームチェンジを果たした。

 

リムル「最大出力かぁ...それじゃあ遠慮なく!スキル『水刃』!!」

ディケイド「ふんッ!!」

 

俺は牙狼族達を左右に移動させた後に全身を隆起(りゅうき)させ、左手に持ったガルルセイバーの湾曲した刀身『ウルフェンブレード』を振り下ろす。

リムルの最大出力で放った水刃は数本もの大木を縦一列に切り落とし、月の満ち欠けで威力が変動したガルルセイバーの切り下げによる空刃で近くの山一つを両断してみせた。

 

ディケイド「これで理解したか?この時点でお前はリムルに同胞ごと体を真っ二つにされていたか、さっきの俺の一撃で全員肉片に変える事だって造作もないんだ。これでも納得出来ないなら、リムルが抑制(よくせい)していたオーラを今此処で解き放つ!」

 

そう言った俺に合わせてリムルは抑制していたオーラを解放。

放たれる凄まじいオーラに牙狼族の長は唖然(あぜん)としていた。

 

牙狼族の長『ば、馬鹿な...!!あれ程のオーラを、あのスライムが隠し持っていただと...!?』

ディケイド「お前らの敗因はこいつらを見た目で下等と判断し、相手の強さを(あなど)った事だ。さっき俺達の放った一撃による惨状を見れば、一目瞭然(いちもくりょうぜん)だろう?」

牙狼族の長『分かった。我の、負けだ...』

 

長が敗北を認めると、俺はガルルセイバーを下ろす。

 

リムル「聞け。牙狼族よ!お前らのボスは降伏した!選択をさせてやる...服従か、死か!」

ディケイド「おいリムル。服従の選択肢を『逃走』に変えないとこいつら逃げないぞ」

リムル「あ」

ディケイド「『あ』じゃねーよバーロー」

 

リムルは残った牙狼族達に選択肢を成すも、それでは服従するくらいなら死を与えてやると言ってるも同然だ。

長の(とむら)いとばかりに自殺願望は止めてほしいが、牙狼族達が動く気配は全くない。

数ではこちらが上だが、俺達も無傷で勝つのはとても困難だ。

せっかくゴブリン達の死傷者はゼロだというのに、出来ればこれ以上争いたくない。

さっきまでのけたたましい空気が嘘の様な静寂(せいじゃく)と化し、牙狼族達の視線が俺達に向けられる。

せめて他の牙狼族達が生きていれば牙狼族達も安泰(あんたい)なんだけどなぁ...と心の中で思っていた俺は一つの解決策に(もと)付く。

 

ディケイド「...リムル。あいつらの仲間は俺に任せてくれないか?俺が生き返らせる」

リムル「えっ、そんな事出来んの!?」

ディケイド「ああ、一か八かだけどな。上手くいってくれるといいが、()ずはその前に...!」

 

俺がライドブッカーから取り出したのは、朱色(しゅいろ)と焦げ茶色をベースにしたビルド。

 

ディケイド「ビルドアップ!」

【フォームライド ビルド フェニックスロボ!】

『不死身の兵器!フェニックスロボ!イェア!』

ディケイド「それじゃ、お先にどうぞ」

リムル「良いのか?それじゃあ、遠慮なく!」

 

ハーフボディが重なり、横から不死鳥を見た炎の翼とロボットアームを模した複眼のビルド。

肩装甲と右腕装甲。背中の翼は炎の様な意匠があり、左腕にはロボットアームが備わっている。

不死鳥と機械の力を宿した永遠の戦士 ビルド『フェニックスロボフォーム』となった俺は実行に移す前に、黒紫の(もや)を噴き出したリムルが牙狼族に擬態した。

実は村長達に会う前に、リグルが生前に倒した牙狼族の死骸(しがい)をあちこち目撃した上で、その一体をリムルが万が一の時に捕食していた。

その時にリムルが獲得したスキルは『超嗅覚』『思念伝達』『威圧』の三つだ。

 

リムル「クックック...!聞け!今回だけは見逃してやろう。我らに従えぬというのならば、この場から立ち去る事を許そう!!」

 

そう宣言したリムルは大声量で咆哮————『威圧』を発動させる。

余りの声量で怯むゴブリン達に対して、牙狼族達は歯を剥き出しながら俺達の方へと向かって行く。

そして互いの距離が半分くらいになったところで、牙狼族達は一斉に平伏した。

 

牙狼族達『我ら一同、貴方方に従います!!』

ディケイド「What the...f*ck?」

ゴブリンのリーダー「あ、あのー...」

村長「か、勝ったのですか?」

 

ゴブリンのリーダーと村長が尋ねると、俺とリムルはスライムの姿に戻って勝利宣言する。

 

ディケイド「ああ。どうやらそうらしい」

リムル「争う必要がなくなったのは良い事だ。うんうん、平和が一番」

 

俺達の勝利にゴブリン達全員が歓喜する。

 

ディケイド「さて、早速作業に取り掛かろう」

 

俺は今回の戦いで戦死した他の牙狼族達の亡骸を寄せ集めて、(かざ)した右手から炎を放出させる。

その炎は先程ゴブリン達に射抜かれた牙狼族全員を生き返らせ、牙狼族の長の負った傷をも完治させた。

 

牙狼族A『あ、あれ?俺達...』

牙狼族B『生き返ってる...!?』

牙狼族の長『傷が治っている...!?まさか、この様な奇跡が...!!』

ディケイド「お前がこの群れの長なら、これからも同胞達の成長を見届けてやってほしい。それにお前の仲間の一部が死んだら、他の仲間が悲しむだけだからな」

牙狼族の長『...そうか、我が同胞達の気を(つか)ってくれたのか。感謝する』

 

フェニックスロボの右腕にある焼却ユニット『フレイムリヴァイバー』は、無機物や有機物に新たな姿で再生する能力を持っている。

今この瞬間、牙狼族は戦死した同胞を全員生き返らせれたのは功績が大きい。

牙狼族の長に頭を下げられ、こうしてゴブリン村での戦いは終結した。

だが、この後に待ち受けていたのはその後始末だった。

家を取り壊す様指示したのは誰なのかはさて置き、家の解体で就寝場所がなかったのでゴブリン達には()き火の(そば)で。牙狼族達には村の周辺で待機を命令させて一日が終わったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜が明けて朝を向かえ、リムルが思いついたのはゴブリンに狼の面倒を見させる事だ。

俺達が二手に分かれて数えた結果、戦えるゴブリンの総数は74匹で負傷者はゼロで、精々擦り傷程度だった。

牙狼族は長を含め、生き残った81匹に俺が生き返らせた14匹を足して全部で95匹。ほぼ死者はゼロだ。

こっちは負傷した個体もいたので、リムルが回復薬で治療した。

牙狼族の治癒(ちゆ)力はとても高い様で、そのまま放置しても大丈夫だろう。俺達は起床(きしょう)したゴブリン達を整列させる。

 

リムル(どうすんだ?ゴブリンだけじゃなくて、こんな沢山(たくさん)の犬共の面倒誰が見るんだよ...?)

キーア(まぁ、此処(ここ)はペアを組ませた方が良いんじゃないか?そうすれば、無理に全員の面倒を見ずに済む)

リムル(成る程、そう来たか。それじゃあキーア、早速だが牙狼族達を呼んできてくれないか?)

キーア(無論、そのつもりだ)「お前ら、今日は大事な話がある。牙狼族全員もゴブリンの隣に並んでくれ」

 

非戦闘員のゴブリン達は周囲で俺達の様子を(なが)めていた。何せこの場は家のない更地だ、目立つのも無理もない。

 

リムル「(どっちも同じぐらいだな。じゃあ...!)はい。それじゃあ聞いてくださーい!」

 

村長は木こりに座っていた俺達の隣に控えていて、俺は牙狼族達を呼び寄せて本題に入る。

 

キーア「これからお前らにはペア...二人一組となって過ごしてもらう」

ゴブリン「二人...?」

牙狼族『一組...?』

 

隣に座る者同士であるゴブリンと牙狼族が視線を()わすが、嫌そうな素振りを見せる者は居なかった。

俺的には少し戸惑った奴が居ても良かったんだけどな。

 

リムル「昨日の敵は今日の友!これからは力を合わせて、仲良くするんだぞ?」

キーア「互いと互いを助け合って、上手くやる様に。良いな?」

『はいッ!!』

 

ひと段落したリムルは俺の膝の上で安堵(あんど)して、これから重要な事を伝える。

 

リムル「ええっと...これから大切なのは衣・食・住です。食べ物を探し、家を作ったり、村の守りを固めたりする為のチームを作ろうと思う。先ずは...」

キーア(待てよ。こいつら、名前とかあったっけ...?)

 

其処で俺はある確信に思い至ったので、村長に尋ねてみる事にした。

 

キーア「...なぁ、村長。あんたに名前とかはないのか?」

村長「普通魔物に名を持ちませぬ。名前がなくとも意思の疎通(そつう)は出来ますからな」

キーア「成る程、大体分かった。けど、名を持たない方が何かと不便(ふべん)だ」

リムル「キーアの言う通り、俺もあった方が便利だから、お前達に名前を付けようと思うが...良いか?」

『!!!?』

 

それを聞いた全員が驚愕する。それも村長も同じ反応だった。

 

村長「なっ、名前!?(よろ)しいのですか...!?」

リムル「お、おう...?」

 

村長の問い掛けにリムルは頭にクエスチョンマークを表示させるがゴブリンは歓声を、牙狼族達の中には非戦闘員のゴブリンを乗せて遠吠えを上げる個体も居た。

村長も普段の物静かな振る舞いとは裏腹に名付けられる喜びで腕を大きく振り回している。

 

リムル(...何で?名前付けるぐらいでそんなに興奮してるんだ...?)

キーア(まぁ、良いじゃねぇか。先ずは徹底的に名付けようぜ)

 

俺達はゴブリンと牙狼族を一列に並列させ、先ずは手始めにリムルは村長から名付ける事にした。

 

リムル「じゃあ、村長から。ええっと、そうだなあ...亡くなった戦士の息子は何て名前だったんだ?」

村長「...リグルです」

リムル「リグルか。なら...リグルドだ。リグルド!」

 

名付けられた瞬間、村長ことリグルドの体が発光する。

恐らく今の名付けは語呂が良いというだけの適当さだろう。

名付けられた嬉しさにリグルドは感涙(かんるい)する様子を見て、リムルは苦笑する。

 

リグルド「有難(ありがと)御座(ござ)います!リグルド...!感激です!!」

リムル「そ、そうか...?」

キーア(余りにも適当過ぎないか?)

リムル「(語呂が余りにも良かったから...)お前は兄の名を継げ。リグルだ!」

リグル「は、はいっ!!」

 

長男の名を次男に継承され、嬉し涙を流した村長は手で顔を覆い隠している。

 

リグルド「息子にリグルの名を継がせて頂き、感謝歓迎です!」

「「有難う御座います!!」」

リムル(何なんだ?このリアクションは...?)

キーア(きっと、それほど嬉しかったんだろうな)

 

村長とリグルは小刻みに跳ねて俺達に平伏する。

こりゃあリムルのネーミングセンスに乗るしかないな。

 

コンプリートフォーム(平成1期)の解禁は...

  • オークロード戦
  • カリュブディス戦
  • 精霊の棲家での攻略
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