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「はあ...しんど」
「もう数時間は歩きましたよね...」
「これはさすがに、おじさんも参ったなー。腰も膝も悲鳴を上げてるよー」
「えっ...ホシノさんはおいくつなのですか......?」
「ほぼ同年代っ!」
「お姉さま、先生?お二人は大丈夫ですか?」
「うん!大丈夫っ!鍛えてますからっ!」
「私も平気だよ。シキさん程ではないけど、それなりには鍛えてるからね」
探索を開始して数時間...。一行は未だになんの成果も得られずにいた。
そんな中、いつものホシノの言動にセリカが噛みついていると、ノノミが何かを見付けて声を上げる。
「あら!あそこにたい焼き屋さんが!」
「あれ、ホントだー。こんなところに屋台があるなんてね」
「みんなお疲れですし、休憩しましょうか?たい焼き、私がご馳走します!」
「えっ!?ノノミ先輩、またカード使うの!?」
「ノノミ?私が出すから大丈夫だよ?」
「そうだよ!私も出すから、ノノミちゃんは気にしないでいいよ?」
セリカの言葉に、大人二人も財布を取りだしてみせるが笑顔でノノミは首を振る。
「ううん、私が食べたいからいいんですよ☆みんなで食べましょう、ねっ?」
「...わかった。ありがとう」
「次は私たちに奢らせてよ?」
「はいっ☆」
---たい焼き購入中---
「まいどー!」
屋台でたい焼きを購入し、近くのベンチに座りみんなでたい焼きを頬張る。
「おいしい♪」
「いやぁ、ちょうど甘いものが欲しかったんだー」
「あはは...いただきます」
「アヤネちゃんには、戻ったらちゃんとご馳走しますね。私たちだけでごめんなさい...」
『あはは。大丈夫ですよ、ノノミ先輩。私はここでお菓子とかつまんでますし...』
「しばしのブレイクタイムだねー」
「はい、コウ♪」
「ありがとう、シキさん」
「むぅ...。先生とシキ、なんだか距離が近くなった?」
「え、えー?なんのことかなぁー、シロコちゃん?私たちはずっとこんな感じだよー?」
「そ、そうだよシロコ。お、大人をからかっちゃいけないよ?」
「ん、語るに落ちるとはこういうこと」
「(これは何か進展がありましたね?)まあまあ、シロコさん?お二人にはお二人の事情があるでしょうし、今はたい焼きを味わいましょう?」
「むう...。釈然とはしないけど、そうだね。冷めると味も落ちるし...あむっ。...おいしい」
何かを察したワカモに助け船を出され、コウとシキは視線でワカモに礼をする。その視線を受け、ワカモはふわりと微笑みを返すのであった。
「それにしても、ここまで情報がないなんてありえません...妙ですね。お探しの情報...。絶対どこかにあるはずなのに、探しても探しても出てきませんね...」
「ええ。
「販売ルート、保管記録...すべて何者かが意図的に隠しているような、そんな気がします」
「はい、ヒフミさんの言う通りです。この様な事はここを牛耳る企業でも、徹底して情報を統制することは不可能なはず...」
「えっと、よくは分からないけどそれって、そんなに異常なことなの?」
ヒフミとワカモの話を聞いていたシロコが、残りのたい焼きを飲み込んだあとにそう聞く。
「異常というよりかは...普通ここまでやりますか?という感じですね...」
「やんちゃをしていた時にここをよく利用していましたが、この場所にいる企業はある意味開き直って悪さをしています。逆に変に隠したりはしないのです。そうですね......例えば、あそこのビル。あれがブラックマーケットに名を馳せる闇銀行です」
「闇銀行?」
「ブラックマーケットで最も大きな銀行のひとつです。聞いた話だと、キヴォトスで行われる犯罪の15%の盗品があそこに流されているそうです......」
「横領、強盗、誘拐など、様々な犯罪によって獲得した財貨が、違法な武器や兵器に変えられてまた他の犯罪に使われる...。少し前までの私でも忌避するような、悪循環を生み出している場所です...」
「...そんなの、銀行が犯罪を煽っているようなものじゃないですか」
「その通りです。まさに銀行も犯罪組織なのです......」
(...ん?普通の銀行なら怒られるけど、闇銀行なら襲ってもワンチャン...?)
「ひどい!連邦生徒会は一体何やってんの?」
約一名、不穏なことを考えているなかでセリカがそう声を上げる。その声に反応し、苦虫を噛み潰したような顔でシャーレ所属のメンバーがそれぞれ口を開く。
「...そうだね。まさか、こんなにも酷い場所があるなんて考えてもいなかったよ...。不甲斐ないな...」
「
「私の手がもっと...沢山のモノを拾えるほど大きければ......。ううん、そんなの傲慢か...。でも、それでも...!」
「お、お通夜みたいな雰囲気になっちゃいました...!?」
「うう...やっぱりこれって、私のせいよね?」
「よしよし、セリカちゃん。大丈夫ですよ。セリカちゃんのせいじゃないです!」
「そうだよー、セリカちゃん。あの3人はただ...優しすぎるだけなんだよ。だから、私たちで支えてあげよ?...こんな風に!」
「わぷっ!?...ホシノちゃん?」
責任感の強い3人は、セリカが自分達を責めていないと理解はしていても、その言葉に立場上どうしても責任を感じてしまっていた。
しかし、そこはコウとシキの優しさにワカモ同様に救われたホシノ。
「お母さん、お姉ちゃん、先生...大丈夫だよ。そんなに自分を責めないで?私たちは、信じてるから」
「信じてる...?」
「うん!シャーレはこの世界をきっと、良い方へ変えてくれるって。私たちを助けてくれている今みたいにさ?」
「...そうね。最初はちょっとアレだったけど...私も、今ではちゃんと信じてるわ」
「セリカ...」
「そうですよ!私たちはみなさんに出会ってから、ずっと助けてもらってます!だからそれ以上、自分を責めないでください!」
「ノノミさん...」
『みなさんが困っていたら、今度は私たちが絶対に助けます!ですから、そんなお顔をしないでください!』
「アヤネちゃん...」
「先生とは出会った瞬間から運命を感じてる。シキもワカモもこの出会いはきっとデスティニー。自分達だけで何とかしようとしないで、もっと私たちにも頼るべき!」
「あはは...。私なんかはまだ出会ったばかりですが、それでもみなさんが善い人であることは分かっているつもりです。微力ではありますが、私もお力になります!」
「シロコ...ヒフミ...。みんな、ありがとう...」
みんなの言葉に、コウもシキもワカモも自分達の胸に広がる暖かさに先程までの暗澹たる気持ちは吹き飛んでいた。
(...そうだよね。一人で届かないならみんなで手を繋いで、もっと遠くの誰かへ手を伸ばせばいいんだ!)
シキはそう決意を新たに、いまだに抱き着いているホシノで癒されるのであった。
---閑話休題---
しんみりとした雰囲気になりつつ暫くしたあと、一行は物陰に隠れながらとある一団を観察していた。
「マーケットガードがパトロール...?護送中のようですが...」
「トラックを護送してる...現金輸送車だね」
「あれ...あっちは...。あ、闇銀行に入りましたね?」
「...あれ?な、何で!?あの車から出てきたヤツ、毎月うちに来て利息を受け取ってる銀行員じゃ...!?」
「ホントだ...」
「えっ?ええっ!?」
「どういうこと...?」
『それに、車もカイザーローンのものです!今日の午前中に支払った時の車と同じようですが...。なぜここに...!?』
「か、カイザーローンですか!?」
「ヒフミちゃん、知ってるの?」
「カイザーローンと言えば、かの有名なカイザーコーポレーションが運営する高利金融業者です...」
「有名な?マズいところなの?」
「ええっとですね...」
ヒフミに話を聞き、トリニティの生徒会である「ティーパーティー」ですら目を光らせている存在であると知る。
「ところでみなさんの借金とはもしかして...アビドスはカイザーローンから融資を...?」
「借りたのは私たちじゃないんですけどね...」
「まあ話すと長くなるから割愛するとして...アヤネちゃん、さっき入ってった輸送車の走行ルート、調べられる?」
『少々お待ちください...。...ダメですね。すべてのデータをオフラインで管理しているようです。全然ヒットしません』
「だろうねー...」
「そういえば、いつも返済は現金だけでしたよね。それはつまり...」
「私たちが支払った現金が、ブラックマーケットの闇銀行に流れていた...?」
「じゃあ何?私たちはブラックマーケットに、犯罪資金を提供していたってこと!?そんなの...!!」
そこまで推測を進めたところで、みんな一様に俯き黙り込む。
もしも推測通りなら、自分達は...。と、そんな思考が巡るなかでヒフミが何かを思い付き、声を発する。
「...あ!さっきのサインしてた集金確認の書類...。それを見れば何かしらの証拠になりませんか?」
「ん、さすが。目の付け所が違う」
「ナイスアイデアだねー、ヒフミちゃん!」
「あはは...。そう言っていただけるのは嬉しいのですが、よく考えてみたら書類はもう銀行の中ですし...無理ですね」
「うーん...。やっぱり難しいかな?」
「そうですね...ブラックマーケットでも最も強固なセキュリティを誇る銀行の中となると...。それにマーケットガードの数が数ですし...。それ以外に集金ルートを確認する方法は...。ええっと...うーん......」
(あ、なんかこの流れは良くないような気がするぞぅ...!)
コウが何となく直感めいたものを感じていると、ある生徒の目がキュピーン!と光り、待ってましたと言わんばかりに意見を出す。
「ん、銀行を襲う」
「シロコちゃん...!やるんですね?今!ここで!!」
「いつ出発する?おじさんも同行するよー」
「はぁ...。やれやれね。マジなんだよね?ふぅ、それなら...とことんまでやるしかないか!」
『うーん...。最近、こういう流れに染まってきているような気がしますが、まあ、はい。(目出し帽を被りながら)バレなければ、犯罪ではないので』
「先生としては止めないといけないんだろうけど、まあ、今回ばかりはね?」
「ワカモちゃんはさっきの”タマモちゃんモード”で行くの?」
「はい♪お姉さまは、如何なさいますか?」
「うーん、そうだなぁ...。どうしようかなぁ...?」
「あ、あの...?みなさん...?」
ヒフミは戦慄していた。だってそうだろう?先程までだいぶシリアス寄りな話をしていたのに、銀行を襲う?それも誰一人異論を唱えず、先生とシキまで乗り気なんて...!?
「あ。ごめん、ヒフミ。あなたの分の覆面は準備が無い。痛恨の極み...!」
「うへー、ってことは、バレたら全部トリニティのせいだって言うしかないねー」
「ええっ!?そ、そんな...覆面...何で...どうしてこんな流れに...あ、あう......」
「それは可哀想すぎます!」
「の、ノノミさん...!そうですよね!こんなのおかしい......」
「ヒフミちゃん、とりあえずこれでもどうぞ☆」
「たい焼きの袋?おお!それなら大丈夫そうー!」
「違う...!そうじゃない...!!」
「えいっ☆...わあー☆みなさん、見てください!」
「おー...。これは...」
ノノミの提案で紙袋を被せられたヒフミは、諦めの境地にも似た心境で遠い目をしながら佇んでいた。
他のメンバーと違い、一人だけ違う被り物ということも相まって現在のヒフミからは、一種の『凄み』が醸し出されていた。
「ん、完璧。ボス」
「番号も振っておきました。ヒフミちゃんは5番です☆」
「完璧に見た目はラスボス級だねー、親分だねー」
「......はっ!?え、ちょっと待ってください!怒涛の展開でついていけてませんでしたが、私もご一緒するんですか!?ていうか、ボスってなんですかっ!?ボスってっ!?」
「ボスはボスだよー。...それにさー?約束したじゃーん?今日は一緒に行動するって」
「う、うああーっ!!助けてペロロ様っ!!私、もう生徒会の人たちに合わせる顔がありませんー!!」
「それじゃあヒフミも覚悟完了したところで、先生?例のセリフをお願い」
「してませんよっ!?」
ヒフミが何か言っているような気もするが、話を振られたコウは高らかに宣言する。
「みんな......銀行を襲うよ!」
『おー!!』
「話聞いてくださいよっ!?」
悲しいことに、ヒフミの叫びは誰の耳にも届いていなかった...。