悪魔と戦闘になった場所から先へ進み、無理矢理引き延ばされているような、かつては廊下であったであろう歪んだ通路を進んでいく。
するとまた、悪魔の気配が強まった。紫の禍々しい電が走り、そこから悪魔が姿を現す。今回現れた悪魔の姿は、和風な幻想郷の世界と、鈴奈庵の木造の内装とは似つかわしくない、姿、そして存在だった。
──こいつは...
人修羅が鋭い視線を向けるその先には、洋風の甲冑を纏った天使がそびえたっていた...。
天使という存在には直近で嫌な経験があり、人修羅は表情には出ないものの、思わず心のなかで顔をしかめた。
何故、天使がこんな場所にいるのか、と。もしやこの騒ぎも、天使が自分をおびき出すために仕組んだことなのではないか...と勘ぐってしまう。
「そこの悪魔さん、初対面の相手に対して、大変失礼な態度ではありませんか?私がいったい何をしたというのですか。」
顔には出していなかったはずだが、天使に対する嫌悪感が漏れ出してしまっていたのか、向こうから話しかけてきたと思えば、非常に険悪なムードが流れている。
「討死して実体を失いアストラル界をさまよっていたかと思えば突然、こんなところに呼び出されて...。しかも、悪魔が私を睨みつけている。正直、大変不愉快な思いをしているのですが。」
だが、彼の口ぶりからはどうやら、偶然ここに呼び出されてしまったようで、あの大天使の手先...というわけではないらしい。アストラル界とは、実体を失った悪魔が流れ着く、冥界のような場所を指す。
──疑いすぎたか。
一触即発の雰囲気に、自分が余計に疑ってしまっていると、人修羅は態度を改めた。しかし、不適切な対応をしていたことは間違いなく、今回はボルテクス界でのように、気を良くさせるための供物も持ち合わせていない。
「天使さま、彼の不躾な態度をお詫び致します...。私は見ての通り非力な人間ですが、天使さまにお力になっていただきたい事があるのです。」
気まずい雰囲気を持ち直すために、阿求は人修羅の前に出て、恭しい態度で頭を下げ、執り成しを行った。流石は里の名家の娘、非常に様になっている。
「これはご丁寧にどうも。私は天使族のアークエンジェルと申します。どうやら貴方は信徒ではなさそうですが…私に何を求めるのです?」
天使も、その気品漂う阿求の姿に、少しだけ気を和らげたようだが、阿求は敬虔な信徒ではない。
聞き入れるかは分からないがとりあえず理由を話してください。という様子で、無条件で話を聞いてくれるわけではなさそうだ。阿求は天使の気分を害さないよう、畏まった態度かつ、やや演技がかった大仰な口調で話し始めた。
「私の無二の友人が、悪魔に脅かされているのです。見て下さい、この無残な風景を。」
バッと両手を広げ、天使の視線を異界と化した鈴奈庵の風景に向けさせた。天使は感慨深げな様子で、周囲を見渡した。
「確かに酷いありさまですね。さながら魔の領域というべきでしょうか。」
「そうでございましょう!私の友人はこの魔の領域と化した世界に連れされてしまい、安否も分からないのです。」
食いついた天使の様子をみて、阿求が畳み掛ける。そして、人修羅の方を指さして...
「一縷の望みを託して、使い魔の召喚を行ったのですが、彼の力だけでは頼りにならず...天使様のお力が必要なのです!」
「たしかに、なかなか貧相な外見の悪魔だ。勇ましい私とは違いますね、はっはっは!それにこんなか弱い女性の悪魔まで...」
「んだとこの...むぐっ!?」
──散々な言われようだ
か弱い女性と評された蛮奇が、我慢ならない様子で天使に食ってかかろうとするが、阿求が不安そうな乙女の表情を向けたまま、腕に力を込めて蛮奇を押さえつけて制止した。
人修羅もなかなか酷い言われように内心ショックを受けていると、阿求がくるりとこちらに振り向いて、天使にバレないように、謝罪の意を込めて手を合わせ、軽くウィンクをした。
確かに、仲魔は多いほうがいいし、無駄な争いも避けたい。人修羅は、阿求の演技に付き合うことにした。
「ですから天使様、どうか私どもにお力を授けていただけないでしょうか...!」
阿求が再び頭を下げる。友のためならば悪魔とさえ手を組むという、なんと友情と愛に溢れた高潔な人間であるのだろうと、天使は勝手な解釈をして胸を打たれていた。阿求の予想外の奮闘で、これで契約成立か?と思われたが...
「あなたのご友人を想う気持ち、大変素晴らしい。ぜひ私の力を貸してあげたいところなのですが......」
天使は申し訳なさそうな表情で縮こまった。心はかなり阿求に落ちているとその場の誰もが感じていたが、それ以上に力を貸せない理由の方が大きいらしい。
誰かが疑問をぶつけずとも、天使は弁明するようにひとりでにしゃべり始めた。
「先ほど申し上げたように、私は一度死して、霊体となってアストラル界をさまよっていたところを、次元の裂け目に飲み込まれ、ここで不完全な状態として蘇ってしまっているのです...」
神や悪魔は簡単には死なない。圧倒的な力でねじ伏せない限り、再び受肉して、また敵として立ちふさがる事はそれなりにあり得ることだ。
彼は、悪魔を実体化させ、現世にとどめるために必要なエネルギーであるマグネタイトが不足しており、供給を受けなければ活動することは出来ないらしい。
阿求も流石に身を捧げる覚悟はなく、対応に困っていたが、人修羅はボルテクスでよく、悪魔に体力を要求されたことを思い出していた。
ボルテクス界の悪魔は、人修羅の体力に含まれる、マガツヒというエネルギーの摂取を要求してくる事があった。
おそらく、マガツヒは悪魔にとってより根源的な存在で、マグネタイトという成分も内包しているだろうと仮説を立てた。体力には余裕があるので、激しく吸われることがなければ...。
「なに?自分の体力を吸い取れと…?私はもっと、気品に満ちた方のほうが好みなのですが、まあ、一応あなたの献身に免じて、味見ぐらいはして差し上げますよ。どれどれ...」
天使は手にしていた剣を納め、人修羅の体に向かってまっすぐに右手を伸ばし、力を込めて念じる。そして、人修羅の体内を駆け巡るマガツヒの流れに介入すると、天使はぐっと拳を握りしめ、何かを引っ張るように手を引き抜いた。
「くっ...!」
体力の一部が抜き取られた衝撃で、人修羅はのけ反り、体を抑える。天使の手には、人修羅から抽出されたマガツヒと呼ばれるエネルギーが握りしめられており、天使は意を決した様子でそれにかじりついた。
「む...!」
天使は、マガツヒの一部を吸い取ると、目を見開き、驚いたような様子で人修羅を見つめる。
「...なかなか美味ではありませんか。」
認めたくない。という態度が現れているが、かつてボルテクス界を征した人修羅のマガツヒは非常に質が高いようで、天使は口にするたびにエネルギーが体中に漲っていくのを感じていた。しかし、そこで、天使にある疑問がよぎった。
「この濃厚さ...並大抵の悪魔ではありませんね。...もしや貴方の方が私より強いのでは...?」
「どうだろうな。」
アークエンジェルは天使の階級の中で『大天使』という階級に属している。それは下から2番目であるため、強力な天使とは言い難い。
人修羅をアマラ宇宙へ追放したメタトロンは『熾天使』と呼ばれる第一階級の天使である。彼と比較すると、天と地ほどの力の差がある。
「完全に実体化するエネルギーがあれば、お力を貸してくれるとおっしゃられていたのに...うっ...。」
しぶい反応をしている天使に、阿求が泣き落としにかかった。確かにそういった手前、無下にしてはいけないと、天使は頭を抑えていた。
「ほら、早くお力を貸してくださいよ、天使様」
「蛮奇ちゃん...やめとこうよ...」
か弱い妖怪と評されたことへの当てつけか、もう契約するしかないと諦めていた天使を、蛮奇が煽った。
天使は若干腹を立てた様子だったが、義理堅い性格なのか、それでもなお阿求との約束を振り切ることができなかった。そして...
「ええい...!私は天使族のアークエンジェル!あなた方の剣となって悪魔を祓うことを誓いましょう!!」
天使のやけっぱちな叫びが異界にこだまし、天使アークエンジェルが仲魔に加わった。
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アークエンジェルを仲魔に加えることで戦力が増強された人修羅一行は、捜索は本格化させ、より深部へと歩を進めてゆく。
しかし、現在地の確認さえままならない程改変された鈴奈庵では、思うように捜索を進めることができずにいた。メンバーの一人、赤蛮奇の胴体の所在も気がかりである。
「そこッ!」
アークエンジェルの剣が一閃。行く手を塞ぐように現れた悪魔を横薙ぎした。悪魔は断末魔を上げながら、身体を斜めに両断され消滅した。
低い階級の天使ではあるものの、甲冑を身に纏い、両刃の剣を携えるその姿に違わず、現状は申し分ない戦力である。
そのうえ、彼はある程度攻撃魔法と治癒魔法を扱うことができる。物理攻撃偏重で攻撃の隙やリスクが若干大きい、人修羅に対するカバー役としてはうってつけの存在であり、この混沌とした状況下では非常に頼りになる存在と言える。
人修羅が前衛を務め、得意の物理攻撃によって火力を担う。攻撃を耐えられる、あるいは回避されるなどして仕留め損ねた場合、絶妙な距離感で警戒を行っているアークエンジェルの出番だ。
人修羅よりも軽く隙の少ない魔法攻撃、あるいは剣による物理攻撃によってそれらを排除するという堅実な二段構えの隊列を組んで確実に悪魔を排除して、探索を進めていた。
しかし、ここでイレギュラーが発生する。身体から攻撃を放つ人修羅は、アークエンジェルが使用できる回復魔法によって力を回復させることができ、常に安定した攻撃を行うことができるのだが、アークエンジェルの振るう剣の物理的耐久度の問題が発生した。
既に数十体の悪魔を切り捨ててきたその剣には、そこかしこに刃こぼれが生じており、耐久度の限界を示していた。
「これは...困りました。持ってあと数回、といったところでしょう。しかし、主によって祝福を受けたこの剣が、こうなってしまうとは...。やはりこの世界は一体?」
「それはですね、天使様...」
確かに、ボルテクス界で見かけた天使たちは、武器の消耗を気にかけている様子はなかった。口ぶりからして、激しい戦いの中を耐えられるように、祝福によって強化されているようだ。
しかし、ここは幻想郷。隠されているこの世界には、天使たちが主と認める存在の力は届かない。と、阿求は幻想郷の成り立ちから性質までアークエンジェルに告げた。
「なるほど。そもそも私が命を落としたあの世界とはまた別の世界なのですね。」
「どうして死んだ?」
なんとなく聞きたくなった。いつ死んでもおかしくない状況で、いくつも修羅場を潜り抜け、大天使に始末されかけるも終ぞ死ぬことがなかった人修羅は、興味本位で聞いた。
「私は、混沌の軍勢との戦いに出向いて...まぁ大したことはありませんよ。力及ばず悪魔に負けた、それだけの事です。」
「そういうものなのか」
『混沌の軍勢』という言葉が妙に耳に残ったが、初対面の時の反応から見るに、天使とは対をなす『邪悪な』悪魔達の事だろうと納得する。
「ええ。案外、貴方も忘れてしまっているだけで、何回か亡くなっていたりしているかもしれませんよ?ハッハッハ。」
「そうなのか?」
余程強大な悪魔でない限り、倒してもすぐに同型の悪魔が現れるので、全体としてそういった考えを持っているのかもしれない。
「天使様なんて大層な存在だから、死んでも何ともないってことだろ」
「わ、私も死んじゃいたくないよ...」
蛮奇が悪態をつき、小傘は怯えた。アークエンジェルのような、強大な存在ではないものの、広く言い伝えられている存在に対して、小傘や蛮奇は世界的に見るとややマイナーな存在であり、死んでも復活できる保証はない。阿求は何やら事情があるのか、何も言わなかった。
「これは失礼いたしました。ところで小傘さん、先程から時々、私の剣を見られていますが、何かありましたか?」
アークエンジェルの指摘通り、小傘は先程の戦闘からしきりに彼が持つ剣の様子を伺っていた。彼に声をかけられてしまった小傘は、意を決して彼の前に飛び出した。
「わたし、意外かもしれないけど、鍛冶が得意なんだ!道具は魔法で出せるから、すこし見せてくれないかな?」
「ほう?構いませんよ。このままではどうせ壊れてしまいますし、貴方にお任せしましょう。」
アークエンジェルは小傘の提案を快諾する。
「うん。頑張るね!」
小傘の行う鍛冶は、人修羅やアークエンジェルが想像していたものとは、一風変わっていた。アークエンジェルから剣を受け取った小傘は、少し広めの場所に移動する。
そして小傘は、魔法で即席の工房を作り出した。手にしていた傘が、鍛冶用の鎚へと姿を変え、それを魔法の金床に置かれた剣に思い切り振るう。
魔法の鎚によって打たれた剣は、即座に融解し、妖しい蒼い光を放つ、ドロリとした粘性を持つ、液体に姿を変えた。
そこで小傘は、いったん鎚を手放し、考え込んだ。その姿は、人修羅などに怯えていた様子からは想像もつかないほど、職人の風格を漂わせている。
「彼女の鍛冶の腕前は、私が保証しますよ。しっかり記録してありますから。」
阿求は小傘の姿を見守りつつ、待機している人修羅とアークエンジェルに言った。彼女は、一度見たものは、死ぬまで忘れることはないという。知見も広い彼女が、言うのだから、それは真実なのだろう。
──ただ打ち直すならすぐにできる...でも、ただ打ち直しただけじゃ、またそのうち壊れちゃう...。だったら...!
小傘はある結論にたどり着き、いったんその場を離れ、見守っていた人修羅の方へ歩み寄り、言った。
「お兄さんと天使さん、さっきの赤いのって、まだ出せる?」
「マガツヒか?」
「私は構いませんが、貴方は?」
アークエンジェルはこちらを向いて尋ねた。それなりに体力を吸い取られたので、もう1回は少しキツイ。だが...
「わかった。」
──何をするつもりだ?
小傘の鍛冶の行方が気になった人修羅は、マガツヒを提供することを選択した。
「ありがとう!お礼にすごいの作ってあげるから!」
固かった表情を無邪気に綻ばせて微笑む小傘だが、またすぐに真剣な表情に戻って、言った。
「これから作る武器、悪いことに使わないでね?人を傷つけたりとか、弱いものいじめとか…」
芯のこもった真っ直ぐな瞳に、人修羅たちは黙って頷くことしか出来なかった。やがて、アークエンジェルにエネルギーを分け与えたときと同様にして、人修羅の体内からマガツヒを取り出し、小傘に受け渡す。
「これがお兄さんの...。すごく力強い...でも、なんだかあったかい...優しい感じもするよ、不思議...。」
──優しい...?
いい悪魔、とか、破滅の輩とか、ボルテクス界では悪魔たちから好きなように呼ばれ、扱われていたが、優しい。という、今までにない言葉を投げかけられ、人修羅の心は、僅かに揺れ動いた。
──結局、全部自分の為だ...
小傘の言葉を契機に、ボルテクス界での行動を省みる。いくつもの悪魔を斃し、かつてのクラスメイトさえ手にかけた。そんな自分が、優しいのだろうか。小傘のいう、優しいとは何か、今の人修羅には分からなかった。
小傘は、受け取ったマガツヒを吸収するのではなく、工房の方へとそれを運んでいく。
「アレをやるんだ...。話には聞いてたけど、初めて見るな...」
阿求の手の上で漠然と眺めていた蛮奇が言った。一体、何が行われるというのだろうか。人修羅もアークエンジェルも、五感を開いて周囲を警戒しつつも、小傘の行動から目を離せなかった。やがて、小傘は深呼吸をしてリフレッシュすると、ついに事を始めた。
人修羅から提供されたマガツヒが、ゆっくりと小傘の持つ魔法の鎚の先端部分へと吸い込まれていく。数十秒すると、マガツヒは完全に定着し、魔法の鎚は、薄暗く、赤黒い光をまとったやや禍々しい姿に形を変えている。
「......えいっ!!」
小傘はその鎚を、ドロドロの液体となっていたアークエンジェルの剣に思い切り叩きつけた。物理的な衝撃だけでなく、人修羅のマガツヒがアークエンジェルの剣の素と混じり合い、激しい妖力の閃光があちこちに放たれていた。
小傘はそれをものともしない。真剣な表情を一切崩さずに、何度も、何度も、力強く、正確に鎚を打ち込んでいく。鎚を打ち付けられる度に、衝撃波と共に、剣の素が少しずつ姿を変えていく。その光景を、人修羅たちは息を呑みながら見つめていた。
「これで...!仕上げっ!」
小傘が気合いを入れ、これまでで最も強い一撃を剣に振り下ろし、同時に、爆発ともいえるほどの、最も強い妖力の閃光が放たれた。一同は強い光に、目を覆う。
光が晴れると、小傘の手には、今まさに生まれ直し、まだ煙が纏わりついている一振りの刀が握られていた。刀にはマガツヒの禍々しさが移されており、人修羅が作り出す魔力の刃によく似ている。小傘はそれを砥石で丁寧に磨き上げると、その姿は変化していた。
「お兄さんの力を、天使さんの剣にこめて生まれ変わらせたの。刀ばっかり打ってたから、刀の形になっちゃった...」
一仕事やり終えた小傘は、職人のようだった気迫を引っ込めて、いつもの調子に戻って照れ笑いをこぼした。
「まぁ、問題ないでしょう。それにしても、美しい色合いだ。それにこの模様は...」
その刀の刀身は、透き通った美しい白だった。小傘から刀を受け取ったアークエンジェルは、それを傾けて光にかざすと、人修羅の全身に走っているものとよく似た意匠が浮かび上がり、僅かに青い光を放っている。
その姿は、人修羅の力を受け継いでいることをよく示していた。
「名前は、えーと...お兄さんの力が、天使さんの剣に合体してるから、合体剣とか...?」
「はぁ...さっきまでいい感じだったのに、その名前で台無しだよ。」
小傘のネーミングセンスに、蛮奇は辟易とした様子だ。
「名前はともかく、なかなかカッコいい刀じゃん...。あっ、」
「こんど、蛮奇ちゃんのも打ってあげようか?」
「い、いや、刀なんて使えないし!興味ない!」
思わず溢した一言に目を輝かせて食いつく小傘に、蛮奇は強がって必死に抵抗する。やはり、随分と仲のいいことだなと、人修羅は二人を、微笑ましく感じた。
「小傘さんの職人業、しっかり記録させていただきましたよ。」
「えへへ、ありがとう。」
同じく目を輝かせている阿求の一言に、小傘は照れ笑いを溢した。一通りのやりとりが終わったところで、人修羅一行は再び、小鈴の捜索を再開する。
小傘の職人業で、合体剣の創造にはそれほど時間は掛かっていないが、それでもぼさっとしている暇はない。
「素晴らしい切れ味ですね...!」
現れた悪魔を合体剣で安々と切り裂いたアークエンジェルは、その切れ味と、それを作り出した小傘の意外な才能に驚嘆した。
「天使である私が、悪魔の力を帯びた刀を振るう...か。随分と数奇な運命ですね。」
彼は、悪魔と手を取り合って共に戦っている現状を自嘲するかのように、誰にも聞こえないほど小さい声で呟く。不思議と、現状を受け入れ始めている自分がいることに、内心では驚いていた。