「え?掃除?」
「はい ですので今日は地下室の仕様はお控えいただけますと」
「そっか、わかった よろしくね」
「かしこまりました」
今日はアクアが俺の地下工房の掃除をするらしく魔具開発が出来ない日らしい
こういう事は一年に一度あるかどうかと言ったところなのだが、今日がその日だったようだ
アクドル大運動会も終わったが、13月はアクドルたちの番組での撮影シーズンな事もあってモデビルの仕事も今は少ないので今日はこちらも休み。
しかし、魔具開発を楽しもうと思っていたので完全に手持ち無沙汰になってしまった。
「ガベージは……アクアが忙しかったら無理か、テラもおかさまについてるし」
ス魔ホで連絡してみてもエイコ達も入間達も予定があるらしく、遊びに誘えそうにもなかった
仕方ない、とりあえず外に出てみれば何か暇つぶしが見つかるだろうか
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
というわけで来たのは普通の商店街
変わったところばかり行かずとも案外こういう場所で新たな発見や珍しいものを見ることもある
「さて、と とりあえず服でも……ってあれは」
適当に店屋を探そうとしたときに視界の端の方で見覚えのある影があった
「えっと、絵具は足りなかった分買えたし、後は……」
「マーニー!」
「ひゃあああああ!!!!」
「おっと、ごめんごめん 驚かしちゃった?」
「めちゃくちゃ驚きましたよ……! 今も動機が……ッ!」ペショ……!
ヴィネ・マーニー、俺のクラスメイトで友達だ
彼女は美術師団に所属しており、何度か見せてもらったが絵だけでなく立体造形なんかもかなり上手い
音楽祭の時は裏方としてステージセットの大半をデザインしてくれたのも彼女で、彼女が居なければ俺達は問題児達に太刀打ちできずあの最高の結果を残すことは出来なかったと言える
何が言いたいかと言うと、俺にとって彼女はものづくりの一つの指標であり、もっとお近づきになりたい
A組女子会にも時々参加してくれるのだが、どうにも受け身で彼女の趣味嗜好が掴みづらいこの頃、こういうなんでもない日に外で会えるなんて彼女の事をもっと知るいい機会だ
「というわけでこの後時間ある?」
「どっ……どういうわけですか? 時間は、ありますけど」ペショ
「いいね、私今日完全に暇でさ 良かったらちょっと遊ばない?」
「えっ?」
「えっ、だめ?」
「いえ、だめなんてそんな事は……!」
「じゃあとりあえず、そこの喫茶店で飲み物でも飲みながら何するか考えようか」
「あっ、はい! ……こ、これが陽キャ」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
というわけで入ったのは喫茶店"ラプラス"
割とスタンダートな喫茶店で軽食や一通りの飲み物は大体何でもある店だ
「初めて来ました……」
「ん?この店初めて? まぁ結構あるもんね喫茶店って」
「いえ、喫茶店が」
「あー……なるほど、確かに
俺はたまに一人でも喫茶店やカフェに入る、魔具制作に行き詰った時のリフレッシュやキャンプの予定を立てる時にも家で一人でいるよりは他人でもいいので人が多い場所の方が集中できる部分があるからだ。
もっとも、魔具作成時は一人で地下室にこもったほうが試運転とかしやすいし好きに場所が使えるのでのでそちらの方がいいのだが
マーニーはそういう意味ではないようで、喫茶店というもの自体に少し忌避感があったようだ
分からなくもない、前世でも俺の友人にいたのがわざわざ喫茶店でコーヒーなんか買わなくても自販機やコンビニの方が安いしすぐに手に入るし無駄でしかないという考えのやつもいた、他にも一人で飲食店に入るのは怖いし複数人なら喫茶店ではなくちゃんとした食事処に行くと言う者も。マーニーは多分後者だ。
「じゃあ色々頼んでみよっか、飲み物はコーヒーに紅茶に、ジュースなんかも結構あるね、こういう場所のミックスジュースとか美味しいよ」
「なるほど……じゃあ、紅茶を」
「オッケー、ここはダークリンとかアクマグレイとかあるけど……」
「え、えっと? ……? ?」ペショペショ
「ダークリンにしとこうか、無理そうだったら別のを頼もう? 私はどれも飲めるから」
「はっ、はい!」
どちらも魔界のよくある種類で、ある程度安価で手に入り飲みやすい種類の紅茶だ
俺はどちらも好きだが、ダークリンの方がまだ好きなのでそう言ったのもある
「お腹すいてる?」
「少しだけ」
「軽食もあるよ オムライスとか」
「あっ、そこまでするほどでは……!」
「なるほど、じゃあお菓子かなー ケーキとか頼もっか」
そう言ってメニューのケーキ類の場所を開く
飲み物とセットで1000
俺はダークリンにショートケーキを選択した
マーニーは……
「ケーキってこんな普通の日に食べてもいいんでしょうか……っ」
「へっ?」
「ケーキってこう、お祝い事とかそういう時の物で……っ」
「ははっ 大丈夫だよ、そういうケーキもあるけどこういう場所のは普通にお菓子だし特別なものでもないからさ」
「でも、弟にも悪いし……」
「じゃあ弟君にも買って帰ろう、それに何かの祝い事じゃないとダメってんなら マーニーの喫茶店デビュー記念ってことで」
「あ……」
そういうと、納得いったのかマーニーはチョコケーキを注文した。
チョコケーキが好きなのかと聞いたら、そうでもないらしくどこか親近感がわくらしい
「今日は買い物? それ画材だよね」
「はい……このあたりの店だと大体揃うので」
「へぇ あ、そうだ 前々から思ってたことなんだけどさ」
「? はい」
「そろそろ敬語辞めない?」
「えっ あっ えーっと」
マーニーとはそこまで積極的に関わらないとはいえ、これでもクラスの仲間として1年くらいは経ったのだ、最初はだれにでも敬語で話すタイプなのかと思っていたのだがそうでもないらしく、件の弟と話している時などはため口だったのを思い出す
他にも音楽祭の後などに小さい子と話している時はため口だったので彼女の素はそちらなのだと思って言ってみたのだが……少しまだ早かっただろうか
「いいんでしょうか?」
「いいでしょ、私達もうとも……仲間だし、音楽祭だって一緒に乗り越えたじゃん」
「仲間……!」
すっごく嬉しそう
もしやと思う部分もあるが、流石に不躾なのでやめておこう
「じゃ、じゃあよろしく……ね?」
「うん、よろしく」
上目遣いでこの発言……なるほど、これが萌えというやつか
前世では理解しきれなかった文化ではあるのだが、今になって分かった気がする
エリちゃん辺りなら抱きしめるんじゃなかろうか、おれもちょっとドキッとした
「お待たせしました」
「ありがとうございます」
ここで注文したものが来たので、並べてもらった
マーニーの方も同じように並べたその時だった
「おいゴルァ待て小僧!!」
「やーだねっ!」
ドゴォンッ!
何か外で騒ぎが起きたらしく、爆発音が聞こえてきた
魔界ではままある事ではあるが、商店街ではかなり珍しい
「ひゃあっ!」
「おっと、大丈夫? マーニー」
「は、はい……じゃなかった……うん」
「まったく、急に何が起きたんだ……って」
「「あ。」」
目が合った。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「マーニー、私の後ろに下がってて」
「う、うん 気をつけて……!」ペショ
スキンヘッドのムキムキの悪魔が俺を見下ろしている。
顔には落書き、ダイヤ7……ってなんだ?
「おう嬢ちゃん、この席に褐色のクソガキが来なかったか? この店に飛び込んだのは視たんだがなぁ?」
なんかすごいイライラしているようで、俺に理性的に話すつもりのようだが何か問答を間違えたら暴れそうな感じだ
「いいや、来てないですね なんか飛び込んだのはトイレの方に行きましたよ 追ってるんなら窓から逃げたんじゃないです?」
「あぁ? トイレっつったらこの席とは反対だろうが どうせこの辺のどっかに隠れてるんだろ? 隠すと碌なことにならねぇぞ?」
「あのー……お客様、他のお客様にご迷惑が」
「あぁっ!?」
「ごゆっくり」
ススス……と、離れていった。
ほんと悪魔ってこういう時に頼りにならないのが多い。
仕方ない、【
魔具の認識阻害を調節して少し弱めた
「──だからここには居ないって言っているでしょう」
「っ!?」
「私たちに絡む暇があったら、速く行ったらどう? 何か急ぎなんでしょう? ほら早く」
「あ……あぁ、そうだな 邪魔したよ……」
「店員にも謝罪してから行きなさい、いいね?」
「お、おう分かった」
ハゲマッチョは顔を赤くして店から出ていった。
意外と有効だなこれ、くろむも面倒ごとの時に可愛さで切り抜けるとか言っていたが、俺も美しさ全振りでやってみたらいけるっぽい
今後はもっと利用するのもいいかも知れない
魔具を戻してマーニーに振り返った
「大丈夫だった?マーニー」
「……へぁっ! だ、だいじょうびでひゅ!」
あてられたのかマーニーの顔も少し赤かった
こういうデメリットもあるなら、今後やるなら一人の時にしよう
「お姉さんすっげぇな! なんだよ今の!」
「ちょっとした技だよ それより、君のトラブルに巻き込まないでくれる? 私はともかく、マーニーはこういうの苦手なんだから」
「いやぁごめんごめんっ! あいつ、イカサマで金稼ぎしてたからちょっとからかったら怒ってさー! 有り金全部奪っただけなのにな!」
「そりゃ怒るよ まぁ、向こうが悪いなら何も言わないけどさ で?いつまで居座るつもり?」
「気が済むまで? 数日後には大事な用はあるけどその分今日は暇だからな!」
「よ、陽が増えて……消えるッ」ペショ……
マーニーがギャル男の空気にあてられて白くなってきた
やっとため口で話してくれて仲良くなれるって時なのに面倒な男だ
「ん? へぇお姉さん
「ふぇっ、ち、違います……
「こう言っちゃなんだけど私たちの歳で
トラブルを連れてきたのもあるが、さっきからどことなく入間に近い感じがするのだ
魂視も試したが、それでは普通に悪魔だった、しかし空気感と言うか雰囲気というか、そういう星に産まれた
そう、確かあれは
「ん? 俺? 俺はベリアール・ベリィ・ラズベリィって言うんだ、次期魔王ね!」
「あ、うん 聞かなかったことにしていいかな?」
変にヤブヘビだったかもしれない