「うーーーーー」
俺は現在悩みに悩んでいた。
「うぁー」
「レイラうるさい」
「だってー」
わかってはいるのだ、今考えても仕方ないことだということは
というのもあれだ、桜や彼岸花といった人間界に咲く花を見たことで人間界が恋しくなってしまっているのだ、ホームシックの亜種と言っても過言ではない。
人間界へ帰りたい、また人間界で旅をしたいそんなことを考えてしまったからには何かしらの手段を見つけない事には落ち着かなくて仕方ないのだ。
ぶっちゃけ旅行がしたいだけなのだが、どちらにしても人間界へ行く必要があるのだ。
シンプルに欲の為に!!
「ということで人間界へ行くにはどうすればいいかな会議を開催します」
「「えぇ……」」
ノリが悪い親友たちは悪い文明だぞ
「えー、盛り上がってきたところで早速案を出していきましょう。 はい!ガーコ!」
「え、私? 急に言われても思い浮かばないかなー」
「そっかー、じゃあしょうがないね!ゆっくり考えよう!」
「今日ずっとそのテンションで行くの?」
「勢いがないと考えすぎて頭痛くなりそうだから!」
「そっか……」
このことを考えすぎて昨日寝れなくて寝不足っていうのもあるけど、心配されるので内緒だ。
「エイコは何か案は無い?」
「案って言われてもねー、私そもそも人間界があるって思ってないしね」
「あー……」
そう、この魔界において人間界および人間の扱いはある種の都市伝説のような扱いがされている。
勿論我が家であるガイスト家や他の高位の悪魔たちは存在している事を知っているが、一般悪魔からするとそれこそ空想上の生物なのだ。
空想……なんか思い出しそうな?
「……あっ!」
「どうかした?」
「あれだよ!2人共!!」
「あれ?」
「もったいぶらないでよ」
「空想生物学!! それならワンチャン書いてあるんじゃないかな!」
そう言って一つの教科書を取り出す。
魔歴の教科書の一つなのだが、この教科書に記載されているのが空想生物学なのだ。
空想生物学の中には人間界の生物である犬や猫をはじめとした生物たちの事が書かれており、当然人間もその中に記載されている。
悪魔的には思い込みである創作上の生物の設定を覚えるようなものなので苦手な人はとことん苦手な課目だったりもする。
「でも空想生物学って空想生物の生態とか特徴じゃなかったっけ?」
エイコが言うことも一理あるが、これは可能性の問題だ。
「そうだけど、他に人間について詳しく書いてあるのって多分専用の本とか禁書(?)のようなものくらいだと思うんだよね、全然情報無いし。」
「そうだね」
「なら数少ない人間の情報を得るためにはこういった本からアプローチをかけて行くってのがいいんじゃないかなって思ってね。」
「なるほど……?」
「とにかく見てみよう!」
そう言って教科書を開く。
犬や猫、牛に豚、馬なんかの人間界の生物が羅列されていく中それを見つけた。
というかメイン項目の一つのようなのであるが
「あった!」
「これかー、意外と詳しく書かれてそうだね」
「だね、読み上げるね 人間は我々多くの悪魔と同じように二足歩行であるが翼や尻尾を持たず、また魔力もない為魔術が使用できない生物である。」
「よっわ、どうやって生きてんのよこいつら」
「まぁまぁ、えーっと …人間たちはこの魔界とは別の世界である人間界に住んでおり、その人間界では様々な人間がいるが悪魔とは違い大きな差異は無いと言われている。」
「でた人間界 これだよね」
「そうだね、もっと人間界について詳しく書かれているところは無いかな」
そうしてぱらぱらと人間の項目から人間界について記載されている部分を探していくと、一つ目に付くものがあった。
「人間の住む世界、人間界について 人間界とは人間たちが住む世界であり、我々が住む魔界とは生態系が異なる完全な異界である。 魔界と比較しても人間界には危険が少なく、その為生物が貧弱な生態をしていることが多いと考えられている。」
そう、かつて俺が住んでいた人間界はこの魔界と比べて圧倒的に平和であった。勿論危険な部分もあるが、この魔界の方が危険度では段違いで高いと言えるだろう。
「続けるね 魔界にある物の中には人間界から得た技術があるとも言われており、人間は貧弱ながらも高い技術力があったとも言われている。××年に当時の魔王が人間界に渡航したとの資料もあるが、これは現在に至っても真偽が不明である。」
「……うーん、面白いけど。 書いてないね、人間界への行き方」
興味深かったためちょっと脱線気味に読んでしまっていたが、エイコのその声で本来の目的を思い出した。
確かに、他の項目を見ても人間界への行き方のようなものは書かれていなかった。
精々、人間界へ行った(と言われている)悪魔たちの名前くらいだ。
「これ以上は無理かー……」
「残念だったね、じゃあどうする?」
「そうだなー、こうなったら先生に聞いちゃう?」
「最初からそうすりゃよかったんじゃ」
「まずは自分で考えるのが大事なのだよエイコ君 勉強のコツだね」
「そういうもの?」
「そういうもの」
そうして俺たちは魔歴担当でもあり、俺たちの担任でもあるダリ先生に会うため職員室へ向かうのだった
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「人間界への行き方?」
「はい、先生なら何か知らないかなって思いまして」
丁度職員室に行くとダリ先生がいたので早速質問をしてみたところである。
「まったく知らないって訳じゃないけど、それならもっと人間に詳しい先生がいるよ?」
「人間に詳しい先生ですか?」
三人で顔を見合わせる、お互い人間に詳しい先生については心あたりが無いようであった。
「その先生ってどなたですか?」
「バラム・シチロウって先生なんだけどわかるかな?」
バラム……バラム……何か聞き覚えがあるような?
「げっ」
「ガーコ、知ってるの?」
「知ってるも何も、ちょっと悪いうわさがある先生よ バラム先生って」
「悪いうわさってどういうの?」
「悪魔を捕まえて実験材料にしてるとかそんなのよ、見かけたことあるけど結構怖そうな先生だったわ」
「ないない、バラム先生はそんなことしないよ ちゃんと君たちバビルス生徒の為の先生なんだから」
「どっちなの…?」
エイコが困惑しているが、俺はダリ先生を信じてみることにした。
「わかりました、バラム先生の居場所を教えてもらえますか?」
「オッケー! じゃあメモに書くからちょっと待ってね!」
「はい」
待っているとガーコとエイコがひそひそと話しかけてきた
「ちょっと、レイラ本気? 何かあってからじゃ遅いんだからね?」
「私もちょっと怖いかも…」
「大丈夫だって二人共 悪いうわさがあるとしてもバビルスの先生なんだから私たちに危害なんて加えないって」
「でもねぇ……そういう事なら悪いけど私はパス、そこまで人間界に興味ないし その為にリスクは負えないもん」
「私もパスかなぁ……ごめんね」
「いいよ、じゃあ私だけで会ってみる それで大丈夫そうならまた今度機会がある時に二人も会ってみればいいしね」
親友とはいえ、いつも一緒に行動するわけではないしこういう時に遠慮せずそれぞれの保身を優先するのも昔三人で決めたことだ。
というか俺が趣味の旅で少し危ない場所に行くことがそこそこあるので俺から提案したのだ。
最初は色々言われたが説得して、今となってはちゃんと言ってくれるようになったのである。
と言っても、命の危険とかになってくるとその限りではないのだがその話は別とする。
「出来たよ、ここに行けばバラム先生に会えると思う 今日はいたと思うから行っておいで」
「ありがとうございます では、失礼します」
「じゃあねー」
ダリ先生に別れを告げ、エイコ達二人とも別れた後にバラム先生の元へと向かう事にした。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「ここかな?」
メモの通りに行った先には小部屋があり、魂視で確認すれば中に一人の悪魔がいる事も分かったので恐らく到着した。
植物の魂なんかも多く見えるし、スージー先生の部屋っぽくもあるがとりあえずノックだ
──コンコンッ
「どうぞ」
「失礼します」
中から返事があったので、挨拶と共に中に入った。
「ダリ先生から連絡があったと思いますがガイスト……?」
はて、中にバラム先生がいたと思うのだが誰も見当たらない。
確かに魂視ではいたのは確認したんだが何故だろう?
「バラム先生? ──ひゃっ」
ふっと何かに抱き上げられて浮遊感を感じる。
背中の方に熱を感じるので後ろに誰かがいるのは確かなようだ。
「嬉しいな、僕に質問があってそれも人間の事と来た こういう話が出来る生徒は貴重なんだ、何が聞きたいのかな?」
「えっ? えっ?」
突然の事なので少し戸惑ってしまったが、今後ろにいるのが件の先生だろうか
「えっと、もしかして貴方が?」
「そっか、自己紹介しないとね 僕はバラム・シチロウ 君が気になっている人間をはじめとした空想生物を専門とする教師だよ」
何というか、ずいぶんと距離の近い先生だ
それが、彼に向けて感じた第一印象なのであった。
書いてた当時まさか本誌でこんなに早く情報をお出しされるとは思わなかったんですよね