~アビドス砂漠 カイザーPMC付近~
「敵発見、攻撃を始めています!」
「敵勢力、アビドスの生徒だけではありません!これは......ヘルメット団!?」
「ほう。あの元飼い犬の仕業か?雑魚とはいえ、それなりに数が揃えば少々不快だな......。兵力を集中させろ!北と東からも呼び寄せておけ、北方の対デカグラマトン部隊もだ。念を入れて
「あ、アレもですか!?しかしアレはーーー」
「構わん。獣を狩るにも作法がある。全力であたれ!」
「りょ、了解しました!」
「それにしても、黙っているとは思っていなかったが昨日の今日で攻めてくるとはな......。まあいい、精々アレのデータ取りに利用してーーー」
「......!?り、理事!」
「何だ、何かあったのか?」
現在、カイザーPMCとアビドス連合の戦闘が始まっていた。PMC側としても、厳戒態勢はとっていたがアビドス側の動きは予想よりも早かった。
理事は余裕の態度を崩さなかったが、慌てた様子で自分を呼ぶ部下の報告を聞いて、その余裕を崩されることになる。
「ほ、北方に、少数ですが兵力を確認!」
「む、北方......!?」
「数は3人......あ、あれは......!」
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「......アコ、鉄屑共の部隊は発見した?」
『は、はひ!か、カイザーPMCの増援を確認!一個大隊の規模です!委員長!』
「分かった。......イオリ、チナツ。準備なさい」
「シキさんの弔い合戦だ......!」
「シキさんとは、もっとお話ししたかったのに......。カイザーは許しません!」
報告にあった3人ーーーゲヘナ風紀委員会の「空崎ヒナ」「銀鏡イオリ」「火宮チナツ」の3人は、先生の要請により北側からの増援を抑える役目を担っていた。
先生により、事前に事の詳細を聞かされている3人は何れもその目に確かな”怒り”を孕んでいた。
特に完全に気を許していたヒナのそれは、「殺意」ともとれる程だ。
イオリは先生の話を聞き、頭を撫でられた時に感じていたシキの優しさを思い出した。その時の優しさに、もう二度と触れられないと思うとヒナ程ではないにしろ心の中を、怒りと悲しみが満たしていた。
チナツは前者の2人よりも熱量は劣るが、この中では一番最初にシキとは交流があるため、純粋にもっと話をしたいと思っていた。それなのに、最後の邂逅が先日のアビドスでの一件だ。思うところは多分にある。
アコは......ヒナの剣幕にひたすらビビっていた。
「手早く片付けて、本丸に合流するわよ。......キヴォトスから、鉄屑共の存在を消し去ってやるッ!!」
『(ふえ~ん!委員長が怖すぎますぅ~!)な、ナビゲートはお任せください!』
「よし、ゲヘナ風紀委員......エンカウンターッ!!」
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『みなさん、大丈夫ですか?』
「ん、ノバナ達のお陰で弾薬も体力も温存できてる」
「私も、全っ然大丈夫!」
『先生、ここからは更に敵の攻勢が激しくなることが予想されます。先生は......』
「心配してくれてありがとう、アヤネ。でも大丈夫!シキさん程じゃないけど、それなりに動けるから安心して?」
「お姉様も前に言っていましたが、先生は何か武術をお修めで?」
「うーん......。決まった型とかはなくて、完全な我流だね。型に嵌まった動きじゃ、シキさんについていけなくてね?」
「あー......。確かに、お母さんの動きは無茶苦茶だもんねー......。普通はあんな動き、できないよー......」
ホシノ達の思い浮かべるシキの無茶苦茶。アビドスに来てからというもの、メイスのような鈍器を好んで使用していたため、一見すると只の脳筋に見える。しかし、その動きの中には人智を超越したといっても過言ではないものがあったのだ。
そんなことを考えていると、アヤネから警告が入る。
『前方に敵を発見!距離は2km、もうすぐ接敵します!みなさん、準備をーーー』
ーーードゴオォォォン!!
「うえぇーーーっ!?なになになにーーー!?」
『これは......』
「支援射撃?でも誰が......」
『L118、トリニティの牽引式榴弾砲です!一体どうして......?』
突然の支援射撃に驚愕し、足を止める全員の前に紙袋を被った少女から通信が入る。
『あ、あぅ......わ、私です......』
「あっ!ヒフーーー」
『わあー!?ち、違います!私はヒフミではなく、ファウストです!』
「わあ、ファウストさん!お久しぶりです!ご自分で名前を言っちゃってましたが、そこはご愛嬌ということで☆」
『はっ!?あぅぅ......!ま、まあ、一旦この話は置いておきまして......このL118は、トリニティの牽引式榴弾砲ですが!と、トリニティ総合学園とは無関係ですので!えっと、その......とにかく、そういうことです!』
「大丈夫だよ、ヒフ......ファウスト。そんなに慌てなくても、私達は
『あう......。す、すみません、先生、アビドスのみなさん。これくらいしかお役に立てず......』
「ううん、すごく助かった。流石はファウスト。略して、さすファウ」
「うんうん!ありがとうございます、ファウストちゃん!」
『あはは......。その、みなさん......シキさんを、必ず助けてください!』
みんなにエールを贈り、ファウストは通信を切った。
『みなさん、ファウストさんのお陰で敵は混乱中です。今のうちに突破しましょう!』
「先陣は私が切るよ!皆は私の盾に隠れる形でついてきて!」
「では、
未だ混乱し、隊列を崩したままの敵を一点突破で蹴散らし進む。
そうして進んだ先に現れたのはーーー。
「何ここ?この痕跡......多分学校、だよね?」
「砂漠の真ん中に学校......もしかして」
『ああ。ここは、本来のアビドス高等学校本館だ』
「......カイザーPMC理事!」
『ホログラムで失礼するよ、対策委員会の諸君。それとシャーレの先生』
辿り着いた先は、アビドス高等学校本館の跡地であった。
一同の前にカイザー理事が通信を入れ、それと同時に敵の増援が現れる。
『敵の増援!?それにこの数......おそらく敵側の動ける全兵力がここに?先生!相手はここで総力戦に持ち込むつもりです!』
アヤネが警告するも、あっという間に周囲を包囲されてしまう。
『砂漠化が進行し、捨てられたアビドスの廃墟......ここが、元々はアビドスの中心だった。......かつてキヴォトスで一番大きく、そして強大だった学校の残骸が、この砂の下に埋もれている』
「......そんな昔話は今はいいよ。とっとと道を開けろ、屑野郎......!」
『おや、かつて貴様の慕っていた先輩とやらが必死に守ろうとしていたものに、最早興味は無しか?随分と薄情だな!』
「(ギリィッ!)......御託はいいから。お母さんを返してもらうよ」
『どうやってかね?まさか、これだけの戦力差を覆せるとでも?』
「ん、やってみないと分からない。ここは私がーーー」
ーーードゴオォォォン!!......バッサアーーー!!
シロコが啖呵を切り、一歩踏み出そうとした瞬間に目の前で大爆発が起きた。......その結果、シロコは盛大に頭から大量の砂を被ることになった。
『また爆発!?今度は一体、誰が......!!』
「じゃーん!やっほ~☆」
「お、お邪魔します!」
「(やば......。爆発のタイミング、ミスったかも......)助けにきたよ」
「便利屋のみんな!来てくれたんだね!」
「やっほー、先生!もしかして、大事なシーンに割り込んだ感じ?」
「......便利屋68、”仲間”の危機に参上したわ!」
ばさり!と、コートを翻してキメ顔で告げる陸八魔アル。
それに対し、セリカの手により砂の中から救出されたシロコがアルにボソリと言う。
「......てやる」
「あら?貴女は確か......シロコさんね!ごめんなさい、よく聞こえなかったから、もう一度お願いできないかしら?」
「してやる......。殺してやるぞ、陸八魔アル......ッ!!」
「な、ななななんでよおぉーーー!!??」
白目を剥き、いつもの台詞を叫ぶアル。アルからすれば、助けに来たらいきなり殺害予告をくらったのだ。こうもなる。
しかしシロコからすれば、啖呵を切って仲間のために道を開こうとした途端に、砂に埋められたのだ。シロコはご立腹である。
『くっ!?貴様らは便利屋かっ!?裏切っただけでは飽きたらずに、今度は楯突いてくるとはな......!木っ端ごときが、調子に乗るなよッ!!』
「ちょっとー!?なんかカイザーからも、凄い殺気を感じるんだけどー!?」
「あはは!アルちゃん、ウケるー!」
「ウケないわよっ!?」
「あー......先生?取り敢えずこの場は私達が引き受ける。先生達は先に進んで?」
「そんな!カヨコ、それは無茶だよ!ここは皆で協力してーーー」
「先生」
「っ!!アル......?」
先生がカヨコの提案に異を唱えようとしたところ、それを遮るようにアルが先生に語り掛ける。
「......貴方達は今から、大切な人を迎えに行くのでしょう?なら、こんなところで立ち止まらないで......ここは私達に任せて、先に進みなさい!!」
「アル......。すまない!直ぐに戻るから、無茶はしないでね!」
「ん......今の台詞、少し痺れた。しょうがないから、さっきの事はチャラにしてあげる。......ありがとう」
「アンタ達!最っ高に、カッコいいわよ!ありがとね!」
口々に礼を言って走り去る対策委員会の面々。それを見送って、便利屋68はカイザーPMCに向き直る。
「アルちゃん、あの啖呵は惚れるって......」
「アル様!一生ついていきます!」
「はあ、社長の癖が伝染った......。なんであんなこと言っちゃったかな......」
「(ああぁぁぁー!?カッコつけちゃったけど、どうしたらいいのー!?)......ふふふ。じゃあ、先ずは名乗りをあげようかしら?」
「はいはーい!じゃあ、私から!......室長、浅黄ムツキ!」
「......課長、鬼方カヨコ」
「ひ、平社員、伊草ハルカ!」
「そして社長、陸八魔アル。さあ、便利屋68......いくわよっ!!」
それぞれの得物を構え、便利屋達はカイザーと衝突する......。
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~カイザーPMC 基地内部~
『追い詰めましたよ、カイザーPMC理事!』
「大人しく降伏して、シキさんを返してくれないかな?」
「痛い目に合いたくないなら、さっさと敗けを認めるべき」
便利屋と別れて理事を追いかけPMC内部へと侵入した一同は、重厚な扉の前で遂に理事を追い詰めていた。
先生達の勝利を確信した発言を聞きながら、理事は焦る様子もなく応える。
『追い詰めた?......成る程、見方によればこの状況はそうともとれるか』
「何?負け惜しみでも言っちゃってるわけ?この状況、どう見たって私達の勝ちじゃん!」
『はあ......。対策委員会......私はな、ずっとお前達が目障りだった。あの悪魔を手に入れたことで、その感情を忘れてやろうとしたが......やはり、私の未来のために貴様らはここで徹底的に潰しておこうか』
「......何をする気?」
『何をするかだと?......こうするのだッ!!』
「っ!?地震!?地面が揺れて......!」
『違います!これは地震ではありません!これは......!?』
「皆さん、下から何かが来ます!下がって!!」
理事が叫んだと思ったら、電池が切れたようにその身体は崩れ落ちる。
その直後、足元が激しく振動し出して動揺が拡がるなかで、ワカモは足元から何かが迫っている気配を感じて注意を促す。
そして全員がその場を飛び退いた直後に地面が割れ、レールが現れそれに沿うようにして鋼鉄の巨人がせり上がってきた。
「ッ!!コイツ......あの映像の!?」
『......そうだ。あの悪魔を討ち取った、私の自慢のもう一つの身体だ!喜べ、諸君ッ!君達も特別にこの機体で、葬ってやろうッ!!』
「......皆、どうやらここが正念場らしい。コイツを倒して、シキさんを取り戻すよっ!!」
『はい!』
「スクラップにしてやるッ!」
「やってやるわ!」
「いっきますよー!」
「シキを返してもらうっ!」
「お姉様......ワカモに力をお貸しくださいッ!」
最終決戦が今、始まるーーー。
次回、理事戦に決着。