悪魔で霊な元人間   作:P223

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前回描写が抜けましたが、音楽祭編でロノウェはレイラが問題児クラスに偵察している時に来たので出ません。
後、レイラの偵察中にロノウェはいるけどスルーしています


104 クラス調律、輝く星に手を伸ばす

場所はバビルス第二音楽室、俺達A組が借りている場所であり今は練習のために夜遅くまで毎日ここに集まっている。

俺もモデビルの仕事もここ一ヶ月は休止して音楽祭に集中している。

 

「さて、本格的にやっていこう」

 

と意気込んでみたものの、俺自身はそこまで音楽には精通していない。

ので、目には目を歯には歯を、業界人には業界人をという事で彼女をお呼びした。

 

「私が関わるからには中途半端は許しません、全員プロ級になって貰いますよ」

 

「ゼラ様 今日はよろしくお願いします。」

 

「え」

 

「は」

 

「な、なんで彼女が!?」

 

「伝説的(レジェンド)ロックスターのゼパル・ゼラ様がなんでここに!?!?!?」

 

ゼパル・ゼラ、彼女はこの魔界のトップとも言っていいロック歌手である。

チケットは即日完売どころか、売り出す前に完売、ライブの日は近くによれない程に悪魔(ひと)が集まる。

チケットが無い悪魔が少しでも聞こえるように半年以上前からライブ会場で張り込んでいるのも珍しくないという程のビックスターである。

 

そんな現実離れした人気の彼女が何故ここに居るのか、という事なのだが。

まぁ俺が理由だ、1割とか2割とかではなく10割俺だ。

 

「今日一日であなた達は最低でも魔苦針ドームで演奏できるくらいには上達させてあげるから、覚悟なさい」

 

「「「は……はい!!」」」

 

「私たちの為にありがとうございます」

 

「いいのよ、家(・)族(・)の(・)頼(・)み(・)で(・)す(・)も(・)の(・)ね(・)」

 

にっこりと笑うゼラさんではあるが、その顔は真剣そのもので逃がさないぞという圧を感じた。

冷汗が止まらないが、俺が頼み込んだのだから仕方ない、甘んじて受け入れよう。

 

名前でもわかるだろうが、彼女はゼパル家の一人である。

それどころか彼女はゼゼの母親なのだ、それもあって何度か俺も会ったことがあるのだが、結構気に入られている。

俺がゼゼと同じモデビルであることもあるが、俺の魔具制作の腕も演出などに役立つとかで目を付けられている。

 

そんな彼女は俺を自分の家で囲いたいらしく、今回の俺の依頼も快諾してくれたものの、ゼゼとの二人きりでの食事やらゼラさん主催のイベントへの参加(マスコット的なやつらしい)とか色々と約束させられた。

婚姻の確約だけは何とか回避したが貴族会でゼパルが側で出ることになるなどかなり代償も払った、だがその分以上の仕事はしてくれるはずだ。

 

「まずは聞かせてくれる?」

 

「わかりました──皆、やるよ」

 

指揮棒を持って皆に合図する、一斉に音が鳴り始めた。

練習もこなしてきたので最初のグダグダさもなくなり、聞けるくらいには調和も取れて来たんじゃないかと思う

 

テーマ曲として選んだのは悪魔行進曲"ハロウィン・レイド"、伝統ある収穫祭の曲なのだが、収穫祭の熱が冷めない今であるからこその選曲だ。

おどろおどろしい前奏から、一転してゆかいな曲調へと変化していきピークに達するとお化けたちが一斉に現れて曲は最高潮へと達し、そのままの勢いで最後までといった様子の曲である。

色んな楽器と歌にダンス、他にも演出などもまじりあって正に混沌と化したこの曲はバラバラながらも目標は同じ俺達A組に合った曲と言える。

他にも幾つか曲を上げたのだが、クラスの皆が選んだのがこれであった、俺の案を採用する以上俺に一番合うテーマにしたいそうで少し気恥しいが受け入れた。

 

一応ではあるが曲の体をなした状態で曲が終わった。

 

「……ごみね」

 

「ですよね」

 

「ぐぅっ……わかってはいたけどゼラ様にそう言われるときっつい!!」「でもそれがいい!」

 

なんか男子が言っているがこれは仕方ないし予想していた反応だ。

 

「練習してから何日ほど?」

 

「2週間と言ったところです、曲を全て演奏できるようになったのがついこの前なので」

 

「なるほどね、それで後二週間以内に全て仕上げなきゃならないので私に依頼したと」

 

「はい、問題児(アブノーマル)に勝つには普通の方法では無理なので」

 

「分かったわ、じゃあまず見本を魅せます、これをしろなんて無理は言わないし、言っても出来ない。それを念頭に置いて見ていなさい。 楽器借りるわね」

 

そう言ってゼラさんはまずはギターを持ってかき鳴らし始めた。

そのまま"ハロウィン・レイド"の歌を歌うのだが、一人であるのに音が二重三重と聞こえてくるようにすら感じる、CDやテレビで聞くようなそれとも全く違うプロの……いや、それ以上の最高の音が今目の前に有った。

曲が進んでいくにつれて本当に音が増えて来た、目の前にゼラさんに目を奪われて気が付かなかったがいつの間にかゼ(・)ラ(・)さ(・)ん(・)自(・)身(・)が(・)増(・)え(・)て(・)い(・)た(・)。

今も常に増え続けており、最終的には俺達クラスと同じ30人分となった。

 

これは高位魔術【分身(ドッペラー)】の効果である、自分と全く同じ分身を作る高位魔術なのだが、その制御はかなり難しく、高位階(ハイランク)の悪魔でもそう簡単には使えないくらいで、使用魔力も他の魔術とは比にならない程の消費量となる、俺の【バースト】分の魔力でも分身一体で1分持たないくらいと言えばわかるだろうか、当然制御は不可能なので使い捨て魔術(マジックスクロール)でも使えない魔術の一つだ。

しかし、ゼパル家は幼いころからこれ以外にも高位魔術を勉強している、幼くて魔力の少ない頃からもその家系能力【愛食(あいじき)】で好感情を魔力に変換することで高位魔術を使用できるためである。

そんなゼパル家の大人であり、三人の子供を育て上げたこともある彼女であるからこそここまでの精度で【分身(ドッペラー)】を扱えるのだ。

 

話を戻そう、そんな彼女が俺達のクラス30人分それぞれのパート全ての見本を魅せてくれている、こんな貴重な機会はそうない。

録画もしたいが、流石にそこまでは許されていないので今この瞬間を脳に焼き付けるために集中して見る。

俺は指揮者の立ち位置だが、ゼラさんは俺のやるべき指揮すらも同時に教えてくれているようだった。

 

そして曲も終わり、俺達は無意識的に拍手をしていた。

真のスターとは彼女のような悪魔(ひと)の事を言うのだろう、モデビルをしている俺でもここまでのスター性を表現するにはまだまだ遠い存在に感じた。

 

「今のは貴方たちが出来る中での最終地点のイメージ、少なくともここまで引き上げるので覚悟しなさい」

 

「今のが……?」「出来るかな……」「それにそれだけじゃないし……」

 

「聞いてるからわかっているわ、全部出来るようにするから安心しなさい、未来の家族の晴れ舞台ですもの、頼られたからには最高以上の物を作り上げましょう」

 

「そうだよみんな、ゼラ様に教わる機会なんて一生に一度も普通は無い超貴重な機会なんだ、最高じゃ低すぎる、自信を持とう」

 

「……うん、やろう! 私も胸を張って自分のクラスが最強最高って言いたいもん!」

 

「そうだ、いつもやられてばっかりだったんだ この前の収穫祭だって私は問題児に騙されてポイントを奪われたんだ、やり返したって罰は当たらない」

 

「いつも二番と言われた私だが、このクラスでは一番になりたい。 今度こそ自分の力で一番を目指したい」

 

「たまには取材される側ってのもやってみたかったんだよな……!」

 

「そうだ!」「俺だって勝ちたい!」「あいつらばっかり目立ってムカついてたんだ!」

 

圧倒的な程の完成度の見本(ライブ)を魅せられて、それを再現させる……いや、それ以上の物を要求されたのだがみんなやる気が出たようで良かった。

正直問題児達のように本気を引き出せるかは賭けだったが、ゼラさんのスター性を魅せたおかげもあってか何とかなって一安心

 

「「「じゃあこれから一人一人に集中して教えるから、付いてこれなくて失望させないでね?」」」

 

そのまま【分身(ドッペラー)】で増えたゼラさん全員がクラス全員に一人ずつ付いて行く、疑似的ながらもマンツーマンのレッスンだ、本当にここまでしてくれるとは思わなかったが都合がいい。

この幸運を最大限受け入れていこうじゃないか。

 




この話を書くときに調べなおしたら、ゼパル家の長女パラライカがサーカス花形だったのを発見してやらかしたァ!!ってなってましたが、それはまた今度どこかで使えればと。

魔入間はかなり読み込んでいるのにこんな所見逃すとは……!!
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