「オマエはこの前のモヤシ男!」
彼らの目の前に映る、カウンター越しにこちらを見つめている
「キミは...」
しかし、そんな騒がしい様子のぬえを置き去りにして、店員と人修羅は静かに見つめ合い、言葉を交わしていた。
「え...知り合いなの?オマエら」
数秒ほど経ち、自分が蚊帳の外であると認識したぬえは二人の間に割って入った。人修羅と知り合って間もない彼女でさえ、二人の間に何かがあると感じ取れるほどの雰囲気を感じ取り、言葉を投げかける。
「ん~...色々あったからねぇ......何て言おうか...
ってキミは!
この前のアクマ!!
し、搾り取られる!!助けて尚紀君!」
ぬえがモヤシ男と呼んだ人物は、彼女の存在に気が付き、良く通る声で尚紀...人修羅に助けを求める。どうやら、ぬえが探していたモヤシ男というのは彼のことだったらしい。
騒がしい二人とは裏腹に、人修羅は一人考え込んでいた。なぜ彼が、この世界に居るのだろうかと。彼は、ボルテクス界で数える程しかいない、人修羅の協力者の一人だった。
「無事だったのか」
少しばかり驚きを感じさせる声色で、人修羅が問いかけた。何故なら彼は...
「どういうわけか、無事だったよ
まあ...あの世界は僕の店ごとなくなっちゃったけどね
せっかく集めた僕のお宝がぁ...!!」
彼は極めて大げさな動作で、身体をくの字に折り曲げる。その勢いのまま、カウンターに頭から崩れ落ちて嘆いた。カグツチの破壊とそれに伴う世界の再生により、ボルテクス界は消滅していた。それに彼も巻き込まれたのだろう。
「.........」
「どうかしたのかい?」
立ち尽くしている人修羅の姿に疑問を感じ、彼は人修羅の硬い顔を覗き込んだ。創り上げたのは、コトワリのない、単純な世界の創世...即ち、東京受胎以前の世界の再生である。それは即ち...
──そうだ
──俺は、彼の生まれた世界を...
「
キミがやったんだろう?
そのあと、世界が真っ青な光に包まれて......全部終わったんだ」
「すまない」
彼は人修羅の心境を読み取ったのか、彼は独りでに自身のボルテクス界での最後の体験を告げた。人修羅は、あの世界の住人であった彼の口からその結末を伝えられたことで、自分があの世界を破壊したのだという事実を突きつけられたように感じていた。
「キミが謝ることはないさ
キミがやらなくても、他の誰かがカグツチに挑んでいただろうしね
むしろ創世をやってくれたのがキミでよかったよ
また奴隷としてこき使われたり、拷問にかけられるよりはマシさ」
後ろめたい感情に苛まれている人修羅を、彼がねぎらった。暇つぶしに店内をぶらつきながら二人の話を聞いていたぬえは、彼から出た物騒な言葉に思わず歩を止める。
「それで、僕は『マネカタ』としての役目を終えて全部終わり...
って思ってたのに、気が付いたらこの世界にいてね」
「真似方?」
二人の会話にさっぱりついていけない傍観者のぬえは、聞きなれない言葉に首を傾げた。
「人間の代わり...みたいなモノかな
僕はみんなから、ガラクタ集めって呼ばれてたよ
人間じゃないらしいけど、何が足りないんだろうね?」
『マネカタ』のガラクタ集めの衝撃的な発言に、ぬえは目を見開いて驚愕の表情を作ったが、はっとしたようにやや真剣な表情で、彼の顔面を覆う兜のようなものから垣間見える彼の表情を読み取り、呟く。
「確かになんか足りない気がするなぁ。なんだろう......魂、とか?なんか、薄っぺらい気がする......」
「何か知っているのか?」
「いや、ただの勘...だけど。私くらいの大妖怪になれば、そんくらいお見通しってワケよ!」
「ところで、尚紀くんこそどうしてこの世界に?
キミは自分の望む世界を創世したんじゃないのかい?」
ぬえの意外な観察眼の鋭さに関心していると、ガラクタ集めから疑問を投げかけられた。彼の疑問はもっともだろう。自分の意思で世界を再生しておいて、その世界ではなくこの幻想郷に居るのだから。
──彼になら説明は簡単か......
幻想郷で知り合ったばかりであるぬえのことが少し気がかりだったが、マネカタの彼はあの世界でそれなりの交流がある。それに、自分と同じくあの世界からやってきた彼の話を聞けば、何か手がかりを得られるかもしれない。人修羅はそのように考えて、幻想郷に流れつくまでのいきさつを簡潔に話した。
「お前って...もしかして結構ヤバいやつ?」
「人の世界に帰りたいだけだ」
ぬえにも聞かれてしまったのでどうなるかと懸念していた人修羅だったが、ぬえは人修羅の発言に信じがたいような様子を見せていたものの、重く受け止めることはなく、すぐにこれまでの調子に戻った。
「なるほど、そんなことがねぇ......」
対して、ガラクタ集めはまるで世間話でもしているかのような、あっさりとした反応をとっている。マネカタである彼は、悪魔からマガツヒを狙われ、散々な扱いを受けていた。そのため、もうこのような話題に慣れ切ってしまっているのだ。
「一応僕のほうも、もう少し詳しく話しておこうかな
とはいっても、僕はキミがカグツチを壊すまで、アサクサでコソコソ物拾いをしてただけなんだけどね
カグツチが弾けて、世界が真っ白になったと思ったら、この世界......幻想郷で目が覚めたんだ」
彼も人修羅と同じ状況らしい。おそらく、ボルテクス界固有の存在であるマネカタの彼は、世界が再生された事によってボルテクス界という居場所を失い、奇跡的にもこの世界に流れ着いたのだろう。
「二人とも、どうしてここに来たかわかってないってことなの?」
「そうだ」
「そうだね」
ぬえの問いかけに、息のあった返事をする。彼からも、どのような道をたどってこの世界へたどり着いたのかを聞き出すことはできなかった。
──こんな簡単に行くわけがないか...
しかし、彼がこの世界に来ていることは全くの予想外の出来事で、人修羅はむしろ彼と再会できたことを喜ぶべきだと考えの方向を変え、一旦この件を保留にした。
「っていうかオマエさ、ここで働いてんの?メガネ店主はどうした?」
二人だけの会話が続き、しかもその内容もおおよそ自分の知識と経験では理解のできないものであり手持ち無沙汰になっていたぬえが、無理やり会話に割り込んできた。
雑貨屋という如何にも彼が生息していそうな空間だが、確かにここは香霖堂。
ガラクタ集めがカグツチの光に飲まれてこの世界に流れ込んだ事は分かったが、ここで店員のようなことをしていることの説明にはなっていない。ぬえの指摘はもっともだ。
「あ~。そのメガネくん......
「知り合いなの?」
彼はこの店の店主、森近霖之助と懇意の関係にあるようだ。その霖之助という人物に直接出会った事はないが、恐らくガラクタ集めが幻想郷に流れ着いたのも多少の前後はあれど人修羅とほぼ同時期だろう。たったそれだけの時間で店を任されるというのは、相当親交が深いのだろうか。
「僕は最初、すっごい森の中で目が覚めてね。
あちこちさまよっていたら、見たこともない悪魔に追いかけられてね。
コレを使って逃げ回ってたんだけど...
じ~っ」
「いや~アクマのように強大な存在に見えるってコトか~へへっ。」
彼はカウンターに広げた
彼も人修羅と同じく、自分からかけ離れた存在を悪魔と呼ぶことにしているのだろうが、彼女はそれを褒め言葉として受け取ったのか、気をよくしている。
「逃げ回ってる間に、偶然このお店の近くまで来てね、一か八かで駆け込んだんだよ。いきなりの出来事だったから、彼も最初は鬱陶しそうな表情をしてたよ。でもねぇ......」
そういうと彼は、カウンターの向こうの戸棚や押入れなどを慣れた手つきで漁り、明らかに現代の物である使い捨てカメラや携帯ゲーム機、果ては洗濯洗剤などを取り出し、机の上に広げた。この行動に一体どのような意図が含まれているのだろうか?
「ちょっと話したら霖之助くんとはとってもシュミが合うって分かったんだよ。
まぁ、彼は価値がありそうなものなら何でもいいらしいんだけど.....
このお宝は彼に貰ったものなんだ。
さっきの道具の出所とかを色々聞かれてね。
ククク...
僕がお近づきのしるしにあげるよって言ったら、もらうだけじゃ悪いからって、店の中の物と交換してくれたんだ!
しかも、僕が選んだものと釣り合わないからって、いくつかオマケしてもらったのさ...フフフ...」
彼は浮ついた口ぶりでまくし立てた。どうやら霖之助という人物のことを余程気に入っているようだ。同時に、霖之助も店を預ける程度には彼を信頼しているようだ。二人は、まさにソウルメイトといった関係なのだろう。
「いや...こんなの無縁塚の方に行けばゴロゴロ落ちてるでしょ...」
「そう!そうなんだよ!あそこは宝の山なんだ...!
また今度霖之助くんに連れていってもらうんだ...
へへへ...」
ぬえの口ぶりから察するに、彼が手にしていたものは外の世界由来の品物とは言え、幻想郷においてもこれといった価値がないようだ。だが彼は人間の生み出したものならばそのほぼすべてを拡大解釈して、凄まじい技術が用いられた伝説の代物のように扱う。
確かに、これといった文明も技術を持たないマネカタからすれば、そのように感じるものかもしれないが...。
「オマエがどうしても...って言うなら、今度私の根城にしてる寺の宝物殿でも見せてあげようか?魔法の品がたくさんあるぞ~?」
マネカタであるにも関わらず感情豊かなガラクタ集めはぬえに気に入られたのか、彼女はいたずらっぽく笑って言った。それは一見して魅力的な提案に思える。しかし...
「いや...それはいいや」
「な、なんで!?」
彼は先ほどまでの興奮した様子から一変、水を打ったようにおとなしくなり、ぬえ渾身の誘いをあっさり断った。肩透かしを食らったぬえは、その場でひっくり返って叫ぶが、対するガラクタ集めは落ち着いた様子のままこう告げる。
「僕はどうも......人間の作ったものにしか興味がわかないんだ
商売上いろんな
人間が作ったモノでもなくて売り物にもできない道具じゃ
何も湧き上がってこないんだ..................」
「え~~っ!ストイックすぎる......」
ぬえの言う通り、彼はきわめて独特な人物である。道具屋としては大変目利きであり、彼が収集した道具はどれも有用な代物で、彼が開いた店には人修羅も何度も世話になっていた。
しかし、それらの品物を集めているのはあくまでも商売のため。彼が本当に価値を感じているものは、人間の遺物のみなのである。
「というか......そういう宝物?って、向こうにいくらでもあったからね
けど、この世界にはニンゲンがたくさんいるらしい...!」
──また始まりそうだな...
「道具も売っているのか?」
「それはもちろん!
なにか見ていくかい?
キミにはいろいろと助けられたから、サービスさせてもらうよ。僕が拾ったもの限定だけどね...」
ガラクタ集めの感情が昂ぶっていくのを察知した人修羅は、これでは収拾がつかなくなると判断し、話題を変えて彼の感情を違う方向に反らす。というより、実際に香霖堂には用があるわけで、そもそも彼と遭遇することがイレギュラーな出来事。本来の目的を果たすため、人修羅は店内を見て回る。
外から見た香霖堂は、まるで昔話にでも出てきそうな、いかにも古民家といった雰囲気を漂わせている。付近も木々で囲まれており、当然電気なども通っていないように見える。実際、店内には魔法の巻物や古書のようなモノ、着物、アンティークなどが雑多に陳列されており、ガラクタ集めが見せたような、現代の日用雑貨や電化製品などは見当たらなかった。
「あれ、外の世界のもんはどこにやったの?これじゃ里にある店と変わらないじゃん」
店内の様子に人修羅が感じていた疑問を、ぬえがほとんどそのまま言ってくれた。彼女の言う通り、外の世界からの漂着物を取り扱っている奇妙な雑貨屋というのが香霖堂だとされていたはずだが......
「フフッ...ならこっちに来なよ
言っただろう?サービスするって」
不思議がるぬえを横目に、ガラクタ集めはカウンターからこちら側に出てきた。そして、部屋の右奥にある、鉄で補強された少し厳つい外見の扉の前に立って、腕を大きく振って手招きする。彼の表情は怪しい笑みを浮かべていた。
彼は二人が後を追うのを確認すると、どこからか取り出したやや大きい鍵を取り出し、重たい扉を解錠する。彼は扉をゆっくりと開き、蝶番が軋む音が響く。同時に、冷たい風が店内を吹き抜け、ぬえは開いた扉の向こうを人修羅の後ろから覗き込む。
「階段...ってことは地下室?そんな部屋あったっけ」
「作ってもらったのさ......霖之助くんにね。
こんな場所まで用意してくれるなんて、感激だよ!」
「うるさっ!」
狭い石造りの通路なため、興奮したガラクタ集めの声がよく響き、ぬえは慌てて両耳を塞いだ。彼女はそのままの姿勢で彼に追従し、階段を下っていく。
人修羅はぬえの背中を追いながら、この空間について考えを巡らせていた。ガラクタ集めがこの世界に現れた時期は、彼の話を聞くにそこまで離れているわけではなさそうだ。そんな短時間で、こんな地下空間を用意できるものなのか?。これも、魔法によるものなのだろうか...
階段を下りきると、短い廊下の向こうに、明らかに現代のものであるドアが空間を仕切っていた。この風景に、人修羅はかつてマネカタが暮らしていた、ボルテクス界の大地下道を想起した。
「暗っ」
ガラクタ集めが開いたドアを潜ると、真っ暗な空間が広がっており、ぬえが声を上げた。密閉された地下空間なので、一切の光が届かず、漆黒の空間と化していた。
「ここが僕の店さ
じっくり見ていくといいよ」
ガラクタ集めは壁に手を這わせ、慣れた手つきで照明の操作盤を操作した。真っ暗だった地下室にLEDの光が満ち、その全貌が露わになる。そこには.........
「......」
「......」
「......どうかしたのかい?」
「ガラクタばっかじゃん!!」
──まぁ、そうだよな。
照明によって視界が確保されたその部屋には、理髪店のサインポール、通行止めの標識、黒電話、壊れた携帯電話など、ガラクタといって差し支えない物が乱雑に並べられているだけであった。付き合いの長い人修羅は受け流したが、期待していたぬえは盛大な肩透かしを食らった。
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「いつもの
「あぁ、いろいろ事情があってね
今はそういう魔法の道具の類は
霖之助くんに預かってもらっているのさ」
ガラクタ集めが魔法の道具類を預けなければならなくなった理由は、おそらく先日の妖魔本の一件のせいだろう。あの事件はこの香霖堂から持ち出された本が原因の一つだったので、規制が厳しくなっているのだろう。
「だから悪いけど、そういうモノが欲しいなら彼が帰ってくるまで待っていてもらえるかな
多分、いつも通りならもう少しで帰ってくると思うよ
それまで、僕のコレクションをじっくり見学していってくれよ!キミになら、相応の対価と引き換えに分けてあげるよ」
「......ガラクタばっかりじゃん」
まるで素晴らしいニュースでも発表するかのように語るガラクタ集めに、ぬえは目を細めた。ぬえが言うようにどう見てもガラクタの山だが、彼の収集癖的には、この中にまだ使えるモノが混じっているかもしれない。人修羅は、まるで発掘でも行うかのような心構えで、山の一番上に積まれているものを掴み上げる。
「それはブラックボックスというらしい
なんでも、人間にもこれがどのように設計されているか分からないんだそうだ
きっと、凄まじい技術が用いられてるに違いない!
どうだい?買っていくかい?」
人修羅が掴んだのは黒のビデオテープだった実態を知らないガラクタ集めは、大仰な説明をしている。確かに黒い箱状の物ではあるが...。
「いらない」
ツメが折られているので中には何か録画されているということが若干興味を引くが、テレビもビデオデッキも使用可能なものが入手できるかも分からないし、無用の長物だろうと切り捨てた。
「ただのビデオテープじゃん......」
ガラクタ集めのあまりに歪んだ現代の日用品への知識に、ぬえはあきれ返っていた。古風な生活様式が見受けられる幻想郷でも、ビデオテープぐらいは知られているようだった。
「そうかい
じゃあ、こんなものはどうだい?
よっこらせっ...と
これは人間を従わせる力を持った
このハンシャザイで光を操って、見たものに光情報で指令を出すんだ」
「.........」
今度は何かと思えばガラクタの山の向かい側に立てかけてあった、立ち入り禁止の標識を持ち出してきた。支柱の部分の途中がU字に折れ曲がっており、鎌のようにも見える。そんな物を、例によって、全く違うわけではないものの何倍にも誇張された説明をしている。これには、騒がしかったぬえも言葉を失っている。
「いらない」
彼の問いかけを即座に否定し、人修羅はガラクタの山を漁り続ける。しかし、めぼしいモノは一向に見つからず、現代でも使い道があるかどうかわからないようなものしか出てこない。さすが、他のマネカタから『ガラクタ集め』と呼ばれるだけあるということを、改めて実感していた。
「キミは、何か探しているものでもあるのかい?」
「服を探している」
彼の質問に人修羅は待っていたといわんばかりの様子で素早く答えた。このガラクタの山を構成するモノを拾い集めたのは彼のため、この調子では、自分で漁るよりも任せたほうが早いかもしれない。
「それなら任せてよ
ちょうどこの前、こんなものを拾ったんだ
ジャーン!」
「.........これは!」
ガラクタ集めがガラクタの山から引っ張り出したその衣服に、人修羅の心が突き動かされた。彼が目にしたのは、自分が東京受胎に巻き込まれたあの日に着用していたものと全く同じものだったのだ。
黒、白、青の三色で彩られた疾走感のあるストライプ柄のレザージャケット。これを見紛うはずもない。単純に全くの偶然で、たまたま同じ物が流れ着いたのか、何らかの意思が介在しているのか...
「なに?もしかして気に入っちゃったカンジ?こういうの好きなんだ〜」
かつての衣服を前に、一人で考えに耽っていると、その要素を服が気に入ったのだと勘違いしたぬえに絡まれ、彼の思考は霧散した。
「..........かもな」
「買うのかい?」
「買う」
「まいどあり!
ちょっと待っててね
キミが着れるようにチョット改造してあげるよ
そのままだと、そこが引っかかって苦しいでしょ?」
人修羅が通貨を手渡し取り引きが成立すると、ガラクタ集めはハキハキとした様子でハサミを取り出し、人修羅の角が干渉する箇所を切りとってくれた。
「よし、終わった...
ほら、早速着てみなよ」
加工済みのレザージャケットを受け取った人修羅は、慣れた手つきで袖を通し、ファスナーをギュッと閉めた。
「うん、似合ってるよ」
「まあまあってとこかな、80点くらい」
二人が彼の着こなしを評する一方で、彼はこの服を身に着けたことによって、僅かな安らぎを得ていた。人間だった頃の日常を肌で感じて...
また期間を空けてしまいました。始めたのは自分なので、出来るだけ早く仕上げられるように励みたいと思っています。