声春~Wake Up~   作:蒼乃翼

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今回は一挙2話更新



第2話 終わったり、負けたり

夏休みまであと一週間。

来夏、大智、そして操一朗は校長代理の教頭に呼び出された。

「合唱部、バドミントン部、剣道部は廃部とします。」

此見よがしに目の前で書類に判子を押した教頭に、来夏と大智は抗議した。

「え…そんないきなり」

合唱部は発表会のゲストとして招かれた有名バイオリニスト目当てや来夏の弟に誘われた一時入部者がほとんどで、発表会が終われば即自然消滅。

「俺、もうすぐ県大会で…」

バドミントン部はそもそも校長が特例として認めていた。一年の頃から1人で今まで活躍できたのは、ひとえに大智の全国大会ベスト8という実績があればこそ。練習だけなら、たとえ体育館を間借りできなくても、大智の姉春香の大学で練習したりできるが、学校が認めなえれば、そもそも大会にすら出られない。

「どの部活も自分達で部員を集め、限られた部費をやりくりして、規則に則って活動しています。どうして自分達だけが特別だと?」

教頭の正論に大智も来夏も言い返せなかった。

そんな中、操一朗だけは平然としていた。

 

 

 

2話 終わったり、負けたり

 

 

「まぁ、この学校の経歴に運動部は重視されてねぇし、俺という剣道日本一の男を埋もれさせた汚点残してでもこの学校の規律に縛られた楽譜書きたかったら、どうぞご自由に。」

 

 

「って、言ったの?」

「いんや、心の中で思っただけ。」

結局何も言わず・・・言ったところで取り合ってもらえない可能性大だったので・・・教室に戻ってきて事の顛末を紗羽に話したお気楽な操一朗。一方来夏と大智は頭を抱えていた。

「来夏、どうするの?」

「ん~、ウチはまだ3人いるから、これからちゃんと集めていく。文化祭とか歌う機会はまだあるし。」

「3人?1、2…、」

首を傾げた紗羽は来夏と自分を指を指して、

「3」

来夏は和奏を指差した。

「和奏、一口くれ。」

「ん、あと飲んで良いよ」

操一朗は和奏が飲んでいた野菜ジュースを受け取ると残りを一気に吸ってパックを握り潰して飲み干した。

「あ~、ダメだ、打つ手がねぇ…」

生徒手帳を隅々まで読んでいた大智が机に突っ伏した。

「あ、ねぇ田中アンタもうどうせバドミ辞めたんでしょ?なら合唱部入んない?」

「まだ辞めてねぇし!俺は大学入っても続けて……いつか…」

「え、何?」

「…~、うっせぇチビ!」

来夏にからかわれた大智は捨て台詞と一緒に教室から出ていった。

「な…、」

「「確かに。」」

操一朗と紗羽の声がハモった。

「ナンダト。緒川、身長10cmよこせ。紗羽はおっぱい10cmちょうだい」

 

 

 

♪♪♪

 

 

 

濃紺の稽古着を着た操一朗は二十畳の板間の道場に1人、稽古に臨んでいた。

ただし、手にしているのはいつもの竹刀ではなく、真剣だった。長さは高校生男子規定のサブハチ竹刀(3尺8寸=約115.14cm)より若干短いが、重量は鉄そのもの。

操一朗は右膝だけを立てた割り膝で座している。左腰に帯びている稽古刀は刀身だけで90cm近くもある。

臀部の下に折り敷いた左踵がずいと起き上がる。

遅滞無く右手は柄、左手は鍔元に。

 

シャッ

 

短い刃音と共に、90cmの刀身が鞘から奔り出て、胸の高さで横一文字に空を斬った。刃引きはしていても刀は刀。その切先は鋭利な光を反射していた。

「やっ!」

鞘に納めかけた稽古刀を気合と共に突き出した。

居合の稽古は仮想の敵を想定して行なう。

初太刀で倒れなかった敵への追撃を操一朗は見舞ったのだ。

操一朗は機敏に体を捌き左横に動く。

敵が死なば諸共と、咽目掛け突いてきたのを躱した動きだ。

 

ヒュッ ヒュッ

 

仮想敵の左右の首筋を斬り割った。

柄を握った右手を必要以上に動かさず、鯉口を握った左手を帯に添えて十分に引き絞ることで90cmの稽古刀を納刀した。

「相変らず見事な腕前だな。」

「師匠(センセイ)。」

道場の入口に立って操一朗の1人稽古を見ていた初老の男が声をかけた。

操一朗は立ち上がりきっちり腰を45°曲げ、挨拶した。

「うむ。」

道場主、関谷透は一礼して道場に入った。

「しかし、何を悩んでいるんだ?技の冴えがいつもより劣っているぞ。」

「実は…」

操一朗は事情を説明した。

「なるほどな、確かに今まで1人なのに活動してこれたのはその校長の配慮だったのか…」

「まぁ、俺はそこまで大会優勝の肩書きとか気にはしてないんですけど、唯一心残りがあるとすればあの高校の剣道部と決着が付けれないことですかね…」

「そうか…」

 

 

「で、お前はいつまで影からこっそり見取り稽古してんだ?」

 

 

操一朗がわずかに開いていた道場の着替えの間に声をかけると戸がガタンと揺れて、白い稽古着を着た少女が顔を覗かせた。

「なる、お前は何をこそこそと…」

関谷師匠は頭を掻いた。

「えっと、そうお兄ちゃん、なんだか稽古に集中してたし、なんか出ずらくて…」

両脇でちょこんちょこんと結んだショートヘアを揺らしながら、道場の一人娘、関谷なるは出てきた。

「そうだ、なる。ちょっと操一朗とケーキでも食べに行かないか?」

「え?!」

「今日は何も予定が無いんだろ?ならたまには遊びに行きなさい。」

「居合のお稽古は…」

「今日はいいから、ほら。」

関谷師匠はなるの背中を押して道場から追い出した。

「あの師匠(センセイ)…」

「あぁ、金は、私が出すから。」

関谷師匠は笑顔で操一朗の肩をぽんぽん叩いた。

「はぁ…」

操一朗は溜息をつきながら着替えの間に入って稽古着を手早く脱ぎ、青いジーンズに白いTシャツに赤いノースリーブジャケットを羽織った。稽古着は定位置に畳んで置いておいた。師匠の好意で陰干しや手入れは関谷家に頼りきっていた。

着替え終り道場の外に停めていたバイクにもたれながら、なるを待っていた。

関谷家には子供は娘のなるしかいない。関谷師匠は目に入れても痛くないほど可愛がっているが、その一方で道場の後継ぎが悩みの種だった。そんな時、当時中学1年の操一朗が入門して来た。

両親がおらず、叔母夫婦と後見人の大企業の社長に養われている男子。しかも剣の筋も良い。当時から何かと自分の娘と操一朗を一緒に稽古させたり夕飯に招いたりしていた。そして中3の時、関谷家の養子話が持ち上がった。

しかし、その直後に操一朗の叔母、まひるが亡くなり、結局その話は有耶無耶のままになっていた。

高校に入ってからも居合の稽古は続けていたが、関谷師匠は養子話を持ち出さなくなった。なる自身もデリケートな年頃となったせいもあったが、今このタイミング、操一朗が18になったこの時期にこんなデートを企てるととは…

「諦めてなかったんか、師匠(センセイ)……」

今から養子として迎え入れ、なるがあと数年もしたら即結婚させようという魂胆が見え見えだった。

「お、お待たせ、お兄ちゃん…」

白い膝丈ワンピースにうっすら化粧という、女子中学生なりの精一杯のお洒落をしたなるがやっと来た。

「おぅ、なら行くぞ。」

操一朗はなるに予備のヘルメットを被せるとエンジンをかけた。

「しっかり掴まってろよ。」

「う…うん。」

小さな手で操一朗の腰にひっしと掴まったなるの顔は、ヘルメットでは見えないが真っ赤になっていた。

・・・・・・婿養子の件、迎える側は大歓迎らしい・・・・・・

 

 

 

♪♪♪

 

 

 

地元の若者に人気のケーキ店に着いて店に入ると、奥のテーブルに見慣れた3人がいた。

「あ、操一朗。」

「ソウ!」

「げ、緒川?」

「なんだ、3人揃って休日ティータイムか?」

和奏、紗羽、来夏が座っているテーブルの隣に、操一朗となるは座った。

「そちらはデートですかい?緒川君」

来夏がなるに下種な視線を送る。なるは恥ずかしがって操一朗の影に隠れてしまった。

「居合の妹弟子とお茶しにきだけだよ。」

「えっと、関谷なる…です…」

「アタシ宮本来夏。よろしく、なるちゃん。」

「沖田紗羽よ、お父さんに連れられて何回かうちの寺に来た事あったよね。」

「坂井和奏。操一朗の従姉弟よ。」

「従・兄・妹、な。」

訂正した操一朗は和奏達のテーブルを見た。

「てか、和奏1人で3つかよ…」

「うん、こないだの発表会のお礼。」

「あぁ、そういえば…」

操一朗はメロンのショートケーキとメロンクリームソーダを、なるはキャロットケーキとミルクティーを頼んだ。

「そういえば、さっき発表会って言ってましたけど、皆さんは何かやってるんですか?」

「わたし達合唱部で、こないだ発表会あったの。」

「ま、アタシと来夏の2人だけだったけどね。ピアノ和奏で。」

「ふ、2人だけで?!緊張して失敗とかしなかったんですか?」

「あ~、それなら来夏はもうきょね…んんん」

動画サイトにまで投稿された黒歴史を言いかけた紗羽の口を来夏は押さえた。

「なる、今学校でなんか部活やってんのか?居合の稽古、最近やってないみだいだけど。」

「あの、よさこいを…」

「よさこい?!」

「って、あのちゃかちゃか鳴らしながら踊るアレ?」

来夏の問いになるが頷いた。

「はい、あのアメリカからの転校生に誘われて…、ヤヤちゃんや、たみお姉ちゃんも一緒に…」

「へぇ~…、お前がそんなアクティブな部活するとはなぁ…」

驚きながら操一朗はメロンソーダのアイスを一口で飲み込んだ。

「あ、そだ緒川、アンタも剣道部無くなったんだし合唱やんない?」

「俺、誰かと歌うのは苦手なんだよ…、……ま、和奏が本格的に入るってんなら入ってやってもいいけどよ…」

「え、なに?最後聞こえなかった」

「他当たれよ。俺はパス」

それから、5人は他愛もない会話をしながら休日の午後を過ごした。

なるは和奏たちとも打ち解け、最後は「和奏おねえさん」「紗羽お姉ちゃん」「来夏ちゃん」と呼び合うまでになった。ちなみに来夏が「ちゃん」付けなのは、年上のお姉さん、と呼ぶには・・・・・言わずもがな。

 

 

 

♪♪♪

 

 

 

そんな休日の翌日、来夏は大智を体育館に呼び出した。

「本当に、いいんだな?」

「くどいよ、あんま女に恥かかせないでよ。」

大智と来夏は互いに見詰め合って・・・

 

「俺が勝ったら本当に沖田と一緒にバドミントン部に入るんだな?」

「入ったげるよ、でもこっちが勝ったら合唱部に入ってもらうからね。」

 

否、昼休みの体育館に張られたネットを挟んで、ユニフォーム姿の大智とジャージ姿の来夏は睨みあっていた。来夏の隣にはやはりジャージの紗羽が、そして、中央には制服の操一朗がいた。

 

 

 

何故こんな状況になっているかというと、喫茶店にて・・・

 

 

「あ、じゃあ田中誘おうよ。高橋先生の送別会の時、歌えてたじゃん」

「あぁ、大智意外といけるぞ。声量も体力もあるし、技術的な練習さえすればな。」

高1からの親友、操一朗の言葉に頷く来夏。

「よし。」

「でも、大智だってバドミ諦めてねぇぞ。」

「う~ん、ならこうしよう。合唱部とバドミントン部、互いに勝負して負けた方が勝ったほうに入る、ってことで」

「勝負内容はどうすんだ?」

「こっちから申し込むんだし、バトミントンでいいよ。」

「へぇ…」

操一朗は来夏のフェア精神に感心した。

「一応言っとくけど、大智は全国ベスト8だぞ去年。勝てるのか?」

「大丈夫、こっちは3人だし。」

「え?私も?」

3つ目のケーキの最後の一口を食べ終えた和漢が自分を指差した。

「お願い!昼休みの10分間だけ!」

パンっと両手を合わせて懇願する来夏。

「運動嫌い?」

「嫌いじゃないけど、沖田さん、私…」

「紗羽でいいよ。ちょっとした遊び程度でいいから」

「ううん、…やるからには勝ちたい。」

紗羽の言葉に意外と負けず嫌いの和奏の闘志に火が付いた。

「うし、なら審判は俺がやる」

「ソウが?」

「元剣道部。合唱部でもバドミントン部でもない俺がやるのが公平ってもんだろ。」

 

 

 

そして今に至る。

 

「じゃあ試合は2点先取。負けた方は勝った方の部活に入る、サーブは合唱部から。いいな?」

操一朗がルールを確認すると体育館の戸が開いて、ジャージに着替えた和奏が入ってきた。

「ちょ、3人かよ!?おい審判。」

「全国クラスの大智が相手なんだ、それくらいのハンデはあって然るべきだろ。それに、これはバドミントン部と合唱部の勝負なんだ。和奏にだって参加する権利はあるぞ。」

「…うし!」

大智は頬を叩いて気合を入れた。すると、和奏の後に続いて、ウィーンが入ってきた。

「ひどいよタイチ、練習があるなら言ってくれないと。」

「バドミントン部なんだって。」

和奏がウィーンを指差し、操一朗の方を向いて説明した。大智も独自で部員集めをしていたようだ。

「こっちは2人だ、バドミントン部だし、いいよな審判?」

操一朗は来夏を見た。来夏は頷き返した。

「よし、バドミントン部は大智とウィーンの2人。」

「ぶつかると危ないから基本下がってて。」

「オッケー。」

大智から予備のラケットを受け取ったウィーンは後衛に下がった。

「合唱部は、和奏、紗羽、宮本の3人。」

「よし。」

「頑張ろうね、和奏。」

「…なんかあたしだけ妙な疎外感が…」

操一朗は右手を挙げた。

「試合、開始!」

操一朗が右手を下げると同時に、和奏達3人が一斉にサーブした。

「3人同時かよ!?~~…、…、ふっ、ふっ、はっ!」

通常のバドミントンではありえない状況だが、大智は冷静にシャトルを見極めて確実に一つひとつ返していった。ラスト1球はスマッシュで相手の穴とも言える来夏目掛けて。

「おりゃ!」

「えいっ!」

来夏は空振り、紗羽は鋭い打球を返したが、和奏の方に飛んだシャトルが離れた位置に今にも落ちそうに…

「和奏!」

「こんのっ!」

操一朗の声に励まされた和奏は飛び込んでシャトルを返球した。

「やばっ…」

3球同時に返球して体勢が崩れた大智は紗羽のシャトルを落としてしまった。これで1対1。勝負は和奏が返したシャトルにかかっていた。

「任せて!」

大きな弧を描いて後方に落ちてきたシャトル。それにあわせ、ウィーンはまさにドンピシャなタイミングでジャンプした。

「とぅっ!」

 

スパァン

 

 

 

カスッ

 

「「「「「あ…」」」」」

「やった、大智見て、刺さったよ!」

 

ネットの網目に挟まったシャトルをウィーンは嬉々として自慢したが結果は・・・・

「勝負有り、合唱部。」

操一朗は和奏達を指して宣言した。

「やったね紗羽!」「ナイス和奏!」「坂井さんすご…え、和奏?」

「紗羽もすごかったね。」

「弓道で、鍛えてますから。」

シュッ、と気障な手の動きで応える紗羽。

「宮本さんも惜しかったね。」

「あ…、うん……」

来夏は明確な疎外感を覚えた。

 

 

 

♪♪♪

 

 

 

「ゴメン、タイチ…」

「いや、ウィーンのせいじゃないって…」

体育館外の階段で項垂れている大智と申し訳なさそうにしているウィーンに、来夏が近付いた。

「泣いてんの?」

「泣くか!……お前、歌でプロとか目指してんのか?」

「あたし?ううん、田中は?」

「俺は大学でも続けて、大会でも成績残して…いずれは……」

「もじもじしてキモいねぇ~?」

そんな大智を紗羽が茶化す。

「なん…、え?」

振り返った大智の目の前に来夏が1枚の紙を見せた。

「バトミントン、続けなよ。その代わり、合唱もちゃんとやってよ。……緒川もね!」

「は?俺もって…」

操一朗が大智の横から覗き込むと、紙には…

 

 

部活新設申請

合唱時々バドミントン剣道部

部長 宮本小夏

 

 

と書かれていた。

「あ、宮本、てめぇ負けても合唱止めるつもりなかったろ!?」

操一朗の言葉に来夏は笑った。

「当然じゃん、その時は、『バトミントン時々合唱、ついでに剣道部』、だったかもね。」

「ったく…、」

操一朗は来夏の強かさに呆れ、セミロングショートポニーテールの髪を掻いた。

「え、え?どういうこと?来夏。」

「ふふん、日本では文武両道と言って文系の部活と運動部を掛け持ちする事が尊ばれているのだよ、ウィーン君。」

 

 

 

 

♪♪♪

 

 

 

翌日、合唱時々バドミントン剣道部の6人は引き続き顧問を願い出た校長の下に挨拶も兼ねた見舞いに行く事になった。ホームで電車を待っている間、大智はラケットを振ってリスト強化、ウィーンは声楽の本で発声練習、そして操一朗は・・・

「…………」

木刀を納めた竹刀袋を括り付けた円柱型竹刀ケースを右肩に背負って周囲に睨みを効かせていた。

「ねぇ~緒川~、あんたそれ傍から見たらヤバイ奴にしかみえないよ~。」

女子トーーーークしていた来夏が操一朗に声をかける

「マジでヤバイ奴が和奏にちょっかい出さないように威嚇してんだよ。」

操一朗は和奏が2度も変な外国人に声をかけられ追いかけられたという話を聞いて、いつにも増して眼鏡の奥の目を光らせ、五感を研ぎ澄ましていた。

電車から降りてくる客にまで睨みながら、操一朗達は病院に向かった。

 

 

 

♪♪♪

 

 

 

病床の校長は包帯やギプスをして見た目こそ痛々しそうだったが、割かし元気そうだった。

「合唱時々バトミントン剣道部?」

「バ“ド”ミントンです。」

「まぁどっちでもいいが。」

大智の訂正を受け流した校長は申請書にサインをした。後は判を押すだけだ。

「あまり私に恥をかかせないでくれたまえよ、我が白浜坂高校合唱部といえばかつては全国大会常連校でもあったんだから。」

「合唱部?」

「声楽部、じゃないんっすか?」

疑問を口にした和奏と操一朗を、校長はじっと見た。

「君達が坂井さんと緒川君?」

「あ、はい。」

「そうっすけど…」

「やはりお母さんの面影がある。緒川君は…、あまりお父さんには似てないね。どちらかといえば、まひる君に似ているかもしれない。」

校長の言葉に顔を見合わせる和奏と操一朗。

「23年前、当時私は一介の音楽教師で合唱部の顧問だった。坂井さんのお母さん、まひる君は私の教え子で、音夜君とも交流があった。」

校長は目を細めた。

「まひる君によって音楽の持つ意味が変わった。当時の私という男は音楽を狭い視点でしか音楽を捉えておらず、生徒達にもそれを強要、押し付けていた。そんな自分が拘っていた音楽が如何に小さいかが緒川君のお父さんによって思い知らされたんだよ。」

 

コンコン

 

「失礼します、校長先生、目を通して頂きたい書類が……、」

大量の書類を抱えた教頭が病室に入ってきた。来夏はあからさまに嫌そうな顔をした。

「こちらをお願いします。」

教頭は来夏たちを一瞥すると、校長の目の前に大量の書類を置いた。テーブルがその重さに少し軋んだ。

「え、こんなに…?」

校長は項垂れた。

「教頭先生、新しい部活の許可をお願いします!」

来夏は校長のサインが入った申請用紙を教頭に突きつけた。

「……はぁ~、こんなものが通るとでも?」

教頭は溜息をつくと手で来夏の手を払った。

「どうしてですか!?」

それに反論する来夏。しかし、教頭は意に介さず、申請用紙をくしゃくしゃに丸めてゴミ箱に投げた。

 

 

ヒュッ      トン

 

 

操一朗は右手で竹刀ケースを握り下から振り上げ、右手首の捻りでゴミ箱に入りそうだった申請用紙を掬い上げた。総重量2kg弱の物を片手だけで素早く、かつ繊細に振った操一朗の眼鏡の奥の目付きは刀のように鋭かった。

「…何のつもり?」

「納得できないっすね。あんたの理論的音楽と俺らのごった煮音楽じゃ方向性が違うかもしんないけど、規則で縛りすぎ自由のない音楽なんて、つまんないんだよ。」

操一朗も抗議した。そして・・・

「…和奏…」

和奏が操一朗の竹刀ケースの上からくしゃくしゃの用紙を拾い上げ広げた。

「っ、坂井さん、貴女は一体何をしているんですか?普通科への転科を認めたのはこんな事をするためではないんですよっ!」

教頭の矛先の収集がつかなくなりかけた時・・・

「あぁ、判子がまだだったね。」

校長は和奏の手から用紙を取ると引き出しから判を出し、サインの横に押した。

 

 

合唱時々バドミントン剣道部が退出した後の病室では校長が書類に目を通しながら昔を思い出していた。

「やはり親子だね。緒川君も、坂井さんも。」

「……」

「何故そこまで頑ななんだね?君だって合唱…」

「今は声楽部です。校長先生、一両日中には終わらせて下さい。失礼します。」

教頭は病室から出ると廊下の窓ガラスに映る自分の顔を見た。

 

「…まひる………………音夜さん………」

 

 

 

♪♪♪

 

 

 

そして夏休み。午後に合唱部の練習を控えていた操一朗は、朝の自主練を終えて、自宅で冷水シャワーを浴びようと浴室に入った。

 

「ぷはぁ」

 

すると水が満たされた浴槽から美路歌露洲(ミロカロス)が上がってきた。

「ミ~カ~、入ってんなら・・・」

「あ~、ごめんごめん。」

ミカは軽く謝ると出て行った。

 

 

風呂上りに操一朗がキッチンに行くとミカが炭酸水を傾けていた。咽を鳴らしながら飲み込むたびにたゆんとゆれる両胸には貝殻のブラに、ゆったりとしたクリーム色のローブを羽織って珊瑚色の帯を締めている。まだ濡れているマリンブルーのロングヘアーがどこか艶かしい。

「あ、操一朗~、これあげる~。」

ミカは飲みかけの炭酸水のビンを操一朗に放った。

「ねぇねぇ、今操一朗って合唱やってんだよね~?」

「あぁ、剣道のついでにな。和奏もいるし。」

「遠目にしかみてないけど、和奏ってばまひるにどんどん似てくるねぇ~。」

「そうなのか?」

「あたしがまひると会ったのって、ちょうど今の和奏と同じくらいの頃なんだよ~。」

「…なぁ、その話ちょっと聞かせて…」

 

キィィィン

 

地下のバイオリンがファンガイアの出現を知らせる音を響かせた。

「悪りぃ、その話は帰ってきてからな!」

「激しく、いってらっしゃ~い!」

 

 

 

♪♪♪

 

 

 

レイバットと共にマシンレイダーを走らせ向かうと、海水浴場から少し外れた雑木林に着いた。

「ここか?」

「うむ、反応は確かにここからだ。」

操一朗はバイクに括り付けたアタッシュケースからベルトを取り出し装着した。

 

ガサガサ

 

「そこか!」

操一朗が音のした方に飛び込むと、バイナップルのような図体をしたファンガイアが陽気に踊っていた。

「パッパー、お前が噂の仮面ライダーKA?」

「…レイバット、何だこいつ?」

「十三魔族の1つ、マーマン族。その中でも日本土着の古来種、河童だ!」

「…あぁ、確かに頭のてっぺんに皿…というか草の受け皿みたいなのがあるな。」

「あのお方からの命令で、お前をKILL YOU!」

河童は周囲の葉っぱをカッターのようにして飛ばしてきた。

「おっと!」

操一朗は地面を転がり躱した。

「挨拶代わりだ!」

操一朗はしゃがんだ状態から一気にダッシュして河童を一発ぶん殴った。

「アウチ!」

河童が怯んだ。

「レイバット!」

「うむ、華激(カゲキ)に行くぞ!」

操一朗は右手でレイバットを掴み、左前腕に噛ませた。

「変身!」

変身中に発生した六角氷柱を突き破り、仮面ライダーレイは河童に突進した。

「ヘイ!」

 

パチン

 

河童が指を鳴らすと、周囲の草がレイの足に絡みつき、レイがありえない方向に吹っ飛んだ。

「ぐあっ!」

数10m先の地面に背中から叩き付けられたレイ。いくら柔らかい土と草が生い茂っていても、体重100kgの重さが仇となり、そのまま自分へのダメージとなった。

「奴は近接戦刀が苦手な様だ。先ほどの葉っぱをカッターの様に飛ばした攻撃は牽制、接近しようとした相手は草を結んで合気の要領で遠くへ投げ飛ばす。おそらく防御力は低いはずだ。だが、今のこの場ではまた草を結ばれる。操一朗、戦場を変えねば。」

「なら!」

レイは手近にあった木を左手一本で握り、力任せに引っこ抜いた。

「おらぁっ!!」

それをバットのようにフルスイングして河童を海岸の方へ、お返しとばかりに吹っ飛ばした。

「ぱっぱぁ~~!」

河童はその図体をごろごろ転がしながら体勢を立て直した。

「どうだ、ここなら草はないからカッターも結びも使えねぇぞ!」

レイは左拳を強く握り締め、河童目掛け振り下ろした。

「大樹鉄槌(ウッド・ハンマー)!」

河童は両手を前に突き出した。

「そんなちゃちな防御で受けきれると…」

しかしそれは防御の構えではなかった・・・

 

「パーー!」

河童の両手の平から熱湯が噴出した。

 

ぶしゃーー

 

「あっぢ~~~~~!!!!」

もろに喰らったレイ。熱湯を浴びた装甲のあちこちが焼け爛れていた。

「んなろぉ~…」

レイが河童を睨む。すると、河童の頭頂部、葉っぱの受け皿に日光を受けて輝いていた。

「やば…」

「操一朗、離脱しろ!!」

 

ドォォォンッ!!!

 

レイバットの叫び虚しく、河童が放ったビームがレイを直撃した。

砂浜を横切り、レイは海に落ちた。

 

「(ぐ……)」

「(マズイ、操一朗は…)」

 

 

 

仮面ライダーレイ、ギガント族を元に開発された戦士はその特性である強靭な腕力と巨体を活かした近接格闘を得意とする。

 

物理的攻撃力は非常に高い、しかし、防御力、とくに特殊攻撃に対する特防が低い。

 

熱湯による攻撃でぼろぼろになっていた鎧はビームによりほとんどが大破。

 

海に放り出されレイは沈んでいった

 

 

仮面ライダーレイこと緒川操一朗は・・・・・

 

 

 

 

 

カナヅチである




なんか弱点っぽいの考えて、湘南って海有名じゃんなら定番のカナヅチにしようと
安易すぎたかな?

マーマン族の河童、見た目はルンパッパです
くさむすび
はっぱカッター
ねっとう
ソーラービーム
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