不完全な転移   作:鳥屋敷

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キャラがおかしかったりしないだろうか。ハンジがおとなしすぎる気がするが真面目モード気味ということで。
2024年11月29日 06:34

最近は色々と忙しくてこれを書いている時間がない。あってもインスタグラムを眺めてしまう…。
2024年12月8日 21:13

元々は2話に分けていた「団長1」「団長2」を統合しました。


団長

「おい、変な動きをするな!」

 

 顔を上げると雰囲気の違う男がいた。見覚えのない顔だ。上官だろうか。騒ぎを聞きつけてきたのだろう。他の兵士より服が若干古びていて、汚れや皺が目立つ。腰の箱、あの大きなカッターの刃がいくつか入るブレード入れ。それも同じく年季が入っている。上官の後ろでは兵士が怪訝そうな顔でこちらを見ている。ゴーグルの兵士、ハンジ・ゾエ、彼女だけは目を輝かしている。

 上官が口を開く。

 

「貴様はなぜ巨人の口の中から出てきた?」

 

 鷹野は正直に答える。

 

「いきなり目の前に巨人が現れて喰われました。這い出てみたらここにいたんです」

「…詳しく聞かせて貰おうか。立て」

 

 素直に従う。巨人の唾液を滴らせながら立ち上がると周りの兵士が後ずさる。

 

「周りの兵士のためにも一応拘束させてもらう」

 

 これも大人しく従う。変に暴れても意味がないし余計怪しまれてしまう。少し躊躇うように近づいてきた兵士が鷹野を後ろ手に縛る。もし俺が巨人になれたとしたらこんなものは意味がないのに、と鷹野は思う。改めて周囲を見渡してみると兵士や馬の向こうに針葉樹が幾重にも重なっている。山の中なのだろうか、ここ以外の人の気配がない。上官と鷹野を拘束した兵士に挟まれて何処かへ向かう。後ろからハンジもついてくる。鷹野に話しかけたいのだろう、周りをうろうろしているが、上官に鋭い目で睨まれてから少し大人しくなった。ハンジの方が階級が上のはずだが。

 石造りの建物の中に入る。ところどころ開いている窓から光が差し込んでいるが、かなり暗い。3人分の硬い足音が響く。鷹野はスニーカーを履いていたので柔らかい足音だった。たまにすれ違う兵士も外の兵士と同様拘束された鷹野に驚いていたが、上官に気づいたのか慌てて敬礼した。

 建物の地下に降りていくと松明の光に照らされた少し高級感のあるドアがあった。

 

「団長、失礼します。侵入者を連れてきました」

 

 上官、鷹野、ハンジの順に部屋に入る。兵士は敬礼をして去っていった。彼女は戻ったら他の兵士から質問攻めに遭うのだろうか。鷹野は肩を強く押されて跪かされる。

 部屋の中は整っていた。中心に表面が磨き上げられた木製の机と椅子、左右には本棚がある。机の上には蝋燭が灯された燭台、何枚かの書類とホテルのフロントにある様なペンが一本。本棚に並んでいるのは本ではなく書類がまとめられている。暗がりの中で紙がはみ出ているのが見える。そして椅子に座っているのは、体格が良く、恐らく背も高く、金髪の髪を七三にわけて横髪を刈り上げたツーブロック、そして胸のマーク、白い羽と紺色の羽が重なる、自由の翼。

 

「…エルヴィン・スミス」

 

 思わず呟くとハンジが驚いた顔をする。エルヴィンは眉ひとつ動かさない。

 

「まずは名前を教えてもらおうか」

 

 とエルヴィンが言う。どうしよう、普通に鷹野の本名を名乗っても良い。しかしせっかくこの世界に来たんだ。夢にしろ好きな名前をつければいいじゃないか。どうしよう。今名乗ったらこれからずっとその様に呼ばれるだろう。おかしな名前にしたら呼ばれた時に反応できずに怪しまれるかもしれない。自分の名前とは昔から染み付いているもので、集中していても名前には反応するものだ。そうだ、現実での名前、インスタグラムでの名前、父が俺の好きなものを組み合わせてつくってくれた名前。

 

「トリンク・タカノです」

 

 これなら学校で呼ばれ慣れている。

 

「そうか。巨人に喰われたらしいな。どこに住んでいたんだ?」

 

「俺は日本というところに住んでいて、学校から帰る途中だったんです。だからこんな変な服着ているんですよ。そしてここは日本では進撃の巨人という漫画なんです。俺は13巻までしか読んでないですが」

 なんて言えるわけがない。さらに怪しまれるか、独房送りか。どう答えればいいのだろう。なんと言えばいい?巨人の口から出てきた変な服を着た人。

 

「どこに住んでいたかと聞いている」

 

 荒縄が腕に喰い込んで痛む。考えている時間はない。

 

「俺…自分はウォール・ローゼの開拓地に住んでいます。今日も畑から家に帰る途中でした」

 

 これは嘘だ。どこの開拓地かなどと聞かれたら答えられない。しかし今は何かを話すしかない。煙と共に現れた巨人、5メートル級、口の中にほおりこまれた後巨人からはい出てみたらここだったということ。

 

「ふむ…」

 

 あまり納得できていない様子だ。ハンジも同様だ。訴えるような視線をエルヴィンに送っている。ハンジは生き急ぎだといわれる巨人狂いだが、とても賢い。実際原作本編の主要人物な上、分隊長なのだ。

 

「わかった。ミル、少し外してくれないか」

 

 ハンジの考えていることが分かったのかエルヴィンはいう。ミルとは上官の名前のようだ。上官といっても班長レベルなのだろうか。自分が連れてきたのだからここにいる権利がある、とでも言いたげな顔をしているが、

 

「私のことなら心配しなくてもいい。ただ椅子に座っているだけの憲兵とは違う」

 

 そう言われてやはり不服そうではあるが敬礼をして去っていった。

 

「では、もう少し聞かせてもらおうか。本当の話を」

「…なんのことでしょう?」

 

 エルヴィンはまっすぐこちらを見つめるだけで何も言わない。さっきからずっと横にいたハンジは耐えきれなくなって口を開いた。

 

「君はさっきから筋の通らない話をしているよね。私たちの実験でローゼの北方にに巨人が出現することはあり得ない。何か隠し事をしているだろう?こちらもわからないことだらけなんだ。ここは私たち以外に聞いている者はいない。話してくれないか?」

 

 後半は少し興奮気味に捲し立てた。彼らは信用できるだろう。13巻まで読んだところでも味方で間違いないだろうし、ネットでネタバレしてしまった分でも問題なさそうだ。エレンへの扱いも考えると、ここでおかしな話をしてもすぐ牢獄送りになったりなどとはならないはずだ。話してもいいだろう。

 

「はい。確かに俺は嘘をついていました。開拓地にはいませんでしたし、ウォールローゼ内にだっていませんでした。俺は、壁外に住んでいました」

 

 壁外、と言った途端エルヴィンは緊張した表情になり、ハンジは少し嬉しそうな顔をした。

 

「壁外、と言ってもあなた方が知るようなところではありません。もっと遠く、物資を大量に持って行っても辿り着けないような遠さです」

 

 そもそも地球なのだろうか。異世界とはどこにあるのか。

 

「俺はここを知っています。あなた方の名前、ハンジ・ゾエ、エルヴィン・スミス、その他104期訓練兵の名前も知っています。それ以外は本当です。巨人に喰われかけたのも」

「ふむ」

 

 心なしか少し前より納得した顔をしている。

 

「なぜ、兵士達の名前を知っている?」

「えっと…歴史の本で、一部の名前だけなら…。でも、それ以上は、知りません」

 

これで処刑されたりはしなくなっただろうか。

 

「君の話はわかった。にわかには信じ難いが…転送場所がわからない分信じるしかないが、君の扱いは…」

 

 とエルヴィンが言い小さくどうしたものか、とも呟いた。沈黙が訪れる。横のハンジも黙っている。それもそうだ。目の前にいるのは巨人の口の中から出てきた壁外からきたと話すおかしな奴なのだ。そういえば今は何年のいつごろなのだろうか。さっき見たところだとここはトロスト区戦の後にエレンとリヴァイ班の居た旧調査兵本部。エレンの巨人化の実験をした古井戸があったから間違いない。作中ではわからないがどこにあったのだろうか。オルオ辺りが「調査兵団には無用な壁から離れた建物」と言っていたからローゼ内の何処かだろうか。

 

 ようやくエルヴィンが口を開く。

 

「壁外から人間が来たという前例は公には一度もないが一度だけ、ウォールマリア外で人間を保護したという話を聞いたことがある。彼は酒を飲んで記憶がなかったからと新しい名前で生きているらしいが…鷹野、君はどうしたい?」

「そもそも君は何歳なの?12歳以上に見えるけど、それなら今丁度訓練兵を募集してるよ。ここからなら南方訓練兵団が近いかな」

 

 とハンジも言う。訓練兵団、兵士になるならほぼ全員が通る道。ここではいと言えば厳しい訓練が待っていてその後の人生も決定される。逆にいいえと言えば…どうなるのだろうか。トリンク・タカノとしてどこかの開拓地に送られて労働させられるのだろうか。

 

「ところで、今は何年でしょうか」

 

 先程から気になっていたことだ。

 

「今は847年だから…104期だね。ああ、君が名前を知っていると言っていたから丁度いいんじゃない?」

 

 104期。1巻を読んだ時から、いや、ゲームブックで進撃の巨人が好きになった時から聞き慣れた数字だ。エレン達がそれで、主人公グループの人たちが今まさに訓練兵団に入団しようとしているのだ。

 鷹野の意思は決まっていた。

 

「訓練兵団に入団します」

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