どの辺がダメなのか分からないので感想くださると……(´;ω;`)
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──代官山「STUDIO ORCA」、午後4時前。
代官山駅から少し歩いた先──
路地裏にひっそり佇む、撮影スタジオ《STUDIO ORCA(スタジオ・オルカ)》。
白壁のホリゾントと、午後の自然光を狙った“午後三時の窓”が売りで、
JUNECやaprilumなど、ガーリー系ブランドのカジュアル撮影ではよく使われる場所だ。
通称「代官山の水たまり」。
雨上がりのアスファルトに、スタジオの灯が映ると、
それだけで絵になる──そう言われている。
(でもあたしには、ちょっと明るすぎる)
そんなスタジオの通りを、明日香はいつものように歩いていた。
雨上がりのアスファルトに、スタジオの灯が映り込んでいた。
冷たい湿気が肌を撫でるなか、明日香はJUNECのカジュアル撮影を終え、機材搬入口を回って廊下を歩く。
撮影は、悪くなかった。
午後三時の自然光を使った“抜け感”カット。
リネン混のシャツにフレアパンツ、ノーメイク風の薄メイクで、あえて表情は抜いて。
「こっち、もうちょい肩抜いて、髪ちょっと散らして──OK、その目線!」
カメラマンの声に応えるたび、レンズの先に“演じる”自分がいた。
けれど──ふと、視線が“鈴”を探していることに気づく。
(……バカじゃないの、あたし)
そこに鈴がいるわけじゃない。
でも、先日の“透との共演映像”が焼きついて離れない。
あのとき、鏡越しに見た“白栞”と“鈴”が重なった瞬間──
自分の中で、何かがひどく軋んだ。
「明日香ちゃん、次行きますね~、そのままの雰囲気で」
返事をして、ポーズを切り替える。
笑って、そらして、無関心そうに。
全部“できる”。
けど、それは“あたし”じゃない気がした。
──見透かされてる。
透を通して、鈴に。
そして鈴を通して、何も見えない自分に。
撮影が終わり、モニターの前に立たされたとき。
カメラマンが満足げに頷いている隣で、
明日香はふと、画面の中の“自分の目”を見つめた。
一枚、また一枚。
構図は完璧。ライティングも完璧。
でも──違う。
(これ、あたし……目が死んでる)
そんなはずない。そんなつもりはなかった。
でも、映っていたのは“演じてる”だけの目。
誰のことも映してない。誰のことも求めてない。
ただ、“仕事”として成立しているだけの飛鳥 明日香。
(……今のあたし、たぶん“魅せられてない”)
撮影は“成功”した。
けれど、それがなにより悔しかった。
髪をくしゃりと掻きながら、早く帰ろうと歩みを速めたそのとき──
「ああ、透くんの演技? 確かに凄かった。でも、あの子より光るのは……やっぱ鈴ちゃんかな」
不意に耳に飛び込んできた“あの声”。
身体が止まった。心臓がひとつ、跳ねた。
あたしは別に立ち聞きしようとしたわけじゃない。ただ、足が勝手に止まっただけ。
でも、その声は間違いなかった。あの低くて、軽やかで、芝居染みた挑発混じりの声音。
「……真野 剛士」
「お、飛鳥さん。どうする? 真野くんの控え室寄ってく? 向こうも今終わったとこ」
JUNEC編集者の軽い口調に、条件反射のように頷いていた。
思考が追いつく前に身体が動いていた。
明日香は、今日ほど自分の判断力に疑問を覚えたことはなかった。
何が悲しくて、あんな男と一対一で会おうなどと思ったのか。
──真野 剛士。
映画『鈴が鳴るとき』において、蓮見廻を演じた八代 透の前に、助演として立っていたはずの男。
実力も人気も高く、かつては主役クラスに連なる俳優として注目されていた。
だが、現場では面喰いだの、女優泣かせだの、そういった妙な噂が絶えない男でもあった。
明日香からすれば、クソ野郎と呼ぶのも過剰ではない程度の評価だ。
実際の話、カレンから耳打ちされた内容通りなら澁谷社長に前事務所から引き抜かれるまでは
噂は“ある程度”は本当で、業界の裏側の被害者でもあるとか。
殴り込みに行ってやろうとまで思ったあたしに彼女は優しくしてあげてと忠告してきた。
そういった生き方をも必要で、綺麗ごとばかりではないのはもうあたしだって知っている。
今の事務所が、異常なまでに潔癖でモデル想いに熱いだけなのも理解している。
でも、身体を売るというのは嫌悪感が消えない。
同じ事務所の同僚だとしても、出来れば近付きたくない相手ではあったはずだ
──それなのに、なぜ。
あの低く響く、妙に耳に残る声で無意識に頷いた自分を今からでも殴りたかった。
条件反射だった。軽率だった。けれど、それでも聞きたかったのだ。
映画のこと。
鈴のこと。
──そして、ついでに。
……本当に、ただの“ついで”として。
あの八代 透の話を、真野の口からどう語られるのか、気になってしまった。
明日香は唇を噛みながら、待機室の扉を見つめた。
思えば、真野とは同じ事務所に所属しながら、ほとんど言葉を交わしたことがなかった。
すれ違えばあたしだって軽く会釈はする。そんな話を聞いて、なお殴ってやろうとは思わなかった。
(鈴を馬鹿にしたという話を聞いた時は、カレンが抱き着いて止めなければ怒鳴り込んでいたけど)
だが、それ以上はない。あちらも、こちらも、互いに興味がないとでも言うように交わらずにいた。
なのに今、その“沈黙の壁”を自分から壊そうとしている。
……いや、もう壊してしまったのだ。待ち合わせ場所に着いた時点で、あたしは既に逃げ道を断っていた。
「ったく……なにやってんの、あたし……」
小さく吐き捨てた言葉は、自分自身に向けた怒りと照れ隠しだった。
「よォ、野良猫ちゃん」
扉を開けた瞬間、あの男はソファにだらしなく腰をかけ、ペットボトルの水を頭にのせていた。
「観て来たんだろ、“あの子”の主役っぷり」
明日香はドアを閉めながら、睨みつける。
初回上映から、もう一カ月も前の話なのに的確に嫌な所にぶつけてくる。
「……別に。あんたの顔が見たくなっただけ」
「そりゃ光栄。んで、どうだった? 白栞」
名を出された瞬間、肺の奥が詰まる。
「……透に主役を取られた時の俺の気持ち、今ならわかるんじゃない?」
その言葉は、ナイフだった。
突き刺すでも、切り裂くでもなく、
ただ無造作に置かれたような、鈍く重い刃物。
あたしは喉の奥で唸るように息を吐いた。
「……透は、透でしょ。別にあたしは……」
「違うよ、飛鳥。おまえも、“鈴に喰われた”んだよ」
カチン。
脳内で、何かが割れる音がした。
「……言ってくれるじゃない」
内心は、今にも噴き出しそうな感情の奔流に揺れていた。
──ああ、なんでこんな奴相手に。
心のどこかで自嘲していた。
鈴への想いは、軽々しく誰かに語れるものじゃない。
誰かが語ってよいものでもない。
鈴はただの商品なんかじゃないし、誰かが我が物顔で評価してもいい対象ではない。
ましてや、ただの仕事仲間という接点しかないこの男にぶつけるなど──愚かすぎる。
だけど。
今のあたしは、怒っていた。 悔しくて、惨めで、情けなくて。
そして何より、負けを認めることができない自分に、一番腹が立っていた。
その怒りが、言葉に形を変えただけだった。
唇が勝手に歪む。悔しさと怒り、屈辱、でもどこかで“図星”を突かれた認めたくない感覚。
「でも、あたしは──あんたらと違う」
真野が眉をひそめる。
明日香は一歩、前に出た。
「“鈴を喰われた”んじゃない。“鈴に憑かれた”んでもない。
あたしは、あの子のすべてを知ってる。そして、その上で超えるんだよ」
「へえ……」
「黙って見てるだけの奴らと違って、あたしは、ちゃんと“見た”」
「空っぽなんかじゃない。あの中に確かにあったんだ。
誰にも届かない叫びが……あたしはそれを、あたしだけが、見たんだから」
一気に吐き出したあと、肩で息をしていた。
自分でも驚くほど声が震えていた。
真野は長く黙った。
そして、僅かに目を細め、笑った。
「──へえ、それは興味深いな」
もうこいつに言う事なんてない。やっぱりあたしが馬鹿だった。
明日香がドアノブに手をかけたとき。背後から、低く、しかし確かに響く声が聞こえた。
「……俺は、透に主役を取られて、悔しかったよ」
その声は、これまでの挑発混じりの軽口とは違っていた。
どこか素直で、どこか痛々しく──言葉を選ぶような、静かな重みがあった。
「アイツが配役されたって聞いた時は、正直“ナメてんのか”って思った。
世間知らずの新人に、俺の役をやらせるなんてな」
ゆっくりと椅子から立ち上がり、真野は控室の蛍光灯の下で顔を上げた。
「でも、現場で見た時──驚いたんだ。演技がどうとかじゃない。“あれ”は、演技じゃなかった」
明日香は振り返らない。だが、手をドアにかけたまま、耳だけは確かにそちらを向いていた。
「……それに鈴ちゃん。あれは、あの子があの瞬間“生きていた”だけだった」
沈黙。
「……だからこそ、ムカついた。余計にな。
あの子が、自分を燃やして、ただの“モデル”の役者崩れだった筈の少女が──何歩も置いていった。追いつけないほど遠くへ」
溜めていた言葉が、堰を切ったように溢れる。
「ずっと思ってたよ。鈴は、役者じゃないって。
あんな声も出ない、表情も曖昧な奴、モデルでやってたほうがマシだって。
皆そう思ってた。俺も、そう思ってた。なのに──」
息を吐き、笑う。それは自嘲にも似ていた。
「……今は、ちょっとだけ、違う」
真野は自分の胸を、そっと一度だけ指先で叩いた。
「人が変わっていく姿って、見てる側に刺さるんだよ。
お前が言ってた、“空っぽなんかじゃない”って、あれ──俺も、現場で見た」
「正直、羨ましかった。……自分に嘘ついて、負け惜しみだけでプライド保ってた俺より、ずっと、潔かった」
あたしの背中が、わずかに震えた気がした。
「……だからよ。テメェが怒るのも、泣くのも、他人にぶつけるのも、勝手にしろ。でも、一つだけ言っておく」
「テメェには、テメェにしか出せない光がある」
その言葉に、ドアにかけられた明日香の手が止まった。
「“あの声”に喰われたなら、咬み返せ。誰かのためでも、あの子のためでもない。──自分のために」
沈黙が降りた。
あたしは何も言わず、ただドアを開け──けれど一歩、出る前に肩越しに一言だけ投げた。
「……ありがと。……でも次は、あたしが主役だ」
その声は、怒りでも対抗心でもなかった。
むしろ、燃え残った熾火のように静かで、けれど確かな熱を持っていた。
真野はそれに応えるように、小さく笑った。
「……上等だよ、“アスカちん”」
画面の中、特集の静止画がスライドショーで回り始めていた。
黒の背中開きドレスを纏い、裸足で鏡前に立つ“飛鳥 明日香”。
その横に、無彩色のコートを纏った“八代 透”。
──その一枚が、SNSを席巻していた。
《
(ハッシュタグ: #フィガロッテ特集 #黒ドレスの獣 #八代透)
@neo_mode_jin
飛鳥明日香の新しい写真、完全に芸術。
あの視線だけで物語があるって、どういうこと?鳥肌……
@lilyknows
わたし飛鳥ちゃんの肩甲骨に恋したかも。
性癖ゆがんだわ。
@vmk_rumor
鈴ちゃんは確かに神話的。でも飛鳥は現代の“信仰対象”って感じ。
あんな美しさ、同性でも無理。
@flamefox117
鈴ちゃんの透明感に対して、飛鳥は“血”を感じる。
生き物として惹かれる、圧倒的に。
@asuca_chilover
“アスカちん”って呼び方流行りそう。
野獣みたいな彼女が、たまに笑うの反則では?
@filmfetishist
あの無音の動画、2分間一言も喋ってないのに
飛鳥→透→鈴→透→飛鳥の視線だけで物語完結してるのすごすぎて泣いた。
@rosequartz__
マジで女でも惚れる。
飛鳥がいるから生きていける。#同担歓迎
@tane_r
#飛鳥明日香 #白栞
いちばん人間臭くて、いちばん美しい。
ドレスより、彼女の影に惹かれる。
観るに堪えなくて、スマホを伏せた。
自分の事など調べないに限る。
こうやって──消費されている。
あたしの痛みも、叫びも、ただの“良い素材”として拡散されていく。
わかってる。
それがこの仕事。魅せるって、そういうこと。
でも──「わかってたまるかよ」
心の奥で呟いたその言葉は、誰にも聞こえない。
だからあたしは、吐き捨てるように画面を開き──
@ask_askka 午後22:07
あたしは消費される気なんてないよ。
この目で、誰を喰らったか、ちゃんと残す。
覚えとけ。“獣”は、獲物の顔を忘れない。
#アスカちん #白栞 #フィガロッテ特集 #女神と野獣
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4141件の返信
リプライ欄抜粋(抜粋)
@burnt_milk_tea
言葉が刺さった……
あたしも“誰かの視線”に怯えてた。でも飛鳥ちゃんは違う。
本物の“生き物”だ……
@askk_luv_88
マジで飛鳥様しか勝たん。
黒ドレスで睨んでくるだけで息止まる。好きすぎて泣いた。
@angelcuts_glitter
獣って言葉がこんなに色っぽいとは思わなかった。
覚えとけ、の“け”で落ちた。
@kanamin_ai
すごいポエジーで好きだけど、17歳でこのセンス……?
スタッフが書いてないよね?(褒めてる)
@hoshifuru_kumo
たぶんこの人、自分のこと“商品”って自覚した上で、壊れない強さある。
でも、その裏で泣いてる気がして、こっちが泣けてくる。
@sugarblade27
わかる人にしか刺さらないと思う。
けど、そういう人に“だけ”刺さるのが、飛鳥ちゃんの凄さ。
@kuroha__112
逆にちょっと怖い……最近の飛鳥ちゃんの言葉、鋭すぎて。
もっと年相応の笑顔も見たい気がするのは贅沢?
@asuka_overdose
いいねの数で語らせて。
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