第1話 躓いたり、本気だったり
第1話 躓いたり、本気だったり
【23 years ago】
音夜とまひるの前に現れた白い戦士はバットファンガイアに立向かって行った
「はあああ!」
白い戦士は連続パンチで攻めて攻めて攻めまくった
ガッゴッドグ!
「む…、く…」
バットファンガイアは防戦一方、白い戦士は止めの一撃を入れようと距離を取って力を溜めた
「はぁぁ…、ぐっ!」
シュゥゥゥ バチパチバチパチ
突如、白い戦士の全身から白い煙が上がり火花が散った
「人間、ここは退いてやる!」
バットファンガイアは翼を広げると飛んで逃げて行った
♪♪♪
白い戦士はベルトを外すと鎧が解かれ、一人の男が満身創痍の状態で現れ、その場に膝をついた
「はぁ…はぁ…」
「おいアンタ」
音夜はまひるに支えられながら痛む身体を押さえながら近付いた
「…一般人か、ファンガイアに生身で立向かうとは無謀すぎるぞ、次は無い。とにかく逃げろ」
男は携帯を取り出すと音夜たちを無視してかけた
「なんだと…」
音夜はまひるの支えを振り払って男の肩を掴んだ
「そういうアンタもずいぶんボロボロだな。さっきの鎧がどうやらファンガイアとかいうあの化け物に有効らしいな。俺が有効活用してやる、貸せ」
「何?」
「俺ならもっと上手く使える、いや、お前が下手くそすぎるのか?」
「…」
男は携帯をしまうと音夜に向き合った
「言ってくれるな、このレイの鎧システムはその辺の一般人が簡単に使いこなせるものではないぞ」
「ならば問題ない、俺はその辺の一般人とは一線を隔す男だ」
「ファンガイアにあっさり吹っ飛ばされたくせに大言壮語も大概にしろ」
「「あぁん?!」」
2人は額をつき合せて睨みあった
「ちょ…、兄さん!」
まひるが2人の間に入って無理矢理引き離した
「…すまない、少々冷静さを欠いていた。ここまで目撃してしまっては最早隠し立てはできんな、あいつらについて説明しよう」
♪♪♪
「五島一彦、27歳だ。まずは敬語を使え」
WMC(ワールド・ミュージック・カンパニー)ビル最上階社長室に案内された音夜とまひるは名刺を渡された
「…CEO…」
「しゃ、社長さん?」
「いや、社長は父だ。俺は最高経営責任者だ」
2人は目の前に悠然と座っている男、五嶋の正体に驚いた。
「さて、まずあいつらだが、やつらはファンガイア。世界各地に存在する魔族、そのほとんどを全滅させて頂点に立った吸血鬼の最上位種だ」
「は?なら奴らは人間の生き血を啜るのか?」
「いや、奴らのエネルギーー源はライフエナジー。人間の生命エネルギーそのものだ」
「え、じゃあ…」
「あぁ、吸われた人間はガラスの欠片となって死ぬ」
「…」
「…っ」
五嶋の言葉に音夜とまひるは息をのんだ
「ファンガイアは普段は人間に化けて隠れている。思考や価値観は人間のそれと大差はないが、プライドが異様に高い」
「なんか兄さんみたい」
「は?あんな化け物と一緒にするな」
「うむ、確かに」
「おい五嶋」
年齢的にも社会的にも立場は上なのだが、音夜は五嶋に対して一歩も退かなかった
「今も我々の社会に隠れて暮らしているファンガイアはそれなりの数がいる」
「は?あんな化け物がその辺にうじゃうじゃいるのか」
「ちょっと、怖い…」
「いや、そのファンガイア達はライフエナジーを捕食しない。ファンガイアの中にもそういう穏健派がいる。我々“青空神教(アオゾラシンキョウ)”は本来ファンガイア殲滅のための組織で前身の組織は平安の頃から活動していた。有名なところだと、安倍清明だな」
「ほぅ」
「そんな昔から…」
五嶋は小休止という感じで立ち上がると紅茶を入れて二人の前に置いて自分でも一口含んだ
「人の捕食を止めないファンガイアと戦い、捕食しないと誓約を交わしたファンガイアと共存を図る、とここまではいいか?」
「あぁ」
「はい」
音夜とまひるが頷くと五嶋は続けた
「最近一部のファンガイアが力を付けてきて、それに対抗するために開発したのがシステム仮面ライダー・コードネーム:レイ」
五嶋は先ほどのベルトを机の上に置いた
「けど、あんまり有効な手段では無かったようだな」
音夜は鼻で笑った
「まだ開発中なんだ。これはプロトベルト。本来ならシステムのエネルギーを制御する人工知能を搭載したロボットを装着することで完成するのだが、それが…」
言いかけた五嶋の頭上からド迫力な声が響いた
「フンッ、ずいぶんと無様な姿で帰ってきたな、ゴシマよ」
白い機械蝙蝠がカッシャカッシャと羽ばたきながら降りてきた
「…これがそのロボット、“レイバット”だ」
五嶋は額に手を当てて呆れた様に息を吐いた
「キバット族というファンガイアの王の鎧を司り、魔皇力という魔族のエネルギーや潜在能力を引き出す力を有している一族を基に創りだした人造キバット族だ」
「フン、人間如き低種族に生み出されたとは、我が人生最大の汚点。しかし、我という存在を生み出したことは、貴様ら人間の誇るべき最大の功績だ」
「…なるほど」
「未完成…、というか完成していても一緒には戦えないねぇ~」
音夜とまひるはレイバットを見上げて溜息をついた
「AI製作過程で協力魔族、キバット族の族長をベースにしてそこからシステムに合わせて調整したらこうなってしまったのだ…」
五嶋は懐からリモコンを出すとボタンを押した。するとレイバットは大人しくなった
♪♪♪
「まだプロト段階だからこうしてリモコン1つで機能停止したりオートモードにできるんだ」
「なら最初からそうすればいいだろ」
「うんうん」
「いや、そうするとベルトの性能を100%出せないんだ。せいぜい60%、とてもじゃないが倒すまでは至らないし、生半可な力は無意味だ」
五嶋はレイバットとベルトをアタッシュケースに納めた
「人工知能の学習装置は機能しているから自立状態で可動させておけば何らかの変化があってベルト機能を完全に引き出し、尚且つ共闘できる存在になると思うのだが…」
五嶋は紅茶を一気に飲み干した
「さて、話はここまでだ。今夜のことを一切他言しないという誓約書にサインをしてもらおう。これはお前達の身を守る意味でも必要なことだ」
五嶋は2人の前に書類と羽ペンとインクを置いた
「あ、はいじゃあ…」
「待て」
まひるが書こうとするの音夜が止めた
「どうしたの、兄さん?」
「書くのは誓約書ではない、契約書だ」
「何を言っているんだ?」
五嶋は首を傾げた
「そのベルトのテスターに、この俺がなってやる、という契約書だ」
「…何を言い出すかと思えば、どうやらお前は戯言を言う癖があるらしいな」
「そういうアンタは遠回りな物の言い方しかできんらしいな。誓約書にサインさせるだけならベルトの件(クダリ)は必要ないだろう。しかしベルトやさっきの白い機械蝙蝠のことまで、まるで愚痴のように話たということは、お前の中に始めから俺にテスターをさせようという腹積もりだったんだろう?」
音夜の言葉に五嶋は肩を竦めた
「ご名答。お前の身体能力や状況判断力、そして物怖じしないふてぶてしいまでの性格、ある意味レイバットに対等の立場に立てるのはお前くらいだと、ここに案内する前から思っていた」
「でも兄さん…、つまり、あの怪物、ファンガイア?と戦うってことなんだよ、危険なんて言葉じゃ足りないくらい、危ないことなんだよ…?」
まひるは音夜の制服の裾を引っ張った
「まひる、俺とお前はたった2人きりの兄妹で家族だ。これからの人生、俺はお前を守るだけの力が欲しいんだ。物理的な力だけじゃなく、社会的なものも含めてな」
音夜は言葉の最後だけは五嶋の向けて言った
「…無論、テスターになってくれるのならばそれ相応の報酬はもちろん、社会的にも色々と援助ができる。これでも一企業の実質トップだ。各方面にもコネクションがある」
「……」
まひるは手を放した
「では契約だ」
♪♪♪
契約金代わりにバイクを高性能にして返すという五嶋の提案を受けて、会社の車で送迎されて洋館に帰ってきた音夜の手にはアタッシュケースがあった。中にはベルトが納められていた。レイバットは最終調整を今夜中に終えて翌朝こちらに寄越すと五嶋が言っていた
今夜は2人とも心身ともに疲れていたので夕食も摂らず寝床についた
「…」
音夜はドアの外に気配を感じた
開けるとそこには寝巻き姿で枕を抱きしめたまひるが立っていた
「あの…、兄さん…」
「…ふぅ、もう高3だろ」
音夜は呆れながらもまひるを中に入れた
「兄さん!」
まひるは枕を放って音夜に抱きついた
「…ファンガイアって化け物と戦うんだよね?」
「あぁ」
「危ないよね?」
「だろうな」
「……死んじゃうかも、しれないよね…?」
「…まひる……」
音夜はまひるの震える華奢な両肩を抱いて自分から引き離して、右手で顎を上に持上げた
「…っ」
「…」
そして唇を重ねた
唇を離すと音夜は口を開いた
「それは何があっても絶対にない。俺は死なない、お前も死なせない、2人で生きていくんだ」
「………うん、」
まひるが頷くと、2人はベッドに入った。すぐに2人分の寝息が部屋に、静かに、響いた
♪♪♪
翌朝、まひるは音夜より先に起きた。隣では静かに兄が寝ていた
「おはよ、兄さん」
まひるは音夜の額にキスをするとベッドから抜けて浴室に向かった
この家を建てた緒川家のご先祖がやたらこだわった浴室は広く、まひるはやや冷えるタイル張りの床を踏みしめてシャワーの真下まで歩いた
レトロな蛇口から出るぬるいシャワーを浴びながらまひるは今朝の朝食メニューを考えていた。昨夜は2人とも何も食べていなかったし、食の細い音夜も流石に今朝はしっかり食べたいはずだ
「あさごはん何にしよっかなぁ~」
「我は氷を所望する」
「はっ!?」
まひるが浴室の上を見上げると、レイバットがカッシャカッシャと飛んでいた
「にしても、貴様は中々美しい体をしているな、特にうなじの曲線美がいい。今すぐ噛み付きたいくらいだ」
「き、きゃぁぁぁ~~~!!」
まひるの悲鳴が館中に響いた
「どうした!」
すぐに音夜がパジャマにナイトキャップを被った状態で浴室に飛び込んできた
「…っ、お前!」
「レイバット様だ、無礼者め呼び捨てにするな」
「黙れエロバット!女のシャワーを覗くとはずいぶんと高尚な趣味を持っているな」
「フン、人間の裸体なぞ興味はないが、この女に関しては芸術鑑賞の一環だ」
「まひるの体が芸術品だという評価だけは俺も同感だ。からくりモドキの分際でよくわかっているじゃないか」
「とにかく2人とも出てってぇ~~~~!!」
まひるの投げるシャンプーボトルと石けんが当たった音夜とレイバットは揃って浴室から飛び出した
♪♪♪
「ゴシマが言ってたが、お前が我と戦うらしいな、人間」
「緒川音夜、日本を越えて世界にすらその名を響かせる男の名だ。特別にその名で呼ぶことを許してやる。俺直々に許しを得たのは大変に名誉なことだ。まひる以外ではお前で2人目だ」
まひるの作ったコンビーフと玉ねぎをマヨネーズで和えたのをトーストで挟んだサンドイッチとキャベツのウスターソース炒め、ミルクの朝食、そして朝一の宅配で届いた天然氷(差出人は五嶋)を食べながら“2人”は話していた
「というか、貴様ら兄妹は何故(ナニユエ)我を人として数える」
「それだけ口喧しいロボットや畜生もいないだろ、お前の数え方は“人(ニン)”だ」
音夜の言葉にレイバットは黙った
「兄さ~ん、そろそろ行かないと」
「あぁ」
朝食作りと平行して行なっていた洗濯物を干し終えた制服エプロン姿のまひるが台所の勝手口から音夜を呼んだ
「レイバット、俺達は今から学校に行く。人間と言うのがどのような生き物か興味があるなら勝手に尽きてきてもいいぞ。ただし、空から覗くだけだぞ。一般人への説明がし辛いからな」
「フン、人間が如き低俗種族の営みなぞ、我は興味ないわ」
レイバットは氷を食べ終えると開いていた窓から飛んでいった
「…なんて自分勝手な奴だ」
「兄さん、同属嫌悪って言葉知ってる?」
♪♪♪
「まひる先輩!」
朝、バイクを停めて校舎へ歩いていると、2人の後ろから女子生徒が駆け寄ってきた
「あ、志保ちゃん。おはよ~」
やや癖のあるショートヘアの女子生徒、能登志保はまひるの前で頭を下げた
「コンクールのメンバーに推薦してくれてありがとうございます、あたし頑張ります」
「音楽は頑張るんじゃなくて、楽しむものだよ~」
「はい!」
志保はまひるの隣に立つ音夜に気付いた
「あ、緒川先輩、おはようございます」
「あぁおはよう。今日も良い声をしているな。長閑な森林に響く春の香りのようだ」
「…相変らず歯の浮くような台詞がさらりと出てきますね、しかも朝から」
「当然だ、俺の口からは二酸化炭素と女性への賛美が出ているのだ」
「じゃあ兄さん、私たち今日は市民ホールで全体練習の日だから」
まひると志保は音夜に手を振りながら駐車場の方へ向かった。それを見送った音夜は…
「さて、さぼるか」
その足で屋上へ行った
♪♪♪
「おい、人間」
屋上で音夜が昼寝をしていると、上からレイバットが飛んできた
「なんだ白いの、俺は今世界の雑音から離れて自らを研ぎ澄ませている最中だ、邪魔をするな」
「貴様は何故ベルトのテスターを引き受けた?」
「……」
「ファンガイアと関わりたくない、これが普通の人間の反応ではないのか?自分の脅威となるものには近付かず、ただ傍観するだけ。我はここにいるコウコウセイとかいう低俗種族の中でも一際愚行を犯す者達を見てきたぞ」
「たしかにな」
音夜はゆっくり上体を起こした
「宿題が面倒だからやらずに今日を迎える、負けるのが怖くて勝負から逃げる、どれもよくある高校生のことだな」
「そうだろう?」
「けどな、」
音夜は立ち上がってレイバットに目線を合わせた
「俺は、俺の五線譜にはそんなマイナス事象は描かれない。俺の人生(おんがく)は五線譜すら自分で引く、そして弾き語り、幕さえも自分で退(ヒ)くだろう」
「なんだその自己中心的な主張は」
「自己中心上等だ、それでこそ音楽(じんせい)ってのは面白いんだろうが」
「フッ…」
レイバットは目の前の男に見えた潜在能力の旋律に思わず笑った
人は誰しも生まれ育った環境にある程度妥協した上で自分の人生観や針路を決める。故に潜在能力があってもそれを埋もれたままにして、いずれは破棄してしまう
しかし、この緒川音夜は違う
レイバットはどこか人間という種族に飽きて呆れていた。しかし…
「どうやら、面白そうな奴だな、“お前は”」
レイバットの二人称が変わった
「当然だ、それを嫌と言うほど分からせてやる。戦いの中でそれをお前に分からせてやる。それと、俺のことは名前で呼べ、音夜だ」
「では早速見せてもらおう、オトヤ」
「どういうことだ?」
「昨夜のファンガイアがまた出現したぞ」
「それを早く言え!」
♪♪♪
音夜とレイバットが校門から出ると、目の前にバイクが止まった。それは昨日五嶋に預けた愛車だった
「緒川、乗れ!」
「あぁ。それと、俺のことは音夜と呼べ、誇っていいぞ3人目だ」
音夜は乗って来た五嶋からヘルメットを受け取り被ると、一気に速度を上げた。レイバットは音夜の肩にとまった
「で、一体どこだ」
「ウム、ここから東北東へ3kmほどだな」
「おいそれって…、市民ホールじゃないか!」
「あぁ、お前の妹が行くとか言っていた場所だな」
「…!!!」
音夜はスピードを上げた。しかし、既にメーターは振り切っていた
「お前はずいぶんと妹に執着しているな、そういうのをシスターズノイズ…、嫌違うな、シスターコンプレックスというのではなかったか?」
「まひるは俺にとって唯一の家族、文字通り血を分けた兄妹だ。俺の一部どころか俺そのものだ」
「そういえば、お前らの両親というのは…」
「いない。俺たちはお祖父ちゃんに育てられた。両親はすでに他界している」
「そうか」
「お祖父ちゃんが言っていた、『男なら女を守れ、兄なら妹を幸せにしろ』ってな」
レイバットは音夜の中の潜在能力が膨れ上がるのを感じた。レイバットは音夜の肩からバイクに飛び移った
「何をするつもりだ?」
「ゴシマから説明されたろう、我の力を。それを見せてやろう」
レイバットは口を開いてバイクに噛み付いた
「ギャブリ!」
レイバットの牙からバイクに魔皇力が流し込まれると、バイクに鎖が巻きつき、次の瞬間には白を基調として緑と青のラインが走った白緑青(ビャクロクショウ)色の外装になった
「これは…」
「マシンレイダー。魔獣ケルピーを基に開発された鋼鉄の馬とでも言ったところか」
「はっ、最高だな、こいつの駆動音(ビート)は!」
♪♪♪
市民ホール上空には、黒い影が滞空していた
「来たな!」
音夜とレイバットを確認すると黒い影、バットファンガイアは降りてきた
「ここに居ればお前は必ず来ると分かっていた、昨夜貴様に付けられた傷の借り、ここで返させてもらう。そのついでに、あの女のライフエナジーも頂くとしよう」
「それがお前のレクイエムのイントロでいいんだな?」
音夜はマシンレイダーから降りると、制服を翻し、ベルトを露わにした
「行くぞ、レイバット!」
「行こうかオトヤ、華激(カゲキ)な!」
音夜は左手でレイバットを掴んで垂直に立てた右前腕を噛ませた
「ギャブリ!」
「変身!」
レイバットをベルトの止り木に逆さまに装着すると、白い冷気が音夜を包み、それが白い腕に振り払われると、白い戦士『仮面ライダーレイ・プロトタイプ』が立っていた
「来い!人間如きがファンガイアに勝て…、っ!」
レイ・プロトタイプは一気に間合いを詰めてバットファンガイアを殴った
「な、なんだこの力は…、昨夜はこれほどでは…」
レイ・プロトタイプはさらに攻めた。パンチやキックの連打は、激しくメタルサウンドやロックの様で、しかしどこか華やかでクラッシクや雅楽すら彷彿とさせるものだった
「ならば!」
バットファンガイアは口を大きく開けると、不快な超音波を発声させた
「な、なんという不協和音…」
耳を塞いで身動きが取れないレイ・プロトタイプのベルトからレイバットが飛び出した
「ぶるぅあぁゎぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!!!!!」
レイバットが発した怒号がバットファンガイアの超音波を掻き消した
「なんつー声だ…」
「さて、幕退きといこうか。オトヤ、白い笛を我に」
「あぁ」
レイ・プロトタイプはバットファンガイアを思い切り殴り飛ばし、ターンを決めた。そして腰のホルスターに差された笛を取り、レイバットに咥えさせた
「ウェイカップ!」
バットファンガイアは自分に背中を向けているレイ・プロトタイプ目掛け突進してきた
足踏みでリズムを取りながら、レイ・プロトタイプはバットファンガイアの動きに合わせ、素早くターン、左上段の回し蹴りを喰らわせた
「ぐはぁ!」
昨夜音夜にヘルメットをぶつけられて傷ついていた部分にキックを喰らったバットファンガイアは、ステンドグラスを全身に浮かび上がらせて苦しみだし、次の瞬間、粉々に砕け散った
♪♪♪
「あれ?兄さん、それに…」
それから数時間後、練習を終えたまひるがホールから出てくると、音夜とレイバットが待っていた
「どうしたの?」
「おい、レイバット」
「ウム」
音夜に促され、レイバットはまひるの目の前に飛んできた
「今朝は申し訳なかった許してくれ、まひる嬢」
レイバットは目を閉じて身体を前に傾け謝罪の意を表した
「あ~、うん別にいいよ~」
「軽っ!」
「だってこれからは一緒にあの館で暮らすんでしょ?なら家族も同然じゃん、いいよ、許してあげる。その代わり、兄さんの力になってあげてね」
「…承知した、まひる嬢」
緒川音夜とまひるの兄妹2人きりの楽譜(生活)に、新しい音符(家族)が増えたのであった
ちょこちょこ声ネタとか挟んでいきます
プロトレイは、両腕にカテナがなく、全体的に細身です