そんなジレンマに襲われている今日この頃です。
「お姉様、どうやらアビドスの生徒とヘルメット団が戦闘になっているようです。どうなさいますか?」
「もちろんアビドスへ加勢する。ワシは挟撃の形で、敵勢力の後ろから攻める。ワカモは車をこのまま走らせ、校舎へ向かい、コウがいるかどうか確認を頼む」
「分かりました。御武運を!」
「...ああ、行ってくる!」
そうワカモに応えて車を飛び出し、一気にトップスピードに乗り、戦闘区域へ突入するシキ。
「車よりも速く走り抜けるお姉さま...私ももっと精進しませんと!!」
ワカモはシキの人外っぷりにも目を輝かせ、託された任務を遂行すべくアクセルを更に強く踏み込むのだった。
~コウ・アヤネside~
「よし、何とかなりそうだね」
「はい!補給を受けたこともありますが、ここまでスムーズに戦闘が出来ているのは先生の指揮のおかげです!」
「ははは、そう言ってもらえると私も頑張った甲斐があるよ」
コウはアヤネと共に戦闘の様子をモニターし、順調に事が進んでいることに安堵する。
アヤネと少しの掛け合いを行い、再びモニターへ目を向けると違和感を覚えた。
「...何だ?ヘルメット団の動きが変わった?」
少し前までは、アビドスの生徒に対抗するために前面に展開していたヘルメット団。それが今では統率が乱れ、散り散りに戦闘を行っている。
「いったい何が...」
『---先生!』
「!!...えっと、シロコさん、だったよね?どうしたの?」
『ん!シロコでいい!って、そんな事はどうでもいい!何かがヘルメット団の後方から、彼女達を倒しながら凄い勢いで向かってきてる!』
「何が起きてるんだ...!!」
モニターの画面を睨み付け、コウはただ成り行きを見守ることしか出来なかった。
~アビドス高等学校 正門前~
「何なの...あれ?」
「うへ...砂煙でハッキリ見えないけど、人が宙を舞ってるねー...」
「わぁー☆楽しそうですねー!」
「ノノミ...?」
......私たちの目の前で、信じられない光景が広がっている。
ホシノ先輩が口にしたように、物凄い砂煙を上げながら砂と一緒にヘルメット団の人達が、宙を舞っている。
その光景を私達は(約一名を除き)、呆然と見つめる。
「あっ!何か飛び出してきたわよ!?」
セリカの叫びに注目すると、空高く何かが飛び上がりこちらに落下してくる。
---ドオォォオオオンッ!!
「わぷっ!?」
「うへ~!?」
「わわわっ!?」
「...っ!?」
凄まじい轟音と共に砂を巻き上げ、私達の目前に
「...
「何でこんな物が、落ちて...?」
「...みんな、構えて!警戒体勢っ!!」
「ん...。何かいる...!」
未だ晴れぬ砂煙の向こう側に、異常な気配を感じて警戒を呼び掛けるホシノ。
ホシノの呼び掛けの後、直ぐに何かが砂煙から飛び出して来て鉄の塊...巨大メイスを掴んで、振りかざしてくる...!!
『お姉さまっ!!ストップですっ!!』
---ピタリ...!
通信機から聞こえてきたワカモの制止の声により、メイスは後輩を守るため、ホシノが咄嗟に構えた盾の数センチ前で停止した。
「...ワカモ、コウは見つかったのか?」
『はい!どうやら数日間遭難していたようで、若干の疲労は見られますが先生はご無事です!』
「そうか...そうか......。よかった...」
(
ホシノは目の前の相手から感じていた重圧が消えたことで、安堵していることに驚いた。それも、盾を持つ腕がガタガタと震える程の恐怖を感じるとは...。
(こんな思いをするのは、
脳裏を過るのは、かつて犯した過ちの記憶。そして、あの人の---。
「...ぱい!...ホシノ先輩!!」
「うへっ!?な、何かな?セリカちゃん?」
「何って...だから、戦闘終了!帰投してって通信が入ったでしょ?聞いてなかったの?」
「あぁ~...うん、ちょっとだけ、ぼーっとしちゃってさ?ごめんね?...さ、帰ろっか!いやー、疲れたなー。おじさんも、もう年だねー」
「年って...私たちとほとんど変わらないじゃない。って、置いてかないでよ!」
背中に可愛い後輩の文句を受けながら、それでもホシノは足を緩めない。
...今の自分の顔を、見せたくなかったから。
~廃校対策委員会 部室~
所変わり、校内へ戻ってきて先生とアヤネのいる部屋に一同が会していた。
若干、空気が重い事を気にしたアヤネが、努めて明るい声でみんなを労う。
「えっと...。取り敢えず!みなさん、戦闘お疲れさまでした!それであのー...」
「ん?...ああ、自己紹介がまだだったね。私はそこの先生と同じ、シャーレ所属の須賀原シキです。よろしくね?それとこっちは---」
「おほん!シャーレ所属でお姉さまの一番弟子!「狐坂ワカモ」です。以後、お見知りおきを」
「先生の同僚の方だったんですね。私は、「十六夜ノノミ」といいます。よろしくお願いしますー☆」
「ん、私は「砂狼シロコ」。さっきは凄かったね。私とも戦ってほしい」
「ちょ!?シロコ先輩!?うちの戦闘狂な先輩が、すみません!...あ、私は「黒見セリカ」っていいます。よろしくお願いします!」
「あはは...。先程は加勢していただき、大変助かりました。ありがとうございます。私は「奥空アヤネ」といいます。シキさん、ワカモさん、よろしくお願いします。...あれ?ワカモさんって、どこかで聞いた事のあるような...?」
「うふふ♪きっと気のせいですわ♪」
「うへ、おじさんで最後だねー?...「小鳥遊ホシノ」だよー。よろしくねー」
未だ警戒しているのか、それとも別の何かがあるのか...。ホシノのあまりに簡素な自己紹介に、彼女の纏う普段とはかけ離れた雰囲気に、戸惑う後輩たち。
そんな空気を変えるために、コウは一つ手を叩いて話題を変える。
「さて、取り敢えず一難去ったわけだけど...みんな、怪我とかはしていないかな?」
「ん、あんな雑魚相手に怪我なんてしない」
「私も大丈夫ですよ!」
「私も特に問題はないわ」
「おじさんも平気だよー」
「そっか、ならよかったよ。...シキさんは?」
「...別に。何ともないよ」
「...そっか」
コウの言葉に不機嫌さを隠さず、そう返すシキ。なぜ彼女が不機嫌なのか。思い立つ事はあるが、今は先に話す事があると思い、話を続ける。
「さっきの襲撃だけど、いつもこんな感じなの?」
「はい...。どれだけ退けても、少ししたらまた襲撃を受ける。このサイクルが最近続いていて、補給もままならず...」
「本当にギリギリでしたからね~。先生が来てくれたのは、ナイスタイミングでした!」
「うん、力になれたようで私も嬉しいよ。そこで提案なんだけどさ?...今度はこちらから攻めない?」
「攻めるって、ヘルメット団をですか?」
「...なるほど。先生もそう考えてたか」
「ホシノ先輩?」
「今のヘルメット団は消耗しきっていて、まともに動ける連中は、よくても拠点にいる数人程度だと思う。対してこっちは、補給もして装備・人員共に全力を出せる状態。だからこそ、今のうちに敵の前哨基地に乗り込んで、こてんぱんにしてやろうー!ってこと」
「あのホシノ先輩が...」
「マトモなことを言ってる...!?」
「ちょっと...?その反応はいくらおじさんでも、ちょ~っと傷つくなぁ~?」
「ん、敵の前哨基地はここから30kmくらい。今すぐ行こう!」
「はい!やっちゃいましょー!善は急げです☆」
アビドスの面々は各自準備を開始する。そんな中、コウは何かをワカモと話しているシキに目をやる。
(本当は今すぐ今回の遭難の件とか色々と、謝ったりした方がいいんだろうけど...。ごめん、シキさん!取り敢えず、ヘルメット団との事が終わったら、ちゃんと話すから!待ってて下さい...!)
...コウは知らない。いや、気付けていない。それとも気付かないふりなのか...。
どんなにお互いにまだ未練や情が残っていようとも、コウとシキは現在、別れているという事を。
シキの深紅の
(...馬鹿みたい)
---愛する人に甘える元カレは...判断を間違える。
巨大メイス...どこの鉄血メイスなんだ...!
シキがそんなもんどこに仕舞ってたかって?なんかキヴォトスに来てから、自分の思う武器を創り出したり消したり出来るようになったそうですよ。勿論、最適正は”槍”です!
そもそも何でそんな能力があるかって?...シキとコウの元いた場所は神秘が薄く、キヴォトスには神秘が豊富(作者の想像)...あとは、シキの元になった人がね?うん。これ以上はネタバレっす。(ほぼ語った)