鳥屋敷の一次創作   作:鳥屋敷

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何とは書かないが冊子に投稿したもの。
上田岳弘の戯曲「2020」の雰囲気を思い出しながら書きました。
2025年4月27日 16:33


終末のラジオ

ザーーーーーーーー

ザーーーーーーーブツッブツザーーーーーーー

ザッザザッ   ブザッ

えーっと、これでできてるのかな、っと。うん、ランプついてるしいけてんじゃね。

あー、あー、聞こえますか。って言っても誰も聞いてないか、笑笑草草大草原のズンドコ節ってな。ハハ。何アホなこと言ってんねん。

まあでもここの配信は録音されるみたいだし、記録用とか後から来た人のために、とかにでもね。運が良ければ誰か聞いてるかもしれないし。…まあ気を紛らわせるためだろうね。「あの日」からちょうど一年でしょ、数え間違えてなきゃ。一年って365日だっけ?360?こっちは角度か…。うるう年っていつだっけね。まあ、365日なら今日で一年。

今、僕は街にあるラジオの放送曲から電波を飛ばしています。誰か聞いている人がいたとすれば、なんで場所を言わないのか不思議に思うでしょう。わかりますよ。このご時世、会いたくてもなかなか人間には会えません。せっかく誰かがこうやって存在を主張しているのだから、場所を言えよ、会いに行ってやんよ、と思うかもしれません。しかしこちらが会いたいと思ってるとは限りませんよ。僕はあんまり人に会いたくないので。でも誰かに聞いて欲しいとは思う。だから勝手に不定期に垂れ流すからね。よろしくね。

さて、ラジオなんだからラジオらしいことしようかな。

うーん…これ、どこをどうすればいいんだ?まあいっか。

ちゃっちゃちゃらーずずんずんバンバンパッパパラッパプッププクーバン!ターカーノォーレイディオードコドコドコズンヅンさあー始まりました。鷹野レイディオの時間ですー。

こんな感じかな?ラジオなんて聞いてなかったからなー、アニメの中で流れてたイメージなんだけど…なんたらの変な冒険みたいなねーアニメの中でね、こんな感じだったんだよね。もっと爽やかな曲だったな。こんな口で言ったサンバみたいなのじゃない。サンバって言えば、リオのカーニバルだよね、みんなは見たことある?僕はないんだよなー。あそこって人が多すぎてスリや強盗が当たり前で圧死する人もいるんだっけね。韓国のどっか…梨泰院クラスの舞台になった坂での事故みたいにね。不謹慎だな、昔だったら即放送中止で降板になるもんなのかなー…でもラジオってそういうのくらい許されるコアな放送なイメージなんだよね、特に夜とか。今は昼だけどね。夜は暗くて行動できたもんじゃない。拠点は違うところにあるからそろそろ帰らないといけないし。

早口で巻くしたててごめんね。久しぶりに楽しかったよ。じゃあまた。

えーっと、、バイバーイ。

やあ、どうもどんものモンドセレクション!鷹野だよ。

だいぶ時間が空いちゃってごめんね。距離的にも遠いし、何階だ?ここ。エレベーターなんてとっくの昔に止まってるから、階段で登るのしんどいんだよね。

ラジオの放送するところのボタンやらなんやらいっぱいある板わかる?それがもう複雑で理解するのに何時間もかけたってのもある。そもそもこう言うのってスタッフが何人も並んで操作するでしょ、それを一人でやってるからね、すごいでしょ!褒めて欲しいな!よぉーしよしえらい子天才鷹野ちゃん!

今日は音楽を流してみようと思います!ラジオといえばこうだよね。ここね、CDで曲がかけれるらしいんだ。うまくいかなかったらごめんね。それにしても……古いなぁ。CDなんて何年ぶりだろう。小さい時以来かな?英語のリスニングCDだったけど。でもねー、商店街で聞いた曲が忘れられないんだ。なんて名前だったんだろう。わかんないな。雰囲気だけは覚えてるんだけど、歌えるほどじゃないから悪いけど君たちに曲名を教えてもらうことはできない。残念だね。

でもね、CDを拾ったんだ。このCD、ジャケットの紙がなくなってたんだけど、他のCDよりは状態が良いからかけられんじゃないかな。再生してみるね。聴けるといいんだけど。

よっ、と。  オーケー、ポチッとな。

 

 

 

うーん、やっぱり雑音混じりだったね。君たちも聞こえた?もしかしたら配線が切れてたかも。それなら聞こえない。今しゃべってるこの音声の方もブッチブチだったのをなんとか直して放送してるからね。

でも、雑音の中に遠くだけど聞こえたね。女性の声だった。人の声を聞いたのはいつぶりだろう。人間のざわめきって貴重なものだったんだな。昔は人の声、特に甲高い女性の声は少し聞くだけで頭痛がしたもんだけど。

もっと早くこうなってればよかったのにね。そしたら自堕落怠惰な暮らしを送ることもなかった。

それはそうと、ここに引っ越そうかと考えているんだ。次の放送まではまた時間が空くだろうけど、引っ越したら毎日放送しようかな!

時間が過ぎるのは早いね、今日はここで寝ようかな。寝落ち配信ってのもやってみる?いや、僕は何時間も話すほど饒舌じゃないし、そういうのはなんか嫌だからやめとく。あれは自分を捨てたブイチューバーがやる仕事だ。ASMRとか言って耳型のマイクをほじくるんだろ。息とか吹きかけちゃってさ、「愛してる、好き、しゅき」だなんて呟いちゃってさ。それにみんな群がってさ。みんなが自分だけにかけられた言葉だと思ってさ。それを同時に何万人もの人が聞いてニヤけてることを忘れてるんだ。変なの。僕はそんな光景見たくないね。集団で、肉が嫌な音を立てて混ざり合って、暑苦しくて、腐って、不快だ。それに人気だから好きになったんだろ。人気じゃなかったら見ようともしないくせに。

あは、今の自分が言えることじゃないね。

じゃあ、またねー!

ぶっつけ本番!タカノレイディオ、今日のお相手は、みんな大好き鷹野!

僕は今日、この放送室に引っ越しました!朝日が見えたから前の家を出たのが6時?くらい?時計はほぼ全部ぶっ壊れてるか狂ってるからもう時間なんてわかんないよね。寒くなってきたから日が上るのも遅くなってるはずだね。家具は全て置いてきてしまった。アンティークのタンスは色と精緻な彫刻が見事で、使いやすくて気に入ってたから少し残念だな。勝手に住んでた他人の家でも、いい家だった。まあでもここまで遠かったから引っ越して正解だったと思う。ここに住めば毎日発信できるからね!…もう移動することもないだろうし。

……ちょっと暗い気分になっちゃったね!えーっと、、ここからの景色は最高なんだ!高いところにあるから広く遠く世界が広がっているのが見える。灰色の暗く落ち込んだ正気のないビルから鮮やかな緑色の植物が生えて建物を覆ってる。今は太陽も高く昇ってるからとても明るくて眩しくて、ビルに窓に光が反射してキラキラ光ってる。美しい緑の海から生命を感じるよ!よくある廃墟となった都市みたいだ。みたいというか、その通りだね!こんな小さな丸い石の塊に人類だけでも80億も無駄に増えまくって、考えるだけで鳥肌がたったもんだけど、今はだーれもいない。最高だ。人間も、その他哺乳類も、脊椎動物も、無脊椎動物も、ほとんどの動物は消え去ってしまっていない。この現象が発覚した時、まだ全部健在だった時、学者がなんか言ってたよね。人間なら、人間じゃなくても言葉がわかれば誰もが覚えているだろう。あのボサボサ髪で太縁の四角いフレームの眼鏡をした学者。あいつは確か、この問題を放っておけばいずれ大変なことになる!植物と、植物に都合のいい生物を残して全ての種が絶滅する!って言ってたよね。この問題は地球温暖化とかそんな類だったハズ。僕は植物にとって都合のいい生き物だった?このおちぶれた秀才君が?そんなはずは。ただ運が良かっただけだ。

でもさ、孤独だよね。昔もそうだったし、昔よりはマシだけど。僕を妬む人も、羨む人も、堕とそうとする人も、堕ちた僕を笑う人もいないけど、褒めてくれる人も、尊敬してくれる人も、追いかけてくれる人も、助けてくれる人も、見守ってくれる人も、会話をしてくれる人も……いない。

誰か!僕を見つけてください、そばにいて欲しい。

呪詛はいくらでも吐き垂らせるけど、僕も君も体に毒だから今日はもう黙るね。

さようなら。

みんなー!こーんにーちわあー!

みんなからもぉー?こーんにーちわあ!

たかのおにいさんだよー!

……子供向けのテレビでこんなのあったなーと思い出したして言ってみました。なんで今更思い出したんだろう。あの頃は母さんも優しかったな。わあてんさい、かわいいけーちゃん、って。だんだん変わっていくものだよね。植物もじっとみてても何も変化を感じないけど、次の日になったら、一週間経ったら、いつのまにか伸びてる。不思議なもんだね。

時が過ぎるのは早いなあ。人間が慣れるのも早いなあ。僕も植物になれたらいいのに。

今日はちょっとうまく話せないな。かなり短いけど失礼するね。

ぱんぱんぱろーユーチューブ、どうも鷹野です。

どっかのSNSでこんな挨拶している人がいたね。僕はあの人の顔が嫌いさ。生きてるのを否定したりはしないけど僕が好んで買ってたパンに「俺のオススメ!」みたいに出てこられるとイライラしたね。別にこいつが好きで、こいつのおすすめだから買ってるわけじゃないのに、こいつのおすすめだから買ったみたいになってしまう。その日は別のパンを買った。でもやっぱりあのパンがいい。でも次の日にそのパンをみても心が踊らなかった。大好きなパンを買う気分がなくなってしまった。パンに罪はないのに。それを思うと余計に苦しかった。僕の生活範囲を侵さないでほしい。

話は変わりますがお知らせがあります。僕はやらかしました。と言うことはもう長くないです。パンパカパーン、ぱふぱふー。でも光に当たらなければ進行は遅いから。あの学者の話を覚えておいてよかった。一週間に満たないだろうけど絶対毎日話すよ!

でも今日は話すことがないから流れるかどうかわからないCDをかけておくね。それじゃあまた明日。

 

曲の途中だけど話したいことを思い出した。やらかしたと言えば、僕のやらかした話を聞いてほしい。

自分で言うのもなんだけど、僕は生まれつき物事を吸収しやすい頭をしていて、親がうまく吸収させやがってくれたものだから、いわゆる秀才、天才児だと言われて育ったんだ。僕もその気になってた。でも本当に日本一偏差値の高い中学校に入って、模試とかでも一位、もちろん高校もいいところに入試の点数満点で入った。将来を期待され、期待どころか約束されていた。イライラしてきた?あのころの自分の話には僕だって苛立つさ。

そこまではオンパレードだったよ。なんのオンパレード?なんでもいいさ。それでも、自分でも気づいていなかったけど溜まっていたものがあったんだろうね。

ある日、登校中に僕は信号無視をしてしまった。国道が交差する十字路なんだけど、斜め向こうの道路に行くには横断歩道を二回渡らないといけない。信号の周期もあるからその都度渡れる方から行ってたんだ。図を使わないと言いにくいな。しばらくは集中して聞いてなくてもいいよ。

例えば自分が立っている場所をAとしよう。そこから渡れる横断歩道は縦横二つ。毎日その時青になっている方を渡る。向かい側に行くにはもう一本道路を渡らなきゃいけない。

最初に横向きの横断歩道を渡ればそこから地下道を走って移動できるけど、最初に縦向きの横断歩道を渡るともう一度横向きに移動するのに横断歩道を渡らなきゃいけないんだ。

その横断歩道が同じ方向に二本あって、駅に近い方は信号がないから気をつけて渡るだけで、もう片方は信号が付いてる。いつもは信号がない方を渡るんだけど、何せ二本の距離が異常に近いんだ。気づいたのは渡ってからだった。信号付きの、しかも赤信号の横断歩道をわざわざ車に停まってもらって渡ってしまった。気づいていなかった。てっきり信号がない方を渡ったものだと。

さらに運が悪かったのが、それを人に動画に撮られて、学校に突き出されてしまったのだ。その日のうちに呼び出された。大袈裟なことに親もいた。母親は泣いていた。学校にチクった野郎は過失だったことを知りやしない。生徒指導の先生曰く激昂してたらしい。

そこでいつものように冷静に弁明すれば良かった。先生にも親にも信用されていたしね。でも、できなかった。溜まっていたものがあったんだろうね。先生の貼り付けた笑顔にも、別の先生の咳払いと貧乏ゆすりにも、母の鼻の啜る音と甲高い声にも、父の壁のような威圧感にも耐えられなかった。確か、椅子を振り回して先生を怪我させたとか。

そのおかげで警察のお世話にもなった。めんどくさい。多分椅子以外にも何かやらかしたのだと思う。そこでも僕は反抗的な態度を取り、勉強もしなくなり、引きこもるようになった。親もはじめは泣いたり怒ったり優しく話しかけたりしてきたけど、そのうち何も言わなくなった。その時あたりから世間がざわついていたな。んで、「あの日」を迎えたわけだ。父母が来ないのはいつも通りだったけどやけに静かだと思ったんだ。鳥の声も近所の子供の走る音も聞こえなくて、でてみたら何もいなかった。いきなり一人になったから数日は引きこもり続けたんだけど、電気も途絶えてすることもなくて動き出して、なんだかんだあってここを見つけたんだ。

そういうこと。やらかしても大丈夫なもんだよー。

シーユーネクスターイム。バイバーイ!

やあ皆!鷹野だよ。昔はこんな喋り方をしたら怒鳴られたもんだけど。喋ってないと言葉と共に自分を忘れそうだ。忘れても誰も咎めないけど、自分が何かは覚えておきたいものだ。

だから今日は自分の話をします。僕の名前は鷹野敬一。名前の由来は、人を一番敬える人になるようにー、だって。小さい時から英才教育を受けてた。ここらから後は昨日話したね。今やテストも受験も就職も社会も未来もないから覚えた歴史やら古文文法やらはすっかり忘れてしまったけど。でも役にたつこともあって、そのおかげか今までなんとかやってこれた。特に化学の知識は使えたね。昔は生きていく上でこんな定理とか法則なんて使わないと思ってたけど。昔に戻れたら理科全般できなかった友人に役立つから覚えとけって言いたいな。まあ、「あの日」に生き残ったのは幸運にすぎないけどね。

でも、一人になってすごく開放感があるんだ。爽やかで。僕はね、こうなってよかったと思ってるんだ。うるさいこと言う親もいないし。

昨日やらかした時言ったけど、僕はもう長くない。光に当たらなきゃもう少し長いけど、それでも暗闇の中で独りで蝕まれる体にいることを耐えるのは嫌だ。短くてもいいから楽しくやりたい。

そう思って今日の午前中はずっと外を眺めながら考え事をしていたんだ。数日の間に植物たちはずいぶん成長したね。そういえば初めてここにきた時にはまだなかった蔓が侵入してきている。連日晴れてるし、酸素の濃度も高いかな。でも主な酸素を作ってるのは森林じゃなくて何かしらの海藻だって話を読んだことがある気がする。どうなんだろう。海ってどうなってるのかな。海藻が繁殖しまくってるのか?サンゴって動物だったっけ。昔ほど頭が回んないや。

で、考えてたことは自分のことなんだけど。もっと前から親に反抗して自分が好きなことをすればよかったかなって。逆にあの時、精神爆発しなければどうなってたんだろう。今頃は東大か、海外のもっと頭いいところに行ってたのか?…なんにせよこうなってたか。だから今と変わらないか、「あの日」に死んでるかのどちらかって結論に至った。何やっても世界の滅亡には抗えないよね。あんな科学技術が発達してるくせに止められないばかりか、そのせいでこうなってるんだ。自業自得だね。かわいそうに。

今日は夜更かしして星でも眺めようかな。星座はいくつか知ってるから探そうかな。君は……寝た方がいいよ。明日のためにも。君には明日も明後日もささってもしあさってもあるんだから。

おやすみ。

鷹野だよ。寂しいけど今日が最後の配信だ。早すぎるって?太陽を存分に浴びたから、そりゃ育つのも早いよ。

僕はずっとここから自分の声を発信し続けてきた。でも誰もきてくれなかった。そりゃそうか。場所教えてないし。心のどこかで運命的に探し出してくれる誰かがいると思ってたんだろうな。

あれがだいぶ近いんだ。わかるだろ?君たちはどうだろう。もう死んでる?どこかから僕の声を聞いてる?僕もそっちに行ってもいいかな。だめって言われたら僕はずっと孤独なままだけど。でもこの美しき世界なら受け入れてくれるはず。

最期に何かかっこいいことを言いたいんだけど。何がいいかな。元ネタは知らないけど、なんじゃこりゃあ?それともベタな、さようなら?それとも親に向かってざまあみろ?

うーん、

願わくばもっと青春を謳歌できる人間に生まれ変わりたい。なー、なんて。

ブッ__ズザーーーーーーーーーー

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