序章:その男、侍につき
“新エリー都”
謎の自然災害「ホロウ」に飲み込まれ、文明が崩壊したこの世界において、ホロウの調査や対処技術、エーテルの資源利用などを確立した事で、逆に大きく繁栄を遂げた為「奇跡の都市」
六分街、ヤヌス区の一画に位置する小さな下町へと続く高速に、一台のタクシーが走っていた。
「お客さん、珍しい格好だね。六分街に一体どんな用だい?」
タクシーの運転手が冗談を交えながら、後部座席に載ってる青年にミラー越しで会話する。
その青年は和服に身を包み、菅笠を深々と被っている。腰に鞘に入れた二本の刀、背中には弓を背負ったその姿に、街行く人は思わず振り向く。
窓からルミナスクエアの様子を眺めていた青年が運転手の声に気付き、「んー?」と声を上げる。
「別に…ただ気ままにぶらつくだけさ」
俺の名前は『
それは、『Ghost of Tsushima』。文永の役を舞台にしたこの作品は、一人の侍が侍としての責務に背き、
主人公の名前が『
しかし運命というものは残酷だ…
俺は雨の日の高校の帰り道、信号無視のトラックに轢かれ、あっけなく死んだ。
重くなった瞼が徐々に閉じていく中、俺は何故かガキの頃の夢を思い出した。
"誰かを笑顔に出来る人になりたい"
"誰かに必要とされる人でありたい"
"皆を守るヒーローになりたい"
「……結局…何にもなれなかったな…」
「……それが今じゃ、この有様か…」
「お客さん、どうかしたかい?随分考え事をしていたようだが…」
「あぁ、大丈夫。ちょっと昔のことをね……この辺でいいよ」
「あいよ」
だがどういう因果か、俺は次に目を覚ますと見知らぬ都市にいた。見たことのない建物に、犬や猫を擬人化したかのような人の姿を見て俺は、咄嗟にここがゲームの世界である事を理解した。
そして同時に一つの疑問が浮かび上がる。
『ここがゲームの世界なら、一体なんのゲームか?』……つってもまだどういうゲームの世界か理解出来てないけど。
恐らく俺が前世でやった事のないゲームなのだろう。『ホロウ』と呼ばれる災害やその中に蔓延る怪物『エーテリアス』。どれも聞いた事のないワードばかり。
トラックに轢かれて終わるはずだった俺の人生は、ゲームの世界で『第二の人生』として新たに始まったのだ。
六分街に着くと、ディニーの入った巾着袋を取り出し、運転手に渡す。頭に被った菅笠を下げながら、俺はタクシーから降りた。
「そういえば、まだ何者か答えてなかったね…」
「ん?」
俺はゆっくりと振り返り、運転手の目を見てこう言った。
「俺はただの侍さ。"ただの"、ね…」