「乗りなRAIN」
「本気でやんの?ギャリー」
「当たり前だ、やりたいことは全部やる それがあたし様のロックだ」
「まったく、これで許されるんだからロックってのはよくわかんないよ、人数的にも反則だろうに」
小言を言いつつもギャリーのバイクの後ろにまたがる
手には楽器、俺がちゃんと使える楽器であるピアノというわけにもいかないので近いものとしてキーボード、正確にはショルダーキーボードというギターのような形のキーボードを持っている、今回は俺は楽器は用意していないと言ったらギャリーがどこからか持って来た。
さて、今行われているのはアクドル大運動会最後の種目であるライブバトルだ。
大運動会上位4チームがライブをする権利があり、その盛り上がりによって勝敗を決めることとなっている
音楽祭のように明確な審査員によるポイント制での順位決定ではなく、盛り上がりで評価される
「みんな上がってるね! そうさ僕はロックでも輝ける!」
出番は順位の逆順で、今は4位のビーバチームがライブを行っている
「行くぞRAIN」
「いや順番」
「ロックに順番などない!」
「あるけど!?」
そんな事を言うが無視してそのままバイクを吹かせて駆け出してしまった
ルールを重視しつつも穴をつく俺にとってルール自体を無視して己がルールだと捻じ曲げるギャリーは正直相性が悪い
なんか自分のチームも連れていかずに俺だけ連れていっているので尚更よくわからない
そもそも俺はアクドルじゃないし……
「ロックとシャイニングな──!?」
ギャリリリ!!
遂にビーバのライブ中、どころかライブ直前に割り込んでしまった
ギャリーの後ろに乗っている俺まで悪目立ちしている、どうすんだこれ
「よっしゃあ!行くぜお前らぁ!!」
「エッ!! ちょ、ちょっと待ちたまえよ!今はまだぼくの番で」
「あぁん?それがどうした! あたし様が歌いたいときに歌う順番待ちなんざロックじゃねぇ! すぅー……んっ!?」
「はいストップ、割り込むのはまだしも流石にこれはね……ちょっと舐めすぎ」
ギャリーの後ろから口を塞いで無理矢理話を途切れ刺す
ギャリーが邪魔になっているのもあるが、それ以上にこのままやってもろくなことにならないのは自明の理
簡単な話だ、相手に入間がいるというだけでこの順番は問題となる
「ぷぁっ! 何すんだRAIN! お前は黙ってあたし様の為に……!」
「ギャリー」
「っ!……なんだよ」
「もっとロックに
ギャリーからマイクを奪い取って、この際めちゃくちゃにしてやろうと声を響かせた
「どうせなら同時にかかってきな! 至高のアクドルなら相手のライブ中に自分のライブだって押し通せるはず! マッシュアップバトルと行こうじゃないか!!」
「……は!? なにいってんだRAIN!? 同時にライブ!? それはお前……最高に面白そうじゃないか!」
ほらかかった
ギャリーはこういうめちゃくちゃな事が好きなのだ、本当は音楽祭みたいに後出し有利を取ったほうが入間には有効なのだが、そんなことをしてギャリーが待てるわけもないのでこれが一杯一杯だ
これでも可能性があるというだけでここからやれるのはギャリーの腕次第だろう
「ほら!歌うやつは出てこい! くろむ!お前もだ!」
「よしっじゃあ僕も……!」
「馬鹿ねアンタ、これどう考えてもくろむとギャリーの一騎打ちって事じゃない、その勇気は讃えるけど地獄を見るわよ」
と、そこでやる気だったビーバに対して横からきたのはネネットだった、彼女は俺の方をちらっとみてから一礼してビーバを連れて戻っていった
ビーバチームの他の面々もそれに合わせて戻っていった
そして、入れ違いで来たのはまぁわかるだろう
「ほんっと、悪知恵が働くわねRAIN やりづらいったらありゃしない」
「だけどそれが面白いんだがな、だが、直接相手して心が折れるなんて無しだぜ?」
「全く、これで
「何で相手側にRAINがいるのかを疑問に思ってるのは僕だけ? 司会だったじゃん」
「ギャリーに巻き込まれてね、ま、やることになった限りはやるだけやるさ それに……そう来たか」
イルミ、なのだがどう見ても様子が違う……これは、いつかの悪周期もどきか
他のメンバーは合わせた感じのようだ
仕方ない、となると俺もちょっと本気でやろうか
「……そろそろやろうか」
「!! ……上等!」
会話をしている間に、スタッフたちが対応したのかもう一つライブステージが設営されていた
魔術があるとこういう時に便利で良い
それぞれがそれぞれのライブステージに上がった
くろむは、イルミ、リンディ、メリーと共に
そしてこちらはギャリーと俺のみだ
「これだけやっといてなんだけど、大体任せるよ」
「当たり前だ! RAINはあたし様の演出だけで十分! 最も美しい花としてあたし様を惹きたてろ!」
「はいはい」
そして、どちらも準備が完了して前奏が流れ出す
俺もキーボードで演奏し始める
「「行くぜ!」」
「悪魔たるもの油断禁物ある日突然ハートを奪われる……ズッキュン!」
くろむ達が歌い始める、こちらも合わせていく、いつもの小悪魔黙示録なのにどこか曲調が変わっており、テーマのロックに合わせて再編されている
ドラム、ギター、ベースと他のメンバーも演奏を始めた
「ギャーーーーリーーーー!!!」
「GYA GYA GYARRY THE ROCK!!」
「ロックンロール デビ ウォッチャー!!」
ギャリーの曲はいつも違っていつも同じである、色んな決まった曲ではなくその時その時で即興で曲にするのが彼女のスタイルと言える
それに合わせて演奏をしている彼女たちも相当な練度だ
俺も演奏はしているが、こっそりと魔具で補助をしている。流石に何もなしでギャリーに合わせて演奏するのは無理がある
「嗚呼、可愛いあの娘はKOAKUMA 髪先さわってごらん、スルリとエスケープあぁザンネン」
「触りたい? その先も? そんなに言うなら遊んでアゲル♡」
「好き?おこがましい ヒザをつけ 私のためなら魂くらい捧げなさい」
「「KOAKUMA KOAKUMA キミごとき ふりまわしてアゲル KOAKUMA!」」
歌詞もまた、曲に合わせて攻撃性が高くなっている
典型的なアイドルソングなキミの小悪魔黙示録だが、それでいてちゃんとカッコよさに振られているのが分かる、だがしかしこちらは
「GYARI GYARI GYARI GYARI!!」
「THE ROCK!!」
「そこを退け、あたし様が通るノロノロすんな 蹴っ飛ばすぞ!」
「尻尾掴んで引きずって ツノもハネも へし折って!! 好き放題さ大暴れしてやろうぜ!!」
ギャリーはこれが持ち味でこれが最高のアクドルだ、同じ土俵で勝てる相手じゃない、意外性との勝負となるはずだ。
「常識なんざ持つだけムダさ 欲しいもんだけ追いかけろ! さぁ叫べ求める悪魔たちよ!!」
「「6 5 4 3 2 1!」」
声を合わせてボルテージを上げる、ギャリーに合わせてバンドの音楽も好調となる
──ジャンッ♪♪♪♪♪
ほら来た、敢えて最高潮での合わせとは悪周期イルミは本当に厄介な相手だ
転調して綺麗な音色のピアノソロが会場を包んだ
「──好き? 知ってるわよ、そんなこと 私のためなら心臓だって捧げるでしょ」
「KOAKUMA KOAKUMA この私を──」
「ふりむかせてみせて KOAKUMA──!!」
同時に衣装チェンジ、黒を基調とした"カッコイイ"服装から、ウェディングドレスを彷彿とさせる"カワイイ"衣装へと、曲もロック再編から原曲へとチェンジした
やはりくろむはカッコイイをカワイイの土台にしたのだ、ならばこちらはカワイイをカッコイイで押しつぶそう
「ギャリー」
「なんっ……がはっ!!」
「え?」「ギャリー様の胸に腕が」「え?殺し?」
客たちの動揺が広がる、だが大丈夫だ 殺したわけではない
「……キヒッ」
ギャリーが嗤った
「ローックンロォォォォォッル!!! デビ!! ウォッチャー!!!」
ギャリーの雰囲気が更に攻撃的に、刺々しく そして支配欲に塗れた姿を隠さなくなった
何時だったか話として会ったことがある、俺の悪周期の話だ。
俺の悪周期は他よりも格段に危険だと言われていた時期がある、それの理由がこれなのだ
魂を弄ることで強制的に悪周期化を引き起こしてパニックを起こす、それを楽しんでしまうのが俺の悪周期であり、正確には普段は抑圧されている元祖返りとしての特徴だった。
今回は敢えてギャリーに自分の意志で使用した、ギャリーの欲はわかりやすくこの場において危険が無いからだ
"ただ欲しいものを手に入れたい"その為だけに全力を注げるのがギャリーの悪周期である。
そしてその熱量は彼女のロックに更なる業火を放つ
「あたし様だけ見解けば最高!」
「ロックンロール・デビウォッチャー!!」
さ、ここからは小細工無しの正面対決だ
「フフ……──好き?どうかしら?見抜いてみてよ? 私のためなら魂だって捧げるでしょ?」
「欲望と全速二人乗りでぇ!! ロックンロール・デビウォッチャー!!」
くろむも更に1番で重ねてくる、今だけは敵同士でもありつつも二人が音楽で繋がっているのが分かった
「さぁお前を奪いに行くぜ!」
「KOAKUMA KOAKUMA キミなんてふりまわしてあげる」
「うぉぉぉぉ 覚悟してろよなッ!!」
「ロックンロール・デビウォッチャー!!!!!」
「KOAKUMA-----!!!!!」