真・東方夜想曲 -マニアクス-   作:青葉那由多

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13話 先生と面談

──ここは...?

また...か?

......いや、違う......

 

 時代劇のような古風な建物が並び立っていた人里の風景から一変して、現代と遜色のない技術が用いられているように見える、病室のような場所で、人修羅は目を覚ました。

 

 その風景に思わず、悪魔として生まれ変わったあの日の記憶がフラッシュバックしてしまう。彼は、目を覚ます前の最後の記憶から、自分は死んだのだろうかと疑った。

 

しかし身体は動かそうと思えば動かせるし、部屋をよくよく見て見ると、あの病室とは様々な箇所が異なっていた。今まで訪れた場所が、極端に古い文化を残したままというだけで、現代の文化を用いている場所も存在するということだろうか.....。

 

 そうしているうちに、人修羅はあることを思い出す。......それは永遠亭の事だ。慧音から、『魔法の医者』だと聞いていた。この場所は、病室と言うほか無かった。

 

 竹林の先に永遠亭があるということだったので、自分が気を失っている間に、運び込まれたのだろうか。

 

 そこまで考えが至ったと同時に、出入口のドアが開き、赤青のツートンカラーのナース服という非常に奇抜な格好をした女性が部屋に入り込んできた。彼女は、ベッドで大人しくしている人修羅を見て、冷たく語り掛けた。

 

「目が覚めたのね、人修羅」

「誰だ...?」

 

 彼女は恐らく幻想郷の住人。一度もあったことはないはずだが、素性を見破られている。だとするなら、彼女はもしや...?

 

「私を知らない...?どういう事かしら。まぁいいわ、私は八意永琳。この永遠亭の主よ」

 

 人修羅の予想の通り、彼女こそが幻想郷での頼みの綱となっていた、八意永琳その人であった。だがどういう訳か、人修羅の反応に彼女は訝し気な様子である。

 

「なぜ俺を知っている?」

「......妹紅にやられておかしくなったのかしら?」

「何?」

 

 恐らく、彼女は何かを知っているのであろうが、全く会話がかみ合っていない。なぜ妹紅という人物の名前が出てきたのかも分からずに、人修羅は重い頭を更に重たくしていた。

 

「はぁ.....イチから説明したほうが良さそうね」

 

 そんな様子の人修羅を見かねて、永琳と名乗った女性は、まずは自分の見解を述べ始めた。ややあきれた表情をしているが、事態を飲み込み、冷静に整理していくその姿は、確かに高い頭脳を感じさせた。

 

「私は最初、貴方がこの世界を破壊する手始めに私を狙ったのかと思ったわ」

「無理だ」

 

 そんな悪魔のような事をする存在だと認識されていたことに、軽いショックを受け、思わず否定してしまう。

 

「らしいわね。厄介な相手とはいえ、妹紅にのされている時点でそれはないと思ったわ。」

 

 再び、妹紅という人物の名前が挙がってきた。その口ぶりからは、まるで戦いを挑んできた少女が妹紅であるという事になるが...?

 

「......何?貴方は誰かも分からないまま彼女と戦っていたわけ?戦闘になった理由は大体予想がつくけど...。どうせ暇つぶしに使われたんでしょう?」

 

 この話については彼女の言うとおりである。人修羅は黙ってうなずき、補足のためにポケットから慧音に授かった手紙を取り出し、一応彼女に提示してみた。

 

「手紙...?この字、慧音が書いてるわね...本当にどういうこと...?」

 

 手紙を確認した永琳の表情が分かりやすく変わった。しかし、まだ困惑の色が強い。反応から察するに、彼女は慧音の事を認知しているようだった。慧音の視点では、噂でしか聞いたことがないような人物のようであるが...?

「彼女を知っているのか?」

 

永琳は頷いて、続けた

 

「たいていの患者は人里からやって来る訳だし、里のリーダーのような役割を持つ彼女を知らない訳がないわ。」

「なるほど...」

 

 どうやら幻想郷は、意外と狭いらしい。そんな世界で、里の重要人物である慧音に知り合えたことは、この世界に来て最初の幸運かもしれない。永琳は、そんな人修羅を他所に、何やら考え込んでいた。

 

「......妹紅宛て?彼女に認められているようね。はぁ...。ますます分からなくなってきた...」

 

 深いため息をつきながら、俯いて頭を押さえている。慧音から彼女は知見が深い人物であると聞いていたが、今回は様々な事情が絡んでいるのか、彼女はすぐに答えを導き出せなかった。

 

「申し訳ないけどこの手紙、少し読ませてもらうわね。」

 

彼女は考え込んだ後、ひとまず手紙の内容を確認することを選択した。

 

「なるほどね...都合がいいんだか悪いんだか......」

 

 手紙には、美しい字で慧音の近況が妹紅に宛てて記されていた。寺子屋の教師としての性なのか、妹紅の体を気遣う内容と、暇つぶしのために殺り合うことに苦言を呈する言葉も記されていた。

 

 しばらく読み進めると、友人に宛てた柔らかい雰囲気の文章から、まるで仕事の連絡でも行うかのような硬い文面に変化し、人修羅に対する慧音の見解が述べられていた。

 

 そして、最後には力を貸してあげてほしいという、彼女の頼みが記されている。

 

 手紙に記された内容と、自身で知覚した人修羅の姿から、永琳はある結論を推察する。

 

「力と帰る場所を失って、『何故か』こっちに流れ着いたってことかしら。それで、この世界から抜け出すあてを求めて私の知識を借りに来たってわけね。まずは私に会うために、すでに知り合っていた慧音から妹紅に口利きしてもらって、竹林を抜けるつもりだったのでしょうけど、貴方はその妹紅本人だと知らずに、彼女の『暇つぶし』につきあわされたのよ。」

「なるほど...」

 

 百点満点と言っていいほど完璧な推察だ。妹紅のことは正直かなり気がかりだが、人修羅としては、是非ともこのまま知恵を授かりたいところだと考えていた。

 

「はっきり言って、私には無理ね。心情的な問題も、能力的な問題も両方あるわ。」

 

 淡々と残酷な事実を述べる永琳。それを人修羅は黙って聞いているしかなかった。しかし、問題とはいったいどういったモノなのだろうか?そう考えていると、永琳は難しい表情で、確かめるように呟いた。

 

「そもそも、紫に始末されなかったことが驚きね。悪いけど、貴方はこの世界にとって危険物質でしかないわ。どうやってやり過ごしたわけ?」

 

 辛い言葉だが、確かに彼女の言う通りだ。実際、最初に幻想郷から抜け出そうと博麗神社に向かった時、紫は人修羅を完全に敵視しており、霊夢をけしかけてきた。

 

 しかし、その戦いの中で何かを証明出来たのか、一旦の自由を得た。人修羅は、その時の出来事をそのまま永琳に伝えた。下手をすると一生を幻想郷で終えることになるかもしれない。であれば、関係した人物の心証は多少なりとも良くしておきたい。

 

「彼女がそんなことをね...」

 

 幻想郷随一の頭脳と知識を備えると言われている永琳は、当然ながら幻想郷の創設者である八雲紫と親交があるようだ。だが、彼女の力を持ってしても、人修羅をあの世界へ送り届けることは不可能らしい。

 

 やはり人修羅という存在について何か思う所があるのか、紫に一応は認められているということを知った永琳は、やり場のない気持ちを深いため息に乗せて逃がしていた。そして、頭痛を抑えるような苦い表情で、自身の見解を語り始めた。

 

「半分ぐらいは私の願望が混じってるんだけど...。紫は貴方を直接送り返すことは出来なくても、力を貸すぐらいは出来るはずよ。」

 

 確かに、空間を繋げて自由に移動できるという能力なら、容易いことだろう。紫が直接介入してこなかったのは、自分の力量を測る意図があるのだろう、と人修羅は考えていたが、永琳は違う視点を持っているらしい。

 

「例えば、スキマを使ってわざわざ歩かせなくても私に遭わせたり、とかね。それをしなかったというのは、言外に『何もするな』という彼女の意思表明だと私は考えるわ。」

「何...?」

 

 紫が直接的な協力をしなかったのは、幻想郷の管理者という立場故に、個人の問題に干渉できないのかと考えていたが、永琳が言うにはそうではないようだった。

 

 あえて協力しなかったというのなら、彼女からの激励のような言葉は、いったい何だったのだろうか?また自分は何かに踊らされているだけなのだろうかと、暗い感情がうっすらと湧き出す。

 

「私の願望も混じってるって言ったでしょう?それが真実だとは限らないわ。これはあくまで私の推測よ。それに、何もするなっていうのは、そのままの意味だけじゃないかもしれない。」

 

 人修羅の心を見透かしたかのように、先程までとは打って変わって、人修羅を気遣うような...希望を見せる話をする永琳。心做しか、優しげな声色である。

 

「はっきり言うと、幻想郷に迎合するのがいずれ、貴方にとって本当の幸せになるってことよ。」

「俺は...帰れない?」

 

 永琳の推測は、人修羅にとって、あの世界へ戻ることは不可能であるという宣告のように聞こえた。彼女は、あえて『迎合』という言葉を選んでいる。ということは、人修羅に現状は幻想郷に残る意思は無いということを見抜いているはずだ。

 

「そう言いたいわけじゃない。はぁ......もう、私が話せることは全部話すことにするわ。私が何故、外の世界とはまた違う世界...宇宙から来た貴方の存在を知っているかも気になるでしょう?」

「そうだな」

 

 やはり並外れた頭脳の持ち主、鋭い洞察力で、人修羅が幻想郷が存在する世界とは、また別の世界から現れたことも確信していた。

 

 しかし、宇宙単位の規模感だとは、人修羅本人も知らなかった。確かに、アマラ宇宙を彷徨っていた自覚はある。だが、そこまであの世界から離れていたとは、流石に予想がつかなかった。

 

 永琳はこれまでに無い真剣な表情で軽く息を吸い込んでから、ある事実を切り出す。

 

「ここの子たちを厄介事に巻き込みたくないから誰にも言わないでおいたけど、暫く前に月の指導者のツクヨミから遣いが来たわ。」

 

 紫の発言と、清蘭から偶然聞かされた話によって、月の民という派閥が関わっていることは薄々感づいていた。永琳の言質が取れたことで、人修羅が幻想郷に辿り着いてから起きた出来事に月の民が関わっていたのは間違いないと確定した。

 

 しかし、幻想郷に流れ着くこと自体が、月の民が仕組んだ出来事かは分からない。人修羅は、無表情を保ったまま、続く言葉を持った。

 

「ツクヨミからの伝言を伝えられて、貴方がこの世界に現れる可能性があるという事を知ったわ。そして...簡単に言うと、ツクヨミは貴方の力を求めていると言うことを伝えられたわ。」

「俺を...?」

 

 事態は自分の想定よりもかなり、複雑で深刻なようだ。しかし、求められるような力はもう失ってしまっているので、人修羅はどこか他人事のように感じていた。

 

「もう月を離れた身だから、私には応じる理由はなかった。でも、貴方が伝承通りの存在なら、危険な存在をここから追い出せるというメリットがあったわ。」

 

 やはり、危険な存在であると知らされていたらしい。こうして彼女と会話を行うことで、その印象を変えることができれば良いと思う人修羅だったが...?

 

「けど、実際に現れたのは悪魔としても人間としても中途半端って感じの半妖で、妹紅相手にギリギリの力しかなくて、特に脅威には感じなかったわ。紫にも見逃されたそうだしね。」

 

 これは、一応は認められているということだろうか?人修羅は、一旦胸を撫で下ろした。しかし、続く言葉は、厳しいものであった。

 

「でも、あのツクヨミがそんな無力な存在を欲しがるわけがないわ。それに、貴方に殺られた妹紅も様子がおかしかったし、やはり人修羅という存在の片鱗は感じるわね。」

「妹紅...」

 

 同時に、今までは考えないようにしていた、慧音の友人である妹紅を殺めてしまった事実が重くのしかかってくる。慧音は自分を信頼し、友人に託してくれた。だというのに、自分はあろうことかその友人を手にかけてしまったのだ。

 

 『友達』という言葉が頭によぎった瞬間、嫌な記憶が溢れ出る。友達を手にかけた経験は、今回が初めてではない。今回も事情があったとはいえ、殺めてしまったことに変わりはない。

 

 結局、自分は悪魔でしかないのかと人修羅が思い詰めていると、永琳がとてつもなく気まずそうな表情で人修羅の顔を覗き込んでいた。

 

「,.....妹紅のこともほとんど知らない...わよね?彼女は無事よ、だって不死だもの。恐らく貴方が原因で、今は少し変なことになっているけどね。」

「なんだと?」

 

 永琳の意外な発言に、人修羅はその無表情の顔の裏で、確かに驚きを感じていた。同時に、妹紅が宣言していた、「死なない」という言葉が脳内に響き渡り、確信を得た。

 

 しかし、変な事というのは?永琳は妹紅の現状から、人修羅の力を感じとっていたらしい。妹紅は今、一体どうなっているのだろうか?人修羅は永琳に疑問を投げかけた。

 

「彼女はたとえ体がバラバラになっても...蒸発さえしても再生して、何事もなかったかのように復活するわ。でも、今回は違う。貴方が撃った魔弾で開けられた穴は、いつもの早さで再生しなかった。まるで、何かがそれを阻んでいるかのようにね。」

 

 そう言って、永琳は人修羅に強い視線を向けた。あの魔弾は、悪魔が持つあらゆる抵抗力を無視して、どんな相手にも致命的な一撃を与えることができる、人修羅の最強の技と言っても過言ではないものだ。

 

 故に、妹紅が持つ不死の能力をも『貫通』して、再生を抑止させる損傷を与えたのかもしれない。力が不完全でなければ、彼女は本当に『死んで』しまっていたかもしれない。

 

 永琳がこちらを強く見つめてくるのは、その力を危惧してのことだろう。しかし、あの一撃は人修羅が現状で持てる力を全て結集してようやく、不完全な状態で放ったもの。

 

 空気中のマガツヒまで無理矢理支配下に置いて技の一部としたため、当然体からもマガツヒは抜けきっている。当分はあの一撃を放つどころか、幻想郷に現れた際よりも力がさらに衰えた状況が続くだろう。

 

「妹紅はよくうちの『姫』と暇つぶしに殺り合うけど、今回ばっかりはうろたえていたわね。やっぱり、『人修羅という存在』は脅威だと私は考えるわ。」

 

 妹紅がヒートアップしすぎて、こちらも危うい状態だったとはいえ、やはりやりすぎてしまっていたようだ。結局、永琳の警戒を解くことは出来ないのだろうか?しかし、永琳は人修羅について、何か含みを持たせた言い方をした。

 

「ツクヨミが求めているのは悪魔としての力を持った『人修羅』よ。当然、彼は何か企んでいるんでしょうけど、私に詳細も語らずに一方的に押し付けてくるなんて、どうせロクなモノじゃないでしょうね。」

 

 ツクヨミに対する嫌悪感を隠さない様子で語る永琳。幻想郷が創設された当初にはもう、月を離れてこの場所で永遠亭を営んでいたらしい。ということは、月の民と折り合いが悪いようだ。その点を突けば、もう少し打ち解けることができるかもしれない。

 

「でも、仮にツクヨミに協力したとするなら、私を頼るよりは貴方の世界に帰れる望みがあるかもしれないわね。」

 

 それは、人修羅にとっては新たな希望とも、厄介事の種とも捉えられるものであった。あの世界では、『コトワリ』に目覚めた友人や、恩師からその力を見込まれて依頼をされることが多かった。

 

 しかし、結果的に見れば結局はこれといった見返りもなく、評価されることもなく、ただいいように使われるのみであった。

 

 この苦い経験から、人修羅は何れかの勢力に味方をすることに見切りをつけ、世界の理にさえも逆らうことを選んだ。

 

 だが、今回は余りにも情報が少なすぎる。何らかの勢力に手を貸すことは出来るだけ避けたいが、ツクヨミの存在は現状唯一の希望である。それに乗るべきか、乗らないべきか逡巡する人修羅だったが、それを遮るように永琳が語りかけた。

 

「『悪魔としての人修羅』だと言ったでしょう?私から見ると、貴方は人としても悪魔としても中途半端ね。無表情で、あんまり喋らなくて、人間性が薄れているように感じる。でも、矛盾しているような事を言うけど、悪魔と言うにはまだ人間味も感じる...。裏を返せば人修羅、貴方はどちらにでもなることができるわ。」

 

 先程の警戒しているような冷たい様子とは異なり、自分には関係ないと切り捨てることはなく、諭すように語る永琳。その様子からは、豊富な知識に裏付けされる経験の深さを感じた。

 

「ツクヨミに味方をすれば、貴方は本当の悪魔になる気がするわ。ただの勘と憶測だけどね...。『何もするな』っていうのは、単純な意味じゃないのよ。このまま大事を起こさなければ、貴方は幻想郷で悪魔の力を持った人間の、人修羅として生きられると思うわ。」

 

 悪魔と人間の間で揺らぐ人修羅の現状を見つめ、進むべき道を提示する永琳の姿勢はまるで、悩める人々を導く、賢者のように映った。だが、

 

「厄介事を起こさないでほしいっていう私の願望も混じっているけどね。」

 

 と続け、厄介事を避ける普通の人間?の感性も併せ持っている事を示した。そんな姿は、どこか、『先生』のようにも見えた。薬師とのことなので、そういう面でも先生ではあるが。

 

 彼女にはあまり良く思われていないのが現状だが、その知識は確実に幻想郷を巡ることに生かせるだろう。故に、人修羅はあまり関係を悪化させるようなことはしたくはないと感じていた。

 

 それに、彼女から見て危険な存在である自分をただ排除しようとするのではなく、言葉で相互理解を深めようとするその姿勢は人間的に信用できる。永琳はやはり、人修羅にとって『先生』のような存在に映った。

 

「まぁ、どうするかは貴方の自由だわ。貴方が完全な状態になれば、多分私ではどうすることもできないだろうし。でも、ここは結構気に入ってるのよ...少なくとも月よりは、ね。」

 

 そう言うと、永琳はまた人修羅への警戒を込めた、厳しい目つきへと変わり、冷たい声で言い放った。

 

「ツクヨミに協力するのは自由だけど、仮に幻想郷でなにか事をつもりなら、私は貴方の敵になるでしょうね。」

 

 誰でも、自分の世界...居場所を守りたいと思うだろう。人修羅はまるで睨みつけるかのような永琳の視線から逃げなかった。自分も、自分の世界を守りたかった。そんな思いを込めて、ただ永琳を見つめていた。

 

「でも...」

「...?」

 

 暫く緊張が続いていたが突然、永琳は緊張の糸が切れたかのように、弱々しい呟きを漏らしてうつむいた。いったいどうしたのか?

 

「貴方が違う宇宙や次元から現れたように、私ではどうしようもない所で何かが起こっているとしたら私は...私たちはどうすればいいのかしらね。」

 

 自嘲するかのように、諦めが混じったため息を吐く永琳。人修羅は幻想郷の人々の事情をあまり意識出来ずにいたが、自分と同じで、大切なもののために今を乗り越えようとしているのだと知った。

 

 

 永琳の葛藤を垣間見た人修羅は、改めて決意を固めた。自惚れかもしれないが、自分はまだ、幻想郷の人物に警戒されるだけの存在ではあるようだ。だとするなら、この世界に流れ着いたことも、何かの『理』の作用なのかもしれない。

 

 であれば、かつて成し遂げたように、それに逆らうことも不可能ではないはずだ。人修羅は、俯く永琳に決意を口にした。

 

「出来ることはする。」

「そう、期待してるわ。」

 

 その言葉に、永琳は俯いていた顔を上げて、ふふっと小さく微笑んだ。それは、諦めなのか、人修羅に希望を見いだしたゆえの笑みなのかはまだわからない。

 

 だが、人修羅が永琳の姿から...これまでに出会った幻想郷の人々の姿から、「この世界もなくなってほしくない」と思ったことだけは、変えようのない事実だ。




 再投稿という形になってしまい、更新を期待してくれていた読者様には申し訳ありません。

 かなり間を開けながら執筆していたため、前半の展開の記憶が薄くなってしまい、自分でハーメルンに上げたこの作品を読み返していたのですが、文字数が少ない内容の薄いエピソードが細かく分かれていて読みづらかったと感じました。

 そのため、話数の圧縮、発見した誤字脱字の修正、一部エピソードの展開の変更などを行いました。一部は展開が変わっているので、完全版のような感じでお読みいただけると幸いです。
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