不完全な転移   作:鳥屋敷

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ここまでの文章は夜思いついてメモったもの。読んでくれた人は進撃の巨人の世界に行けます。根拠はありません。
以前は「転移」という題名でしたが変更。1177年前は847年、つまりあの世界の現在です。
2024年11月22日 21:40

「一日」まであるこの日付はpixivで投稿した日時です


転移
1177年前の皆へ


 “それ”は突然現れた。大きな人間、巨大な人間、巨人、その言葉が1番馴染むもの。AI生成の人間は肌に生気がないがそれに近い質感。カエルのように耳まで開いた口。そこに並ぶ無数の歯。近くの家と比べると5メートルくらいのそれは貼り付けたような笑顔でこちらを見つめていた__

 

 ようやく定期テストが終わった。今回は美術を除く8教科もあったのだ。

 鷹野は疲れていた。最終日にあった数学の出来が悪かったが、理科には良い手応えがあった。大問3のあの比はどのようにして解けばよかったのか。昨日やろうとして辞めたプリントと同じ形だった。解いていればよかった。回らない頭で考えながら歩く。毎日歩く道は変わらないようだが田んぼの稲は成長していくらしい。毎日見ているのに急に成長したように感じる。緑の地面の動きで風が移動しているのがわかる。

 大問3の図形や自然の移ろいを考えるのは飽きやすい。しかし今は良い供給がある。進撃の巨人、数週間前からだ。

 めぼしいものがなかった時借りてみたゲームブックからだ。今回も好きになってのめり込み始める条件はわからないが、上手く穴にはまったのだろう。校舎や近くの謎の工場の煙突の高さを知るのが楽しい。家族に頼んで借りて貰った漫画は13巻まで読んだ。

 主人公グループに捕まった憲兵の人はどうなるのだろう。登場人物も覚えた。エレン・イェーガー、ミカサ・アッカーマン、アルミン・アルレルト、サシャ・ブラウス、服じゃないか、ベルトルト・フーバー、ライナー・ブラウン、リヴァイ兵長、ミケ・ザカリアス、ハンジ・ゾエ…好きな性格だ。コニーとアニの苗字が思い出せない。帰ったら14巻があるはずだ。登場人物紹介を見ればわかる。このT字路を曲がれば家に__

 

 大きな音が聞こえた。熱々のフライパンの上に水を落としてしまった時の音のようだ。鷹野は押し出されるように吹き飛んだ。目を擦る。煙の中に何かがいる。大きな人間、巨大な人間、巨人、その言葉が1番馴染むもの。AI生成の人間は肌に生気がないがそれに近い質感。カエルのように耳まで開いた口。そこに並ぶ無数の歯。貼り付けたような笑顔でこちらを見つめている。

 巨人だ。近くの家と比べると5メートルくらいだろうか。鷹野の頭の中は変に冷静だった。ひょろりと長い手が伸びてくる。掴まれる。骨が折れるほどじゃないが父親に上に乗られた時より重い。苦しい。45キロの体を胴体を掴んで支えるには納得の圧迫だ。いままでこんなに長い間足が宙に浮いていたことがあったろうか。頭が近付いてくる。下から見上げるより遥かに大きく見える。巨人が口を開く。頭が2つに取れそうなほど開かれた口と無数の歯と大量の唾液に本能が警鐘を鳴らしている。何より気持ち悪い。その中には入りたくない。しかし布を数枚巻いただけの人間は無力だ。口の中に放り込まれる。フライパンに放り込まれる魚が生きていたらこんな気分だろうか。いや、それより酷いだろう。

 巨人が口を閉じる。

 

 

 暗闇だ。

 何も見えない。見えないということは無限に空間が広がっていると言えるかもしれない。

 

 

 体が一瞬浮いたのを感じた。そして衝撃。光が一筋さしている。これ以上この生温かくて酷い空間にはいたくない、家に帰らなくては。鷹野は力が入らない手足を必死に動かして這い出た。

しかし、そこは鷹野がよく知るT字路ではなかった。熱気、指示する声、走る音、ねぇちょっと!まだ殺さないでって言ったじゃん!、金属がぶつかり合う音、また捕獲しなきゃいけないじゃん!、蒸気、砂埃、なんだあれ、近付いてくる足音。

 

「君は誰?なんでここにいるの?」

 

 顔を上げると顔が合った。今度は巨人ではない。ゴーグル越しに目が合う。わからない、と言う。鷹野の頭の中は再びぼんやりとしていた。質問をしてきた人間の後ろからもう1人走ってくる。

 

「分隊長!危ないです。下がってください!」

 

 割り込んできたその人は鷹野を見ると驚愕した顔をする。見つめていると、彼女は腰の金属の箱にさしていたものを抜く。金属音。銃の持ち手に巨大なカッターの刃をつけたようなものの先が目の前にある。不審に思った他の人間も近付いてくる。誰ですかコイツ!いや俺もわからない、などと聞こえてくる。全員、白いズボンと白やベージュのシャツにザラザラとした素材で丈の短い茶色のジャケットと膝下まであるブーツ、ジャケットの隙間からは身体中に巻きついているであろうベルトが見えている。極め付けは腰の両側にぶらぶらしている大きな長い箱だ。歩くたびにガチャガチャと耳障りな音を立てている。目の端では見覚えのあるポーズ。右手を握って胸にあてる。「心臓を捧げよ」。まちがいない、と鷹野は思う。

 

「これは…進撃の巨人の世界だ」

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