「鍋うまーい!やっぱ秋と言えばこれだよな!」
「山菜最高!山菜最高! あへ、お花畑が見える~~」
「変なきのこ食い過ぎなんだよあほが!!」
誰かがそう言った
食欲の秋、このバビルスでも例外ではなく、収穫祭があるほか食堂のメニューが増えるなど一定の目立ちがある
「何見てんの?」
「ん、音楽祭の時の録画 A組も問題児もやべーけど、やっぱどのクラスもレベル高かったよなー」
「わかるわー」
そういう話題も耳に入る
芸術の秋、音楽祭に触発されて新しい事を始めた悪魔たちも多い
「よっし後10周!」
「おっらあああああ!!!!」
「ふんばれぇ!!」
外からはこういう声もある、運動系の師団の声だ
スポーツの秋。一通りのイベントも終わった今、自分たちの練習に特に力を入れているようだ
そして俺と言えば──
『すみませんRAINさん! トラブルがあったらしく今日のお仕事が急遽取り消しになったので本日の予定が無くなりました!』
「えー? もう準備してたのに、まぁしょうがない じゃあ今日はフリーって事ね」
『はいそうなります! また何かございましたら連絡をしますので! よろしくお願いします!』
「はいはーい、マネちゃんもあんまり頑張りすぎないでね」
と、仕事の予定が無くなったため急遽暇になってしまった
エイコとガーコは既に断っていたのもあって既に別の幼児に行ってしまったし、入間たちはそれぞれの用事があるらしい
魔具研に行って魔具制作をするのも良いが、今日はするつもりも無かったので何も準備していないのだ
「うーん、ん……」
ふと、目に入っただけなのだがそういえば最近行ってなかったと思う
バビルスの図書室……というか普通に図書館なのだが、そこにはかなりの蔵書がされており、俺達でも知らないような本が大量に保存されているのだ
暇つぶしには丁度いいし、今日は本を読むこととしよう
うん、読書の秋も悪くない
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「さて、何読もうかな」
先程も言ったがバビルスの蔵書数は限りなく多い、初心者向けの魔術や歴史の本、魔獣や魔植物に関する図鑑、最近人気の小説なんかも存在する、流石にゼパル・ゾウイのものに関しては入手難度が高すぎて無い
もっとも、彼の小説に関してはゼゼくんが直接くれるので俺の部屋に置いてあるし一応読んだ
魔界でのベストセラーとしての人気度が伺えるレベルには面白い作品ではあったが、人間の価値観もある俺からすると少しだけズレがあったので魅了されたという程でもない
そんな事を思い出しながらも一つの本を見つけた。
『魔王列伝~デルキラ編~』
「デルキラか……」
魔王デルキラ、今の魔界のトップの存在だ
だが姿を消してからもう何年になるか、実質的に今魔界は13冠と3傑で運営されている
デルキラがなしたことは確かに凄いし今の平和な魔界があるのも彼のお陰らしい
歴史の一環としては知っていたが、なんだかんだ言って彼のことを詳しく知ろうとしたこともなかったので丁度いい
本を持って読書スペースの方へと移動した、悪魔でも本に関しては変わらず小説は人気である、漫画はなんというか確立していないのか完全なものは無い、せいぜい絵本の類ならあるのだが、少し謎な文化ではある
そういう事もあり、この図書館でも読書スペースが既に埋まってしまっていた
「お」
運のいいことに読み終わったのか一人席を離れたようで、そこに座る事にした
「横座りますね」
「あぁ、どうゾ」
「ん? アロケル君じゃん」
「貴女は確か、ガイストさんだったか」
「そうだよ、そっちは勉強?」
「そうダ、そちらは……歴史の勉強?」
「いや、暇つぶし」
「なるほど」
ライオンっぽい見た目の悪魔であるアロケル・シュナイダー
彼もまた問題児クラスの一員であり、バビルス一年の中では座学に関してはあのアスモデウスを抑えての一位。
百識の王とは誰が言ったか、彼の異名である。
「そうだ、アロケル君ならわかるかな」
「? なんだ?」
「今超大型魔具を空に浮遊させる方法を考えてる所なんだ、幾つか方法を考えたんだけど中々上手くいかなくてね」
「そう か 規模は?」
「大体1kmくらいかな、レールだから全長って意味だけどね 範囲もだいたい1.5ヘクタールくらいかな」
「なるほど 試したことは?」
「大量に手に入ったエアロメタルがあってね、エアロニクス空論に基づいて設計したんだけどちょっとサイズが大きすぎるのか、再現模型でも崩壊するんだよ魔具工学ならだれにも負ける気はないんだけど、これはちょっと建築学の方なんで中々上手くハマらないんだよね」
「そうか センタブロの建築論 は?」
「センタブロの? あれって確か、高いところに建物を作る時のやつでしょ? 今回は飛ばすからちょっと違うくて……って、あぁそういう感じか」
魔界のセンタブロという家の兄弟の理論である。
詳しい事は省くが、簡単に言うと細く長い一本の柱を基準に建築していくことでの魔界流の建築術の一つだ。
最も、他にももっといい建築方法があるので採用されることは稀なのだが、聞くところによると地帝学院ジャカポの建築方法にはこれが採用されたとか言う話を聞いたことがある
その建築方法は古いながらも安定性が高く、何より素材の節約になる。
素材の節約になるという事はその分高い部分にある金属類の重さが軽減されるので、エアロメタルとの重力の相互作用などでの空中分解の可能性が減るという事でもある。
「ちょっと難しく考えすぎてたなぁ、確かにありだなぁ」
頭を抱えるしかない
初歩的な事なのだ、初歩的な事を思い浮かばなかった自分がふがいない
そして同時にそういう方面での事まで把握しているアロケルの凄さがよくわかる、彼の頭は博識なだけでなくかなり柔軟な考え方が出来るらしい、ちょっと悔しい
「試してみるよ、ありがとね」
「力になれたのなら 嬉しいナ」
「さて、気分転換にでも読むとするかなぁ」
魔王列伝の内容の方も聞になったので読む事にした
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「……ふぅ、なるほどね、それでアムドゥスキアス様はあんなにデルキラをすいていたって事か、それにサリバン様も」
案外魔王列伝は面白いものばかりだった
アムドゥスキアスとデルキラの二人きりで戦争を何日も演奏だけで止めたとか、環境が劣悪だった場所を
勿論中には俺も知っているようなものもあったのだが、デルキラの成し遂げたことは魔界では割と最近の出来事ばかりなので、新聞などでは見たことがあるが実際に記録としての本や資料は少ないのだ、こういう面では他の歴代魔王の情報の方が多いとも言える
「でもやっぱ、消えたこの辺の時期の出来事は情報が無いんだよね」
魔王デルキラの消失、魔界を揺るがした大事件でもあり、今も続いている事件でもある。
魔王とは皆に認められた魔界のトップでもあり、魔界の意思そのものでもあるのだ。
しかし、そんな魔王が長らく不在となったという事自体がまずの問題。
死んだとかいう噂もあるが、その真偽も不明だがデルキラの関係者は誰もがデルキラは生きていると供述している
「デルキラ……」
ふとそれで思い出すのが、レジェンドリーフ
入間に聞いた話なのだが、レジェンドリーフが咲いたその瞬間、一瞬誰かに話しかけられたような気がしたと言っていた。
他の
他にも入間の周りではデルキラ関連のものが集まっている気がする、王の教室にレジェンドリーフ、アムドゥスキアスからも直接何かアプローチがあったとか聞いた。
それに……あのやばい指輪、アレだけは俺の魂視でも明らかな異物なのだ、視るだけでも生命の危険を感じる程だ。
死なないはずの俺が命の危険を感じたのはあの一回だけ、ウォルターパークの時ですら今思うとあの感覚とは違った。
……まさかだが、あれは魂自体をどうにかされそうだったという事なのだろうか
気のせいならいいが、もしそうなら俺はもう少し危機感を持つべきかもしれない、あの指輪がデルキラ関連の物の場合俺はデルキラの知られたくないものまで知ってしまって代償として何かしらされるかもしれない、そうなった場合俺ではどうにもできないのだから。