先生の元カノになったTS転生者です。   作:秋月 ヒカリ

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 前回のシリアス(?)から一転、ギャグ回(?)です!

 どうぞ!


モブから始まる、ネームド生活!

 ~柴関ラーメン~

 

 

 「仕事終わりのラーメンは、やっぱり最高っすね!姐さん!」

 

 「おう、特に大将んとこのラーメンは格別だからな。今日はアタシの奢りだから、お前ら遠慮すんなよ?」

 

 『うっす!ゴチになりますっ!』

 

 「...しかし、悪ぃな。ヘルメット団(不良)から足洗って、地道に働いても、学のねぇアタシがどんなに大人と交渉しても、碌な仕事をもらえやしねぇ...。お前らもアタシなんかに、いつまでも着いてこなくていいんだぞ?」

 

 「な~に言ってんすか、姐さん!周りに馴染めなくて、ゴロツキやってたウチらを拾ってくれた恩をまだ返せてないんすよ?」

 

 「そうそう!姐さんにはウチらみんな、恩を感じてんですから!」

 

 「今度はウチらが守ってもらってた分、姐さんのこと支える番っすよ!」

 

 「お、お前ら...!...っかしいなぁ、とんこつラーメン頼んだはずなのに、やたらラーメンがしょっぺぇや...!」

 

 

 嬉し涙を流しながら、彼女...「希望(のぞみ)ノバナ」はラーメンを啜る。

 

 お気づきかもしれないが、彼女達はアビドス勢により壊滅した元カタカタヘルメット団である。

 団が壊滅したあの日以来、彼女達は不良から足を洗い、日雇いの仕事で毎日を過ごしていた。

 

 今日は団の元リーダーであるノバナが、元団員達を仕事終わりに今ではすっかり常連になった「柴関ラーメン」へ引き連れてきたのである。

 

 

 「お嬢ちゃん達!サービスだ!これも食べてくれ!」

 

 

 その言葉と同時に、テーブルに置かれる山盛りの餃子。目を輝かせて喜び、食べ始める元団員達を横目にノバナは慌てる。

 

 

 「え、た、大将!?わ、悪いよ!嬉しいけど、こんなに沢山...」

 

 「気にしなさんな!...昔と違って、今じゃウチに通ってくれるのは、アビドスの子らに嬢ちゃん達くらいなもんだからな。店の中で、嬢ちゃん達がワイワイ騒いでくれると、昔を思い出して俺も嬉しくなってな?」

 

 「大将...」

 

 「だから、ついついサービスしちまうんだよなぁ...。それにだ。せっかくの食材も、食べてくれる人がいなきゃ無駄になっちまうからな!俺を助けると思って、遠慮せず食べてくれや!」

 

 

 そう言って豪快に笑う大将に、ノバナは苦笑しつつ感謝の言葉を述べてから、自身も食べ始める。...うん、めちゃくちゃ美味しい!

 

 

 「ありゃ?今日は人多いねー。大将~!席、空いてる~?」

 

 「いらっしゃい!おう、空いてるよ。好きなとこに座んな!」

 

 「はーい!どこにしよっかなー♪」

 

 「ムツキ、あまりはしゃがないでよ...。ほら、ハルカも早くこっちにおいで?」

 

 「は、はい!」

 

 「......」

 

 

 ノバナが大将の餃子に舌鼓をうっていると、新たな客が来店してきた。何となく気になって、今しがた入ってきた人物らに目を向ける。

 

 

 (ゲヘナの生徒?わざわざ、大将のラーメンを食べにアビドスまで来るとは...わかってんじゃんか!...にしても、あのコートの姉ちゃんどうしたんだ?一人だけ、なんかテンション低いっつうか...?)

 

 

 若干、後方常連面しながら違和感を覚えるノバナは、数の減った餃子争奪戦を繰り広げながら様子を伺っていた。......いや、何だよ「後方常連面」って。

 

 

 「来た来た!これこれ~♪」

 

 「一人一杯のラーメンが食べられるなんて、幸せです...」

 

 「アビドスさんとこのお友だちだろう。替え玉が欲しけりゃ言いな」

 

 「ともっ...!?」

 

 「それより、今日はお客さんが多いんだね?」

 

 「ああ、あの子達は最近の常連さんでな?うちのラーメンを気に入ってくれて、よく来てくれるようになったのさ」

 

 「ここのラーメン、ホント美味しいもんねー♪」

 

 「...じゃない」

 

 「ん?」

 

 「友達なんかじゃないわよぉーーー!!」

 

 

 突然の大声に驚き、「ぶほっ!?」と驚きむせ返るノバナ達。咳き込みながらも、「なんだなんだ?」と叫んだ下手人...陸八魔アルに注目する。

 

 

 「わかった!!何が引っ掛かってたのかわかったわ!問題はこの店、この店よっ!」

 

 「どゆこと!?」

 

 「私たちは仕事しにこの辺りに来てるの!ハードボイルドに!!アウトローっぽく!!」

 

 (ええ...?なんだよあの客...。急に叫んだかと思ったら、この店の批難か?)

 

 

 アルの叫びに眉をひそめるノバナと、その仲間たち。

 

 

 「なのに何なのよ、この店は!お腹いっぱい食べられるし!!あったかくて親切で!話しかけてくれて、和気あいあいで、ほんわかしたこの雰囲気!」

 

 「アル様...?」

 

 「ここにいると、みんな仲良しになっちゃう気がするのよ!!」

 

 「それに何か問題ある?」

 

 「ダメでしょ!!~~~っ!私が一人前の悪党になるには、こんな店は要らないのよっ!!」

 

 (...ああ?)

 

 「私に必要なのは冷酷さと無慈悲さと非情さなの!こんなほっこり感じゃない!!」

 

 「それって...こんなお店はぶっ壊してしまおうってことですよね、アル様?」

 

 「...へ?」

 

 「(なっ!?あれは!?くそったれっ!!)待て!嬢ちゃん!」

 

 「は、はいっ!?...て、あっ!?」

 

 

 ノバナはアルの叫びを聞いて、雰囲気の変わった少女...ハルカが取り出した起爆装置を目にしたと同時に、急いで駆け寄りその手から起爆装置を取り上げた。

 

 

 「ふぃー...。肝を冷やしたぜ、お嬢ちゃん...。なんてもんを出しやがる...」

 

 「か、返してくださいっ...!」

 

 「いいや、返さないね。アンタらにとって、ここがどんな場所かは知らないが、アタシらにとっちゃ大事な場所なんだ。潰されてたまるかよ」

 

 

 ノバナの言葉に、周りの仲間も無言で得物を担いで立ち上がり、便利屋の面々を睨み付ける。

 

 一触即発の状況に、ムツキは苦笑しながらもいつでも対応できるように静かに愛銃の安全装置を外し、カヨコも同様に動きながらも「ただラーメンを食べに来ただけで、何でこんな...」と頭に手を置く。ハルカは今にも飛びかかりそうで、アルは状況に着いていけず、白目を剥いている。

 

 端的に言って、店内は混沌とした空気に支配されていた。

 

 

 「...はぁ。大将に迷惑をかけたくないから、店内では暴れたくねえ。表に出な。大将、勘定はここに置いとくぜ?」

 

 「おい、お嬢ちゃん...!」

 

 「心配すんなって、大将。...お前ら、行くぞ」

 

 『おう!』

 

 「はあ...。しょうがない、か。みんな、私たちも行くよ?」

 

 

 カヨコに促され、便利屋もノバナたちに続いて外に出る。

 

 店の前でノバナたち元ヘルメット団と、便利屋のメンバーが対峙するなかアルは心の中で叫ぶ。

 

 

 (何がどうなってるのよーーー!!??)

 

 

 いや、わかっている。自分が考え無しに、思ったことを口に出してしまったばかりに、ハルカが誤解して店を爆破しようとしたことはわかっている。...だけど何で、敵対組織との抗争みたいな大事になってるのよ!!

 

 

 「...なあ、コートの姉ちゃん。あんた、名前は?」

 

 「はひっ!?...り、陸八魔アルよ」

 

 「陸八魔...聞いたことあるな、確か「便利屋68」とかいうなんでも屋だったか?」

 

 「...ええ、そうよ!そういうあなたは?」

 

 「...元不良の根無し草だよ。アタシの名前は、希望ノバナだ」

 

 「(元不良の根無し草!何だかカッコいいわね!)それで?わざわざ外に連れ出して、私たちとやり合うつもりかしら?」

 

 

 ノバナの名乗りにトキメキつつも、表面上は澄まし顔で取り繕いながらそう問いかけるアル。それに対し、ノバナは軽く返す。

 

 

 「いや?ただあのままなら、そこの嬢ちゃんが暴走しそうだったんでな。迷惑かける前に落ち着かせたくて、外に出ただけだ。あとはアンタに聞きたい事もあったしな」

 

 「聞きたいこと?」

 

 「大将の店が要らないって聞こえたが...どういう意図があっての発言だ?事と次第によっちゃぁ、アタシらも穏便にとはいかねえぜ?」

 

 「うっ?!そ、それは...!」

 

 

 ノバナは凄んでみせるが、内心では穏便に済ませたかった。先のアビドス襲撃の依頼での失敗でもそうだが、今も自分の勝手な行動で仲間を危険に晒している。

 

 ノバナは「深紅の悪魔」によるトラウマもそうだが、それ以上に仲間に危険が及ぶことが怖かったのだ。

 

 

 (頼むから下手なこと言ってくれるなよ...)

 

 「そ、その...さっきの私の発言は、別にお店を潰そうとか思っての事じゃないの!」

 

 「なら、何であんなことを?」

 

 「それは...」

 

 

 少し恥ずかしそうに、アルは理由を語る。

 

 アルの説明を聞いていく内に、すっかりノバナ達からは険悪な雰囲気は消えていた。

 

 

 「えーと...なんだ。それじゃあ、そのアウトロー?を目指している陸八魔からしたら、現状、理想とはかけ離れた状況が続いてて、ついさっきみたいな言葉が口をついて出たと?」

 

 「はい...そうです。ごめんなさい...」

 

 「...ぷっ!あっははははは!面白いな、アンタ!」

 

 「わ、笑わないでよっ!」

 

 「わりぃな。...けどよ、安心したぜ。ゲヘナの連中は、基本的にすぐ暴れるからな。そう考えると陸八魔は良いヤツだな!」

 

 「どうして私の話を聞いて、そんな感想が出るのよ!」

 

 「だってよ?ちゃんと悪い事したって思って、頭も下げるし冷静に話もできる。おまけに仲間からは信頼されてるときた。ゲヘナって括りを無しにしても、陸八魔は良いヤツだとアタシは思うよ」

 

 「...私の話は置いておいて、なんで仲間の事もわかるの?」

 

 「それこそ簡単だ。アタシもコイツらとつるんで、リーダーなんてやってたんだ。お仲間の陸八魔へ向ける目を見れば、直ぐにわかるさ」

 

 「ウチらは今でも、姐さんがリーダーだって思ってますよー?」

 

 「...あなたも凄く慕われてるじゃない?ということは、あなたも”良いヤツ”ってことね?」

 

 「あー...。結構、こっ恥ずかしいな、こりゃ...」

 

 「ふふっ、でしょ?」

 

 

 なんやかんやで、打ち解けてお互いに手を差し出して握手をする。

 

 

 「改めて名乗るわ。「便利屋68」の社長、陸八魔アルよ。アルって呼んで?よろしくね」

 

 「ああ、アタシは希望ノバナだ。今はただの日雇いのプーさ。アタシもノバナでいい。よろしくな!」

 

 

 新たに芽生えた友情を確かめるように、ガッチリとアルの手を握りながらノバナは思う。

 

 

 (...一時は、基地の壊滅の時に全部失くしちまったと思ってた。けど、情けねぇアタシを今でも慕って皆は着いてきてくれた。居場所も失くしたと思ってたら、柴関っていうあったかい場所もみつけたし、新しい友もできた。...今までのアタシ達の積み重ねてきたモンは、全部無駄じゃなかった。これからも、アタシ達が立ち止まらない限り、路は続く...)

 

 「ノバナ?」

 

 「...アル、お互いに上手くいかない事は沢山あると思う」

 

 ーーーヒュルルルル......

 

 「あれ?カヨコちゃん、何か変な音しない?」

 

 「...確かに、なにか聞こえるね」

 

 

 二人だけの世界に入っているアルとノバナ以外は、何かの異音を捉えてざわつき始める。

 

 

 「だけど、きっとアタシ達が立ち止まらない限り、アタシ達の路は続いていくとアタシは思う。だからさ、アル...」

 

 ーーーヒュルルルル......

 

「...なんか、音、近づいてきてない?」

 

 「これって...まさか!」

 

 

 何かに感づいたように空を見上げるカヨコ。その顔には強い焦りの色が見えた。

 

 

 「絶対に、止まるんじゃねぇぞ...!」

 

 ーーードガアーーーンッ!!!!

 

 「「......へ?」」

 

 

 ノバナが言葉を言い切るのと同時に、何かが柴関に着弾して店は跡形もなく吹き飛んだ。

 

 店の前とはいえ、戦闘になった時を考えノバナ達はそれなりに店から離れていたこともあり、こちらは無傷。しかし、無惨に吹き飛んだ柴関を見たアルとノバナは同時に叫んだ。

 

 

 「「な、なな、ななななっ、なん...なんですってーーー!?/なんだとーーー!?」」

 

 

 あまりの事態に、一同はしばらく動けなかったのであった......。




 モブで終わるはずのリーダーちゃんが、ここにきて参戦!まあ、だからって活躍するかと言われたら...アビドス編では活躍します。
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