「──どうだ」
「いいわね、合格よ」
「「「ありがとうございます!!」」」
驚くほどに一体化した挨拶でゼラさんに礼を言った
元々は1日だけの指導のはずだったのだが、興がのったとかでここ2週間みっちりと特別授業を俺たちは受けていた
一人一人のダメな部分を容赦なく突きつけて来たり、全体でのまとまりが少しでもずれれば即やり直しなどを繰り返しているうちに俺たちはバラバラな悪魔達だったのが一つの大きな生き物と言えるまでに一つになっていた
「なんかめちゃくちゃ疲れたな」
「ここ最近頭の中でずっと音楽が流れ続けてるわ」
「気がついたら手が楽器の形になってた時はビビったわ」
「わかる、俺も無意識に熱唱してて家族に心配された」
楽器担当の男子達はそう言うが、音楽祭のために身体が最適化されたようなものなのでいい事だと思って欲しい、どうせ終わった後はまた時間と共に元に戻るんだからいいだろう。
「とりあえずはプロでも聞けるくらいにはしたけれど、実力はプロの中でも最低クラスという事を忘れないように、調子に乗ったりしたらアマチュアにすらなれないから」
そう、俺たちは最初の宣言通りプロぐらいの実力まで底上げされていた。
普通に考えるとそんな事無理に感じるのだが、忘れてはいけない、バビルスは超名門なのだ、問題児達でなくともここに入れる時点でエリート中のエリート、魔界の超上澄みなのである。
そんな彼らだからこそここまで着いてくることができたのだ
「レイラもお疲れ様」
「エイコもね、私はまだ指揮棒を振るだけだって思ってたけど全員に対して気を張る必要があるからか精神的にふらふらだよ」
「本番は明日だしやれる!って思いたいけど緊張して来た……」
「めちゃくちゃ目立つしね」
「うぅー……」
「大丈夫だよ、エイコもばっちり完璧になったんだし魅せてやろう」
「うん……今日は頑張って寝ないと寝れなそうぅ……」
「それは、まぁ頑張って」
エイコにも結構重要な役目を頼んでいるのでその辺での緊張が凄いのだろう。
折角の目立てる機会なんだし、是非とも最高の実力を発揮してもらいたいものだ。
「エイコも大変そうだけど、レイラはどう?緊張してるんじゃない?」
「私は大丈夫だよガーコ、目立つのは慣れてるしね」
「そ、流石って言っとこうかしら」
「そういうガーコも何ともなさそうだね、ガーコだって凄い見せ場があるのに」
「あたしだって自分磨きは欠かしてないもの、あれくらいならむしろ楽しみなくらいよ、全員の視線を奪っちゃったらごめんね?」
「いいよ、奪っちゃいな それを調整するのも
「じゃあ遠慮なく」
ガーコのこういう強い心にはいつも助けられる、あぁやって自信を持ってくれるとこっちとしてもやりやすい
「あそこでこういうコードで、ここは……」ブツブツ……
「ワルブ君、大丈夫? きみだってゼラ様に及第点は貰ってたじゃん、何か心配事でも?」
「ん? あぁ、ガイストさんか。 いや、ここぞという時に最高の瞬間を魅せたいからこそそれ以外の部分を無意識でも完璧にしときたくてな、よく抜けてたところを確認してたんだよ」
「なるほどね、いつもとは勝手が違うもんね」
「そうなんだよな、他の
「でもそれでかなり上手くなったんだからすごいよね、元々それなりだったギターもめちゃくちゃ良くなったし」
「まぁな、先輩にも上手くいったら記事を書いてやるとか言われて大変だぜ」
「その割には嬉しそうで、明日は頼りにしてるよ!」
「おう!」
彼は放送師団に所属している悪魔だ、普段は周りのことを調べ上げてそれを記事にしたり、自分のマル秘ノートに情報を書き込んだりとしているのだが、そのノートには自分の事はあまり書かれていなかった。
そんな彼も一皮も二皮も剥けて、いい演奏家になったので驚きと言える、明日はかなり活躍してくれることだろう。
ダダダダンッ!!
ここで叩く音が聞こえてきた、そちらは打楽器隊だ、隊とはいう物の持っている楽器は皆別の物、太鼓もいれば鉄琴もいるし、カスタネットだっている。
その中心にいるのはボボという悪魔、植物師団の一員なのだが、収穫祭では問題児達ひ一泡吹かされたようでそのリベンジを原動力に成長した
「凄い力強くなったよね、今最初のボボ君を見たら学芸会どころかお遊戯会くらいに見えるかも」
「そこまで言わないでもらえないかな……? と、言いたいが同感だ。ゼラ様の指導を受ける前と後では雲泥の差と言えるだろうな」
「みんなそうだけど、ボボ君は特に力入ってたよね、やる気凄かったもん」
「負けたくない悪魔がいるからね……アロケル・シュナイダーめ……!」
「まぁ……うん、頑張って」
めらめらと燃え滾るようなオーラが見えてくる。
深くは聞いていないがよっぽどひどい目に遭ったのだろうな、それこそプライドがへし折れるようなタイプのやつ。
俺も彼とは会ったが、やはりこっぴどく騙されたのだろう……仕返しが音楽でいいのだろうか?まぁそれでやる気になってるんだからいいんだろうけどさ
「レイラー、明日は楽しもっ!」
「やーるよー」
「ミーチェ、シャフ ゼラ様との挨拶はもう終わったの?」
「うん、めちゃくちゃお礼言った! 今度のライブのチケットも貰っちゃったぜ!」
「ミーチェが推しまくってやっとだけどねぇ」
「いいじゃん!一回行ってみたかったんだよねー、ゼパル・ゼラのライブ!」
「へぇ、そういうの好きだったんだ」
「そういうの
「でも使う条件あるんだけどねぇ」
「へぇ、何?」
「「音楽祭優勝」」
「……だったらまぁ」
「うん」
「そうだねー」
「「「絶対に行けるね」」」
それだけの事をやってきた。
今の俺達は確実にどのクラスよりも凄いと言い切れる。
そのまま二人は練習に戻っていった、彼女たちの役割はダンスなどのパフォーマンスである、明日はその動きで思いっきり魅せてもらうとしよう。
トントン、と肩を叩かれたので振り返ると、マーニーがいた
「が、頑張ってね……!」ペショ……!
「マーニー、うん、そっちもね それにセットとか頑張ってくれてありがとう」
「えへ……役に立てて嬉しい……!」
マーニーは担当としてはさっき触れた打楽器のカスタネットである。
とはいえ、担当箇所はクラスでも一番少なくて目立たない立ち位置となっている。
当然そんなカスタネットでも抜けると台無しになるくらいには重要なのだが、マーニーの担当箇所が少ないのには理由がある。
ステージのセットだ。
今回の音楽祭はもちろん歌や楽器の演奏、ダンスなんかで表現するのだが、その演出には色んなセットが必要となる。
そのセット作成班の中でも中心になって動いたのがマーニーなのだ。
彼女は引っ込み思案で、
他のモノづくりが得意な男子や、俺も補助に入ったものの、全体的なデザインや演出パターンを考えたのは彼女になる。
俺達だけでは演奏はセミプロはあっても実際に演奏する姿はアマチュアもいいところだったのを押し上げて最高の物になったのは彼女の力が大きい。
彼女の戦いはこの準備で既に魅せてもらった、明日はカスタネットでの補助をしてもらい、俺達と一緒に作品を完成させるつもりだ。
マーニーは、セットが気になるようでそちらの方へと戻っていった、最終確認をするらしい
入れ替わる様にしてきたのはこのA組の要、指揮者の俺に対してメインボーカル、明日の主役といえる
「レイラさん」
「ココくん」
「明日は……」
「うん」
「「出し切ろう」」
それだけだった。
それだけで充分だった。
彼の歌は声量もかなりあり、力強く雄々しいものだったのだが、その代わりにメロディが余りとれていなかった。
しかし、ゼラさんの指導を受けた結果、彼の歌はただ強いだけではなく、巧さも加わった。
他の歌のメンバーとのコミュニケーションも良くとれており、その連携は彼……いや、彼らの本来の実力以上の物を発揮できるほどだ。
明日はそれを出し切る、普通だが難しい事だ。
だが、それを疑う事は無い、俺達はそれが出来るくらいにまで成長した、それだけの事だった。
他にもクラスの皆と話していき、みんなの志気が最高であることを確認した。
最後にゼラさんの元へ行き、感謝を述べる
「ゼラ様、A組の為にここまでしていただき、本当に──」
「それは、明日終わった後に」
「──はい、見ていてください」
言葉は返ってこなかったが、伝わっただろう。
本来バビルスの教員でもなく、生徒の家族でもない彼女が音楽祭を見ることは叶わないのだが、ここまでA組に協力してくれたからか、ダリ先生が閲覧許可をいつの間にか取って来ていたのだ。
他にも来年にゼゼが入学するのでその前の確認とか俺がなんか関係している契約があるとかそんな事は言っていたが、見てもらえるのであれば問題ない、たった二週間とはいえ劇的な成長をさせてくれた彼女への恩返し代わりに俺達の全部を聞かせてやろう。
明日は音楽祭、一年最後の大舞台だ。
音楽祭中は基本的に三人称になります。