ちょい長いです。
---私は白昼夢でも見ているのか?
「ぁ...ぁあっ!!くるっ!悪魔が...!悪魔がくるぅっ...!!」
「やだっ!?見ないでっ!?その眼で私を見ないでよぉ...!?」
「あははっ!人がね!ばあーって!お空を飛んでるのぉ!」
「何で...何で、人間があんなデカイ鉄の塊を...!顔色一つ変えずに、振り回せるんだよ...!?」
「目を閉じるとね...目蓋の裏に、浮かんでくるの。...無感動な表情で、機械的に武器を振り回して、無機質な深紅の瞳で私たちを蹂躙してきた、あの...悪魔の姿が......」
---阿鼻叫喚。私は人生で初めて、その言葉を意識して頭に浮かべていた。
...最初は楽な仕事だって思ってたんだ。だってそうだろう?相手は廃校寸前の学校で、ソレを潰すだけの簡単な仕事のはずだった。
...だが、やつらは手強かった。数は少なくとも、一人一人の能力は高く、更に連携まで抜群と来たもんだ...。
「...私の責任だ」
皆のリーダーである私が、軽い気持ちで今回の仕事を請け負ったから...!この団のムードメーカーだったアイツも!自分より仲間を優先しちまう、優しいアイツも!誰よりも私の事を慕ってくれた、アイツも!皆...!私のせいで、全部っ!壊しちまったっ...!!
---ドガァアアアアアンッ!!
「---リーダーっ!!」
「何だ!どうかしたのか!?」
仲間の変わり果てた姿に頭を抱えて自責していると、外から轟音が響いてきた。何事かと思っていると、血相を変えた部下が慌てて駆け寄ってきた。
「そ、それが...!っ!とにかく!こっちに来てください!」
「あ、あぁ...」
---この日、私は二度目になる白昼夢...いや、悪夢を見ることになる。
「な、んだよ...これ?」
目の前に広がるのは、アジトに残っていた仲間達の倒れ伏す姿と...燃え盛るアジトの中で、ガタガタと震え、怯えて動けなくなっている仲間の姿だった。
「---お主が、ここの
「は?誰だおま、え...ひぃっ!?」
「ワシが誰か等、どうでもいい。もう一度だけ聞く。...お主が、ここの首魁か?」
「は、はいっ!そ、そうですっ!!」
「...ふむ、そうか。しかし...そう怯えられると、ワシは悲しいんだがなぁ?」
『深紅の瞳の悪魔が来る』。
アビドスを攻めに行って戻ってきた仲間達は、口々にそう言っていた。
私は今、アイツらがあそこまで怯え、震える理由の一端を垣間見ていた。
...目の前に現れた、深紅の瞳を爛々と輝かせながら両手に小型の
コイツを悪魔と呼ばずに何と呼ぶというんだ...!!
「---時に、首魁殿?お主らは、アビドスを攻め落とそうとしているらしいが......
「ひっ!?...はい、本当です」
---ブォンッ!!...ドゴオッ!!
「きゃっ!?あ、あぁ...な、なんで、わたし、ちゃんと答えて...」
「ん?すまんな。手が滑ってしまった。許せ」
(誰か...!誰か助けて...!!)
私の返答を聞いた瞬間に、「手が滑った」などと言って手に持っていた鈍器の一つを、私のすぐ隣に放り投げてきた。
(あぁ...そうか。私、今日ここで惨たらしく死ぬんだ...)
「?何やら黄昏ているところスマンが、一つワシと約束をしてくれぬか?」
「や、約束、ですか?」
「ああ。何、そう難しいことではない。...アビドスから手を引け。そうすれば、ワシらもこれ以上の侵攻は止めて引こう。...さて、返答やいかに?」
そう言われ改めて周りを見渡すと、目の前の悪魔に意識を奪われていて気付けなかったが、アビドスの連中もあちらこちらでアジトを攻撃して回っている。
それに気付いた私の返答は---。
「いやー、無事にヘルメット団のアジトを潰せてよかったねー。おじさん、もうクタクタだよー」
「えぇー...?ほとんどシキさんが暴れまわってくれたおかげで、私たちは出番ほとんど無かったんだから、言うほど疲れてないでしょ?」
「いやいやー。おじさんほどの歳になるとねー?あっちこっちにガタがきてさー?大変なんだよー」
「だ・か・ら!私たちとそんなに、歳は変わんないでしょ!」
キャイキャイと騒ぐアビドスの生徒達の様子を視界に納めながら、私は一人自己嫌悪に浸っていた。
(失敗した...。私は大人として、いや、人として最低なことをしてしまった...。私情で、子供に八つ当たりするなんて...)
私はコウへの苛立ちを、先程のヘルメット団との戦闘に対してぶつけてしまった。
(リーダーちゃんの私を見る眼...まるで、化け物を見るような眼だったな...)
子供の恐怖に震え、絶望と諦めに染まった目...。あんな目をまさか、自分がさせてしまうなんて...。
(大人失格だ...。今度会ったら、お詫びに何かご馳走しよう...)
その後この出来事から、裏社会ではシキの事を『深紅の悪魔』の二つ名で恐れられる事になるのだが...それを知る日はわりと近い。
「お帰りなさい。皆さん、お疲れさまでした」
「皆、お疲れさま」
「ただいま~」
「アヤネちゃんも、オペレーターお疲れ」
「火急の事案だったカタカタヘルメット団の件が片付きましたね。これで一息つけそうです」
「そうだね。これでやっと、重要な問題に集中できる」
「うん!先生とシキさんのおかげだね、これで心置きなく全力で借金問題に取り掛かれるわ!ありがとう、先生!シキさん!この恩は一生忘れないから!」
「う、うん。喜んでもらえて、よかったよ。ははは...」
「ん?待って、借金返済って?」
シキは自責の念から、セリカの純粋な感謝の言葉に良心を痛ませながら答える。反してコウは、セリカの放った”借金返済”というワードに反応し、聞き返す。
「...あ、わわっ!」
「そ、それは...」
「ま、待って!!アヤネちゃん、それ以上は!」
「...!」
「いいんじゃない、セリカちゃん。隠すようなことじゃあるまいし」
「か、かといって、わざわざ話すようなことでもないでしょ!」
「別に罪を犯したとかじゃないでしょー?それに先生やシキさんは私たちを助けてくれた大人でしょー?」
(...ん?)
シキはホシノがセリカを宥めるために言った言葉の中にある”大人”という部分に、何か含みを感じた。
...まるで、宥めるのとは反対の意があるような。
「ホシノ先輩の言う通りだよ。セリカ、先生とシキさんは信頼していいと思う」
「そ、そりゃそうだけど、先生もシキさんも結局は部外者だし!」
「まあ、パパっと解決してもらえるような問題じゃないかもだけどさ。でも、この問題に耳を傾けてくれる大人は、二人くらいしかいないじゃーん?それとも何か他にいい方法があるのかなー、セリカちゃん?」
「う、うぅ...。でっ、でも、二人とも会ったばかりの大人でしょ!今まで大人たちが、この学校がどうなるかなんて気に留めたことなんてあった!?」
...セリカの言葉にアビドスの面々は僅かに顔をしかめる。それぞれセリカほどの反発心はなくとも、それなりに思うところはあるのだろう。
誰も口を挟めないでいると、セリカは続けて叫ぶ。
「この学校の問題は、ずっと私たちだけでどうにかしてきたじゃん!なのに今更、大人が首を突っ込んでくるなんて...私は認めない!!」
「セリカちゃん!?」
「私、様子を見てきます」
大人二人を涙の浮かんだ目で睨んでそう言った後、セリカは部屋を飛び出していく。
それをノノミが追いかけるために部屋を出た後、残ったホシノ達が事情を話す。
---説明中......。
「...で、結局、悪徳金融業者に頼るしかなかった」
「はい...。最初はすぐに返済できる算段だったと思います。ですが、砂嵐はその後も毎年更に巨大な規模で発生し...学校の努力も虚しく、悪化の一途をたどりました。その結果...」
「底無しの借金地獄へ落ちていったのでしたー。...どう?つまらない話だったでしょ?」
「そうか...。だから、セリカちゃんはあんなに...」
「セリカがあそこまで神経質になってるのは、これまで誰もこの問題に向き合わなかったから。話を聞いてくれたのは、先生、シキ、あなた達が初めて」
「ま、でも借金のことは気にしないでいいからねー。話を聞いてくれただけでもありがたいし」
「そうだね。先生とシキにはもう十分力になってもらった。これ以上迷惑はかけられない」
話を聞いて、大人たち二人は目の前の子供たちを見る。
---どこか捨て鉢気味の、危うい雰囲気を出しているホシノ。
---こちらに感謝し、ただただ割り切っているように見えるシロコ。
---割り切ったように見えて、その瞳の奥に不安が隠せていないアヤネ。
そんな子供たちを見て”はい、そうですか”と背を向けるような真似は......二人には到底出来ないことだった。
「...私は連邦捜査部「シャーレ」の先生、朝宮コウ」
「同じく、シャーレ所属の須賀原シキ」
「え?え?お二人とも、急にどうしたんですか?」
「ん、自己紹介ならもう終わってるよ?」
コウとシキの唐突な自己紹介に戸惑う生徒たち。
二人は生徒たちの目を真っ直ぐに見つめて、宣言する。
「「私たち「シャーレ」は、大人は、君たち生徒全ての味方だ。そんな私達が、君たちを見捨てて戻るなんてことはしない。私たちも対策委員会の一員として、一緒に頑張るよ」」
「そ、それって...!はいっ!よろしくお願いします、先生!シキさん!」
「へえ、二人とも変わり者だねー。こんな面倒なことに自分から首を突っ込もうなんて」
「良かった...「シャーレ」が力になってくれるなんて。これで私たちも、希望を持っていいんですよね?」
「そうだね。希望が見えてくるかもしれない」
(...ちぇっ。何よ、皆簡単に絆されちゃってさっ!私は...わた、しは......)
そうして喜んでいる様子を隠れて覗き込んでいた黒猫が一人、複雑な表情でその場を去っていく。
---暫くして...。
「すみません...。セリカちゃん、見つけられませんでした...」
「きっと明日にはまた、元気な姿で現れるよー。ま、今はそっとしておこう?」
「セリカちゃん...」
「それはそうとノノミ。さっきまでの事を説明する。かくかくしかじか...」
「うまうままるまる、と...。わあー!信じられません、これからよろしくお願いしますね!お二人とも!」
「うん。任せて」(あれで通じるのか...)
「よろしくね、ノノミちゃん」(なんで通じたんだろう...?)
---閑話休題---
「ところで、シキ。聞きたいことがある」
「なに、シロコちゃん?」
「シキと先生は、付き合ってるの?」
「「うんっ!?」」
「し、シロコ先輩!あまりそういった、プライベートなことは...!」
「え、っと、シロコちゃん?どうして、そんなことを?」
「ん?だって二人は何だか妙に距離感が近い。それに、なんていうか...二人は分かりあっている?気がする」
「あー...えーとね?シロ---」
「まあでも、私は先生と(間接)キスもしたし、お互いの匂いも(背負ったときに)嗅ぎあった仲だけどね」
「...は?」
「ちょっ!?シロコ!?なに言って...!?」
「ん?別に嘘は言ってない」
「いや、言い方ぁっ!?」
「...へえー?」
「ひっ...!?」
シロコの言葉にコウは焦りシロコに詰め寄るが、かえって自分の首を絞める結果になる。
直後聞こえてきた、シキの底冷えする声を耳にして小さく悲鳴を上げる。
「私には散々、心配かけといて?無事な姿を見せたかと思ったら、何の言葉もなく?自分は若い子とヤることヤってたと...?」
「違うんだ!シキさん!話を聞い---」
「私で童貞捨てたくせにっ!!この...ロリコンがあぁーっ!!」
「ちょっ!?生徒たちの前でなに---ぐはあっ!?」
「うわあぁーんっ!!」
「待ってください!お、お姉さまー!」
「「「えぇー...?」」」
「ん、先生の初めてを奪われてた...。」
とんでもないことを叫び、コウの顔へ気持ちの良い一発を入れ、泣きながらその場を去るシキ。それを追いかけるワカモ。
後には何とも気まずい空気と、アビドスの生徒たち(シロコを除く)の先生に対する冷たい視線だけが残されていた。
...どうなる次回ッ!!
よし!明るい話だったな!(現実逃避)
最後のワカモさんは、実はずっと同じ空間にいました。何してたかって?空気を読んで黙ってシキの三歩後ろで待機してました。良妻賢母なワカモちゃんなのです。