待っていてくれた方は、申し訳ないです!なるべくここから挽回していきます!
~シキとヒナが合流する少し前~
「はあ、まったく......。何をやっているのかしら、アコは......」
私こと「空崎ヒナ」は、頭を片手で押さえながらそうぼやく。
つい先程、出張から戻ってみれば風紀委員はもぬけの殻。疑問に思い、周囲に聞き込みをすれば、アコが皆を引き連れてアビドス自治区へ向かったというではないか。
(この間、古巣の情報部から聞いた話ではアビドスに噂の「シャーレの先生」が滞在しているらしい......。大方、今更になってチナツの報告書と例の「条約」絡みで、政治的な活動を行おうとしたのでしょうけど......)
普段は冷静に物事に対処できるのに、不確定要素があれば暴走しがちになるのがアコの悪い癖だ......と、アコの行動に付き合わされている他の風紀委員を思い、何度目になるかわからない溜め息を吐く。
(私たちは、風紀委員会であって生徒会ではない。
そうやって思考しながら走っていると、普段の激務からくる疲れと考え事による集中力の散漫により、同じようにそれなりの速度で走ってきた人物と街角でぶつかる。
「きゃっ!」
「うおっと!?」
凄まじい衝突をしたはずだが、相手は声を上げただけで素早く私の腰に手を回し、転倒しそうになっていた私を支える。
いくら疲れていたとはいえ、私が転倒しそうになるほどの衝撃だったのに、倒れるどころか私を支える......?この人は一体、何者なの?
「君!大丈夫?ごめんね、私急いでて......!ちゃんと周りを見てなかったよ......。怪我はない?」
「え、ええ......。貴女が支えてくれたから、どこも痛めてはいないわ。ありがとう」
「よかった~......。怪我がなくて、ホントに良かったよーっ!」
「ちょ、ちょっと!?わぷっ!?」
ギュムニュンっ!と、何処とは言わないが私はぶつかってきた女性に抱き締められ、その良い匂いのするふくよかな場所へ顔を埋められて私は戸惑う。
(あ、良い匂い......。じゃないっ!くっ!力強っ!?私が抜け出せない!?そんな......あぁ、何これぇ......?ふかふかで、程好く暖かくて、トクントクンって聞こえるこの人の鼓動が、すごく......安心する)
戸惑ったのはほんの僅かな瞬間だけで、ヒナは疲れも合間って女性の包容に安心感を覚えて身を委ねる。
女性の方もそんなヒナの様子に何かを感じ取ったのか、優しい顔でヒナの頭を撫でながら包容を続ける。
(ふふふ♪すごく安心した顔で、自分から抱きついてきてる♪よく見たら目の下には濃い目の隈もあるし、この子......すごく疲れてるんだろうな。ホントは急いで、コウ達のところに向かわないと行けないけど......。この子を放っておけないや)
(あぁ......しゅごく、癒される......。もう、ここから離れたくない......)
ヒナを夢中にさせる女性......シキはコウからの連絡により、急いで黒服のビルより現地に向かっていた。
しかし、途中で出会ったヒナを放っておけずにいた。暫くそうやって抱き合っていると、シキはヒナからまるでお日様のような香りがすることに気付き、出来心でヒナを吸ってみる。すると......。
(ほあぁぁ......。え?何この子、すっごい癒される!優しい、お日様の香りだぁ......)
シキもヒナの匂いに癒されるという現象が起きた。......ところで、一説にはお互いの匂いが良い匂いに感じると、遺伝子レベルで相性が良いという話が......。え?話が進まない?そっすね。
「あの、ごめんなさい......。いつまでも抱きついてしまって......。私はゲヘナ風紀委員会所属、委員長の空崎ヒナ。貴女は?」
「......はっ!あはは......気にしないで良いよ?私は須賀原シキ。シャーレの先生の補佐をしているよ。よろしくね?」
「!!そう......貴女が、シャーレの「深紅の悪魔」なのね」
「う......。その呼び名、ゲヘナにも伝わってるんだね......。というか、私がシャーレ所属だってことまでバレてるの?」
「うちの情報部は優秀だから。でも、そう、貴女が噂の......。人は見掛けによらないわね?」
「あははは......。できればもう、その話題は終わりにしてほしいかなって......」
「ふふっ、そうね。じゃあ、話を変えるけど、シキはあんなに急いで何処に向かっていたの?」
「ああ、それはね?コウ......シャーレの先生から、大規模な部隊と戦闘になってるから、急いで合流してほしいって連絡がきてね?」
「(それって、まさか......)ごめんなさい、シキ。多分それ、うちの子達よ......」
「ええっ!?」
「私も出張から戻ったら、風紀委員会がもぬけの殻で後を追ってアビドスまで来たの。悪い子達じゃないんだけど、今回は暴走しちゃったみたい......。本当に、ごめんなさい......」
「わわっ!?ヒナちゃん、頭を上げてよ!まだ風紀委員会の子達とは決まってないんだからさ!今から一緒に、確かめに行こう?」
「そうね......。そうしましょう」
話はまとまり、二人でいざ現場へ!と足を動かそうとした時、シキの服の裾が引かれる。
「ん?ヒナちゃん、どうしたの?」
「あ、いや!これは、その......!」
どうやらヒナ自身、無自覚だったらしく自分の行動に慌てる。
そんなヒナを落ち着かせるように、頭を撫でてヒナの言葉を待つシキ。すると、気持ち良さそうに猫のように目を細めて、リラックスしたヒナはおずおずと口を開く。
「んぅ......。そ、そのね?嫌じゃなければで良いのだけれど......。抱っこして連れていってほしいの......」
「抱っこ?」
「あっ!へ、変なことを言ってしまって、ごめんなさい!忘れてーーー」
「よい、しょっと!」
「ふわあぁぁぁ......。し、シキ?」
「全然嫌じゃないし、ヒナちゃんは可愛いから役得だよっ!......じゃあ、行くよっ!」
「あぁ、今わかったわ......。貴女が私の鞘だったのね......」
(?何か悟り顔で変なこと言ってるけど、よっぽど疲れてたんだね。なるべく、負担を掛けないようにして急ごう!)
こうして二人は争いを止めるために、目的地へ急ぐのであった。
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「......で、このパーフェクトヒナが出来上がったってわけ。理解できたかしら?」
『意味がわかりませんっ!!それと、貴女っ!!いい加減、ヒナ委員長から離れなさいっ!!羨まけしからんっ!!』
「アコちゃん......」
「行政官......」
「まーた、お母さんが新しい子を引っかけてるよ......」
「流石ですっ!お姉さまっ!」
「ん、フラグ回収した?」
相変わらずシキに抱き抱えられたまま、ヒナはどや顔でそう語る。アコはあまりの意味のわからなさと、ヒナを取られた現実に愛しさと切なさと心強さが爆発し声の限り叫んだ。風紀委員の指揮は下がった。
なお、上記の通りアビドス側は”いつもの”扱いして平常運転である。慣れって怖いね!
『キィーーーッ!私ですら抱っこさせてもらえないのに、ぽっと出の女が委員長を手込めにするなんて、例え神が許しても私がーーー』
「アコ、ステイ」
『くぅーん......』
「力関係がハッキリしてますね☆」
言いたいことも言わせてもらえない、アコ。ヒナは相変わらずシキに抱えられたまま、風紀委員長としての厳しい顔つきでアコに告げる。
「この状況になった経緯は、何となく予想がついているから説明はいいわ。......アコ、それでもこれだけは言っておく。私たちは風紀委員会であって、生徒会じゃない。こういった事は、タヌキ共に任せておけばいい。わかった?」
『はい......。申し訳ありませんでした......』
「詳しい話は帰ってから。今は部隊をまとめて学園へ戻りなさい」
『はい。......それでは、失礼します』
完全にへこみきったアコは、元気のない声で返事を返してから通信を切った。
『ええっと、こちらアビドスの対策委員会です。ゲヘナの風紀委員長ですね、初めまして。その、状況は理解されているということで、よろしいでしょうか?』
「ええ。大体は把握してるわ。......事前通達無しでの他自治区における無断兵力運用、及び他校生徒たちとの衝突。......けれど、そちらが風紀委員会の公務を妨害したのも事実。違う?」
『なっ!?』
「それはそうかも」
「それで?」
「私たちの意見は変わりませんよ?」
「ふぅ......。ごめんなさい。少し、意地悪な言い回しだったわね。イオリ、チナツ?撤収準備、帰るよ」
「えっ!?委員長!?」
「よろしいんですか......?」
「ええ。私は戦闘をしに来たわけじゃない。むしろ止めに来たんだもの」
そう言ってヒナはシキに「降ろして」と言うと、しっかりと地に足を着け、アビドスの面々へ向けて頭を下げる。
「ちょっ!?ちょちょちょっ!?委員長ちゃんっ!?」
「事前通達無しでの無断兵力運用、そして他校の自治区で騒ぎを起こしたこと。このことについては私、空崎ヒナより、ゲヘナの風紀委員会の委員長として、アビドスの対策委員会に対して公式に謝罪する」
頭を下げ、ゲヘナの風紀委員長が
それに対しホシノ含め、アビドスの面々はもちろん。それを見ていた周りの生徒たちは、目を剥いて驚いていた。
「今後、ゲヘナの風紀委員会がここに無断で侵入することは無いと約束する。どうか許してほしい」
「委員長......」
「ま、待って委員長!あの校則違反者たち......便利屋はどうするんだ!?」
(ジロッ)
「あ、う......」
「こら!ヒナちゃん!後輩ちゃんを恐がらせたら駄目でしょう?」
「!!......で、でも、シキ?私は委員長として、この子たちに示しをつけなきゃいけなくて......!」
「それでも仲間を萎縮させちゃ、めっ!です。君も恐かったよね?よしよし......」
「ん......。あう、え、えへへ......」
「い、イオリがあどけない笑顔で喜んでいる......!?」
「あぁ......私のシキが、私以外を甘やかしてる......」(シナシナ......)
「う、うへー。こっちはこっちで、シナシナになってるよ~......」
混沌を極めつつもなんとか無事?に、アビドスとゲヘナの衝突は幕を閉じた。
**********************
「おほんっ!......情けない姿を見せたわね。まあ、何はともあれ私たちはこれで失礼するわ。ほら、みんな帰るよ」
シナシナだったヒナも元に戻り、風紀委員会に対し号令を出すと全員素早く動きだし、ゲヘナへ向けて行軍を始める。
そんな中、ヒナは一人残りホシノ、ワカモ、シキ、先生と少し話をして風紀委員会の後を追って走り去っていった。
「ホシノ先輩に先生。最後、風紀委員長と何を話してたの?」
「ん?ええっとね、一つは風紀委員長ちゃん......ヒナちゃんがね?お母さんとは昔、近所に住んでてよく一緒に遊んでもらった、年のはなれた妹のような存在ポジションに就いたって話し」
「なんて?」
「そしてもう一つは、アビドスの捨てられた砂漠でカイザーコーポレーションが何かを企んでるよって、私たちシャーレに教えてくれたんだ」
「ごめん。前半の先輩の話がインパクト強くて、先生の話が入ってこなかった」
「まあ、お姉さまは天性の人誑しですしねぇ......。この調子で後何人、身内が増えるのやら......」
「あはは......。まあ、少し落ち着きたいし。学校に戻って、ゆっくり話そうか?」
いつの間にかいなくなっていた便利屋を除き、ノバナ達も連れて一行は学校へ戻っていくのであった。
「......マダムの指示で監視に来てみれば、まさか生きていたとはな。驚いたよ......ノバナッ!!」
ギリッ!と奥歯を噛み締め、手の平に爪が食い込むほど拳を握りしめる人物は、怒りとも悲しみとも知れぬ感情をその瞳に宿し、如何ともし難い衝動を抑えながらノバナの背を睨み続けるのであった。
ヒナちゃんだって誰かに甘えたい時があるって話し。