諫山先生の一問一答はとてもありがたい…!原作ではわからない文化とかがわかるから。純一というのは一問一答にあったもので、5巻の偽予告にあったハンジを助けた巨人の名前。調べると出てくるよ。
純一を殺し、鷹野を憲兵に突き出そうと言ったのは2話で鷹野を拘束したミル。キッツ的な雰囲気の分隊長。
2024年12月30日 12:45
自作フォント
ヨゲササヲウゾンシで上下反転の進撃文字になります。
https://syosetu.org/font_maker/?mode=font_detail&font_id=634
旧調査兵団本部近くの村を抜けたらしい。鷹野は馬車に揺られている。他にも何人かの民間人が乗っている。寝ている者、暗闇を見ている物者、自分の持ち物を探る者、誰も一言も発さず、馬の蹄の音と馬車の車輪の音だけがずっと響いている。ひんやりとした風も心地よい。することもないのでもう一度、先程から何度もやっているが、自分の荷物を確認する。真夜中、月明かりと申し訳程度の火の灯りの中で。
着ているものは牢内でも着ていたカビ臭い服、かなり前からずっと仕舞われていたであろう茶色の靴。流石に風が寒かろうとこれまたハンジがくれた薄いオレンジ色のカーディガンも羽織っている。
ソニーとビーンの実験を漫画で見た時から思っていたが、分隊長とはそんなに自由なのだろうか。ハンジだけ分隊長兼巨人研究という特殊な地位を得ているのだろうか。それともただ仕事を副分隊長のモブリットや他の分隊長のミケ達に押し付けて生き急ぐ奇行種なのだろうか。荷物として布に包んで持っているものは、今着ているものと同じシャツとズボン、下着の替えぐらいだ。
あとは、これだ。
「所持品全部取り上げてしまって悪かったね。あと『お守り』?大事なものだったのだろう。詳しく分析したいから返すことはできないから、代わりといっちゃなんだけど、これ」
そう言うハンジからもらった、調査兵団のエンブレムが刺繍された厚めの布にさらに布を重ね分厚くしたワッペン。実際ジャケットの胸ポケットに付いている物が取れたり破れたり取れない汚れがついたりした時用の替えらしい。裏にはうまくインクがのらなかったのか滲んだり掠れたりした上下反転の進撃文字で「りもまお」と書かれている。お守り、というのは鷹野が肌身離さず持っていた学校の生徒手帳だ。校則には「生徒としての身分を示すため常に持ち歩くこと」としか書かれていないことをいいことに母に貰った調査兵団マークのステッカーを挟んであったのだ。
身体検査を受けた時、鷹野のシャツの胸ポケットに入っていたのだが、見たことのない文字が書かれているのと、調査兵団のマークがあることに非常に興味を示していた。もちろんハンジのことだ。その時は「お守りです」と説明したのだ。その後は鷹野がこちらに来た時にもやっていた実験の後始末や報告で忙しかったらしい。だから今も。
「ねぇトリンク、もう村も抜けたことだしさ、色々聞きたいことがあるんだ。いいかなぁ?」
臨時の保護者として鷹野を南方訓練兵団兵士養成所まで送り届ける、という名目で付いてきたのだ。団長に会った時や村を出る時での真面目な顔はどこへやら、漫画でも見た実験中の“たぎる”表情をしている。
「まずは君がもっていた『お守り』だよ。あれに書いてある文字はどういうものなの?」
目を輝かしている。実際目がひとりでにキラキラ輝くことなどありえないが生気と好奇心に溢れていて本当に輝いて見えた。
「あれは学校での規則を記した手帳で、日本語という言葉で書かれています。平仮名と片仮名と漢字が組み合わされて使われています。日本というのは東洋にある海に囲まれたところで…」
「海!?あの噂でだけ聞く塩に溢れた水のことかいっ?」
「はい。自分も見たことがあります。あと、ここで話されている言葉も日本語です。通じますから」
ハンジが言葉を挟もうとしたが長くなるのでそのまま続ける。
「あと文字です。ここで使われている文字ですが、これは上下反転させると少し形は違えど日本語の片仮名になります」
『リモマオ』の文字を見せる。
「これを反転させると…これが片仮名の『オマモリ』です」
ハンジはロックバンドのような勢いで首を振り、どこかの漫画に出てくる人気漫画家岸辺のスピードで手帳にメモをしている。もちろん上下反転で「んてんはうょしんぶ → なかたかごんほに」などと。
「その手帳の裏の調査兵団のマークのことですが、日本にもそのマークが存在していて…いえ、壁外調査をするような組織は存在しないのですが…そのマークを手帳に貼ってお守りという自分の身を守ってくれる…いえこれがあれば大丈夫という気持ちの問題です、お守りとして持ち歩いてました」
鷹野が話し終わり十数秒後、やっと書き終わったハンジが口を開く。
「よしありがとう。あとその平仮名とかの読み方を教えてほしい」
手帳を差し出されたので「あア いイ」という感じで50音順に書いた。暗くてよく見えないし、そもそも馬車はよく揺れるし、とくに大きな石があったりすると大きく揺れる。筆記具は木製の万年筆だった。この揺れる中でよくあのスピードでかけたものだ。修正できないので慎重に書いていく。
「あとこっちの漢字っていうのも教えてほしいな。君が訓練兵団に入ってしまったらなかなかタイミングが無くなるからね。そしてそれを書きながら答えてほしいのも…」
2時間は経ったと思った。ハンジに聞かれて話したことは生徒手帳の内容について、日本での生活や政治形態について、こちらの世界の中で知っていることなど。あくまでも海を越えた遠い場所ということで話している。
「絶対聞きたかったのはこれくらいかな。逆に質問しておきたいことはある?訓練兵団に入団する時に学力検査があるって聞くけど大丈夫?」
そんなのは漫画で出てこなかった。確かいきなりアルミンが教官に怒鳴られていたはず。
「…すいません、知らなかったです。具体的にどんな内容のものが出るんですか?」
「えっとね、確か私達の時には歴史や地理についての問題と…数学だったかな。それほど難しくはないはずだよ」
「あぁ、数学は中学生レベルなら…あの、三平方の定理とかまでなら大丈夫だと思います。しかしここの王の名前とか地理まではちょっと…」
「三平方?まあ問題ないと思うよ。歴史と地理ね、どこまで知ってるかはわからないけど…簡単に話しておこう。今の王フリッツは、いやそれよりもまずは人類がこの壁の中に住み始めたあたりはわかるかい?」
「10何年前…今が847年なので740年あたりに巨人が出現して、人類の一部がここに逃げ込んだんですよね。元々壁が用意されていたとか。あまり情報は残ってませんよね」
「そうだね。じゃあ今の……」
そこから再び2時間ほど経った。ハンジは循環呼吸でもしているかと思うくらい休みなく喋り続けた。1時間半“簡単に”話した後、漫画を読んでいてずっと気になっていた質問をした。
まず『訓練兵団に入る前まで学校に通ったりするのか』というもの。これは「行政区の子は大抵行ってるけど村とかにはあまりないから親に教えてもらったりしてるよ。識字率はまぁまぁ高いかな」と言っていた。『ハンジさんは分隊長で、団長はエルヴィンだが兵士長とはどのような立場なのか』、これは『リヴァイ兵士長は階級の序列に属さない例外的な役割』。
聞かずともわかったこともある。彼らはあまり体を洗わないらしい。体臭とかだ。しかし、今までも1週間に1、2度しか石鹸で洗わなかった鷹野にしてはありがたいことである。
それにジャケットやマントについているマーク、漫画やアニメじゃよくわからなかったが、これは刺繍だった。かなり労力がかかりそうだ。刺繍専門の仕事でもあるのだろうか。
「そういえば……なぜ壁外からきたという自分を信じてくれたんですか」
「今回は初めての試みでね、技巧科と調査兵団共同で開発した装置の実験をしていたんだ。君が出てきた巨人、あの子の名前は純一っていうんだけどね、彼を捕獲したのは実験責任者の私なんだけど、その時はとても面白いことがあってね!壁外調査中に_」
「すいません、その話はまたいつか。とりあえず今は手短にお願いできますか…」
「ああ、ごめんね。とにかくこれは巨人を遥か彼方に送ってしまおうぜって実験だったんだ。でもいざやってみたら座標入力を間違えて、別の場所で待機しているリヴァイ班の所に送れなかったらしくて…異常を示す信煙弾が見えたから慌てて戻したら団員が純一を殺しちゃって、それで、君が出てきたんだ。巨人を転送した場所は絶対壁内じゃない。それに私や団長、リヴァイを知っているのは壁内にもそれなりの数がいるけど、一部の駐屯兵や今期訓練兵の名前まで知っている一般人はいない。だから信じる要素は充分にある。憲兵に突き出そうと言った奴もいたけどねー」
「ありがとう…ございます。信じてくれて」
「あ!そうだ、まだ聞きそびれてたことがあったよ!まずさっき君が言っていた_」
50メートルの壁が見えてきた。
鷹野の学校の近くには約60メートルの煙突があった。大体壁から超大型巨人が顔を出した時くらいの高さだが、少し遠い位置だからか対して高く感じなかった。しかし今、前の前にある壁は大きくそびえたっている。近くにある立体物が高くないからだろうか。絶対倒れないし壊れない安心感と共に恐怖も感じる。
「本当に名前以外知らないの?」
「え?」
しばらく無言だったハンジが急に話しかけてきた。鷹野はその眼差しから目を逸らそうとしたが、それをさせない力がある。
「いや…」
「言いたくなかったらそれでいい。でも教えて欲しい。この壁の中は、壁の外は、どうなっているの?」
「質問が抽象的すぎてちょっと……えっと…予想ですが、確か…しばらく、4年、くらいは多分大丈夫です」
「大丈夫。」
「…はい」
「……また会って話そうか!今回はもう時間なさそうだしね」
南方訓練兵団はトロスト区郊外にある。馬車は一度トロスト区の門付近で止まった。穏やかな風が吹いている。白み始めた空の下。薪などを背負って歩く人もいる。ハンジを含めた全員が降り、替わりに乗ってきたのは幼さの残る鷹野と同じか少し背の低い人達。少ない荷物を抱きしめている。彼らも今年訓練兵団に入団するようだ。ここらに来るのは初めてなのかキョロキョロする人、「僕は安全な生産者として行きたかったのに」などと呟く人、隣の人にしつこく話しかける人、前から友達だったのか親しげな2人など。まだ知っている人はいない。
馬車が再び動き出した。ずっと握りしめていた『リモマオ』を見つめる。不安と期待が入り混じる。太陽が西から顔を出しているのが、今までいた場所ではないことを強く実感させた。