「くっ、こんな時に眼前暗黒感が…、もうここまでだと言うのか!?」
「諦めちゃダメだ、僕らにはまだ、これがある!」
「はっ!……私たちはまだ、終りじゃない!」
「うん!」
「今こそこの力を、解放する!」
【現代】
4話 落ち込んだり、倒れたり
【優勝!!おめでとう!!白浜坂高校田中大智】
そんなことが書かれたカラフルな横断幕を広げ、来夏とウィーンは歌い始めた。
「全国大会かぁ~…」
紗羽はそんな歌を聞きながら、操一朗の手伝いで柔軟をしている大智に話し掛けた。
「緊張してる?」
「いや、ずっとイメージしてきたから」
大智は上半身を起こすと冷静に応えた。
「いいなぁ、私も大きな舞台に立ちたい」
「弓道か?」
「ううん、私は馬」
「「馬?」」
操一朗と大智の疑問がハモった。
「私、騎手になりたい。全力で走る馬と一緒に、誰よりも早くゴールを目指すの」
紗羽の真っ直ぐなその眼差しに、大智は見蕩れた。が、操一朗は表情を曇らせた。
「へぇ~…、カッコいいな」
「本当に!?」
操一朗は大智の背中から手を放すと来夏とウィーンの方を振り返った。
「おい!あんまはしゃぐな、つーかおめでとうって何だよ?まだ一回戦だぞ」
「優勝するって気概が大事ってこと!」
「その通り!」
「ウィーンの努力を無駄にする気?」
「…んだよ、その斜め上の発想…」
操一朗は肩を竦めた。
「………」
そんな操一朗達を、和奏は観客席の数段上から見ていた。
和奏の頭の中は先日コンドルクインズから渡された手紙の事でいっぱいだった。
「わっかな!」
「…え?」
来夏の声で和奏は現実に戻った。
「一緒に応援しよ、はい、和奏のマラカス」
わざわざ第三音楽室の片隅で埃を被っていたのを引っ張り出してきた来夏は、和奏の手にマラカスを握らせた。(しかも2つ)
「「今、巨大な、て~きに、立向かうのさ~~、はい!」」
和奏はマラカスを手に、歌を降られても呆然としていた。
「………ごめん、私今日ちょっと体調悪くて、先に帰るね」
和奏はマラカスを来夏に返すとカバンを持って立ち上がり、そのまま会場の外へ出て行った。
「あ、おい和奏…!っと、大智スマン、キバっていけよ!」
「おぅ!」
操一朗は大智と拳をぶつけ合わせると和奏を追った。
♪♪♪
操一朗は和奏をバイクの後ろに乗せて『こかげや』まで送った。
「お~、おかえり、早かったな」
「うん、今日私が晩御飯作るね、操一朗も食べていきなよ」
「おぅ」
店内の喫茶スペースも土産物スペースも、今日はずいぶんと忙しそうだった。
「ねぇ、お茶くださる?」
「あ~、はいはい、ただいま!操一朗君、スマンがレジ頼めるか?」
喫茶スペースの接客に追われていた圭介は操一朗に頼んだ。
「うぃ~」
操一朗は制服の上からエプロンを付けると赤い錠前を持ってきたカップルの対応をした。
夕方、その日の営業時間が終り、店内の掃除をしている時紗羽からメールが着た。
「お、大智…、ベスト8か」
♪♪♪
翌日、操一朗は特に何をするでもなく、海岸沿いをぶらぶら歩いていた。
「ん…?」
すると前方に和奏と、足首に包帯を巻いて真っ二つに折れたサーフボードを自転車の荷台に載せてよろよろ歩いている志保を見つけた。
「お~い」
「あ、ソウ君、ちょうど良かった」
年甲斐もなく・・・・・・もとい、ちょっとしくじって怪我した志保を操一朗が負ぶって、和奏が自転車を押しながら山の上の寺に到着した時には汗だくだった。
「助かった~、ありがとね、お風呂入ってく?」
「お言葉に甘えて」
服をびっしょり濡らした操一朗は小さい頃から何度か入ったことがある、勝手知ったる沖田家の浴室でシャワーを浴びた。
沖田家の風呂はまるで旅館のように木製でヒノキの浴槽完備してかなり広い。大柄な操一朗が入ってもかなり余裕がある
「ソウく~ん、来客用の浴衣とタオルここ置いとくね~、服は今乾燥機かけてるから」
「うぃ~、どもっす」
「あ~にしてもあっついなぁ~、ねぇソウ君、アタシも一緒に入ってもいい?」
「あとで紗羽にどやされるの俺なんで全力で遠慮します」
「ちぇ~、ソウ君の身体の発達具合とかじっくり舐るように確かめたかったのに」
(この母にしてあの娘か…)
操一朗が浴衣を着て縁側に行くと、和奏と志保が何かを見ていた。
「あれ、それは…?」
「あぁ、これ昔の合唱部の写真よ」
【祝 合唱部優勝おめでとう】
と書かれた横断幕をバックに、20人近くの生徒が写っていた。その真ん中には・・・
「まひるちゃん…」
「そ、ソウ君の叔母さん。ちなみにこの写真撮ったのはお父さんの音夜さんよ」
「親父が…」
「なんかあの人全国大会直前に急に着いて行くって言い出して、まぁ男手はあるにこしたことはなかったし女子部員達も反対どころか大賛成したんだけど、宿泊先とか学校への届出もあって、結局音夜さん、審査員の1人が音楽会社の知り合いだったらしくて、それに同行する形で着いてきたの」
「…これもしかして…」
操一朗はまひるが抱きついている隣の女子生徒を指差した。
「あぁ、それ高倉先輩。高倉直子って今教頭でしょ?」
「若…」
「みんな合唱部だったんですか?」
「そうよ、全国大会で優勝したの。お母さんから聞いてない?」
♪♪♪ ♪♪♪ ♪♪♪
3年前、2人とも受験を控え、特に和奏は実技や面接を伴なう音楽科受験だったことでピリピリしていた。
そんな2人を気遣ってか、まひるも圭介も何も言わなかった
昔から何度か倒れて入院していたので、二人ともそんなに心配はしていなかった
その日も倒れた一報を聞いて慌てて駆けつけた2人にまひるはいつものように笑ってくれた
そしてすぐに退院したが、だるそうにしていることが多く・・・・・・・・・
♪♪♪ ♪♪♪ ♪♪♪
バイクを洋館のガレージに停めてポケットから家の鍵を取り出すと、小さい頃まひるが和奏とお揃い作ってくれた、鯨のような金魚のようなシャチのマスコット(和奏のはイルカ)が揺れた。
操一朗は地下室へと入っていった。
「あ~、操一朗~、おっはよぉ~…」
欠伸を噛み殺しながら学ランを着た少年が奥から出てきた。
「おう、玄牙(ゲンガー)、夏眠(カミン)から起きたか」
「まぁ~なぁ~」
玄牙(人間態)はくしゃくしゃの黒髪を掻きながら答えた。
ゴースト族は実態を持たない霊魂のみの存在だが、玄牙(ゲンガー)は強力な幻術能力で人の姿に変化している。ただ、玄牙(ゲンガー)は日本に居憑いて久しく(幕末の頃にはもういたらしい)、お盆の時期には力が極端に落ちてしまう体質(霊質)になってしまい、夏眠(カミン)と称して一時的に完全休眠を取っているのだ。
「そうや、こないだ河童とやりあったらしいけど、幻術結界無しでバレなかった?」
「あぁ、祭り会場からは結構離れていたし、五嶋さんがあの辺り一帯を監視してくれてたしな」
操一朗は地下室の奥のガラスケースの前に立った。中には父音夜が使っていたバイオリン、そして先日コンドルクインズから渡された弓が収められていた。
「なぁ、あのバイオリン弓戻ってきたし、弾いても・・・・」
「駄目だ」
「うぉっ、ユノ!」
部屋の隅に佇んでいたモンスター形態の雪之王(ユキノオー)の声が静かに響いた。
「お前はお前のバイオリンを創れ。練習なら五嶋から練習用にと買い与えられたのがあるだろう」
「そうだけどよ………」
操一朗は幼少期からバイオリンに関する書物を読み漁り、五嶋に頼んで知り合いの工房見学にも何度か行っていた。
ただそれだけなのに、操一朗は普段の素行や剣道、戦闘スタイルとは真逆の繊細さと手先の器用さ、一種の天賦の才とも言える才覚を発揮し、今では中の上程度のクオリティのバイオリンを作ることができた。ただ、雪之王(ユキノオー)、玄牙(ゲンガー)、美路歌露洲(ミロカロス)の前で弾いてみても音夜が作り上げたバイオリンには及ばない、という評価だった。
「自分で言うのもなんだが、技術はもう足りてんだよ、あとは材料だと思うんだよ………」
「そうか、ならばそれに専念しろ、そのバイオリンは我らの許可無く使用することはならん」
ユノはその巨体から響く声で操一朗に言い聞かせた。それだけ言うと雪之王(ユキノオー)は目を閉じまた眠りについた。
「んじゃ、俺は夜の散歩行って来るから、なんかあったら呼んでくれ」
玄牙(ゲンガー)は足元の黒い影に溶け込む様に消えた。
「はぁ~…」
操一朗は溜息を吐いた。
バキバキbeating now~!かっ飛ばしてkicking now~!
着メロが鳴り、操一朗はガラケーの中でもさらに希少種、白と緑のスライド式携帯を取り出すと上部をスライドさせて電話に出た。
「もしもし?」
『あぁ、操一朗君、圭介だけど。実は親戚が急病でそっちの畑手伝いに行く事になってな、それでその間こっちに泊まってくれないか?もう子供じゃないって言ってるけど…やっぱり女の子独りだけってのは…』
「ん、わかった、しばらくそっちに泊まる。どんくらい?」
操一朗は即答した。
「2~3日くらい、それともう一つ頼みが…」
「………え?」
♪♪♪
その日は台風が直撃する予報がテレビの天気予報で繰り返し伝えられていた。
「………」
空を見上げながら操一朗はまひるが倒れた日を思い出していた。
「操一朗」
操一朗の前に停まった軽トラから作業着姿の五嶋が声をかけた。
「おぅ、さっき叔父さんから和奏が補習行ったって連絡あったから、さっさと済ませよう」
操一朗助手席に乗ると五嶋は車を出した。
「さっきは何ガラにもなく黄昏ていたんだ?」
「ん~、いや、まひるちゃん、なんで病気の事行ってくれなかったんだろうなぁ~、ってさ」
「………」
五嶋ハンドルを握る手を握り直した。
「まひるも、音夜もだが、あれで中々頑固でな…、お前も和奏ちゃんも受験を控えていたし、あいつなりに気を使ったんだ。お前達は納得行かないかもしれんがな」
操一朗は窓の外を眺めながら先日コンドルクインズから渡された手紙に書かれた内容を思い出していた。
♪♪♪ ♪♪♪ ♪♪♪
「これからは、和奏と操一朗と一緒に歩きたいの。その健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、哀しみの時も、そんな歌が和奏と一緒なら作れる気がする。私にとって歌は…、愛を伝える言葉だから。そして兄さんは私に大切なことを教えて遺してくれた、それを操一朗に伝えていきたいの。2人に伝えたい想いが、歌に、メロディになってそれを一緒に奏でることができたら…………、そして、2人の歌を、曲を聴くことができたら……、私の人生は、百点満点です」
♪♪♪ ♪♪♪ ♪♪♪
「よし、これで終わりか」
一仕事終えて緒川家まで戻り、額の汗を拭いながら五嶋は一息ついた。
「つーか、陽子さんの予定日今日だろ、軽トラ頼んどいてあれだけど、大丈夫なのか?」
「なに、子供も心配だが、その前にもっとの手のかかる長男(お前)の面倒もみなきゃいかんしな」
ブー ブー ブー
五嶋の携帯が鳴った。
「私だ、はっ?!うむ、!わかった!!」
珍しく動揺した五嶋は携帯を切ると操一朗の肩を掴んだ。
「そ、操一朗!陣痛が、陣痛が…」
「あぁ、わぁ~た、わぁ~た。いいから行けって」
「スマン!」
五嶋は軽トラに乗ると急発進させた。
「五嶋さんとこに子供か…、男と女どっちだろ………」
♪目~に見え~る、不安を数えて~~…♪
今度は操一朗の携帯が鳴った。相手は紗羽だった。
『あ、ソウ。今から学校で田中のバドミの祝勝会するの、ケーキもあるから来てよ』
「あ~、悪ぃ、ちょっとやんなきゃならん事があってな」
『え~、和奏も用事あるって言って欠席してんだよ~、2人して何してんだよ~』
来夏の声が電話の向こうからした。
「別に何もしてねぇよ、しばらく和奏ん家に俺が泊まるだけだ」
『は?それってどういう…』
紗羽の言葉の途中で操一朗は電話を切った。
「さて、」
操一朗は頼まれ事をさっさと済ませてようと袖を捲くった。
♪♪♪
「ふぃ~、」
用事を済ませた操一朗は空を見上げた。
「レイバット」
操一朗が呼びかけるとレイバットが洋館から飛んで来た。
「ちょっと和奏迎えに行ってくる」
「うむ、我のレーダーでもそろそろ台風が直撃すると算出されている」
「いや、それ単に気象庁のデータベースにアクセスしただけだよな」
レイバットは高性能PCとしても活用できる。某都市の右側相棒には及ばないまでも、大抵のことは検索できる。
バイクに跨り走り出した操一朗を見送りながら、レイバットは物思いに深ける。
「…そういえば、まひる嬢が亡くなったのもこんな天気だったな………」
♪♪♪ ♪♪♪ ♪♪♪
白浜坂高校の受験日、和奏はぴりぴりしていた。
「お母さん、合羽は~?出しといてって頼んだでしょ」
「…あ、ごめん…」
「自分のだろ、お母さんに頼まないで自分で用意しなさい」
圭介の言葉を無視して、和奏は傘を持って靴を履いた。
「受験票持った?他に忘れ物はない?」
「ん~…、ない」
ガタンッ
和奏は口調も荒く玄関の戸を閉めた。
「あ、待って」
小雨降る中、まひるはそのまま和奏を追いかけた。
「何?」
「ほら、これ」
まひるが渡したのは合格祈願のお守りだった。
「…もう濡れるから早く戻って」
「ぁ…、和奏、いってらっしゃい、頑張ってね」
まひるの言葉に、しかし和奏は振り返らないで歩いていった。
「まひる嬢」
「あぁ、レイバット。なんだか久し振りだね。見てたの?」
「大丈夫なのか?先日倒れたと聞いたが」
「大丈夫だよ、みんな大げさなんだから…。それより操一朗は?」
「うむ、あいつも一般受験に向かった。何だかんだで音夜の息子だ、本番には強い。合格は難くないだろう」
「そっか………、高校に入ったら、また…、3人で…音楽を………………」
「まひる嬢?」
バタンッ
まひるは濡れた路面に倒れた。
「まひる嬢!!」
♪♪♪ ♪♪♪ ♪♪♪
「うわ…、やっば合羽忘れちゃった…」
和奏はスーパーから出たところで傘を差していたが、雨風が強く、意味が無かった。
がしゃん がしゃん
「え………?」
和奏が後ろを振り返ると、右目の無い、隻眼の鎧武者が歩み寄ってきた。
♪♪♪
「うゎ、結構ヤバイな…」
操一朗は視界がやや不良な状況でマシンレイダーを走らせていた。
キィィン
「っ!こんな時に?!」
すぐにレイバットがベルトが入ったアタッシュケースを持って飛んで来た。
「操一朗!和奏嬢も心配だろうが今は、ギャブリッ!」
「わぁ~ってる!」
レイバットが噛み付き、バイクがマシンレイダーになると、操一朗はスピードを上げた。
すると、前方に異様な空間が周囲と隔離されたように広がっていた。玄牙(ゲンガー)の幻術結界とは似て非なる感じがした
「あそこか!」
「あの結界…、まさか………」
操一朗とレイバットは結界に突っ込んだ
「おい…、あそこに倒れてるのって…」
操一朗がファンガイアの出現地点に辿り着くと・・・・・・・
和奏が濡れたアスファルトに倒れていた
「…~っ!!」
操一朗はベルトを装着するとレイバットを掴んだ。
「待て、音夜、奴は…!」
「変身ッ!!」
仮面ライダーレイは隻眼鎧武者に突っ込んでいった。
「今のレイか…、」
「大樹鉄槌(ウッド・ハンマー)!!」
パシン
ピシィッ ビキビキビキビキ
左腕を鉄槌と化して振り下ろす仮面ライダーレイの得意技を鎧武者は片手で受けとめた。ダメージはそのまましたのアスファルトに伝わり、鎧武者を中心に10mにもおよぶ亀裂が入った。
「なるほど、完成されたレイの鎧の力に、装着者の身体能力も中々高い」
鎧武者はレイの拳を掴むと軽く反対側に放り投げた。
「ぐはっ…」
レイは地面に叩き付けられた。
「おいレイバット、アイツんこと何か知ってんのか?」
「あぁ…、奴は………」
レイバットはベルトに装着された状態で静かに、衝撃の事実を口にした。
「音夜を殺し、まひる嬢が病弱になった原因だ。」
「なん…、だと………」
「キバット族の模造品が、未だに活動していたか」
「当たり前だ!貴様、今度は和奏嬢を…」
「いかにも、あの女の娘なれば、我の下に連れて行く」
「………けんな…、」
レイは拳を握り締めた。
「操一朗、ここは和奏嬢を連れて逃げ…」
「ざけんなッ!!!」
レイはアスファルトに拳を叩きつけると立ち上がった。
緒川家地下室
「む…、」
雪之王(ユキノオー)は瞑っていた目を見開いた。
ガラスケースに収められたバイオリンが異常な高周波を発していた。
「マズイ…、玄牙(ゲンガー)!美路歌露洲(ミロカロス)!」
ガシャァァン!
ガラスケースが割れ、中のバイオリンが外に飛び出した。
♪♪♪
「ああああああああああああああ!!!!!!!!」
レイが雄叫びを上げ、その手に音夜のバイオリンが握られると、それは柄の無い、剥き身の大太刀となった。
「馬鹿な!?それは…、」
レイバットは驚いた。
「…む、やはりお前達が持っていたか………」
隻眼鎧武者もその大太刀に注意を払った。
「ぅぅぅぅぅぅ………」
大太刀を持った仮面ライダーレイは、白い全身がくすんだ灰色となり、両腕に巻かれた鎖、カテナは所々千切れて半ば解けかけた。
ジャラ ジャラ ジャラジャラジャラジャラジャラ
アスファルトに鎖を擦らせながら、レイは隻眼鎧武者に歩み寄り、速度を上げ、疾走した。
「ぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!」
攻めの牽制も型も何も無い出鱈目な太刀筋でレイは隻眼鎧武者に斬りかかった。
ガキィ、ッイン
「ぐむぅ…」
両腕を交差させ防いだが、鎧の一部が欠けた。
「操一朗!その刀を離せ!これ以上は…」
「ゥわァぁァァぁァァッッッッ!!」
しかし、レイバットの声も操一朗の耳には入らなかった。
♪♪♪
濡れたアスファルトの冷たさを感じながら、和奏の脳裏にはまひるが亡くなった日のことが鮮明に甦っていた。
面接試験中に母が倒れたという急報が入り、同じく筆記試験中だった操一朗共々病院に駆けつけた時には・・・・・・
父の圭介がいた。
五嶋がいた。
そして朝と同じ服装のまひるがいた。
ただ、違う点は・・・
身体にはチューブが繋がれ、顔色は蒼白、そして、息をしていなかった
和奏は何度もまひるの身体を揺すった、何度も、何度も、
操一朗が止めても何度も何度も
死んだ母がだんだん冷たくなるのを感じて、和奏は病室を飛び出した。
「言えなかった、行ってきますももごめんなさいも、ありがとうも、もう一緒に歌えない…」
廊下の椅子に突っ伏し、和奏は嗚咽を漏らした。
そんな和奏の側に座った操一朗も、拳を強く握り締めていた。爪が喰い込んで血が滲むくらい
♪♪♪
「AAAAAAAAAAA!!!!!」
仮面ライダーレイ、操一朗は剥き身の大太刀の茎(ナカゴ)を強く強く、握りしめていた。
父を、叔母を、そして今、最愛の家族を奪おうとする、
テ キ ヘ ノ 憎しみ ヲ コ メ テ
レイの右手からは、まるで涙の様に、赤い血が、滴り落ちていた。
次話はなるべく今月中には載せます