不完全な転移   作:鳥屋敷

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諫山先生のように伏線とかはあたりまえだが張れない。周りや人を見た時の情報も特に意味はなかったりする。実際は鷹野の一人称視点なのであって、全てを知ることはできないからだ。見張りの目の下のクマだって何故できているのかはわからない。ただ彼が激務をこなしているだけなのだろう。
2024年12月23日 18:03

途中見ている夢は私が本当に見たものです。


牢内

「…疲れた」

 

 鷹野は天井を見ながら呟いた。鷹野がいるのは旧調査兵団本部の地下牢。原作にも何度か出てきた牢と似たような造りをしている。前方一面に格子がはめられていて、残りの壁は石が剥き出しになっている。牢の中にはひんやりとした雰囲気が漂うベッドと小さめの机が置いてある。牢の外には不安げな顔の見張りが1人いる。ベッドに座り直し、自分の手を見つめる。白のゆったりとした服に黒のズボン。ズボンは若干サイズが大きくベルトで無理やり留めて裾は曲げてある。袖口から覗く細い腕には赤く拘束された後が残っていた。服はハンジが持ってきたもので、長い間しまいこまれていたのかカビ臭い。

 訓練兵団に入団することを決めた後、上に伝えるためと鷹野の素性も作られた。

 

 

トリンク・タカノ

834年12月15日 生まれ 847年現在12歳

トロスト区内に住んでいたが845年の超大型巨人の襲来により、孤児になる。その後開拓地にいたが12歳になったため訓練兵団に入団した。

 

 

 ざっとこんな感じだ。年齢を詐称するのはいかがなものかと鷹野は思ったが、原作中で身長がわかるキャラクターは訓練兵団入団時に既にかなり身長が高かった。鷹野の身長はこれ以上大きくは伸びないだろうが、兵団卒業時にクリスタやアニという今の鷹野より低い人もいるし、鷹野より数センチ背の高い人類最強だっている。身長や体格に違和感はないだろう。

 それにしてもここは現実なのだろうか。巨人に喰われたのだから、今までいた世界に巨人が現れたのだから、現実世界なのだろう。つまり、死んだら、終わり。天国があるかはわからないが、元の世界の病院か何かで目覚めるということは起きないだろう。13巻まで読んだから知っている。訓練兵団を卒業後、駐屯兵団に入ろうが巨人達はやってくる。内地も巻き込む長い戦いが始まるのだろう。逃げることはできない。でも幸い、13巻までの知識はある。

 

「あとは、技術があれば生き残れるはず」

 

 技術なら訓練兵団だ。見張りがいきなり声を発した鷹野に驚いてこちらをみた。目の下にクマができている。かなり憔悴しきった様子だ。もう何時間経ったのだろうか。ここに来た時はまだ明るかった。前の世界では下校中だったからこちらも同様と考えたらもう外は暗くなっていることだろう。父さんと母さんはいまごろ血眼になって俺を探しているのだろうか。それとも家の近くのT字路で倒れているのを発見されて、今頃病院に寝ているだろうか。あちらで異世界転生ものを漁る時に毎回思うが、元の世界じゃ騒ぎになっているのか?それとも世界の時間が止まったり消滅したりしてるのか?いくら考えても今はどうしようもない。

 疲れた。

 家に帰りたい。物理的にじゃなく家という安心できる場所へ。

 あっちじゃ勉強勉強勉強受験受験将来将来とうんざりしていた。大人になったら定年なんてなくて死ぬまで働いて国に納税するだけの人生だ。それなら国に命を捧げるのは同じだが途中で終わらせられる可能性がある進撃の巨人の世界に行きたい。願わくば4メートル級に骨付き肉みたいに乾いた音を立ててしゃぶられるより15メートル級に踊り食いされたい。比較的痛くなさそうだし…と思っていたのにここにくるとまだ訓練兵にさえなっていないのにこんなにも家が、あちらの死ねない人生の方が恋しい。毎日勉強や仕事に勤しみ、納税しつつ進撃の巨人の二次創作でも書いていたかったなぁ……

 

鷹野はスタート場所となっている桟橋の根本に立っていた。ライバルである他の訓練兵仲間もいる。学校の体育大会での徒競走のスタートで使うような銃の音で鷹野は走り出す。ちぎれるように手足を動かし1番に桟橋の先数m手前まで走ると背より少し高い柵があった。一度ここで柵が開くのを待たなくてはいけない。後から来た仲間数人も同じように柵に寄りかかったり座ったりして待っている。

その他大勢もやって来た。しかし、同じように待つのかと思いきや柵を飛び越えていく。慌てて柵を開けて進む。ストップウォッチを持っている教官が何人かいて、その人数分の列ができている。鷹野の番になり、ハーネスを渡される。アスレチックか建築現場の命綱のような頑丈な物だ。装着時間を計測される。隣のアルミンはもう装着し終わっている。結局装着に40秒以上かかってしまった。訓練で20秒で装着できるように練習しろと言われていた。訓練時は30秒台だったのに焦って上手くできなかった。スニーカーの踵も踏んでいる。計測していた教官にもに愛想を尽かされもう飛び込めと言われてしまった。「うえ」という合図だ。数メートル下の海面にアルミンと共に飛び込む。そこから数10メートル泳ぎ、海上に作られたヤグラに上がらなければならない。数十メートルの高さがある。工事用の鉄鋼で作られていて、そこにまた教官がいる。ハーネスに立体機動装置をつけて、数百kmの海の旅へ出発する。海上だ。アンカーを刺せる立体物がないじゃないか。それに数百kmだなんて体力が持つのか?

 

「おはよう、…トリンク…だっけ。寝れたかい?」

 

 目を開けると、薄暗闇の中に石造りの天井が見える。視線を移動させるとハンジと別の見張りがいる。そうだ、ここは海上でも自分の部屋のシステムベッドの上でもない。

 

「話が通ったよ。もう募集期間が過ぎてたから少し手間取ったけどね。ここから訓練所までは少し遠いからそろそろ出発するよー」

 

 鷹野は体を起こす。疲れはあまり取れていないらしく背中が痛い。自分は生き残れるだろうか。

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