直接関係あるものないもの多数
レイバットが緒川家に住むようになって一ヶ月程経った夏休みのある日、館中に弩声が響いた。
「ぶるぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」
【23 years ago】
2話 ヴィクトリーだったり、マーメイドだったり
「な、何だ一体?!」
音夜が慌ててキッチンに入ると、レイバットが激しく感動していた。
「なんという芳醇な香り!瑞々しい果肉!表皮の網目模様も良く見れば緻密に計算された自然界の芸術作品!これを我の持てるあらゆる言語を駆使して表現するならば…、そう!天・下・御・免!!!」
「まひる、レイバットは何しているんだ?」
「えっとね、五嶋さんから貰ったお中元のメロンを切って食べようとしていたら、つまみ…というか齧り食いしちゃって、そしたら……」
「マイハート、キャッチッ!!!ビクトリーーーーー!!!」
レイバットは叫びながらVの軌跡を描きながらキッチンを飛び回っていた。
「にしても…、五嶋もずいぶんとメロンを貰ったもんだな。」
テーブルにはメロンが大量に乗って、向こう側が見えないくらいだった。
「懇意にしている世界樹製薬がどういう理由か知らんが、大量にメロンをお裾分けに来たんだ。」
「なんだ、五嶋いたのか。」
大量のメロンが遮っていたので、向こう側で五嶋がまひるの入れた紅茶を飲んでいたに気付かなかった。
「あぁ、こないだのテスト結果と、報酬のついでにな。」
あれから音夜は週に2~3回、五嶋の会社の研究室に通い、レイシステムの調整や訓練、数体のファンガイアの討伐をしていた。
五嶋は結果をまとめたファイルと封筒を音夜に渡した。
「たしかに。」
「さて、しばらく俺はこの町を離れる。」
「なんだ、優雅に避暑か?」
「そうしたいのはやまやまだが、関係各所への暑中見舞いも兼ねた挨拶回りだ。呉島家や園崎家、それに『猛』という組織にもな。」
猛、という組織には耳慣れないが、前2つは全国的にも有名な一族だった。
「なら、レイの調整は?」
「まぁ、夏期休暇とでも思ってせいぜい羽を伸ばせ。ファンガイアも、観測班からの報告ではレイの活躍で活動を控えている様だからな。」
五嶋は紅茶を飲み干すと立ち上がった。
「ごちそうさま、まひるもこの2人の世話は大変だと思うが…」
「うふふ、もう慣れました。」
もはや日常の風景となった音夜とレイバットのコントを見ながらまひるは微笑んだ。
「ヴェリィ~メロ…」
「喧しいっ!」
♪♪♪
五嶋の勧めもあり、音夜とまひるは近くの海岸に来た。海水浴場から少し離れた所にビーチパラソルとシート敷いて、兄妹水入らずでくつろいでいた。音夜は漆黒のブーメランパンツを、まひるは白地にカラフルな花柄のビキニに、薄緑色のパレオを腰に巻いていた。さらに日焼け防止に薄手の白いパーカーと大きな麦藁帽子を被っていた。
ちなみにレイバットは館の今は使われていない花壇でメロンを育てると言って植物図鑑や栽培方法の本を熟読していた。
「いい波の音だな。」
「そうだね~。」
陽射しが苦手な音夜をしっかりパラソルの影にして、まひるは正座をくずして座り、その太腿に音夜は頭を乗せていた。
「兄さん、身体に傷増えたよね…」
まひるは細身ながら引き締まった音夜の上半身を撫でた。
「まぁ、レイも開発途中で何かと調整不足なことがあるし、ファンガイアからの攻撃も完全には防ぎきれていないからな。」
「無理…、しないでね…」
「ふっ、可愛い妹のために無理をするのが兄だが、妹に懇願されると聞いてしまうのも兄だ。心配するな、お前を泣かせるようなことはしない。」
音夜は見上げるかたちのまひるの顔を撫でた。
くぅ~
「お腹…、空いたね…」
まひるのお腹が可愛らしい音を奏でた。まひるは赤くなった顔を隠すように麦藁帽子を深く被った。
「よし、何か海の家で買ってこよう。何が食べたい?」
「ん~、焼きそば!」
「よし、夏の海にはソースが焦げる音と匂いが最高に合うからな、待ってろ。」
音夜はサンダルを履くと海水浴場の方に歩いて行った。
♪♪♪
音夜が海の家に行くと、何やら騒ぎが起きていた。
「ちょ…、止めて下さい…、」
人込みの隙間から見ると、8人のガラの悪い男達が、女子店員に絡んでいた。他の客や奥に隠れている店長らしき男性は人数とガラの悪さに近寄れずにいた。
「こんなとこでバイトしてないで、オレラトアソボーゼ。」
「おい、そこのテンプレ雑音。」
音夜は人込みを割って騒ぎの渦中に飛び込んだ。
「この真夏の湘南、眩しく輝く太陽、爽やかな風、軽快なメロディを奏でる海にお前らの濁声は耳に障る、鬱陶しい、公害だ、早々に帰れ。」
「アン?ナンダコノヤロウ!」
典型的な雑魚キャラの台詞を並べた雑魚Aを音夜は足払いを喰らわせ、その場に倒した。
「テメェ」
「ヤッチマエ」
「ナメンジャネェゾ」
かつて多くのモブ、背景、その他大勢のキャラにもならない男達が発した台詞を聞き流しながら、音夜は優雅に8人をドレミを奏でながらあしらい、雑音を除去した。
「オ、オボエテロ~」
昼食前の軽い運動を終えた音夜は絡まれていた女子店員に声をかけた。
「大丈夫か?」
「あ、はい…、ありがとうございました、緒川さん…」
「ん?」
よくみると、まひるの親友の高倉直子だった。普段は制服姿しか見たことがなかったが、今日は紺色の水着に眼鏡をかけていた。
「あぁ、こんな美人忘れるはずがないと思っていたが、ナオだったのか。いつもより眩しいからきづかなかったぞ。」
「そ、そんな…。まひるなんかと比べたら私なんか…」
「まひるの美しさはもはや神域に達してるからな、だが、ナオの美しさもそう卑下したものではないぞ。」
「え…」
「お前の奏でる音楽同様、理路整然として整った顔立ちにすっとした目元、それが今日の眼鏡でより際立っている。」
「…~」
直子は顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「と、そうだ。まひるを待たせていたんだ、焼きそばを2人前頼む。」
海の家の店主がサービスした特盛り焼きそばを、ついでだと休憩にしてもらった直子と一緒にまひるの所に戻ると、パラソルとシートだけでまひるの姿はなかった。
「ん?まひるの奴、どこ行ったんだ?」
「あの、私向こうの方探してきます。緒川さんはここで待ってて下さい。」
直子は夏場限定の仮設トイレが並んでいる方角を指した。
「あぁ、頼む。それと、まひるも緒川だ、俺のことは単に名で呼べ。」
「お…、音夜……さん」
「それでいい。」
♪♪♪
「…?」
直子が顔を真っ赤にしながら走って行った直後、音夜は不思議な音を聞いた。
「歌声…?」
それは今まで聞いたことのない、脳内に語りかけてくるような、甘美で、もっと聞きたくなるような欲求に駆られるものだった。
「……」
音夜はふらふらと歌声のする方へ歩いて行った。
果たして、そこにいたのは人間ではなかった
蛇のように長い胴体
滑らかなクリーム色の鱗
尻尾は海のように青い鱗で被われ、先端は扇の様になっていた
珊瑚色の眉が涼しげで暗い目つきの巨大なモンスターが、口元から発している歌声に音夜は吸い込まれて・・・・・・・・・・
「ヴィィィィィィクトリィィィィィィ!!!!!!!!!!!!!!」
「はっ!?」
音夜は突然響いた弩声に正気を取り戻した。
「しっかりせんか、オトヤ!!」
「レイバット…、って、あれは何だ!?ファンガイアか?」
「あれはファンガイアやキバット族と同じ、十三魔族の一つマーメイド族だ。その特性はあらゆる生物の雄を一種の快楽、洗脳状態にする音波を発生させることができるのだ。」
「マーメイド?まんま海蛇みたいな姿だぞ?」
「十三魔族は魔力が高い者になれば種族固有能力以外に、変態能力を有している。人間に知られている所謂“人魚”は中間形態、あれは本来のモンスター形態だ。」
「なるほど……、というか、なんだその格好はっ!?」
音夜は、手ぬぐいでほっかむりをして両手(両翼)にやはり小さい熊手とスコップを持ったレイバットに突っ込んだ。
「うむ、来夏にはメロンが豊作だ。」
そう言いながらちゃんと持って来たベルトを音夜に渡した。
「…まぁいい、行くぞ」
「うむ、華激(カゲキ)な」
ベルトを装着した音夜は左手にレイバットを持って、垂直に立てた右前腕に噛ませた。
「ギャブリ!」
「変身!」
氷霧を振り払い仮面ライダーレイ・プロトタイプがマーメイドの前に立ちはだかった。
「音夜、すでに人が襲われているぞ。」
「ん?あれは…」
マーメイドの前に、先ほど音夜が追い払ったチンピラが倒れていた。
「1、2…1人足りないな」
「オトヤ、あそこだ。」
レイ・プロトタイプが砂浜の反対側を見ると、一人のチンピラが腰を抜かしながら逃げていた。その前に、白い服を着た謎の男達が現れた。
「ひっ…」
白服の男の1人が試験官のような物を首筋に打ち込むと男は一瞬悲鳴を挙げると、体の色が失われてガラスのように砕け散った。
「あれは…」
「ファンガイアは吸命牙という器官を召喚し生物のライフエナジーを吸収するが、あやつらは紛れもなく人間…、一体どういうことだ?」
白服はレイ・プロトタイプに構わず他のチンピラ達に次々と試験管を打ち込んでいった.
「おい待て…、くっ!」
ブォン!
レイ・プロトタイプが止め様とすると、マーメイドがその巨大な尻尾でぶっ飛ばした。
「ここまで巨大な相手、素手だと無理だぞ…」
「と、言ってもレイ・プロトタイプには基本装備はないぞ。計画自体はあるらしいがな…、来るぞ!」
マーメイドは身体を大きく膨らませると、口から水流を吐き出した。
「うわぁぁぁ!」
レイ・プロトタイプはその水流に飲み込まれ、海に沈んだ。
23年前のストーリーはほぼ僕個人の想像です
若干アニメと時系列が異なっても悪しからず