何度見直しても気付かないことがあるので、大変ありがたいです!
「アビドス?」
「うん。支援要請の手紙が届いててね。アビドスまで出張しようかと」
「わふん...お姉さまぁ~♪」
「おぉ~、よしよし♪ワカモちゃんは可愛いね~♪」
「あれ?聞いてる?」
---シャーレが活動を開始して、早いもので1ヶ月が過ぎた。
この1ヶ月、書類仕事から地域住民からのあれやこれやの解決、挨拶回りなどを行っていた。
時間を見つけては、その時間でワカモちゃんを鍛えたりもしていた。
やはり見込んだ通り彼女の能力は素晴らしく、私の鍛練に弱音を吐くことなく着いてきて、今では1ヶ月前とは見違えるほどに動きも技も、心も磨かれた。正に”心技体”揃った戦士に育っていっている。
そんな彼女を今は撫でまわして甘やかしながら、コウの言葉に適当に答える。
「聞いてる聞いてる。アビドスってところに出張に行くんでしょ?行ってら~」
「...まあ、シャーレの運営もあるし、いいんだけどさ?もうちょっと何というかこう...ないの?」
「何を元カノに求めてんだか...。大体、コウには頼れる相棒のアロナちゃんがいるじゃん?だから問題ナッシング!」
『はい!この、スーパーアロナちゃんにお任せください!』
えっへん!とコウの持つタブレットの画面の中で、胸を張るアロナ。
「でも、何で私やコウ以外はアロナちゃんの事を認識できないんだろうねー?」
「私には、ただのタブレットにしか見えませんし...。ワカモは仲間外れみたいで、少し寂しいです...」
「...んもーっ!しょんぼりしてるワカモちゃんは、可愛いなぁー!」
「わふっ!?お、お姉さま!激しすぎますぅ~...!」
『お二人は本当に仲良しですね!先生!』
「...そうだね」
『あれ?先生...何だか少し、不機嫌です?』
「え?いや、全然そんなことないよ?」
---私はワカモちゃんを撫でながら、コウとアロナちゃんのやり取りを横目でしっかりと視ていた。
(おーおー、自分に構ってくれないからって、あからさまに拗ねちゃってさ...。...そんな風になるなら、私を振るなよな)
(?何だか、お姉さまから不機嫌オーラが...?)
誤解がないように言っておくと、私と彼は別にお互いを嫌いになったから別れたわけではない。
当時は彼だって真剣に悩んで、私も彼の考えを尊重した結果、今のような関係に落ち着いたのだ。
(それに別れ話が出た当時は、離ればなれになる予定だったしね...。確かに私はコウの考えを尊重したけど、それでもやっぱり悲しかったし?簡単には元サヤには戻んないんだから...!)
こんな感じで、二人の想いは微妙にすれ違ったまま、コウはアビドスへ出張に向かったのだった。
---数日後---
「...ワカモちゃん。コウから連絡は来た?」
「いえ...。今日も先生からの音沙汰はありませんわ...」
「何やってんのよ、アイツ...!」
数日前にアビドスへ向かったコウ。その彼から、未だに何の連絡も無いのだ。
「こっちから連絡しても、繋がらないし...!あぁっ、もうっ!!アヤツは何をしておるのだっ!!...ワカモ!」
「は、はいっ!!」
「ワシらもアビドスへ向かう!直ぐに支度をしろっ!」
「で、ですが、シャーレでの業務は...」
「そんなものは、後でどうとでもなる!行くぞっ!」
「あわわ...!待って下さい!お姉さまーっ!」
いい加減に痺れを切らしたシキと、それに引きずられるような形でワカモはアビドスへと旅立った。
---その頃の先生はというと...。
「うぅ...。アビドス高等学校どこ...?」
広大な砂の自治区で迷い、生死を彷徨っていた。
「準備不足だったか...。連絡も取れてないし、シキさん、怒ってるよな...」
数日間彷徨って消耗し、朦朧とする意識の中で思い出すのは、自分の愛した女性の柔らかな笑顔だった。
(もう一度、
「ん?」
遠退いていく意識の中、誰かの声が聞こえたような気がした。
(あはは...。幻聴とか、いよいよ僕も終わりかな...?)
「...あの......大丈夫?」
再度聞こえた声に目を開くと、目の前にはロードバイクに跨がるケモ耳美少女がいた。
彼女のこちらを心配する言葉に、僕は掠れた声で助けを求めた。
「...ごめん。出来れば、助けてくれないかな...?」
「それはいいけど...。どうしたの?」
「実は...」
---先生、説明中...。
「えっと...。うん。理由は分かったよ。...はい、これ。エナジードリンク。ライディング用なんだけど...今はそれぐらいしか持ってなくて。でも、お腹の足しにはなると思う」
「えっと、コップは...」と呟く彼女に気付かず、喉の乾きから僕は受け取った容器にそのまま口をつけて、勢いよく中身を飲み込んでいく。
「あ...それ...」
「?」
「...ううん、何でもない。...気にしないで」
若干頬を赤く染めた彼女に、僕は頭に疑問符を浮かべながら彼女を見るも、「気にしないで」の一言で直ぐにまた久方ぶりの水分に夢中になった。
「ふぅ...。ありがとう、本当に助かったよ」
「うん。見た感じ、連邦生徒会から来た大人の人みたいだけど...お疲れさま。学校に用があって来たの?」
「うん、アビドス高等学校ってところなんだけど...」
「そっか。久しぶりのお客さんだ。私が案内してあげるよ、すぐそこだから」
「うん、よろしく頼む...って、あれ?」
「...!大丈夫?」
「...ごめん。ちょっと、身体に上手く力が入らないや」
「...ちょっと待ってて」
僕の言葉に少し考える素振りを見せて、おもむろにロードバイクを近くのガードレールに固定しだすケモ耳の彼女。
ロードバイクを固定し終わり、「よし」と一言呟いた彼女は僕の目の前までやって来て、背を向けてしゃがむ。
「ん、乗って」
「え」
「そのままじゃ、歩けないでしょ?私が運ぶから、乗って?」
「それは正直助かるけど...。いいの?」
「ん。何だか、貴方を見ていると放っておけない気持ちになった。...あ、でもさっきまでロードバイクに乗ってたから、汗だくってわけじゃないけど...あんまり匂いを嗅がないでね?」
「こちらこそ、数日間の色んな匂いが染み付いちゃってるかもしれないけど...勘弁してね?」
「ん、大丈夫。むしろ...んんっ!何でもない。...乗ったね?行くよ...!」
若干興奮気味の少女は、その背に大人を乗せて駆け出した。
~アビドス高等学校~
「ただいま」
「おかえり、シロコせんぱ...い?うわっ!?何っ!?そのおんぶしてるの誰!?」
「わあ、シロコちゃんが大人を拉致してきました!」
「拉致!?もしかして死体!?シロコ先輩がついに犯罪に手を...!!」
「みんな落ち着いて、速やかに死体を隠す場所を探すわよ!体育倉庫にシャベルとツルハシがあるから、それを...」
「いや...普通に生きてる大人だから。うちの学校に用があるんだって」
周りのあんまりな言い様に、ケモ耳美少女...シロコは先生を背中から降ろし、ジト目で説明する。
「えっ?死体じゃ、なかったんですか...?」
「拉致したんじゃなくて、お客さん?」
「そうみたい」
「彼女の言ってることは本当だよ」
「わぁ、びっくりしました。お客様がいらっしゃるなんて、とっても久しぶりですね」
「そ、それもそうですね...。でも来客の予定ってありましたっけ?」
「それなんだけどね...初めまして。私は、「シャーレ」の顧問先生です。よろしくね」
そう自己紹介をすると、少し騒然とした後に「支援要請が受理されたんだ!」と安堵の声が上がり、猫耳の少女が先輩を起こしてくると言って走り去っていく。
その直後だった---
少しだけ和んだ空間を切り裂くように、鋭い銃声が外から聞こえてきた。
「じゅ、銃声!?」
「!!」
窓から外の様子を確認すると、武装したヘルメットの集団がこちらに接近していた。
「わわっ!?武装集団が学校に接近しています!カタカタヘルメット団のようです!」
「あいつら...!!性懲りもなく!」
「ホシノ先輩を連れてきたよ!先輩!寝ぼけてないで、起きて!」
「むにゃ...まだ起きる時間じゃないよー」
「ホシノ先輩!ヘルメット団が再び襲撃を!こちらの方はシャーレの先生です」
「ありゃ~そりゃ大変だね...あ、先生?よろしくー、むにゃ」
「先輩、しっかりして!出動だよ!装備持って!学校を守らないと!」
「ふぁあー...むにゃ。おちおち昼寝もできないじゃないかー、ヘルメット団めー」
「すぐに出るよ。先生のおかげで、弾薬と補給品は十分」
「はーい、みんなで出撃です☆」
「私がオペレーターを担当します。先生はこちらでサポートをお願いします!」
「うん、任せて」
アビドスでの先生としての最初の仕事が今、始まる---!
「お姉さま、もう少しでアビドス高等学校に着きます。...ですが、妙ですね?武装した集団が戦闘を行っているようです」
「...コウ、無事でいてね」
もしかしたら、別の意味での修羅場も始まるかもしれない---!!
次回、「元カノ、感情大爆発!」デュエル、スタンバイッ!!
*なお、タイトルは変更される場合があります。