いつもに比べたら、だいぶ短いです。
~対策委員会 部室~
「はぁー......。厄介な事実ばっかり出てくるねー......。おじさん、ちょっと横になりたいかも......」
「ん、ホシノ先輩はいつも横になってる。サボりの口実に使っちゃ駄目」
「いやぁ~、今回ばかりは流石にガチもガチだって~」
「......いつものはサボりと認めてませんか?それ」
冒頭からテンションの低いホシノの嘆きに、シロコがツッコミを入れる。
普段の行動も相まって、サボりの言い分け扱いされているがホシノだけでなく皆、一様に滅入った顔をしている。
「先輩の気持ちも理解できますが、事実として受け止めなければいけません......」
「先生、シャーレの力で何とかできない?」
「そうしたいのは山々だけどね......。私にもこればかりはね......」
そうして一瞥するのは先日、アヤネとセリカが見つけてきた「地籍図」だ。これはアビドス自治区の土地の台帳で、直近までの取引が記録されている。
そこには本来なら、土地の所有者は「アビドス高校」と記載されていなければならない。だがしかしーーー。
「まさか、アビドスのほとんどの土地が......「カイザーコーポレーション」の所有物になっているとはね」
「ホント、とんだ厄ネタを出されたもんだよねー......。過去の生徒会の、さ......」
「最初はアビドスを想っての、「善意」の行動だったんだと思うよ?借金を返して、アビドスを建て直すための一時しのぎだって自分達に言い聞かせながらさ......」
シキが辛そうな顔で呟くホシノの頭を、自分の胸に抱き寄せながらフォローする。
ホシノは身を任せたまま、言葉を続ける。
「うん、私もそう思うよ。始まりはそうだったんだと思う。......だけど文字通り、身を切るような思いで守るべき土地を手放していくうちにきっと皆、分からなくなっていったんだと思う」
「そうですね......。アビドスを守りたい。だけどその為には、借金を返済しなければならない。けれどそれは膨大で、普通のやり方では到底無理だった......。そうして守るべきモノを手放していくうちに「意義」も「理由」も、やがて「善意」さえも途方もない現実の中に飲み込まれてしまった......。儘ならないものですわね......」
ワカモが物憂げにホシノの頭を撫でながら、そう述べる。
「......それでも。それでも、まだアビドスは残ってる。ここにいる皆に、過去の想いは受け継がれている。ここにいる皆が、その証明だよ」
「先生......。はいっ!先生の言う通りです!私たちはまだ、何も諦めていません!」
「そうよ!それに、過去には居なかった「信頼できる大人」が今の私たちにはいるわ!この程度の逆境、直ぐに引っくり返してやるんだからっ!」
「わ~☆あのセリカちゃんが、そこまで先生たちに心を開いていたなんて......。私、感激です!」
「ん、セリカはツンデレだから。......いや、チョロいだけかも?」
「ツンデレでも、チョロくもないったら!もうっ!」
頬を膨らませてそっぽを向くセリカ。その様子を見て、場の空気が和みだす。
そのタイミングで、今まで黙っていたノバナが口を開く。
「ん?でも待てよ?アビドスに金を貸したのは「カイザー」で、土地を買い取ってるのも「カイザー」だろ?......なんか、おかしくねえか?」
「ノバナ、居たんだ」
「居たよっ!乗りかかった船だから、最後まで付き合わせてくれって言っただろうがっ!?」
「あはは......。ごめんね、ノバナ。続けて?」
「お、おう。......ええっとな?過去の生徒会は、アビドスを救うためにカイザーに借金をした。んで、借金は膨れ上がっていって遂には土地を売りに出すまでになった。けど、ここでも関わってくるのがカイザーだ。......キナ臭くねえか?」
「うへー......。そういうことか」
「え、え?なに?何なの?」
「あのねセリカちゃん。簡潔にまとめると、アビドスはカイザーに罠に嵌められたってことだよ」
「えええぇぇーーーっ!?」
「でも一体、何のために?金を回収するためとはいえ、やっこさんが手に入るのは広大な砂の海だけだぜ?アタシには、メリットなんて無いように感じるんだが......」
皆で頭を悩ませていると、アヤネがおもむろに声を上げる。
「ぼんやりとですが、私たちが先生たちと一緒に見つけ出してきた幾つかの糸口。全てが繋がってきた気がします」
「ホントかっ!?」
「はい。カイザーはアビドスの生徒会が消えてしまってから土地を購入する方法が無くなり、まだ手に入れていない「最後の土地」であるこの学校を奪うために、ノバナさんたちを雇用していた。つまり、最初からカイザーの狙いは「お金」ではなく「土地」だったと結論付けられます!」
「ですね。ですがそうなると次の疑問です。......どうして土地なんでしょうか?ノバナちゃんの言うように、そのほとんどが荒れた地と砂漠、廃墟です。何かをするにしても、莫大なお金が必要になるはずなのに......」
「それについては、この間ヒナに教えてもらった事がヒントになるかも。確か「カイザーはアビドスの砂漠で、何かを企んでいる」って」
ーーー「カイザーの企みとは何か?」
その事を考え始めたときセリカが若干、頭から湯気を出しながら叫びだす。
「うにゃぁーーー!!難しいことを考えるより、先ず行動!直接確認しに行けばいいのよ!何が何だか分からないけど、そっちの方が早いって!」
「うん。単純だけど、そうだね。セリカの言うように、現場へ見に行くべき」
「よし!そうと決まれば、みんな準備して!砂漠へ出発するよ!」
『おうよ!/はい!』
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「んじゃ、姐さん達!学校の方はウチらに任せてください!」
「すみません、ノバナさん達にこんなことお願いしちゃって......」
「気にすんなって、奥......アヤネ!それに、前にアヤネが言ってくれただろ?アタシ達も”仲間”だって。だから仲間のために、アタシ達はやるべき事をやってるだけさ!」
「ノバナさん......。はい!ありがとうございます!」
「ワカモちゃんも残るの?」
「ええ。ノバナさん達がいるとはいえど、あまり戦力を分散するのもよろしくないかと。それに先生やお姉様が前線に出向くなら、一人くらいは「シャーレ」の人間が残っていた方が何かあった際に、都合が良いかと」
「分かった。じゃあそっちは任せるね?」
「はい!お任せを!」
準備を終え、学校へ残る組と砂漠へ向かう組に分かれた。ちなみに、オペレーターとしてアヤネも居残り組である。
挨拶もそこそこに、現地まではシキとワカモが乗ってきた車と、ノバナ達の車両を借りて出発する。
普段なら途中までは列車を使うところだが、今回は砂漠仕様の車両があるため現地の近くまではそのまま向かう事が出来る。
途中で休憩中にホシノが、かつてはアビドス砂祭りの会場になるほど広大だったというオアシス跡地を教えてくれたりしながら、先を進む。
(アビドス砂祭り......。昔ほどの規模は無理でも、何とかしてあげたいな......)
シキは少しの干渉に浸りながら、砂漠の海を見つめるのであった。