「これをこうして……と、完了。」
なんとか
「にしても……はぁ〜〜ッ」
思わずため息が漏れる、原因はアミィ先輩というより自分自身だ
俺はアミィ先輩が元祖返りな事に気が付いていた、それなのに誰かにその事を伝えずに放置していたのだ。
一応理由は二つある
一つは元祖返りと言うのが当人には関係なく起こりうる事でその元祖返り自身でもそれを我慢して生きているのなら、俺はそれを応援したかった。
だから言ったら退学や逮捕に繋がるであろう大人達に言わなかったのだ
しかしそれはまだ良い、問題はもう一つの方だ
アミィ・キリヲはイケコンなのだ、それも俺が初めて見るレベルのイケコンである。
ガイスト家の悪魔の特徴として美しい魂に惹かれると言うものがある。
認めねばならない、俺はアミィ先輩の魂に惹かれていた。それで彼の好きにさせようと黙っていたのが真相である。
とんだ色ボケだ、とは言え彼の事を気持ち悪いと思ったのも事実。
見た時に生理的に相入れない仲ということが本能的にわかったのだ
一見矛盾したような二つの感情なのだが理由はわかる、
人間としての俺は彼を忌避し、悪魔としての私は彼に惹かれていた。ただそれだけの事である
まぁこれが悪い事っていうわけでは無い、自分でも知らない程度に惚けていたと言うことは前世が無ければ彼の手助けをしていた可能性も否定できないからだ
そういう意味では彼を止めよう、彼の邪魔をしようと考えられているのは僥倖だ
「とにかく、先輩を放置していた私にも原因がある。 責任を持って被害を止めないと……」
そしてそのまま作業をしていると何かの駆動音聞こえてきた
「? ……まじかー」
その駆動音である空を見上げて見るとそこには大量のクロローンが稼働していた、当然イルマが動かしたなどという想像していない。
何らかの方法でイルマがタブレットを奪われ、それをアミィ先輩が利用していると考えるのが妥当だろう
クロローン達は統率がとれた動きで広場の方向へと向かっている
その目的はおそらく生徒への、火力は低めに設定してあるので軽い火傷程度で済むだろうが師団披露に悪影響があるのは間違いないだろう
「まぁでも好都合っちゃ好都合かな?」
★★★★★★★★★★★★★
入間は絶望に慣れている。
幼い頃から両親にろくでもない扱いをされてきた、ある時はヤのつく自由業の元へと1人で行かされたりまたある時は森の中でサバイバル、さらにある時はマグロ釣りの餌にされるなど数え出したらキリがない
そんな彼が出した結論はこうだ
"絶望したって意味がない"
絶望したところで腹は膨れないし事態が良くなることはない、当然の事だがそれを未だ幼い彼は理解していたのだった。
そして、その特異とも言える経験は今現在も活用されている
アミィ・キリヲから聞かされた"花火を利用して学園をぶっ壊す"と言う事に関しても絶望せずに対処の道を選べていたのだ。
「僕は今までずっと危険を避けてきた、でも魔界に来て挑戦することを学びました。」
「だから先輩が悪でも逃げない 絶望もしない!」
「あなたの野望を…ぶち破ります!」
アミィ・キリヲが動揺している隙に入間は盗まれていた大玉を奪還、全部を拾うために、花火をみんなにみてもらうために窓から外へと飛び出した
しかしそこで見たのは入間も予想していない光景だった
「クロローン!? 何でここに……」
クロローンは入間が持っているタブレットで制御するという話だった、それがなぜか今ここにある。
思わず閉まっていたポケットに触れるが何も無いことがわかる
そして、窓の中ではアミィ・キリヲがそのタブレットを操作しているのがわかった。
(いつの間に……! くそ、もうやるしか無い…!)
(これでも絶望せんか……でも、この魔具を使って入間くんの邪魔くらいは出来そうやなあ、その上でもう一個これや)
入間を囲むように【
(これじゃパンドルーラでもぶち破れるか……あれは!)
(完璧、完璧や…! これで入間くんも絶望を……なんでしてへんの?)
入間の顔には絶望のかけらもなく、それどころか希望に溢れていた
「【パンドルーラ】!!」
パキィン!
入間が投げた大玉は龍の形を取って天へと昇る、入間の周りの【
「【ブースト】」
そんな声が聞こえた時龍の前に光輪が現れ、それを抜けた龍は力を取り戻した。
パリィィィン!!
頑丈に作られていた【
そしてその龍の花が開く時は祭りの開始のタイミング、今この時であった
カウントダウンが聞こえている
3
2
1
ドパァン!!
「なんやねん……」
そんな声は花火の音にかき消された
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
時は少しさかのぼる
俺はクロローンを追って空を飛んでいた
「広場まではもう距離はない、とは言え間に合ってよかった…!」
そう言いながらも俺は用意していた魔具を取り出して頭に装着した
その魔具の見た目はインカム*1であり、声を届ける他にこういう使い道がある
「【
その言葉を言った途端、従うようにクロローンが全て動きを止めた。
この魔具で発した言葉は俺が作った魔具に限り動作を強制的に上書き出来るものである、とは言えそれは事前に登録しておいたキーワードに限るのだが
「【
このキーワードでクロローンは鴨の親子のように俺についてくるようになった、速度は出ないがこのまま広場へと向かう
「着いた、人多すぎるでしょ……アミィ先輩どこ?」
生徒の半分以上は広場に集まっているじゃないかというくらいには悪魔が集まっている、遠目ではあるがエイコやガーコも確認できた。
なんかエイコが夢見心地なように感じるが、あの子は割といつもあんな感じなので放置する事にした。
認識阻害眼鏡をかけているとは言え長い仲のガーコはこちらに気が付いたので指を立てて騒ぎにしないでもらった。
「よし……【
クロローンを一定の距離を保ったまま展開させていく、クロローン自体も黒いため夜空に紛れてまだ下のみんなにはバレてないみたいだ
「準備完了、あとはアミィ先輩が何を企んでるのか何だけどッ!」
完全霊体化を発動し魔力を視認できるようにした、この状態であれば【
「……見つけた!」
どうやら2人は同じ場所にいるようで、何かをやり合っている様にも見える
「って何アレ!? 何て馬鹿げた魔力!」
入間の近くに恐ろしく大きな魔力が集まっているのが見えた、アレが何かまではわからないがアレで何か悪い事をしようとしていることが分かった
何故なら空を含んだ広場全体に【
「イルマくんまじかッ!」
その時入間が壁の外、見えないが窓の外へと走って来た
このままでは飛び出したとしても落ちるだろう
「ッ! 行って!【
クロローンをイルマの落下地点へと移動させる、乗るとまで行かなくとも落下軽減くらいなら可能だろう。
しかし、それは杞憂であった。
「また【
イルマの周りに【
「サプライズであってほしかったな……! 幻滅するよアミィ先輩」
クロローンに下った命令は下にいる生徒の皆への花火での爆撃、当然キャンセルだ。
命令通りに動かなかったからかそれともイルマに対する反応か、少し嫌そうな顔をしているがどちらにしても邪魔するだけなので構わない。
何よりもだ
「俺の魔具を悪いように使わせるかってんだ」
少しばかり乱暴な口調が出てしまう。
その時イルマと目が合った。
───信じてるよ
そんな声が聞こえた気がした。
不思議とイルマがやりたいことも伝わった
「ッし! 【
クロローンが円形を作る様にイルマの頭上に陣取った。
「【パンドルーラ】!!」
イルマの腕から龍が産まれた。
龍は【
「【ブースト】!!」
円形に展開したクロローンが内蔵魔力を開放し光のゲートを作り上げる。
このゲートは通った魔法に魔力を充填し、強化するものだその強化値は使用した魔具によって変化するが今回は
そうして力を取り戻した龍は広場を囲う【
ドパァァァン!!
近いが故に轟音で耳が壊れそうになる、だがまだもう一仕事だ。
「【
【ブースト】で魔力を使っていないクロローンを中心に線をつなぐと二重の六角形、つまりは六角柱の群になる様にクロローンが展開されていく
「【
その声で展開したクロローンは力強い防御術の壁を発生させた。
衝撃に最も強くなるように設計したその壁は、大玉の花火による火の粉を残さず、被害を一切出さずに受け止めた。
さらにはその見た目は夜空に浮かぶステンドグラスのようでとても幻想的な光景となり、結果としてみると二重の感動を皆に与えることに成功したのだった。
ウオォォォォォォ!!!!
悪魔たちの雄たけびが聞こえる、トラブルもあったが
「入間くんだけじゃなくてガイストさんもあんなことできるなんて反則や反則! 二人して無茶して!」
「入間くんは着地の事考えてないし、ガイストさんはあんな至近距離まで花火に突っ込むし!!」
「それに……なんで結局みんな笑顔になってもうとんねん!」
「何……全部拾っとんねん……」
アミィ先輩の慟哭が聞こえてきたが、あえて一つ訂正しよう。
「まだですよ、これから全部掻っ攫うんですから…!」
「クロローン展開! 【
手を挙げてクロローンを再配置する。
「さあ!花火大会の始まりですよ! クロローン!【
入間は力を使い切って倒れている、その為デフォルト設定ではあるが小花火の演舞が始まった。
この後1時間は俺たち
トラブルの後もしっかり計画通り進めるのが最大の対処なのだ
「──完敗やわ ぼくの後輩は皆野心家ばっかやな」
今年はこれが最後ですね、よいお年を