「みんな、昨日は本当に...ごめんなさい!!」
「頭を上げてください!ホシノ先輩!」
「そうよ!昨日はそりゃぁ、少しはビックリしちゃったけど!別に先輩の事、私たちは責めてないからっ!」
「そうですよー。それよりもホシノ先輩が元気になってくれて、私は嬉しいです☆」
「ん、ホシノ先輩が元通りになって良かった。それはそれとして、先輩?」
「ん?なーに、シロコちゃん?」
「ん、あれ何?」
「そわそわ...!そわそわ...!」
「自分で「そわそわ」とか言ってる人、始めて見たんだけど...」
「シキさん、一体どうしたんでしょうか?なんだかホシノ先輩の事を、ずっと気にしているような...?」
「あー...”お母さん”のことー?」
『お母さんっ!!??』
「ど、どういうことでしょうかー?」
「あはははは...。うん、説明するね?」
---先生、説明中...。
先生はホシノが話したユメという生徒のところは、ぼかして伝えた。
「えーっと...。つまり、要約しますとお二人に弱音を吐き出して、抱き締めてもらった結果...ホシノ先輩はシキさんに母性を感じて?シキさんもそれを受け入れたと?」
「まあ、簡単にまとめるとそうなるね...」
「あー...。なんだろ、頭痛くなってきたわ...」
「むぅー...。なんだかホシノ先輩を盗られちゃったみたいで、ちょっと複雑です...」
「でも、ホシノ先輩のあんなに自然な笑顔、始めて見る。...私は今のホシノ先輩、けっこう好き」
「そう言われると...確かにそうなのよねぇ。ま、先輩が幸せなら、それでいいわよね!」
「うへへー♪お母さーん♪」
「よしよし♪ちゃんとみんなに”ごめんなさい”出来て、偉い偉い♪」
「過保護すぎでは...?」
「むうー...!」
シキによるホシノの甘やかしタイムを、しばらく見せつけられる面々であった。
「えー...。そろそろ本日の本題に入りたいのですが、大丈夫ですか?」
「うん。アヤネ、進行役をよろしくね?」
「はい、先生!...では、2つの事案についてお話ししたいと思います。最初に先日の襲撃の件です。私たちを襲ったのは「便利屋68」という部活です」
そう言って、部室に備え付けてあるホワイトボードに情報を書き込んでいくアヤネ。
「ゲヘナでは、かなり危険で素行の悪い生徒たちとして知られています。部活のリーダーの名前はアルさん。自らを「社長」と称しているようです。他には...」
アヤネの報告により、どんどんホワイトボードには情報が追加されていく。
「いやぁー、本格的だねー。あ、シキお母さんお膝大丈夫?私、重くない?」
「全然♪ホシノちゃんは羽みたいに軽いからねー♪」
「な、ナチュラルにシキさんの膝に座ってるわね...」
「アルさんって、社長さんだったんですね☆すごいです!...ホシノ先輩?私のお膝も空いてますよー?」
「いえ、あくまでも「自称」なので...それで今はアビドスのどこかのエリアに入り込んでいるようです。今朝も会いましたし...。というかノノミ先輩、シキさんと張り合わないでください...」
「ゲヘナ学園では、起業が許されているの?あ、先生には私の膝を貸してあげるね?」
「うん、遠慮しておくね?」
「それはないと思いますが...勝手に起業したのではないでしょうか。...シロコ先輩も先生を誘惑しないでくださいっ!」
「あら...校則違反ってことですね。悪い子達には見えませんでしたが...。くっ!私にだって、母性の塊が付いているのに...!」
「もうスルーしますからね?...今まで非行の限りを尽くしたようで、ゲヘナでも問題児扱いされているようです。そんな危険な組織が私たちの学校を狙っているんです!もっと気を引き締めないといけません!」
「次は取っ捕まえて取り調べでもするかー」
「はい、機会があればぜひ...!」
「アヤネちゃん?何かあったの?並々ならぬ恨みを感じるんだけど...」
「...いえ、特に何も。続きまして、セリカちゃんを襲った謎の組織の黒幕についてです!」
(何かあったんだろうなぁ…)
アヤネがそう言いながら、ホワイトボードをクルリと回転させると、またまた情報を書き込んでいく。
「先日の戦闘で手に入れた兵器類の破片を分析した結果...。現在は取引されていない型番だということが判明しました」
「もう生産してないってこと?」
「それをどうやって手に入れたのかしら?」
「生産が中止されたものを手に入れる方法は...キヴォトスでは「ブラックマーケット」しかありません」
「ブラックマーケット?」
「先生とシキさんはご存じないかもですね。簡単に言うと...とっても危ない場所です」
「ノノミ先輩の説明に補足するなら、あそこは中退、休学、退学...様々な理由で学校を辞めた生徒たちが集団を形成しており、連邦生徒会の許可を得ていない非認可の部活もたくさん活動していると聞いています」
「便利屋68みたいに?」
「はい。それから便利屋68も、ブラックマーケットで何度か騒ぎを起こしていると聞きました」
「では、そこが重要ポイントですね!」
ノノミの指摘に頷くと、アヤネは続ける。
「はい。ふたつの出来事の関連性を探すのも、ひとつの方法かもしれません」
「よし、じゃあ決まりだねー。ブラックマーケットを調べてみよう。意外な手がかりがあるかもしれないしね?」
「じゃあ、準備出来しだい出発しようか」
こうして一同はブラックマーケットへ足を運ぶのであった。
~ブラックマーケット~
「ここがブラックマーケット...」
「わあ☆すっごい賑わってますね?」
「本当に。小さな市場を想像していたけど、街ひとつくらいの規模だなんて。連邦生徒会の手が及ばないエリアが、ここまで巨大化しているとは思わなかった」
「うへ~普段私たちはアビドスにばっかりいるからねー。学区外は結構変な場所が多いんだよー」
「ホシノ先輩、ここに来たことあるの?」
「そうなのホシノちゃん!?あんまり危ないところには行っちゃ駄目だよ!?」
「んもうー、早とちりしすぎだよー?私も来るのは初めてだよー。でも他の学区には、へんちくりんなものがたくさんあるんだってさー」
「へんちくりん?」
「ちょーデカい水族館もあるんだって。アクアリウムっていうの!今度行ってみたいなー。うへ、魚...お刺身...」
「よくわかんないけど、アクアリウムってそういうものじゃないような...」
ブラックマーケットへたどり着いた一同は、初めて見る光景にワイワイと騒ぐ。そうしていると、すぐにアヤネからお叱りの通信が入る。
『皆さん、油断しすぎです!そこは違法な物資を売買している場所ですよ!何が起こるかわからないんです!何かあったら私がって、きゃあっ!?』
通信の途中で聞こえてきた銃声に、驚いて声をあげるアヤネ。
みんな一斉に各々の獲物を構えて、警戒体制に入る。
「銃声だ。こっち...!」
「あ!待って、シロコ!」
銃声のする方へ走り出すシロコを追って、他の面々も走り出す。
すると、意外とすぐに現場にたどり着く。そこには数人のチンピラが一人の少女を追いかけている光景が、目に飛び込んでくる。
「待て!!」
「う、うわああ!まずっ、まずいですー!!つ、ついてこないでくださいー!!」
「そうはいくか!」
「お前は私たちの獲物だっ!覚悟しろ!」
『あれ...あの制服は......』
「わわわっ、そこどいてくださいー!!」
「ん...大丈夫?」
「い、いたた...ご、ごめんなさい!」
「いたぞっ!」
チンピラに追われていた少女は、勢い余ってシロコとぶつかる。その間に追い付いたチンピラが、ワラワラと押し寄せてくる。
「何だおまえらは。どけ!アタシたちはそこのトリニティの生徒に用がある」
「あ、あうう...わ、私の方は特に用はないのですけど...」
『思い出しました、その制服...キヴォトスいちのマンモス校のひとつ、トリニティ総合学園です!』
「そう、そしてキヴォトスで一番金を持っている学校でもある!だから拉致って身代金をたんまり頂こうってわけさ!」
「拉致って交渉!なかなかの財テクだろ?」
「そうだ、お前らもこの話に乗らねえか?そうすりゃ、分け前も---」
「おや、随分と楽しそうなお話しをされていますね?私も交ぜてくださいな」
「あ?誰だ、お前?」
チンピラがシロコ達に拉致の話を持ちかけようと話しかけている途中で、その話を遮りチンピラ達の背後から声をかける者がいた。
顔には鼻から上を、純白で目元を朱く縁取った狐の面で隠し口許には微笑を称え、その面と同じく純白にところどころ朱く縁取られた和服(下は短めのスカート)を着た淑女が立っていた。
「これは失礼致しました。私は「タマモ」と申します。たまたま通りかかったところに、興味を引かれるお話しをされていたので...つい、割って入ってしまいました」
「...へー?んな身なりの良い格好しといて、こんな話に興味があんのかよ?」
「あら、それはそうでしょう?ここは天下のブラックマーケット。どんな身なりをしていようと、その中身は...ねえ?」
「...へっ!いいね、アンタ。気に入ったぜ!なあ?」
「ああ。それにその凄み!アンタ只者じゃないだろ?」
「うふふ、さあ?どうでしょうね?」
「タマモ」と名乗る人物が現れ、チンピラに加勢する流れが出来始めた空気を察知し、戦闘モードに入ろうとするアビドス一同に先生とシキは待ったをかける。
「...お母さん?」
「ちょっと!なんで止めるのよ!」
「まあ、”妹”のお芝居に付き合ってあげようかなってね?」
「うん。久しぶりに顔を見れて、彼女もテンション上がってるみたいだし。まあ、ちょっとした演出だと思えばね?」
『”妹”...”久しぶりに会う”...あ!それじゃその人は...!』
「ふふっ♪さあ...ここからがハイライトだよ?」
---タマモside
うふふ♪皆様、お待たせしました”タマモ”こと”ワカモ”です♪
長らくお姉さまの元を離れ、情報収集という任に就いていましたが...まさか
こほん!...失礼、取り乱しました。ですが、久々の再会なのです!少しくらいは遊び心を出しても...大丈夫ですよね?
「...で、だ。タマモさんよ?アンタもウチらに加勢してくれるってことで、いいんだよな?」
「はい。もちろんです♪」
「へへへっ!こんだけ凄みのある人が加勢するんだ、大人もいるようだが、こんな連中可愛いもんだぜ!」
「だな!今日は久々にツイてるぜ!」
...ああ、こんなにも無邪気にはしゃいで、もう勝利を確信しているなんて...。この方たちは本当に......。
「えぇ、えぇ、本当に......お可愛いこと♪」
「ん?何か言ったかい、タマ---」
---ダァンッ!
「......は?」
「あら、呆けていては足元を掬われますよ?」
「ぐわっ!?ぐっ!?」
「なんでウチらに攻撃を---ぐえっ!?」
「それそれそれ~♪」
「ぎゃっふん!?」
撃ち、払い、投げ飛ばし、殴り飛ばす。その様はまるで舞いを舞うようで、無駄の無い滑らかな動きで次々とチンピラ達を無効化していく。
「な、なんで...?ウチらの味方じゃ......」
「あらあら、まあまあ!...駄目ですよ?不良ともあろう者が簡単に人を信用しては?利用するならまだしも...特に、”狐”を信じるなど......」
「ど、どういう...?」
「...おや、知りませんか?”狐は人を化かすもの”。良い教訓になりましたね。まあ、もっとも?私のような”子狐”に化かされるようでは、悪事には向いていませんね...。これからは真面目に生きなさいな」
「おぼ、えてろ...よ......」
「残念、もう忘れましたわ♪」
こうしてお姉さま達に襲いかかる悪者を、華麗に退治するワカモなのでした~♪
~ワカモ(タマモ)side out~
「と、いうわけでお久しぶりですわ!お姉さま~♪」
「うん、おかえり。ワカモちゃん♪」
「ただいまです~♪」
「え?え?いったい、今どういう状況なんですか...?」
久しぶりのシキに抱きつきシキ成分を補充するワカモ。
それを怒涛の展開が続き、目を白黒させながら困惑して見つめるトリニティの生徒。
ブラックマーケットでの活動は、こうして幕を開けたのだった。
シキと先生により、ホシノのメンタルが少し強化されました。
さて、ワカモも合流しましたね!ブラックマーケットでの名場面がもうすぐ開演されますよ!